謎マナー
なぞまなー
- 徳利は注ぎ口で注いではいけない
昔の暗殺に注ぎ口に毒を塗られていたから、宝珠の形になるからなど理由は様々だが、本来徳利は注ぎ口を下にした方が注ぎやすい。それ以外のところで注いだらこぼれやすいのが当たり前である。
Twitterである陶芸家がマナー講師撲滅用のどこから注いでも失礼にならない徳利を作り、この謎マナーに対して「作り手の善意を踏み躙っている」と激怒した。
- 葬式では喪服に合わせ黒マスクが良い/リモート会議では服とマスクの色は揃える。柄マスクは失礼だが、会社ロゴマスクならOK
白のマスク着用で黒の服がNGという類いの物。
Twitterにおいても話題になり、鬼滅マスクを着用していた国会議員の河野太郎氏も反応した。
- お賽銭は○○円だと良い/悪い
5円だと「ご縁」、10円だと「遠縁」になる等。
出雲大社の公式ホームページでは「金銭(の額)で祈りの効果が変わる訳が無い」と回答した。
- お辞儀ハンコ
上司に承認を得る場合、部下が上司にお辞儀をしているよう左斜めに傾けてハンコを押すのがマナーとされている。
複数のメディアで取り上げられる代表的な謎マナーの例で、一部の金融機関では現在でも慣例として残っているとされているほか、「俺は承認しない」という意味で逆さに捺印するという派生もある。
ちなみにシャチハタの電子捺印ソフトはお辞儀ハンコを意識した機能が備わっている。
- 出されたお茶を飲み干してはいけない
会議などで出されたお茶を飲み干すのはマナー違反とされている。
これについて実際著名活動を行なっている人に取材したところ、正しいのは「出されて相手が飲んでくださいと言ったら飲むのが正解」「一度口をつけたら逆に残すのは失礼」というのが正解の模様。
- 「了解しました」は失礼
相手の話に対して「了解しました」ではなく「承知しました」が正しいとされるもの。理由として「了解」は「内容を理解した」という意味で上司が部下に対して使う言葉で、部下が上司に使う言葉ではないとされているが、これが歪曲されて全体的に「了解はNG」となってしまっているとされている。
なお、国語辞典の編纂者に取材したところ、理解せずに使用するのは「敬意漸減」(本来の敬意が失われる)としている。
- 氷河期世代の就職活動
氷河期世代の就職活動において、以下の謎マナーが散見されていた。当時の人事担当の反論を含め記述する。
- フリーメールアドレス禁止:連絡先のメールアドレス欄ではHotmail(現在のOutlook.com)やYahoo!メールでの登録はタブーとされ(Gmailは2004年から)、必ずプロバイダのメールアドレス(しかもメジャーなところ)を使用すること。
- フリーメールアドレスはなりすましが容易(現在は登録時携帯電話番号が必要だが当時はそれがなかった)だからとされたが、実際は「連絡がとれればどこでもよい」とされ、フリーメールアドレスだから受け付けないということは確認されていない。
- 携帯電話禁止:採用担当に連絡する際は携帯電話での会話は禁止。必ず固定電話か、家になければ公衆電話からかけること。
- 当時の携帯電話の電波状況や通話品質が悪かったというのが理由であるが、実際は「かけ直してくれればよい」とされ、逆に公衆電話からだと「折り返し電話が出来ず面倒」として敬遠されていた。
- 証明写真機禁止:写真は貼付の際は証明写真機で撮影したものは禁止。必ず写真屋で撮影したものを使用すること。
- 表情や明るさなどの調整ができないためとされるが、実際は「顔がわかればよく、そもそも証明写真機かどうかの判断はできない」とのこと。ちなみにデジタルカメラの撮影は当時解像度が低かったうえ手間がかかっていたので敬遠されている。
- 資格欄の空欄禁止:とにかく穴を埋めろということで役に立たない資格(社内事務職なのに自動車免許保有など)まで記載し、中には犯罪歴の記述も推奨されていた。
- 当時は職種により学歴より資格が優先されたため。実際は「意味のない資格は読むのが面倒」として敬遠されていた。なお犯罪歴は「履歴書に書くものではないが、事前申告してくれれば内容と状況によっては採用してくれるところもあるのでは」とのこと。
そもそもこれらを理由に不採用としたところはハナから採用する気がなかった(補助金目当てに登録だけ行っている)とされている。
こうした謎マナーの背景には、一部のマナー講師の存在があると言われている。
社会人になるに当たって社会内でのマナーが存在することは間違いなく、新米社会人などにそのマナーを教えるマナー講師と言う職業には一定の需要がある。
ところが、マナーは法律のように国会で定められた法文や判例があるわけではないため、本物のマナーと謎マナーを区別することは難しいし、ある人にとってはマナーでもある人にとっては迷惑行為、ということも起こりがちである。
また、「マナー講師」自体、資格制ではないことから誰もが好き勝手に名乗れるため、勝手な創作マナーを広めたとしてもマナー講師として処分されるわけではない。
そのため、
- マナーを創作して、「マナーを知りたいなら皆の知らないマナーを知っている自分の指導を受けろ」という形で稼ごうとする
- 新しいことを覚えてもらおうとリップサービスでこじつけのようなマナーを言う
- マナー講師が属していた業界での特殊なマナーを一般マナーのように吹聴してしまう
と言った事態が起こり、それをメディアが無責任に拡散してしまう。
さらに、特に新米の社会人はマナー不足に起因する失敗を恐れるあまり、謎マナーを無視することができず必死に守ろうとしてしまい、謎マナーが乱立することになる。
マナー違反は、それを指摘してマウンティングの種にするのが最大のマナー違反である。