概要
1970年代から1990年代までの鳥山明の執筆した作品を収録した短編集。内容は全てギャグ漫画であり、デビュー作の『ワンダー・アイランド』から、『Dr.スランプ』、『ドラゴンボール』へと続く作風の変遷をたどることができる。
2022年現在、全3巻までが発行されているが、発行の間隔が非常に長く、『VOL.1』から『VOL.3』が発表されるまでに14年近くかかっている。鳥山によれば、読み切りの作品数はそれなりに描いてはいるものの、1話あたりのページ数が少ないため、中々1冊分がたまらなかったからであることが『VOL.2』表紙そでに記されている。
「○作」というタイトルの意味については、『VOL.1』表紙そでによると、「佳」や「駄」や「傑」(この文字だけ非常に小さく書かれている)など、読者に自由に考えてもらって○に文字を当てはめてほしいという思いが込められている。
背景
デビューして間もない頃の1978年から1979年までの間、鳥山は作品の人気が思うように好評を得られず、苦労していたという。それ以前の『アワワワールド』、『謎のレインジャック』といった応募作品(いずれも単行本未収録)を目にした初代担当編集の鳥嶋和彦のもとで修行し、原稿執筆に勤しむも、ことごとくボツにされ、紙面に載ったものはほんの数作品だけだった。『アストロ球団』、『ドーべルマン刑事』の担当編集だった後藤広喜は自著『「少年ジャンプ」黄金のキセキ』にて、この時期の作品は明確な主人公が存在しない故に、読者が世界観に入り込みにくかったため、人気が出なかったと指摘している。
そんなある日、鳥嶋から「女の子を主人公にした作品」を描くように指示されて発表した作品『ギャル刑事トマト』が中々の評判を呼び、直後に同じく女の子の則巻アラレを主人公に据えたギャグ漫画『Dr.スランプ』が空前の大ヒットを記録する。この成功によって鳥山の漫画家人生は大きく変革することになる。
このように、本作には鳥山作品の出発点とも言える作品が数多く収録されている。自身の飛躍のきっかけとなった『ギャル刑事トマト』の他に、鳥嶋からカンフー映画をモチーフにしたらどうかというアドバイスを受けて描いた『騎竜少年』は、カンフー要素の色濃い『ドラゴンボール』の初期に反映されている他、主人公孫悟空のキャラクター造形にも影響を与えている。さらに、鳥山の得意とするメカ描写がふんだんに盛り込まれたSF漫画『トンプー大冒険』に登場する設定の数々もまた、『ドラゴンボール』で垣間見ることができる。短編に登場するキャラクターがそのまま別作品に受け継がれた例も多い。
本作は鳥山明と鳥嶋和彦のタッグとその功績を物語る上で、ある意味とても重要な位置付けとなる漫画短編集であると言えるのかもしれない。
シリーズ
鳥山明○作劇場「改」
2003年から2004年にかけて発刊されたコンビニコミック。表紙と収録作品はオリジナルと異なる。その最も大きな差違は、『VOL.3』より後に発表された『ネコマジン』が先行収録されていること。タイトルの「改」は、「あらため」と読む。
鳥山明○作劇場「改」其の壱
鳥山明○作劇場「改」其の弐
鳥山明○作劇場「改」其の参
鳥山明満漢全席
『VOL.3』までの作品を2冊に再構成した文庫版。2008年出版。今作では新たに『LADY RED』、『宇宙人ぺケ』の2作品の他、鳥山のインタビューも収録されている。
鳥山明満漢全席 壹
鳥山明満漢全席 貮