概要
アメリカのゲームメーカー「ミッドウェイゲームズ」が製作したホラーガンシューティングゲーム。
(多分あまりにもグロすぎるせいで)日本向けに発売しておらずローカライズもされていない上にタイトルは造語であるため「カーンネビル」「カーネビル」と人によって呼び方がまちまち。ここでは便宜上カーンエビルと表記する。
レトロゲーの部類に入るがその狂気的世界観と演出により海外ではカルト的人気を誇る。
1998年のハロウィンに合わせて発売されているため、子供たちはお菓子の代わりにカーンエビルのプレイ代をせびっていたかもしれない。
ストーリー
アイオワ州にある「Greely Valley」という町の墓場にある一つの墓標。そこに金色のトークンをはめこむと、狂気の研究者「Ludwig von Tökkentäkker(以下:トッケンカッター)」が主催するアンデッド・カーニバルが始まるという都市伝説がある。
ある時主人公がこの墓場にやって来ると、都市伝説の通り黄金のコインがトッケンカッターの墓場に置いてあるのを見つけ、興味本位でそのコインをゲーム筐体に入れるかのようにはめ込んでしまう。
その瞬間、怪物・魔物・幽霊たちの血沸き肉躍る饗宴、生きてるものには地獄、死んだ者には天国な魔界の遊園地CARN EVILが始まってしまった。
主人公は近くに置かれていたショットガンを手に、ジェスターピエトロ(ウムラウト)に導かれるままカーンエビルからの脱出を目指してアトラクションの攻略を開始するのだった…
キャラクター
プレイヤー側
- 主人公。
金色のトークンを墓標にはめ込んでしまい、カーンエビルに巻き込まれたティーンエイジャー。ご丁寧にも近くの屋台に置いてあったショットガンを手にしてカーンエビルを終わらせ、現実世界への脱出を試みるのだが…
- Betty
ベティ。同じカーンエビルに巻き込まれた一般女性。画面上何度もヘルプヘルプと言って出て来て場を賑わすが彼女を撃つとライフが減る。要はおーのー枠。
銃を持たず行く先々でアンデッドに食われたり蜘蛛に連れ去られたりしているが次の瞬間にはケロっとまた現れる危機回避能力とタフネスの持ち主。
ステージによってはエネミーをアイアンメイデンに閉じ込めるなどの活躍もする憎めない奴。
本編では一貫してロクな目に遭わないため主人公について回り、カーンエビルからの脱出を待ち望んでいるのだが…
- UMLAUT
ウムラウト。ステージに入る度にどんな施設で相手が何をしてくるのかを紹介してくれる生首ピエロ。最終ステージではラスボスの前哨戦として登場する。(が強さは微妙)
実はトッケンカッターの墓標に刻まれているレリーフは彼の形を模している。
ボスエネミー
- Evil Mary
ステージセレクト画面では一番左にある「Haunted House」のボス。全く嬉しくない乳揺れとパンチラを見せつけながら斧を振り回して襲い掛かって来る。
コイツ、無茶苦茶すぎるほどに強い。
何ってほとんど怯まない。
とにかく連打ゲーになるのだが怯む場面が恐ろしく少ないため攻撃が避けれない、それでいてライフが多い為次フェーズに行く前に一回以上は絶対に殴られる。
更に最後の攻撃は必中のため、このボス戦一回でコンティニューすることにほとんどのプレイヤーがなる。
筐体を購入し、連射パッドを繋げたズルでも行わない限りノーダメは不可能。絶対に無傷で勝てないボス。
死ぬと噴水を赤く染め上げて連なる川も真っ赤になる。グロい。
- KRAMPUS
名前のクランプスとは北欧に存在するブラックサンタとなまはげが悪魔合体したような妖精軍団。そんなクランプスが本作では「Rickety Town」のボスエネミー。悪魔がサンタの恰好をして襲い掛かって来るわかりやすいデザイン。
部位破壊機能があり、腹を撃つと腹が血まみれに、四肢を撃つと四肢が骨になっていく。攻撃キャンセルのチャンスはここにしかなく、もたもたしてると爪で三枚おろしにされるか袋で文字通りの袋叩きにされて死ぬ。仮にここでキャンセルできてもステージ移動すると確定で怯みなしの3段階攻撃や袋攻撃をしてくるためこいつも連射パッドなしのノーダメージは不可能。
倒すと全ての終わりを告げるように雪が降り始める。とんだホワイトクリスマスである。
- Junior
「 Freak Show」に登場するエスパー赤ちゃん。とだけ書くとなんか良心の痛みそうなボスだが、頭が妙に盛り上がり、斜視で焦点が合わさっていないという奇形児。しかもクソデカい。
今こんな敵を出したら速攻で人権団体に襲撃されてもおかしくないようなボス。3ボスの中ではぶっちぎりの最弱。巨大な赤ちゃんから逃げながら戦うのは申し訳ないがスリルと爽快感があり、最終的には寝そべっていたベッドの電気に感電して炭化する。死に方が一番エグい。
流石に怒られたのかオリジナルverじゃない機台の場合はこいつからDEADDYという熊に変更されている。強さは変わらない。
- Tökkentäkker
トッケンカッター。全ての元凶。カーンエビルを産み出したマッドサイエンティスト(オカルティスト?)であり、最終ステージで主人公の前に立ちはだかる。ドクロの装飾があしらわれた軍服を着て、ライフル型のラッパ銃を使って主人公を何度も撃ち抜く強キャラ。ただ威力が低すぎるため先に出てきた2体のボスの方が強い
コイツを倒せば晴れてカーンエビルから解放されるわけだが・・・?
難易度
海外のガンシュー界隈では非常に評価の高いカーンエビルだが、高難易度ゲーとしても有名…というかアレは高難易度と言っていい代物ではなく、ただひたすらに理不尽。
時代が時代ならクソゲー呼ばわりも仕方ない理不尽さで埋め尽くされており、下手をすればあのダークエスケープ3dの方がマシなレベルの鬼畜難易度である。
まず昔ながらのハンドガン形式で撃つゲームで敵の耐久値もだいたい2,3発当てれば倒れる程度と雑魚敵そのものはダークエスケープの様な凶悪性能をしていないのだが、とにかく初見殺しが多く、酷いものでは画面が切り替わった瞬間攻撃モーションに入って来るというニュータイプでもないと回避不可能な攻撃が満載。実質オペレーションゴースト。
そもそも遠くから接近してくるタイプの敵のほとんどが「プレイヤーの前で立ち止まって様子を見てからから攻撃」にならず、プレイヤーのもとに到着したら即攻撃に移る容赦の無さ。更に被弾による無敵時間が無いのでタイミングが最悪だとデスクリムゾンのように畳みかけられる恐怖も。
しかし本ゲームは体力が3ライフ制ではなくゲージ制であるためランクの程度と敵の攻撃力によって受けるダメージに大幅なムラがある上、ゲーム中に回復アイテムや火力の高いパワーアップアイテムがあったりと救済措置がそれなりに散りばめられているので、ガンシューターならば滅多なことが無ければ序盤のステージでボスにまで行けないということはない。それはそれとしてダメージは結構食らうが。
しかしボスに辿り着くと一変。プレイヤーは屍の山を築くことになる。
本ゲーム一番の理不尽ポイントはほぼ全てのボスの攻撃キャンセルが実質不可能という点にある。要は早く倒せなければその分殴られてゲームオーバー。
HODをはじめとして昨今のゲームは「敵の弱点を撃てば攻撃キャンセルができる」という仕様であり、わかりやすい弱点を事前に教えてくれたり、弱点の解り辛い敵でも戦闘開始前や敵の攻撃フェイズ時に「どこを狙えばいいのか」というヒットマークが出現する。あのダークエスケープでも出現する。
しかしカーンエビルでは出現しない。とりあえず敵に弾を当てれば敵のライフは減るが攻撃の手は一切緩まない。一部の敵では部位破壊による怯みが存在するが、HOD1のチャリオットのように部位破壊が起きた後の部位に集中攻撃をかけても怯まなくなる、あるいは部位破壊が通用しなくなる局面が唐突に現れたり、結局一定HPを減らさないと敵の攻撃が次フェイスにいかないと問題点が多く、特にホーンテッドハウスに出現する「イビルマリー」は最終フェーズの攻撃は必中という凶悪さを誇る。直前にどれだけライフを減らそうが最後っ屁を絶対に食らう。それ以前にイビルマリーは他ボスと違って部位破壊ができないため通常攻撃が殆どキャンセル不可になる。最初のコンティニューポイントはだいたいここ。
早い話がどのボスも「どちらが先に死ぬか」のデスレースであり、道端に落ちている強化武器等を温存しつついかに早くボスに全火力を叩きこんで倒すということも普通に道中の敵が強いので不可能。そんな戦いが4回続く。
またこれは道中に出現する中ボスでも同様で、とにかく出てきた敵は速く始末しないとたいてい押し切られて負ける。同じくホーンテッドハウスに登場する中ボスのHamboneは部位破壊による攻撃キャンセルこそ可能なものの少しでも隙を与えるとガトリングの乱射で一気にライフを削っていく。というか敵の硬さとキャンセルしてから攻撃までの時間が短すぎるのでどれだけ頑張っても絶対一発以上は食らうようになっている。そんなのが4回以上続く。
特に最後のラスボス戦では一発でも当てれば攻撃がキャンセルできる代わりに攻撃が異常なほど早く、画面が切り替わった瞬間ラスボスが攻撃を加えて来るので絶対に早撃ちで競り勝つことができない。加えて雑魚敵が大量に表れては速攻で攻撃を加えてくるため雑魚の攻撃で倒される事も多い。
このように良く言えば大味、悪く言えば理不尽な調整の集大成となっており、まともにやろうものなら大量のお金と既プレイでシューティングの上手な友人がいなければまずまともにクリアは不可能である。
しかし、昔のガンシューティングゲーでは「一人プレイ時1コインクリアが理論的に不可能」と言われるレールチェイスや終盤の理不尽弾幕が有名なビーストバスターズ等の世紀末じみた難易度のゲームは多く、現在でも海外産ガンシューティングはこぞって理不尽に片足を突っ込んだ高難易度なものばかりであるため、カーンエビルが歴代特別酷い難易度というわけでもない。
かといって悪名高いゲームと比肩できる程の難易度である事に変わりは無いがそんな酷い難易度を覆すレベルの魅力を持っているのがカーンエビルというゲームである。
評価点
何よりグロい。まだグロ・ゴア表現の緩い時代のゲームだったとしても抜群にグロい。初代HODのようなゴア描写が可愛く見えるほどに敵が欠損するし臓物が飛び散るしステージから敵から何もかもが血まみれで死屍累々。
モータルコンバットを一時期作っていた会社と言えば納得のゴア表現である。そんなものを楽しめる。しかも年齢制限もなくゲーセンでお金を入れればやれるのである。ママパパが怒らなければ。
銃撃による欠損もだがパワーアップアイテムに硫酸や火炎放射器があり、それを使うと敵が溶けたり黒焦げになるとやられる表現も細かい。
また、ホラー全振りの遊園地といったような世界観であるため、敵の造詣がふざけているかのようにポップだったり、かと思えばサイレントヒルの異形と見紛うほどにグロい生命体が現れたりすると敵のバラエティも豊かである。更に、今やろうものなら人権団体で殴りこまれてもおかしくないだろう「奇形児のボス(ジュニア)」が存在する。このように倫理感から何から何までブチ捨てた猟奇趣味の完全娯楽化、その完成形。
それがカーンエビルである。
そしてこの世界観はストーリーにもあるようにアンデッドの遊園地。カーニバルであるため、とにかくお祭り騒ぎなのである。雰囲気と世界観はひたすら陰鬱で狂気的でグロすぎるながらもその話そのものは終始ウムラウトの怖さを煽る案内から明るい雰囲気で進み、プレイヤーの内面描写等がほとんどないからストーリーにかかるストレスも無い。そうして刺激だらけのお祭りの中で撃ち続けているうちにこの狂気の世界に魅せられてしまう人も多い。それこそ、ゲームの主人公のように…
その人気は確かであり、実際海外ではカーンエビルのファンサイトが立つほどである。
その練り込まれた狂気の世界観、残虐極まりない演出と描写は後発のゲームにも少なからず影響を与えており、DOOM的な世界観を持つPainkillerの拡張DLCやKilling floor、ゴア描写に力の入ったホラゲーで有名なuntil dawnの会社が作ったVRガンシューであるRush of bloodは本作の影響を多分に受けているとされている。
関連タグ
ミッドウェイゲームズ ガンシューティング ホラゲー グロゲー
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