概要
正式名は"Getting Over It with Bennett Foddy"。日本語対応しているが、若干翻訳文が怪しい。
日本では「壺のオッサンのやつ」ほか、壺のおじさん、壺おじ、壺男などの愛称で呼ばれる。
ちなみに公式の日本語翻訳では、男が入っているのは「大釜」と書かれているが、原文の英語は「pot」であり「壺」と呼ぶのも間違いではない。
SteamストアのPVや説明を見ると分かるが、このゲームは作者が「これは悪みを考えて作ったゲームです。」だとか、「特定の人に向けて誕生したゲーム。特定の人を傷つけるために。」だとか言っている通り、あえて辛く感じるように作られた挑戦的なゲームである。
なぜこのようなゲームを作ったのかは、ゲームを進めると作者本人が語ってくれる。
説明に「実力に応じて、2時間~最大で無限に続く苦痛の時間」と書かれており、つまりクリアまで無限の時間=クリアできないことも想定されており、実際クリアできていない人のほうが圧倒的に多い、非常に難しく作られたゲームである。
なお、初見でプレイする場合と、プレイ動画などを見たうえでプレイする場合とでゲームに対する感じ方が大きく異なってしまうゲームである。まっさらな気持ちで楽しみたい人はプレイ動画はもちろん、こうした説明も見ずに前情報無しでプレイすることを推奨する。
そして存分に苦しむと良い
ストーリー
ゲーム自体はただ山を登って山頂を目指すゲームである。
しかしゲームの中の世界観はほとんど語られることはなく、プレイヤーが操作するその男がなぜ壺に入っているのか、なぜハンマー一本で山を登っているのか、一体この山はなんなのかと言った設定は作中では一切明らかにならない。全くの謎である。
(登っていくともはや山であるかどうかさえ怪しくなっていき、最後には山ですらなくなるが、それらの設定については全く語られない。)
かろうじてゲーム中のストーリーと呼べるものは、ゲームを進めることで聞くことのできる作者本人によるナレーション音声である。最初はゲームをプレイする上での気構えについて、このゲームのオマージュ元について、"登る系"ゲームについて…、このゲームがなぜ作られたのかを語ってくれる。中盤にはゲームやネットの文化について、終盤にはゲームをプレイするプレイヤーへと哲学的な問いかけをしてくる。
ちなみに終盤になってようやく男のことが「ディオゲネス」と呼ばれ男の名前が分かる。(この名前「ディオゲネス」はギリシャ語の一般的な男性名だが、恐らく元となったのは「樽のディオゲネス」とも呼ばれる哲学者だと思われる。ゲーム途中(家具で囲まれた通路の所)の背景に樽のディオゲネスの絵画が置かれているため。)
ゲームシステム
ゲームは至ってシンプルであり「カーソルを動かしてハンマーを操作し、ハンマーを引っかけながら山を登っていく」だけである。あとはオプションを開くためのESCキーを使うくらいで、ゲーム中はほぼマウスだけで、キーボードどころかマウスのクリックすら使わない。
体力や残機といった概念も無ければアイテムといったシステムも無く、ただひたすらハンマーを振り回すだけで山を登っていくことになる。特殊な操作性については後述。
またこのゲームにはセーブポイントやチェックポイント、あるいは途中セーブのロードなんてシステムも存在しない。プレイヤーは「以前登った場所から再開する」といったことはできず、落ちてしまうと再び同じ場所まで自力で登らなければならない仕様となっている。
しかも特殊な操作性に巧妙なステージの構成も相まって、とても簡単に落ちる。特に安易にハンマーを振り回せば余計なところに引っかかり、あるいは余計なところを突いてしまい、簡単に山から滑落してしまう。ほんの少しの気のゆるみが操作を誤らせ、それまで登ってきた成果をあっさりと、無慈悲に瓦解させる。
時にはスタート地点にまで戻されることすらあり、そしてそこからまた登り直さなければならない。
そうして幾度となく登り、数えきれないほど落ちて、登って落ちてを繰り返していくのがこのゲームの基本的な流れである。
ちなみに(ストーリーナレーションが無い時に)大きく落ちたりもたもたと同じところをプレイしていると、ナレーションが声をかけてくれたり音楽を流してくれる。…のだが大抵のプレイヤーはそれらを素直に受け取る余裕が無いため「酷く煽られている」と感じてしまいイラッとさせられる、と言うよりイラッと感じるように設計されているのだろう。
ちなみに低難易度や救済措置と言ったものも存在しない。クリアするためにはプレイヤー自身が成長するしかない。
特殊な操作性
このゲームは非常に操作が特殊である。
初めてプレイする人はたいていその操作性の劣悪さに絶望し、それでもなお進もうとしても操作を当然のように誤り落ちてしまうため最初の木を越えることすら簡単ではない。「操作性が悪すぎて投げた」という人も珍しくなく「このゲームの難しさの大半は操作性によるもの」とさえ言われるほど。
「ハンマーはカーソルを追いかけるように少し遅れて動くこと」だとか「ハンマーを動かす方向と体の動く方向はほぼ正反対である」だとか、他にも細かい仕様がありカーソルの挙動がとても特殊で直感に反する動きをしてしまうことも多く、こうした仕様に慣れないことにはゲームが始まってすらいないと言っても過言ではない。
ただし実際には「操作性が劣悪」と言うよりも「操作性が非常に特殊」なだけで、その操作性に慣れてしまえばあまり苦も無くかなり自在に動かすことができるようになっていく。慣れるまでは地獄のような操作性に苦しめられるが、慣れてしまえば大きな問題にはなりにくくなる。
また「特殊な操作に慣れなければいけない」関係上、プレイ動画や攻略情報などで予習していたとしても初めてプレイしてクリアまで辿り着くにはとても苦労することになる。
操作に慣れてからがこのゲームの本番である。
ゲームの攻略
意図的に辛く感じるように作られたゲームであり決して簡単に、偶然クリアできるようにはできていない。特に「考えなしにハンマーを振り回して登ろうとする」と全く登れないどころか簡単に大きく滑落するようにできている。
またもし例えハンマーを振り回して運良く偶然登れたとしても、上から落ちてしまえばまた同じところを登らなければならず、考えて登らない限りまた運良く登れるまでリトライすることとなり、登り直す回数が果てしなく増えていくのである。
そういう構成のゲームであるため「安易にクリアだけを目指すゲーマー」ほど長く苦しむ。特にアクションゲームの要領で慣れと勢いだけで登ろうとすれば、容赦なく山に突き落とされ続ける。早く登りたいという気持ちが落下の精神的ダメージを増幅させ、さらに冷静さを失い焦燥し操作を乱しまた安易に落ちてしまうという悪循環を加速させ、プレイヤーの心を無慈悲に打ちのめすのである。
…ただ実の所ステージそのものはそれほど理不尽な難しさではなかったりする。操作性の問題があるため決して簡単ではないにしろ、各所にはいくつかの登り方がありそうした攻略法を覚えて実践できるようになれば、かなり安定して登っていくことができるように設計されているのだ。
つまりこのゲームの本質は「パズルゲーム」に近い。操作に慣れてからは、山を見て冷静に考え丁寧に登っていくことができれば堅実に登っていくことができ、登り方さえ覚えてしまえば例え落ちたとしても登り直すことの苦しみも小さく済む。
そのためクリアという遠い目標はひとまず置いといて「目の前のパズルを安定して解く方法」を考えながらプレイすることがクリアまでの近道だと言える。
プレイ時間
トライ&エラーを繰り返して操作性に慣れつつ登り方を考え覚えていきながら登っていくことになるため初回はとても時間がかかり、攻略情報も見なければクリアまで10時間や20時間以上かかることもザラな話だが、一度クリアできるくらいまでやり込めば二回目は遅くとも1時間~数時間くらいで登頂できるようになる。
極端な話プレイ時間の99%くらいが失敗や登り直しにかけた時間であり、やり込めばやり込むほど操作攻略の精度が上がっていくため失敗の回数・割合が減り、どんどんと時間が短縮されていく。繰り返し登っていくと「一回のクリアに何時間」が「一時間に何回のクリア」というレベルまでクリア時間を短縮していくことすらできる。
ちなみに現在の世界記録は2分を下回っている。ネタバレなどを気にしないのであれば是非見てみることをオススメする。
向き不向き
このゲームは他人がやっている所を見るだけでも面白いが、実際にプレイするとまた違った面白さを味わうことができる。
ただ勿論書かれている通り非常に難しくクリアできない人には全くクリアできない、合わない人には全く合わないというゲームだが、合うか合わないかは実際にプレイしなければ分からない。
と言うのも数多のゲームをプレイしてきたゲーマーが挫折しているかと思えば「アクションゲームが苦手です」と言う人が何度もクリアしていたりする。本当に向いていないかどうかは実際にプレイしなれば分からないのである。
もし余裕があるのならぜひプレイしてみてほしい。(そして存分に苦しむといい)
評価
非常に不親切なゲームだが、非常に強い印象と特徴をもったゲームとして世界的なヒットとなりSteamにおいて一時期売り上げ上位を記録したこともある他、Steamのレビューの総合評価で非常に好評となっている。
ゲームシステムは非常にシンプルでストーリーも大して存在しないが、実際にプレイをすると自然と力が入り、進んでいくにつれ緊張から体は熱くなり汗も流れ、正念場では心臓がバクバクとするのを感じることさえあり、失敗すれば思わず悲鳴が漏れる。とてもタフなゲームだ。
実況プレイヤーがこのゲームのプレイ放送中に発狂している動画が有名だろう。ゲーム画面がスッキリと単純で見る分にはとても分かりやすく、またプレイヤー自身も非常にリアクションをしやすく配信向きのゲームと言える、かもしれない。
ただあまりの難しさから全体のクリア率は低く(全体で数%)、クリアできていない人のほうが圧倒的に多い。よく言われる評価も「苦行ゲー」や「クソゲー」、「罰ゲーム用」だとか「嫌がらせに送りつけるためのゲーム」など。感想も当然のように「イライラする」「机を殴った」だとか、「ちょっとプレイしたけど返金して他人にギフトで送った」なんて話もよくあり純粋に好意的な表現ばかりではない…。(低評価を入れたら負けな気がするのかもしれない)
しかしそんなゲームをやりこんだプレイヤーたちからは「単なるクソゲーではない」と言った評価をしていることも多く、このゲームの奥深さ、楽しみを語っている人もいる。ただそうした人にさえ「人にオススメできるゲームではない」と言われたりもしているが。
つまり「苦しみを体験する」ためのゲームであり、それに耐えられるかを試されるゲームなのだ。
…正しく苦行ゲー。やれば忍耐力や理不尽に立ち向かう力、挑戦する力が鍛えられる、かもしれない…。
ゲーム内では常に滑落で全てを失う危険があるが、何度も登る事によるプレイヤーの技術だけは確かに積み上げる事ができる。実際に一回目に登るときよりも、滑落して登り直すときのほうが遥かに短い時間で登れることは、全てのプレイヤーが体験することになる。まあ三度目はイライラでまともにプレイできないかも知れないが。
そのためクリア率は非常に低いが、一度クリアしたプレイヤーがもう一度クリアする割合は高い。
余談:日本語訳
(2018年2月時点)日本語訳は所々微妙におかしな翻訳となっている。特に序盤のナレーションは字幕と実際のニュアンスがかなり違うようで、とても重要な助言が台無しになってしまっている。
「やり直しはやり始めるより辛い。もしその心の準備ができていなければ、もう既に悪い一日だったりするなら、この先の体験はあまりにも辛いかもしれない。もしそうなら遠慮せずゲームから離れて、また後で戻ってきてくれればいい。私はここで待っている。」
「もし休憩したいならいつでもどうぞ。安全な場所で止まってゲームを閉ればいい。大丈夫、君の場所は常にセーブしているよ。君の失敗さえもね。」
(序盤ナレーションの英語からの意訳)
実際には平静にプレイできる状態でなければプレイしないことを薦めていたり、「失敗さえも」保存していることを告げてくれているようなのである。
関連イラスト
イラストのほとんどがVtuberなどのパロディであり、壺おじを描いているものは少ない。
関連ページ
関連タグ
激登!!SRT式登頂訓練:ブルーアーカイブ版壺おじ
プロジェクトセカイ:4月開催のイベント『Get over it.』をこのゲームのタイトルと見間違えた人が続出してしまった。
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