AMG
えいえむじー
1967年、レース用自動車エンジンの設計・試行会社として創業。創立者のハンス・ヴェルナー・アウフレヒト(Hans Werner Aufrecht)、エンジニアのエバハルト・メルヒャー(Erhard Melcher)、アウフレヒトの故郷であるグロース・アスパッハ(Großaspach)の頭文字を取ってAMGとした。
その後ブラバスやロリンザーなどと同様に、アフターマーケットにおいて主にメルセデス・ベンツの乗用車のチューニングを手掛けるようになった。1980年代半ばからは公式にメルセデス・ベンツへのパーツ供給が始まり、1993年には初の共同開発車C36を発売、1999年にはメルセデス・ベンツの一部門となった。現在はBMWのMモデルやアウディのS(RS)シリーズ同様、高性能エンジンを搭載したモデルを担当している他、スポーティーな付加価値の付いたパーツに冠されるブランドとなっている。
AMG仕様の開発は、ダイムラー側が新車開発する初期の段階でAMG側に車両情報を送るところからスタートする。そのためメルセデスの新車公開とほぼ同時にAMG仕様を公開することができる。 最近ではAMGモデル以外にも通常モデルのオプションとしてAMGのアルミホイールやエアロパーツが販売されている。日本仕様のメルセデスには「AMGスポーツパッケージ」等のオプションパッケージがあり、AMGモデルを購入しなくともスポーティーなエクステリアに仕上げることができるようになっている。
1980年代後半には三菱自動車のギャランやデボネアのチューニング(ギャランAMG、デボネアAMG)を担当したことがある。
独立企業時代からモータースポーツに関わっており、現在はドイツツーリングカー選手権(DTM)での活躍がみられる。1996年からは、F1のセーフティーカーおよびメディカルカーを担当しており、2010年からは「メルセデスAMG・F1チーム」として自らも参戦している(後述)。
当時AMGの輸入元だったAMGジャパン(ヤナセの子会社)が取り扱っていた頃は、モデル名の前にAMGの名前が入っていた(例;AMG C63)が、2000年10月にダイムラー・クライスラー日本(現メルセデス・ベンツ日本)に輸入権を譲渡されて以降は、モデル名の後にAMGを付け加える形に移行した(例 - C63 AMG)。2015年3月にAMG GTの導入を機に現在の表記に変更された(例 - メルセデスAMG C63)。
かつてのAMG仕様車は威圧感があるスタイリングだったが、ダイムラー・ベンツの傘下に入ってからは落ち着いたスタイリングとなっている。外観上の違いは、各モデル専用のアルミホイールやエアロパーツが装着され、リアエンド右上にAMGのエンブレムが付くほか、リアエンド左上には数字2桁のエンブレムが付く(C55、S65など)。モデル名に関しては、1990年代前半まではベース車両のグレードの後ろに、実排気量やAMGにおけるグレードを併記するという方法が取られていた(例 400E S3、300E 3.2 SR、S500C-6.0など)が、1993年にダイムラー・ベンツとの共同開発車、C36が発売されて以降は、前述の数字2桁の表記方法に順次移行し、具体的なベースグレードの概念は現在はなくなっている。ただし、W202のC280 AMGやR170のSLK230 AMGは例外的に3桁の表示を採用しているが、これは、これらのモデルのエンジンに、AMGの手が加えられていないことによるものである。
また、外観をAMG仕様にした後にノーマルのエンブレムをAMGのエンブレムに付け替える衒示行為(E350→E55など)が日本においてまま見られる。これはエンブレム・チューンと呼ばれている。この場合、リアガラス左下に張られるAMG車であることを示す銀色のステッカー(複製防止のため、再使用不可のステッカーとなっている)が貼られていないので、注意深く観察すれば外観から判別できる。同様に、エクステリアはノーマルのままAMGのエンブレムのみ付け足す例も見られ、この場合はメルセデスオーナーはもとより、ある程度車に詳しい人が見ればノーマルのメルセデスであることは一目瞭然であるのは言うまでもない。しかし、奥様向けの雑誌であるVERYなどのコラムでこれらの行為が紹介されており、かなりの台数のエンブレムチューン済メルセデスが存在する。
専用パーツとして強化ブレーキシステムや専用のスポーツサスペンション、チューンされたエンジン、4本マフラーが搭載される。加えて、一部の日本販売モデルにはAMGモデルをさらにチューンした「パフォーマンスパッケージ」が用意されている。
内装やシートにも通常モデルと比べて高級な素材を使用することが多く、質感も向上している。AMGのロゴが入ったスピードメーターは300km/h以上刻まれているが、実際には一般の欧州車同様250km/hでスピードリミッターがかかる。ドイツ本国では有償オプション扱いでリミッターを外すことも可能だが、その場合は使用するタイヤを始めとして、コンディションを厳格に維持することが求められる。
現在日本で販売されている車種は下の通りである。欧州にはこれ以外のバージョンやディーゼルエンジン搭載のモデルも存在する。現在では、主力は「63系」のエンジンであり、AMGモデルのほとんどを占めている。 基本的に同じ「系」に属す車種には同じエンジンが搭載されているが、過給器の有無や出力の違いがある。
日本国内においては、左ハンドル仕様のみとした設定が長らく続けられてきており、現在もE63ステーションワゴン・S63 4MATIC・GLS63・S65・CL63・CL65・SL65・SL63は左ハンドル仕様のみであるが、最近ではAMG GT・C63(セダン&クーペ)・G63・E63セダン・CLS45 4MATIC+では左右の選択が可能になり、逆にC63ステーションワゴン・S63・A45・CLA45S 4MATIC+クーペ・CLA45S 4MATIC+シューティングブレイク・GLA45・GLC43 4MATIC・GLC63 4MATIC+・GLC63S 4MATIC+・GLE63では右ハンドル仕様のみにされたりとラインアップの構成に変化が生じている。
F1のメルセデス・AMGは2014年のハイブリッド規定導入以降、2021年に至るまでフェラーリやレッドブルなどの他チームをコケにするレベルで強さを誇り、コンストラクターズ選手権(チーム部門)8連覇を達成している。しかしドライバーズ選手権は8連覇を目前にして、最終戦・アブダビGPの最後の一周の勝負でレッドブルのマックス・フェルスタッペンに奪取されてしまった(この辺りはF1jpに詳しい)。
ちなみに、現在のメルセデスF1の前身(の前身)はあの第三期ホンダF1である。そして2021年のレッドブルは第四期ホンダのパワーユニットを積んでおり、結果的にではあるがホンダF1第三期活動の名残であるチームを第四期のホンダが打ち倒すという数奇な展開となった。
2022年はレッドブルはこの年から施行された新規定に上手く対応して速さを維持し、フェラーリも優勝を争える速さを手にしたのに対し、メルセデスAMGは新規定によって生じたマシンの振動(ポーパシング)に起因するドライバビリティ低下という問題が発生。それでも、レースによっては表彰台を獲得することができる速さはあるものの、マシンとしての速さはその2チームに及ばず、これによって開幕戦からしばらくの間、優勝争いから脱落している状況であった。シーズン前半はレッドブルに追いつくことができず、後半でいくらか持ち直したものの結局はレッドブルやフェラーリに差をつけられ、チャンピオン奪還は成し遂げられなかった。
また、2022年~2023年前半までは、サイドポンツーンが横方向にほとんど張り出していない、見ようによってはサイドポンツーンが無いようにも見える「ゼロポッド」と呼ばれるマシンを使用していた。フロントタイヤが発生させる乱流をサイドポンツーンに当てないことで、リア周りの空気の流れを整えたいという考えから生み出されたものであるが、結局速さに繋げることが出来ず、通常のサイドポンツーンに戻したシーズン中盤からの方が安定した成績を残すという皮肉な結果になった。
この圧倒的な強さから技術のフィードバックを受けて開発された、3億円のハイパーカーである「ONE」も275台限定で生産・完売している。
メルセデス・ベンツは公式にはエイ・エム・ジーとそのままの英語読みを推奨しているが、特に年齢層の高い自動車マニアの間ではしばしばアー・マー・ゲーと呼称されることがある。
とある自動車漫画にAMG車が登場した際の読みに由来すると言われているが、仮にドイツ語読みでもMはマーではなく英語と同じくエムと読むため、アー・エム・ゲーであり正確には誤り。
劇場版 仮面ライダードライブ サプライズ・フューチャー:仮面ライダーダークドライブの専用マシン「ネクストライドロン」のベース車両として、メルセデスAMG GTが採用されている。
アミューズメントメディア総合学院:略称が『AMG』