300SLは、西ドイツのダイムラー・ベンツ(Daimler-Benz AG)が1954年に発表したスペシャリティ スポーツカー。
概要
年配の方には「石原裕次郎が乗っていたベンツ」と言えば通じる…かもしれない。
最初のモデルは、2人乗りでロングノーズショートデッキの典型的なスポーツクーペだが、左右のドアが上に跳ね上がるガルウィングドアが有名である。
300SLは、1952年にル・マン24時間耐久レースなどのスポーツカーレースに参戦する為に開発された『W194』をベースに市販車向けとして再設計されたものだが、多くの部分でベースモデルの特色を受け継いだマシンとなった。
ガルウィングドア
これは、ランボルギーニ カウンタックやデロリアン DMC-12のようにデザインありきで開発されたからでは無く、元々がレースカーとして開発されたからである。当然、乗降のし易さよりも性能が優先されるため、ドアの位置を重要視せずに設計された結果、シャーシは細いパイプで籠を作るように組まれ、運転席の辺りはボディパネルを貼り付けるとバスタブのようになってしまい通常の横開きのドアを付けられなくなった。そこで通常の車のサイドウィンドウに当たる位置から屋根の一部までをドアとして開閉できるようにした結果、上開きのガルウィングドアが採用されたのである。
とはいえ、窓ガラスを動かすスペースが無いため窓を開けることも出来ず、重たいクラッチ・ペダルなども相まって夏の運転はたいへん難儀なものであったそうである。
サイドシル(乗降口の下部 いわゆる敷居である)の高さはシートの肘掛けとほぼ同じ高さで、なおかつ厚みがちょっとした椅子程もあるため乗り降りに難渋することは想像に難くなく、特に和服やら丈の長いドレスで着飾ったり 或いはハイヒールを履いた御婦人方や、脚腰が弱った高齢者などには些か酷であった。
1957年には、オープントップボディ(ロードスター)へ切り替えられて、ガルウィングドアのクーペは生産が終了。
ドアの開き方も通常のものへと改められたが、サイドシルの高さこそ下がったものの厚さは相変わらずだったそうである。
このガルウィングドアは2009年に登場したSLS AMGに受け継がれた。
エンジン
エンジンは2996ccの直列6気筒 SOHCだったが、機械式のインジェクターが搭載された。
最大出力は215PSで、クーペモデルで260km/h、ロードスターで225km/hを誇った。
元々はタイプ300(W186)リムジン 現在のSクラスに当たるモデルに搭載されていたもので、背の高い直列エンジンを低いボンネットに収めるために傾けて(ねじ込むように)搭載されている。
ロードスター
既に述べたが、1957年にロードスターモデルに切り替えられた。
同時のドア以外にも、ボディラインに修正が加えられ、ライトが「縦目」風のデザインになるなどいくつかの改良が加えられている。
オプションにハードトップが存在した。
1963年に生産が終了。
生産数はクーペが1,400台、ロードスターが1,858台であった。