あらすじ
11月18日
四井グループが所有する山奥の別荘で、四井会長の一人娘「麗花」の誕生日パーティが行われた。そのパーティにゲストとして呼ばれた小五郎は、会場のごちそうで満足していた。夜も更けてパーティもお開きになろうとしたその時、外に止めてあった車の内何台かが何者かにパンクされていた。他人の車に乗るのを嫌がっていた麗花は「別荘で夜を明かす」と言い出し、それにつきあう形で彼女の花婿候補達も残ることになった。コナンと蘭は小五郎の酔いを醒ますために同じく別荘に留まったが、その内に麗花が行方不明になってしまった。コナン達は手分けして彼女を探すが、そんな最中に花嫁候補の1人「二階堂優次」の溺死体を発見。孤立した別荘で各々警戒を強める中、停電の騒ぎに乗じて何故か(睡眠薬が混入されたコーヒーを飲んだ)蘭までも襲われてしまう。一連の犯行は麗花の無差別殺人と考えられたが、その彼女も風呂場で発見された…。
登場人物
- 四井麗花(よついれいか)
CV:高橋理恵子
四井グループ会長の1人娘。24歳。過去に愛犬のバブルちゃんの捜索を小五郎に解決してもらった。パーティでは清楚に振舞っていたが中身は典型的な親のスネかじりの世間知らずで苦労知らずの高飛車お嬢様。そろそろ結婚を考えており、今回のパーティに花嫁候補を数人招待して結婚相手を見定めていた。別荘に残った後で何故か行方をくらまし、アリバイが無いことから彼女を二階堂殺しの犯人と疑う人間も現れるが、翌朝に風呂場で溺死体となって発見される。遺体の状況から、しばらくどこかに監禁された後で風呂場に運ばれ、浴槽の水で無理やり溺死させられたと小五郎は推理するが…?
- 一枝隆(いちえだたかし)
CV:中野浩司
麗花の結婚相手候補の1人。都心銀行本店資金調達部に勤務する銀行員。26歳。メガネのかけた人のよさそうな男性。小五郎に会った途端にゴマをすっていたお調子者。小五郎に対しては良い印象を持っていた。愛車はポルシェ。別荘が停電になった時にコナン達と一緒にいた事と麗花の死亡推定時刻にアリバイがあったことで容疑者から外れるのだが…。後に顔がそっくりなモブが登場する。
- 二階堂優次(にかいどうゆうじ)
CV:筒井巧
麗花の結婚相手候補の1人。広告代理店営業部勤務。27歳。茶髪で少々キザなイケメン。やはり小五郎には良い印象を持っていたらしく、一枝に続きゴマをすっていた。愛車はフェラーリ。他の花嫁候補を見ながら「2年前にお嬢様の相手は決まっている…」と意味深なことを呟いていたが、直後に何者かに噴水で溺死させられる。2年前に沖でゴムボートを使って釣りをしてきた時に雷雨に遭い、たまたま同じ頃に海を漂っていた麗花と共に救助された事があるが、それと関係が…?
- 三船拓也(みふねたくや)
CV:大家仁志
麗花の結婚相手候補の1人。三船電子工業社長。26歳。色黒で長髪を後ろで束ねている、ワイルドな印象を受ける青年実業家。歯に衣着せぬ物言いで、小五郎にゴマをする一枝と二階堂に「ゴマすり野郎ども」と罵倒し、小五郎を「どーみてもさえねー中年のオッサンにしか見えねー」とバカにしていた(コナン「鋭い」)。実は麗花との結婚には興味は無く、今回のパーティに参加した理由は麗花の父の機嫌を取り自社と四井グループとの取り引きを有利にするためだったが、その理由を麗花に明かし、酔って運転できない小五郎と蘭・コナンを送るということで帰ろうとした。しかし、「帰ったら今後あなたの会社との取引は断つ」と言われてしまい、焦りを見せていた。麗花が殺害された時にはアリバイがなかったため、小五郎に疑われてしまうが…?
- 五条修(ごじょうおさむ)
CV:石母田史郎
麗花の結婚相手候補の1人。五条商事の総務課長。24歳。三船によると、東大卒らしい。小柄かつ真面目で気の弱そうな青年。勤務先の五条商事と名字が一緒だが、もしかしたら親族が経営する会社なのかもしれない。小五郎と会えるのを楽しみにしていたが、実際に会った彼が想像していた人物像とかけ離れていたためとても残念がっていた。愛車はベンツ。
- 六田将司(ろくだまさし)
CV:大友龍三郎
麗花の結婚相手候補の1人。四井物産の専務。40歳。
口ひげを生やしたダンディな人物。小五郎の不甲斐ない仕草を「相手の警戒心を解くための戦術」と解釈し、それを見抜いた麗花の事を「たいしたお方だ」だと持ち上げていた(ホントは違うけど)。麗花の父である会長からの信頼は厚く、麗花を若い取り巻きから守るために別荘に留まった。その取り巻きとは年が離れているが、麗花の花婿候補になっていた事から独身である模様。
麗花が殺害された時にはアリバイがなく、小五郎からは三船同様疑いをかけられるが…?
また、上記の6人は同じヨットクラブのメンバーで、六田が操縦するクルーザーで島を巡ったり海に潜ったりしていた。だが2年前の水難事故以来活動を休止しているらしい。
七尾米(ななおよね)
CV:鈴木れい子
四井家の家政婦。64歳。かなり小柄なおばあさんで、別荘にいたコナンたちにコーヒーなどの飲み物を用意していた。眠っている蘭を見て孫娘の事を思い出し、暗い表情を浮かべていた。
七尾八重子(ななおやえこ)
七尾米の孫娘。故人。彼女もヨットクラブのメンバーだった。2年前に小島に取り残された麗花を救助するためにボートでそこに向かうが、結局彼女に会えずに嵐で命を落としてしまう。なお、祖母共々名字は作中では直接は明かされず、「名探偵コナン全百科」及び「名探偵コナン大事典」に記されている。
【以下ネタバレ注意】
小五郎(の声をしているコナン)「そう…、最初の噴水の所で二階堂さんを溺死させ…、続いて薬で眠らせた蘭を台所に運び、溺死させようとし、そして今回、この風呂場で麗花さんをも溺死させた…、その犯人とは…
あんただよ!!!一枝さん!!」
今回の事件の犯人は、一枝隆だった。
実は、2年前の海難事故で死亡した八重子に好意を持っていた。その八重子は麗花達を助けに行く途中、嵐によって命を落としたものと思われたが、発見された彼女の遺体は、出発時には身につけていたはずの救命具をなぜかつけていなかった。それに加えて、事故の当事者である麗花と二階堂(救助された際、2人とも救命具を身に付けていた)が「八重子とは会っていない」と証言したことで、事故に疑問を持った彼は、水難事故の裏側に何かあったのではと思いこう推測した。
あの嵐の夜、小島に取り残された麗花を救助するために、八重子は彼女の分の救命具を乗せてボートでそこに向かった。無事にその小島まで着いたものの、そこで八重子はなぜか麗花と一緒にいた二階堂の姿を目撃して驚く。彼も救命具を持っていなかったが、八重子の手元には自分が身につけているものも合わせて2人分の救命具しかない。そこで麗花と二階堂が思いついたのは、八重子の救命具を奪い取って島を脱出し、自分たちだけが助かるという残酷な行為だった。それだけならまだしも、助かった後「八重子とは会っていない」とシラを切り続けて、八重子を見殺しにする。
上記の事は状況から一枝が立てた仮説だったが、被害者を手にかける前に本人に問いただした事で事実だと発覚。一枝は八重子の仇をとるために、そのまま次々と彼らを八重子と同じく水で溺死させていった。
停電については、別荘内の全ての部屋のエアコンを同じ時刻に作動するようにタイマーセットし、それと時間が重なるようにキッチンの電子レンジをセット。あとは時間が来てエアコンや電子レンジが一斉に作動すると、電力の使用量が一気に上がり、ブレーカーが落ちる、という仕掛けだった(コナンが調べた結果、エアコンのリモコンにはタイマーの時間表示が残っており、電子レンジもまだ温かかった)。
2年前とは関係ない蘭を襲った理由については、コーヒーの1つに睡眠薬を盛り、それを飲んだ人間を二階堂と同じ方法で襲い、あとで「無理矢理水に顔を押し込まれて殺されそうになった」という証言をさせることで、次に死体となって発見される麗花も同じ手口で殺されたと思わせ、下記の麗花殺害のトリックを隠す+アリバイを作るためだった。つまり、当たったのが誰であっても同じことをするつもりであり、また誰であっても最初から殺す気など全く無かったのである。要するに(世間的には)6歳のコナンや64歳の米まで標的になった可能性もあった(成人男性が眠る強さの睡眠薬を老人や子供に飲ませるのは大変危険であるため、下手をすれば遺族の米と、2年前と関係ないコナンを死なせて、無駄に自分の罪を増やすことになりかねなかったといえる)。早い話が、蘭にとっては全くの偶然による不運だったのである。あとで彼女に「水の中に無理やり頭を押し込まれた」と証言させることで、麗花殺害のトリックを隠し、容疑者から外れるアリバイを作るためであった。つまり、最初から蘭を殺す気など毛頭無かったのである。仮にコナンがすぐに駆けつけなかったとしても、いずれ生きたまま放置されていたであろう。…もっとも、それならそれで、コナンは「殺す(とどめを刺す)時間は十分あったはずなのに、なぜ犯人は蘭を殺さなかったのか」という疑問を持たれてしまう可能性はあったかもしれない。
二階堂の殺害方法はシンプルなものだったが、麗花殺害の時にあるトリックを使う事でアリバイを確保し、容疑者から外れようとした。実は麗花は殺害される数時間前、着替えを終えた直後の時点で一枝によって拉致されており、風呂場に運び込まれた後、両手足を縛られたうえでで身体を浴槽にガムテープで固定されていた。その浴槽の底に水の量を調節したシャワーを沈めておくと、時間が来れば水が溜まって麗花が溺死するという仕掛けだった。
シャワーであれば、水量を調節すれば音がほとんど出ない。麗花探しの時にばれてしまいそうな危険なトリックではあったが、コナンたちと風呂場を捜索した時に自ら浴槽を見て「いない」と言うことでその場を凌いだ(よく見ると、その時シャワーが浴槽に入っているのが確認できるが、アニメ版では正面からは死角で見えないようになっている。しかし逆に、浴槽が画面手前にありながらその中を映さないという不自然な視点になってしまっており、コナンによって暴かれる時のその時の浴槽の中が映された)。そうする事で犯行時刻のアリバイを作る事は出来たが、「麗花が姿を消してから死体となって発見されるまでになぜか何時間も空きがあること」と、「麗花の服が必要以上に濡れていたこと(首を水に突っ込まれたのならいくら暴れて抵抗したからといって、足元までずぶ濡れになるのはおかしい)」で、コナンにトリックに気づかれてしまう。さらに、水にどっぷり浸かった麗花の死体を浴槽から引き上げる際にワイシャツの両袖の途中という不自然な場所(しかも上着を脱がなければ付かない場所)に水のシミを作ってしまい、それが動かぬ証拠となりコナンに犯人だと断定される(三船や五条のワイシャツの首や手首にも水のシミはあったが、こちらは手や顔を洗う際にできる、違和感の無い場所のシミだった)。
犯行の動機を明かした後、麗花の遺体を見ながら「 フン!死んで当然だったんだよ…二階堂も…この女もな… 」と吐き捨てるが……、米は「バカ言うでねぇ!」と一喝する。麗花の手によって孫の命を奪われてしまった彼女は、「この世に死んでいい人間なんぞおりゃせんわ。お嬢様の犯した過ちを全て許す事は出来ない」と言いつつも、麗花の遺体に優しく毛布をかけ(アニメでは開き切った目を閉ざしながら)…、
「誰かが死ぬという事は、誰かが悲しむという事じゃ…そんな思いをするのは、ワシだけで十分じゃ…ワシだけでな…」
……と呟きながら、麗花の遺体を哀しげな表情で見つめていた。2年前の八重子の死を乗り越え、今回の事件で麗花が彼女の死の原因を作った事を知ってしまうが、それでも麗花を責める事なく最後まで優しく接していた芯が強かった。もしかしたら(若い世代視点では信じれない程の)今までの人生の中で様々な辛い経験をした事もあって、「復讐なんかしても更なる悲しみを生みだすだけだ」と思いそう呟いたのかもしれない。
その翌日、蘭はもうピンピンしていて、意識が薄い中、新一が助けに来てくれたような気がする事を園子に話して不思議がるも、直後に「そーんなわけないよね?あの推理オタクが!!」と言って軽く流していた。その話から正体がばれるのを恐れていたコナンだったが、「(新一が)そんな気の利いた事するわけないじゃない!!」と納得していた蘭たちを見ながら、「その辺にしとけよオメーら…」と不満がっていた(笑)。
ちなみにアニメでは話数が離れているが、原作では次の回が新一が再登場する『外交官殺人事件』の為、これはそのフラグだったのかもしれない。
余談・考察
二階堂と麗花が助かった時に「八重子と会った」と正直に言っておけば彼女も助かったかもしれないのに、なぜかそう証言する事はなかった。二階堂が麗花と一緒の小島にいた理由は作中では明かされていなかったが、もしかしたら二階堂は2年前から麗花と付き合っており、事故当日も釣りに行くと嘘をついて密かに彼女と会っていたのかもしれない。その事が八重子の口からばれるのを恐れて彼女を見捨てたとも考えられるが、それが事実だとしたらやはり褒められる要素のないカップルだと言える。あるいは、もっと単純に、もし彼女が助かってしまったら、自分達の行為を告発されてしまうから、だったのかもしれない。さらに言えば、前述にあるとおり三船がパーティに参加した理由を話した際「今後あなたの会社との取引は断つ」と言い放ち、「自分にとってあなたたちはかごの中の鳥も同然、私がいなければ生きることもできない」といったようなことを平然と言うなど、救命具を奪わなければ危険な状況だったとはいえ、自分を助けようとした人間を死なせたことを全く反省していなかったようである。二階堂も「2年前にお嬢様の相手は決まっている…」とつぶやくなどその事を利用しようと考えていたのだから同じようなものである。彼らが八重子から救命具を奪った時の正確な状況が不明で、当然二人の他に目撃者もいたとは思われないので、たとえ起訴しても証拠不十分で無罪になった可能性が高い。警察としても、救命具で漂流して命からがら助かった二人に殺人の疑いをかけて踏み込んで捜査しようとすれば、よほどの証拠が必要だろう。一枝自身、犯行前には二階堂を直に問い詰めて吐かせているが、これも一枝側で十分な証拠が用意できなかった故のことだろう。あるいは、一枝自身どこかで二階堂と麗花を信じたいという気持ちも残っていたのかも知れない。だが、仮に二階堂が吐いたところで裁判で有罪に持ち込むなどできるはずもないので、殺害を思いとどまることもできなかったのだと思われる(例え録音していても、その証言だけで有罪にするのは非常に困難。事件から2年の年月も経っており、裏付け証拠も警察の保管記録以外残っていない可能性が高い)。
尚、『コナン』に登場する令嬢の多くは鈴木園子や大岡紅葉のように主要なキャラクターを除いた場合、どういうわけか素行や性格に難のある人物ばかりであり、今回の麗花はその元祖といえる人物となった。
三船は小五郎を馬鹿にし、五条は見た目だけで小五郎を低評価しており、その小五郎(コナン)が見事に事件を解決してしまったため、ものを見る目がないと言われても仕方のない人になってしまった。もっとも五条は会う前は好感を持っていたし、三船も言っていること自体は正しいのだが…。三船は別の事件で再登場しており、相変わらず歯に衣着せぬ物言いをしていたが、推理ショーで見直したのか小五郎の意見を素直に聞いていた。なお、三船は「これ以上殺人鬼と一緒にいられるか‼︎」と言って一人きりになるという死亡フラグを立てているが、ターゲットではなかったため普通に生き残った。ちなみに、五条のワイシャツの袖口には手を洗った時の水のシミ、三船の襟元には顔を洗った時の水のシミが付いていた。
六田の「小五郎の不甲斐ない仕草は相手の警戒心を解くための戦術」と解釈したこと自体は違ったものの、三船や五条とは違い見た目だけで小五郎を低評価することはなかった。その後小五郎が見事に事件を解決したので、三船や五条と違い人を見る目があった人ということになった。米を除く容疑者の中では唯一ワイシャツに水のシミがついていなかった。
今回の事件で初めて小五郎が借りたレンタカーが被害にあった最初の事件である。
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リョナ 水責め:この事件を見て目覚めた方がいるとかいないとか。pixivではこのシチュエーションのイラストが投稿されている
剣持警部の殺人:「金田一少年の事件簿」に登場した事件の一つ。この事件使われたものと似たような溺死トリックが登場した。また、動機が偶然にも殺された女性の復讐とこの件と同じだったりする。