概要
長毒針の使い手、「甲賀卍谷衆」甲賀忍者の総帥で、甲賀弦之介の祖父。
孫である甲賀弦之介が伊賀の姫朧と恋に落ちたのと同じように、かつて伊賀忍者の頭領お幻と恋仲にあったが、互いの里の不和から結局は結ばれることは無く、それから数十年後、互いに老境に至った本編現在において「忍法十番勝負による殺し合い」という形で、その数奇な因縁に決着をつける事となる。
お幻との関係は、原作小説においては「若い頃に恋仲だった」程度の簡素な言及だったが、アニメ版において大幅に掘り下げられた。
かつてまだ服部家による「不戦の約定」もなく、ただ戦乱の世ゆえに互いに争っている場合ではない、という冷戦状態にあった甲賀卍谷と伊賀鍔隠れ。
その狭間にあって、甲賀と伊賀の若き頭領である弾正とお幻は密かに逢瀬を重ねており、互いの関係を通じて里の衆を根気よく説得し、和睦する、という未来を語り合っていた。
しかし、そんな彼らをあざ笑うように「天正伊賀の乱」が勃発。
織田家の軍に包囲奇襲された伊賀・鍔隠れの里は、お幻の祖父である先代頭領も討ち取られるなど壊滅的な被害を受ける。一歩遅く現場に駆け付けた弾正とお幻は、服部半蔵の助けも得てからくも織田の包囲からの脱出に成功するが、そこに現れたのは甲賀卍谷の追撃部隊であった。
弾正の祖父、甲賀の先代頭領が、織田の伊賀攻めを察知してこれに便乗していたのである。
鍔隠れの里がたやすく奇襲を受けたのも、同じ忍者である卍谷衆が影で織田家をサポートしていたからであった。
弾正自身はこの謀を一切知らなかったものの、もはや道理で片づけられる事態ではなく、お幻との恋も、甲賀と伊賀の和睦も水泡に帰してしまう。
それから数十年の時が流れ、孫達が自分達のあの頃のように恋に落ち、それを契機としてふたたび和睦の道を探っていた時、徳川家康の命により不戦の約条が解かれ、伊賀、そしてお幻と再び争う事となる。
夕日に照らされた河原で、お幻とともに数奇な運命とその理不尽に嘆息したものの、その雑談で生じた一瞬の油断をついてお幻の首に毒針を打ち込む。
数十年の時を忍者の頭領として過ごした非情さを遺憾なく発揮した弾正であったが、かつての恋人を斃したことには感傷もあり、せめて葬ってやろう、と倒れ伏したお幻に近づく。
が、お幻が断末魔の叫びで呼んでいた彼女の鷹が弾正を襲撃。それに気をとられた一瞬に、実はまだ完全に死んでいなかったお幻に反撃され、心臓を貫かれる。
その後、今度こそ本当に力尽きたお幻と共に、その亡骸は寄り添って海へと流されていった。
戦闘
全身や体内に隠し持った無数の長毒針を駆使して戦う。
口から噴き出したり投げ付けたりなどして遠くの相手に突き刺したり、直接手に持って突き刺すなど、弾正の技量も相俟って万能の暗器と化している。
その貫通力もかなりのもので、鎧武者の重厚な兜をも容易く貫いて死に至らしめる。
若い頃は剣術にも達者だったようで、複数人の鎧武者をあっという間に斬り伏せてみせた。