高圧ガスのエネルギーを用いてタービンを稼働させ、仕事をするエンジン。
ジェットエンジンとの違い
ガスタービンエンジンはジェットエンジンの同類とされる事が多い。
これは基本的に正しいが、ある意味で微妙に違う。
まず動作原理からすれば内部にタービンのあるジェットエンジン(ターボジェットエンジン、ターボファンエンジン)は、「高圧ガスのエネルギーでタービンを駆動している」という点では紛れも無いガスタービンエンジンの一種である。実際、航空用ターボジェットエンジンやターボファンエンジンに出力軸を取り付けてガスタービンエンジン化し、発電設備や船舶機関に流用する例は枚挙にいとまがない。
しかし、「ジェットエンジン」の定義は要するに「高圧ガス(ジェット)の反作用を利用するエンジン」、平たく言えば「後方に気体を噴き出して推進力を作るエンジン」であるため、タービンのない(=ガスタービンエンジンではない)ラムジェットエンジンやパルスジェットもれっきとした「ジェットエンジン」の一種である。
蒸気タービンとの違い
ガスタービンがエンジン内の燃焼ガスでタービンを回す内燃機関であるのに対し、蒸気タービンは熱源のボイラーからの排気でタービンを回す外燃機関であって両者は全くの別物である...が、ガスタービンの排気を熱源として用い、その排気ガスで蒸気タービンを回すコンバインドサイクルというものもある。このシステムは熱エネルギーを余すところなく利用するので、熱効率は50%を超える。詳しくは蒸気タービンの記事へ。
特徴
構造は基本的にジェットエンジン(内部にタービンがあるタイプ)と同じであるので、利点・欠点もジェットエンジンのそれに大体似ている。
例を挙げればパワーウェイトレシオが非常に高い、航空用でなければ燃料の種類を選ばない、振動が少ない、起動が早い、構造が単純で製造・メンテナンスが(レシプロエンジンに比べれば)楽、燃料バカ食いする、やかましい、アクセルワークに対するレスポンスが鈍い(踏んでもすぐに回らない)、・・・。
マイクロガスタービン・ウルトラマイクロガスタービン(UMGT)
ガスタービンエンジンといえば「ヘリ飛ばしたり発電機回したりするデカイもの」という印象が強いが、一方で家庭・事業所用の発電機に使えるくらい小型化された「マイクロガスタービン」というものも開発されている。
読んで字のごとくガスタービンエンジンを小型化したものである。
発電機と一体のパッケージ化されて販売されることが多い。
また、さらに小型化を進め、(燃料タンクと発電機を含めて)単三乾電池くらいの大きさまで縮小した「ウルトラマイクロガスタービン」(UMGT)というものも開発されている。
現在の電池を超える「小型軽量・大出力の電源」として期待されている。
但し小型化するということは燃焼室も小さく短くなり、現在の「化石燃料を使うガスタービン」とは勝手が違いすぎる(化石燃料は燃えている時間が長すぎてUMGTの小さな燃焼室に適応できない)ため、燃料には燃焼時間の非常に短い水素を使うことを検討しているとか。
自動車への転用
ガスタービンエンジンはレシプロエンジンに比べ、公道で重要な低回転域の燃焼効率やアクセルレスポンスが悪いという問題があるため、自動車に転用するのは困難であると思われる。
しかし古くから欧州車を中心に、自動車への採用事例はいくつか存在する。ただしいずれも試験的に制作されただけで、数十台程度の生産で終わっている。
近年ではジャガーが発電用小型ガスタービンを搭載するPHEVのC-X75のコンセプトカーを発表しているが、市販バージョンでは結局通常のレシプロ(ピストン)エンジンに差し替えられており、実用化と呼べるレベルには無い。
古くは米国の伝統のレースである「インディ500」では、1967~1969年にガスタービンエンジンのマシンが参戦。67年と69年は結果はトラブルでリタイアであったが、トップを快走してその戦闘力を示した。しかしその後ガスタービンは規則で禁止された。
関連イラスト
- キハ391系気動車(廃車済み)。ガスタービンエンジンを動力としていた。
COGOG(COmbined Gas turbine Or Gas turbine、コンバインド・ガスタービン・オア・ガスタービン)推進艦はつゆき型護衛艦『はつゆき』
COGAG(COmbined Gas turbine And Gas turbine、コンバインド・ガスタービン・アンド・ガスタービン)推進艦はたかぜ型護衛艦『しまかぜ』
COGLAG推進艦(英語: COmbined Gas turbine eLectric And Gas turbine、コンバインドガスタービンエレクトリック・ガスタービン )推進艦あさひ型護衛艦『あさひ』