概要
ロシアの銃器メーカー・イズマッシュ社が、同社が製造・供給しているカラシニコフ・アサルトライフルをベースに開発したもののうち、特に民間向けを強く意識したセミオートショットガンである・・・そうこの銃、こんな外観だが軍用モデルではないのである。
他の、例えばアメリカや北欧の老舗メーカーの趣味性やステータス性を感じさせる民間向け定番モデルと違って、基本設計をAKとしデザインより実用性に特化させた設計であるため、このようになったのであろう。
しかもベースがAKMなので耐久性もすこぶる高くまたセミオートならではのボックス・マガジンの採用による素早いリロードが可能な事、何より西ヨーロッパやアメリカの製品と比べて低価格なのも魅力である(このあたりも信頼と安心のAKファミリーである)。
ただし、特定の形状の光学機器(EOTech等)を排莢口の真上のピカティニーレールに載せるとショットシェルが大きすぎて光学機器との間で挟まってジャムを起こしてしまう可能性がある。
特徴
基本的に12番(12ゲージ)が基幹モデルで、派生型として410ゲージや20ゲージに対応したモデルももちろんの事、本銃をより警察用途向けに改良を加えたKS-Kというモデルも存在している。
日本の場合
日本国内の場合、散弾銃は空気銃に次いで規制が緩やかであるため、装薬銃の所持許可を取得すればすぐに入手が可能な機種である。また、日本で所持可能な数少ない自動式の散弾銃である。
ただし、日本で持つ場合グリップとストックは一体型で、かつマガジンも専用の2発の物でなければならない。
AKベースで頑丈で信頼性が高い機種であるとは言え、回転不良(作動不良)と無縁であるかといえばオーナーや銃砲店の知識と技量によってて強く左右される点(実際、所有者によればジャムりやすいという報告も。)や、日本国内で流通量が多いとは言えず、内部パーツが流通しないため、万が一破損した場合のことを考えると、なかなか難易度は高い。
また、見た目がAKに似ている事や、ライフルタイプのサイガに合法的にトイガン用で輸入されたAKの実銃用30連弾倉を装着して問題になった例があったりするため、目の敵にされており登録が日に日に難しくなっている。
また、一部の市町村では名指しで所持が規制されている場合もある。
余談
この銃の他にもAKファミリーのセミオート散弾銃自体はあるのだが、そもそも本銃は純粋な民間向けとして開発されたため、形から勘違いされがちだが決して軍用としては販売されていない上、ロシア国内での軍や警察での採用例はほぼ皆無である。
なので他のセミ・フル可能な軍用モデルと比べてしまうと控えめな物になっているが、それでも狩猟用・競技向けとしては必要にして充分、そして信頼性が高い物であるという事は間違いない。
特に、狩猟が「中流~上流階級のレジャー」や「ステータス」で数十万から数百万円の銃を用いるような文化圏とは違って、猟銃が必需品である職業に従事する人、或いは国や地域では性能が良く惜しげもなく使えるこの銃は、根強い人気を誇る銃である。
なおSAIGAの名は概要欄にもある通り、同社のハンティング用セミオートマチックライフルにも使われている名前である。単に文章上で「SAIGA」とある場合、ショットガンとは限らないので注意が必要である。
ライフル版はさらに多様な口径に対応しており、AK-100シリーズに近いシルエットを持つSAIGA MKシリーズ(5.45x39mm、5.56x45mm、7.62x39mm)やSAIGA308(7.62x51mm)、さらに拳銃弾である9mmパラベラム弾を用いるSAIGA 9が存在する。
発売元のイズマッシュ社は2012年に経営破綻するもイジェメック社と合併しカラシニコフ・コンツェルン社となったもののイズマッシュの名はブランド名として残る模様。
スペック(SAIGA-12)
全長 | 1,060mm |
---|---|
銃身長 | 495mm |
重量 | 3,600g |
口径 | 12ゲージ |
装弾数 | 5/8発 |
エアソフトガン
FPSゲームバトルフィールド4等から始まり、AKタイプの散弾銃として知名度自体は非常に高かったが、エアソフトガン化は一切行われておらず、AKのエアソフトガンをキャストパーツや3Dプリンターなどで作ったパーツでカスタマイズして制作した作例が非常に多かった。
だが、2021年の7月2日に国内最大手のエアソフトガンメーカーである東京マルイがガスブローバックショットガンシリーズの第一弾として「サイガ12K」の発売が決定し、非常に大きな話題となった。
というのも、エアソフトガンというものの市場は非常に狭く、AK系列の銃はM4系列の銃と比べて10倍の売り上げの差が出るといわれている世界であり、それを完全新規金型で、尚且つ実銃規格で実パと互換があり、今まで一切モデルアップされたことが無かった銃であったことが要因である。
そのせいで今まで確実に売れるものやオリジナル商品しか発売にこぎつけなかった東京マルイに「社長が埋められた。」という噂が立つまでになった。
おそらくはM4カービン等で培った技術を活かせるボックスマガジン式で、かつ知名度があり、AA-12等の様に大型化のしない銃という事でSAIGAが選ばれたと思われる。
また、近年ではFPSゲーム『Escape From Tarkov』によってAKシリーズ全般の需要が上がっていたことや、マルイと頻繁にコラボを行っているバイオハザードシリーズの新作である『バイオハザードヴィレッジ』に登場したことも理由として挙げられる。
しかし、本来は2021年の冬頃に発売予定だったはずが2022年の春頃まで延び、それから半年以上情報が出ないところでロシアによるウクライナ侵攻が起きてしまい、一時期は販売中止ともささやかれていたが、2022年5月に正式に発売することが決定した。だが今度は量産品に不具合が発生したために再度延期となり、約1年遅れの2023年6月に発売された。
後にバリエーションとして、「サイガ12SBS」が2024年3月に発売された。