概要
Inkscapeは、オープンソースでクロスプラットフォームであることが特徴のベクター画像編集ソフトウェアである。
無料で使用できるベクター画像編集ソフトウェアとしては、ほぼ唯一の存在でもある。
ベクター画像を編集できるソフトウェアといえば一般的にはAdobe社のIllustratorが有名だが、非常に高価なためそれの代替として使用するユーザーは多い。
とりわけ海外での知名度は非常に高く、例えばWikipediaにアップロードされているSVGファイルもInkscapeを使用して編集された物が極めて多い。
ソフトの目的について
このソフトは「SVG規格に完全に準拠したソフトウェア」を目指しており、どちらかというとベクター画像の特徴を生かしてグラフィックスを作るというより、SVGファイルを作ることに主眼を置いている。
ベクター画像の特徴を生かすことに主眼を置いているIllustratorや、CorelDRAWとはやや違うコンセプトのもと開発されている。しかしながら、ユーザーインターフェースはIllustratorを意識しているようにも見える。
画像形式
基本的にSVGファイルを扱う。が、ややInkscape独自に拡張されているため、公に出すときは出力形式に気をつける必要がある、また、AIファイルやPDFファイルも一応読み込めるが正常には読み込めない。
ラスター画像(JpegやPNGなど)をオブジェクトとして取り込めるので、これらを下絵に使ってペン入れツールとして使うこともできる。
IllustratorやCorelDRAWとの比較
・Inkscapeのレンダリングエンジンはやや弱く、画像によってはディザが目立つ。
・Inkscapeは複数のページを持てない。つまり、DTPソフトとしての使用には難がある。
・Inkscapeは無料で使える。
各OSでの動作状況
Linux
Linuxを主体として開発が行われているため、Linuxとの相性はよく、少々動作が重たいものの実用的である。全ての機能が問題なく使える。この相性の良さは凄まじく、Windows上で仮想化ソフトやWSL(Windows Subsystem for Linux)を用いてLinuxを動かしその上で走らせたとしても、Windows版をネイティブ動作させるより若干速い。
OS X
このソフトウェアはX Window Systemを使用するのだが、Mac OS XにはX11が搭載されているため相性が良いようで、Linux同様、実用的な速度で動作する。ただし、日本語環境が非常に貧弱で、特に文字ツールやテキストボックスに日本語を入力できないのは致命的である。ただし、テキストエディットからコピペするという方法で強引に入力することは可能である。
Windows
印刷が出来ないなど一部の問題を除いて問題なく動作するのだが非常に重く、ガウスぼかしなどを多用したややアーティスティックな作品となると、まともに使うことすらできない。
Windowsユーザーが多いだけあって、「Inkscapeは非常に重い」と思われる所以となっている。(事実、この手のソフトとしては重いのだが・・・)
2024年現在でもこの状況に変化はなく(例としてSurface Pro 6であっても操作がワンテンポ程遅れるなど)、WSLを介したほうが若干速い。
関連リンク
関連タグ
Illustrator:ベクター画像編集ソフトで、しばしばInkscapeと対比される。
「競合している」と言われることもあるが、前述の通り二者はコンセプトが少々異なるため、この言い方は厳密には間違っている。
GIMP:Inkscapeと同じく、クロスプラットフォームのオープンソースでフリーなペイントツール。Mac OS Xに限り、フォークのSeashoreが存在する。