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負の性欲

ふのせいよく

「負の性欲」とは、「性を引き寄せる」ことで享楽を得る欲望を「正(+)」としたとき、それを反転させた「性を遠ざける」ことで享楽を得る「負(-)」の性質を持つ欲望を指す。 カップリングにおいては情欲に燃えている相手と、対照的に冷めている自分とのコントラストを享楽するジャンルと説明できる。
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概要編集

女性が男性に対して抱く生理的嫌悪感やそれに基づく拒絶行動の根本要因として設定された概念である。

あくまでネット発の俗語的概念、ネットスラングの類であり、学問的な用語ではない。


発案者のTwitterアカウントが凍結された後も、他のネットユーザーによって進化心理学等と結びつけられたりする中で理論化されていった。

現在でこそ単に「性的要素についての女性の生理的嫌悪感」や「性欲の真逆」のような扱われ方もされているが、「原典」のテキストはフェミニズムを女性向けポルノとして扱う等フェミニストへのあからさまな揶揄と蔑視を含んだものだった。


他ネットユーザーによる整理・理論化後を含めた詳細な内容についてはニコニコ大百科の項目を参照。


「負の性欲」の歴史編集

「負の性欲」とは2018年夏に個人所有のウェブサイト上で産声を上げ、1年後の2019年夏にSNS上で一定の知名度を得た概念である。


「負の性欲」が「惚れた方の負け、惚れられた方の勝ち」の敗者を標的とする性質上、現実世界の恋愛では男性から女性へのアプローチが多いことから、女性の内心にて発現しやすい欲望とされた。


SNS上では女性特有の心理として語られることが多いが、創作における恋愛では女性キャラクターから男性キャラクターへのアプローチもごく頻繁に見られる。

このことから、「負の性欲」に基づく、創作物を用いた自己肯定感向上の機会について性別の垣根は失われるだろう。


最初期の例編集

2018年の夏、生誕の地であるブログにて語られた「負の性欲」の最初期の例には、「異性から受け取ったラブレターを友人間で共有し、物笑いの種にする」というものがあった。


この心理を説明するものとして、「性的魅力において優位な立場から圧倒する」という「負の性欲」の概念が提案される事となる。


この例は負の性欲が行為者にとって魅力的でない他者に向けられた場合の悲劇であり、ラブレターを送った者は、使い捨ての玩具として消費された形となる。


創作においては、読者の性欲は魅力的な存在・楽しい存在に向けられる事が多いため、対象は上記のような一過性の娯楽として使い捨てられるのではなく、長期に渡り活用されることが多い。


衝動としての「負の性欲」編集

当該ブログにおける最初期の例として、欲望ではなく衝動としての「負の性欲」について取り上げられていた事にも、一応触れておく。


これは「生殖相手として好ましくない異性の物理的接近から逃れたい」という、思考を介さない無意識的反射、動物としてのヒトが備える自己防衛の「衝動」である。


「衝動」としての「負の性欲」は、「欲望」として享楽を提供する「負の性欲」と比して、創作物の読者への貢献が遥かに劣るため、当記事では重く取り上げない。


創作における用法編集

「負の性欲」の効用編集

端的に言えば、「負の性欲」とは正しく活用する事で自己肯定感を高めるために役立てられる欲望である。


例えば、読者が共感可能な主人公に対し、ヒロインが深い恋愛感情を抱いているとする。

この時、主人公の側は対照的に、ヒロインからの恋情を不要としている場合、一方的に愛される主人公という存在が成立する。

こうした立ち位置の主人公に共感し、「愛するのに愛されない」ヒロインを鑑賞することで読者は強く自己肯定感を高めることが出来る。


留意したいのは、負の性欲が単なる「モテたい欲求」とは一線を画しているということである。

「モテたい欲求」はヒロインからの愛の深さを重視するのに対し、負の性欲では主人公がヒロインの愛を不要とすることをこそ最も重視している。


思いを通じ合わせる関係では満たされず、相手の愛を不要でいることで満たされる欲望が、負の性欲なのである。

それは「両想いの関係ではなく、片想いされる関係」を想定していると見ることが出来る。


※なお、1人の読者の中にヒロインに対する負の性欲とそのヒロインからモテたい欲求とが同居しているケースも往々にして有り得る。


正の性欲・負の性欲編集

従来の「性を引き寄せる」ことで享楽を得る性欲を「正(+)」としたとき、「負(-)」の性欲はあえて「性を遠ざける」ことでむしろ享楽を得る欲望となる。


大まかに言って、正の性欲のルールでは、セクシーな対象にヒートアップできるほどに悦というスコアが増すが、負の性欲のルールでは、自己を性的にクールダウンした立場に置くほどに悦というスコアが増す。


負の性欲による自己肯定感向上の仕組み編集

負の性欲によって読者が自己肯定感を高められる仕組みについて、以下に候補を挙げる。


  • 心理学における「投影」の観点
  • 嗜虐性の観点

心理学における「投影」の観点から編集

心理学には「投影」という概念があり、「自分の中の望ましくない側面」を無意識に他者に帰属させ、その上で当該他者を否定することで自己肯定感を保つ働きを指す。


有性生殖の生物であるヒトにおいては、自身の性的魅力が審美され、不要と見做されることへの恐怖がつきまとう。

この時、不安視される自身の性的魅力が「自分の中の望ましくない側面」に相当する。

ここで不安視される自身の性的魅力から目を逸らした上で、自分ではなく他者の性的魅力に欠陥を見出し、当該他者の性を不要と断じる事によって、自分は性的魅力を審美する側であると認識し、心理的負荷からの解放を得ることが出来る。


カップリングにおいては、自身の欲情が相手に歓迎されるとは思えずに、その不安が心情の核(しこり)として残ってしまう場合、「投影」は、ならばせめてフる側に回りたいという無意識の志向から発動する。


読者が抱える欲情を、ヒロインから主人公への欲情としてヒロインに帰属させ、その上でヒロインの欲情を主人公が不要と扱う。

こうすることで主人公に共感する読者は心情の核「欲情は歓迎されない」と矛盾すること無く、「惚れた方の負け、惚れられた方の勝ち」という価値観に基づく恋愛関係の勝者としての享楽を得る。この享楽が、読者の自己肯定感を高めてくれる。


正の性欲が欲情が歓迎されない不安を度外視し、セクシーな対象への欲情をストレートに迸らせる形をとること。

それは悪く言えばご都合主義的な思考の産物であり、良く言えばポジティブな性欲の姿である。


一方で、負の性欲が、欲情が歓迎されない不安を他者に投影して、情欲に燃え上がる他者と冷めた自分のコントラストを享楽する形をとること。

それは現実主義的な思考の産物であると言える。


嗜虐性の観点から編集

性欲の含む過激な側面として嗜虐性が挙げられる。

性的嗜虐性は創作ジャンル「陵辱」として成立し、被陵辱者が男性キャラであっても女性キャラであっても、根強い人気を誇っている。

※「根強い人気」はあくまで空想上のソレに関してであり、無論、現実世界における性犯罪一般の肯定を意味するものではない。


「陵辱」は「性を引き寄せる」事で享楽を得る正の性欲の、嗜虐性としての発露である。


嗜虐性が正の指向性を持って働く場合、その嗜虐対象はセクシーな魅力を備える存在として標的される。

『惚れた方の負け、惚れられた方の勝ち』の価値観における、勝者の側を嗜虐する。


これに対して、嗜虐性が負の指向性を持って働く場合、その嗜虐対象は正のそれとは反対に、『惚れた方の負け、惚れられた方の勝ち』の価値観における、敗者の側となる。

記事冒頭で挙げた「愛するのに愛されない」ヒロインの存在は、まさに敗者であり負の性欲による嗜虐性の格好の獲物である。


「(正の)陵辱」では、読者が陵辱行為者へ共感を寄せる場合において、被陵辱キャラへの精神的マウンティング体験によって自己肯定感が高まり得る。

一方、ヒロインの性的価値を否定するという言わば「負の陵辱」によっても、読者が価値否定者である主人公へ共感を寄せる場合において、同様に精神的マウンティング体験によって自己肯定感を高めることは可能である。


性欲の対象編集

以上のように、投影や性的嗜虐性の観点から、負の性欲による自己肯定感向上の仕組みを説明することが出来る。


なお、正の性欲にしても負の性欲にしても、性欲の対象は行為者にとって必ずしも魅力的存在・楽しい存在であるとは限らない点に留意したい。


性欲が魅力的存在に向けられた場合、対象との関係性が長続きすることを志向される。

記事冒頭で例に上げた「愛するのに愛されない」ヒロインは、主人公にとって性的価値は無くとも、読者にとっては魅力的存在であるため、ヒロインは主人公によって性的価値を否定はされても、関係性の致命的破局が生じたりはしない。


こうした主人公優位の付かず離れずの恋愛関係は萌え産業(ゲーム・アニメ・マンガ・ラノベ)のコンテンツにおいてはしばしば見かけられる構図であり、ヒロインたちの「愛するのに愛されない」姿は消費者を楽しませ、「負の性欲」の発散に大いに寄与してくれている。

※関連項目参照。


対して、性欲が魅力的でない存在やつまらない存在に向けられた場合、対象は使い捨ての玩具としてすぐさま捨てられる事になる。


嗜虐性を伴う「負の性欲」は創作ジャンル「陵辱」と同様に、架空の作品への発散によって、実生活への悪影響のないセルフコントロールされた状態を形作る人もいると思われる。




「負の性欲」の展望編集

2019年現在、「負の性欲」の発散用コンテンツである事を明示的に標榜する作品はほぼ存在しない。


現状では読者が作品の「負の性欲」要素に対する識別性の低い状況にある。

将来的には、適切なジャンル名として「負の性欲発散用コンテンツ」であることを示すタグが開発され、ユーザーが「これは負の性欲をテーマにした作品か否か」が容易に識別できるようになる状態が理想的である。


「カップリングにおいて、読者の共感対象キャラが読者の鑑賞対象キャラに対し、性的にクールダウンした状態にあること」を作品の肝所と自認されている創作者の諸兄姉におかれては、現状のところ、暫定的に当タグ(負の性欲)を当該作品へのタグ付けに活用頂ければ幸いである。


「負の性欲」の発散に役立てられるかも知れない関連事項編集

鑑賞対象キャラの欲情が不要として捨てられるシチュエーションが描かれがちな事物の一例


※五十音順(追記歓迎)


愛が重い 異世界おじさん 残念なイケメン 残念な美少女 残念な美人 深夜のダメ恋図鑑 難聴 不細工です代 美樹さやか やれやれ 溶岩水泳部


関連タグ編集

性欲… 従来の性欲。当記事では「正の性欲」として扱う。

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