スティンガー
すてぃんがー
一般的には
スティンガーミサイル
アメリカのジェネラル・ダイナミクス社のFIM-43レッドアイ携行式地対空ミサイルの後継として1967年に開発開始、1981年に軍に採用。開発においては、どのような状況下でも使用できる全面性と、整備性の向上、敵味方識別装置(IFF)の搭載に主眼が置かれた。
主とする目標は低空を比較的低速で飛行するヘリコプター、対地攻撃機、COIN機などであるが、低空飛行中の輸送機や巡航ミサイルなどにも対応できるよう設計されている。このため、誘導方式には高性能な赤外線・紫外線シーカーが採用され、これによって撃ちっ放し能力(発射後の操作が不要な能力)を得ている。
ミサイル本体の収納された使い捨て式発射筒、グリップ・ストックと呼ばれる再利用可能な発射装置、冷却用ガスとバッテリーが一体化したユニット(BCU)、ケーブルで接続されたIFF装置から構成される。ミサイルは後部ブースターによって発射機から10m程度発射され、その後メインのロケットブースターに点火する二段式となっており、射手の安全性が確保されている。ロックオン時に目標を一定時間捕らえ続ける事で、ミサイルに迎え角とリード角情報が送られ命中精度が上がるが、BCUの冷却持続時間は45秒である。なお、命中しなかった場合は一定時間後に自爆するようになっている。
誘導方式は初期型のFIM-92Aでは赤外線誘導だったが、FIM-92Bからは赤外線と紫外線を用いた2色シーカーを用いており、デジタル信号処理ユニットによりフレア耐性も非常に高くなっている。発射前にアルゴンガスによってシーカーを冷却するため感度が高く、敵機前方からでもロックオンする事が出来るようになった。パッシブホーミングの撃ち放し式ミサイルなので射手は発射後即座に安全な場所に退避することが出来る。
FIM-43レッドアイでは3G程度の機動性しか無く、攻撃された側は旋回するだけで回避することが出来たが、スティンガーでは飛翔コースが比例航法(目標の未来位置を予測し飛翔する)になりミサイルの機動性も上昇したため8Gの旋回を行う敵機も撃墜可能となり、信頼性が大幅に向上している。その後も様々な改良がなされ、1995年からは最新型のFIM-92Eが導入されている。FIM-92Eではセンサーやソフトウェアが改良されており、より高いIRCCM(対フレア)能力や命中精度の上昇等が図られ、UAV(無人偵察機)や巡航ミサイルさえも撃墜可能となった。
バリエーションとしてハンヴィーに四連装ポッドを二基搭載したアベンジャー防空システムや、M2ブラッドレー装甲車に四連装ポッドを搭載したM6ラインバッカーなどが存在している。その他にも空対空型スティンガー(ATAS)があり、米陸軍のOH-58D観測ヘリコプターや日本のAH-64Dアパッチなどで運用されている。
これらのシステムでは冷却ユニットの持続時間の制限がないため、非常に即応性に優れた対空システムとなっている。
かつては自衛隊でもスティンガーを運用していたが、現在は携SAMは91式携帯地対空誘導弾に交代している。(AH-64Dに搭載されるAIM-92 ATASは継続して運用)
発射機全長 | 152cm |
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重量 | 14.5kg |
ソ連・アフガン戦争での活躍
スティンガーミサイルが一躍有名になったのは1979年に勃発したソ連・アフガン戦争である。
当時のアフガニスタン共産主義政権及び政府軍から反政府ゲリラや義勇兵を鎮圧するよう要請されたソ連軍は戦術の一つにベトナム戦争でアメリカ軍と同じく上空から攻撃しその後地上部隊で制圧するという掃討作戦が行われ、その作戦に最適とされたのがMi-24ハインドであった。ハインドは空対空、対戦車ミサイルや対戦車ロケット弾、12.7mm機銃などの武装に頑丈な装甲というまさに空飛ぶ戦車でに加え、兵員や物資まで輸送できるという優れものだった。
この他にもSu-25 やMig-23といった地上攻撃機が猛威をふるい、特にSu-25は命中精度の高さから恐怖と憎悪の対象となった。
当然アサルトライフルやボルトアクションライフルの弾などハインドからすれば痛くもかゆくもなく、文字どうりゲリラを蹂躙し、また紛争初期に各地の都市で発生した反政府蜂起を圧倒的火力で粉砕し、都市奪還に貢献したので、ハインドはアフガン人からソ連政府や共産主義政権の強権的支配の象徴とみなされた。
ミサイルとロケット弾による空爆や機銃掃射をするハインドの前に航空戦力や対空兵器を持っていない反政府ゲリラや義勇軍はバッタバッタとなぎ倒されまくり、ハインドは悪魔の戦車と呼ばれ彼らを畏怖させ、当時アフガンでゲリラに従軍した外国の戦場カメラマンやジャーナリストは行く先々でゲリラからヘリ墜せる武器をせがまれたと言われている。
ちょうどその頃中国と国交を回復したアメリカは、ソ連軍がアフガニスタンに侵攻したとの情報を入手し、国交を回復した中国と共にゲリラ軍に援助すべくパキスタン経由で武器・装備品を供与した。当初は、応急処置として旧式のエリコン20mm対空機関砲を少数供給したが、運搬に難があり一度配置すると配置転換が困難なので、攻撃を受けて射手が撤退したさい、放置されたエリコンをハインドがフックで釣り上げて全て捕獲されてしまった。その後運搬しやすい中国製のDShK38重機関銃やZPU-1対空機関砲、ZU-23-2対空機関砲が供給され一定の戦果を上げたが、射程外からのロケット弾攻撃で無効化され再び窮地に陥いった。
当初イギリスのMI6から供与されたイギリス製のブローパイプ携帯地対空ミサイルはいちいち操作しなければならないというさすがイギリスクオリティといわれる代物であった。この他にもアフガン政府軍やカンボジア前線のベトナム軍から横流しされたソビエト製の9K32携帯地対空ミサイルも投入されたが、日ざしで熱された山頂に向かってしまうなど命中精度が劣悪で、さらに操作性も悪くハインドに効果的とはいえなかった。
携帯式地対空ミサイルは当初はレッドアイや9K32が供与されたが、後にスティンガーも供与されたのである。
目標を目視で発見しなければいけない点やバッテリーの持続時間(最大45秒)などが難点だが命中率は高く、飛翔コースが比例航法(目標の未来位置を予測し飛翔する)になりミサイルの機動性も上昇したため8Gの旋回を行う敵機も撃墜可能となり、信頼性が大幅に向上している。
初陣では、ハインドの編隊を攻撃し、4機中3機を撃墜する圧倒的威力を見せ付けたが、一方でバイクで移動中の所を、追跡してきたハインドにムジャヒディンが3発発射したがいずれも当たらず、そのままハインドから降下してきた空挺隊員に奪われるというケースもあったので、射手の技量や状況によって命中率が左右される事もあった。
ゲリラ軍にとってスティンガーは救世主であり、これを手に入れた反政府ゲリラと義勇軍はお返しとばかりに来襲してくる多数のハインドこれでもかというぐらい撃墜しまくった。中には地の利を生かして「山上からヘリを撃墜」するという戦法を編み出した強者までいた。このスティンガーとゲリラ軍は勢いづき、遂にはソ連軍はアフガニスタンから撤退したのである。※ただしソ連崩壊後の資料では、スティンガー供給以前からアフガンからの段階的撤退を決定していた事が判明している。また、同時期にアフガンだけでなくフォークランド紛争の英軍や、アンゴラ内戦でCIAが支援する反政府勢力にも供給され、使用されている。
またアメリカ自身も多数のヘリや攻撃機を、ソ連が北ベトナムに供給した9K32により撃墜され、制空権を失うという苦い過去があった。なを、供給されたスティンガーの内、かなりの数がゲリラに届かず、パキスタン軍の備品になった他、少数がイラン軍に横流しされ、ソ連軍撤退後闇市場に出回ったと言われている。
ソ連軍のパイロットや空挺部隊員からは「ハインドキラー」と恐れられ、これに狙われたらまず助からず、奇跡的に生きていてもゲリラ軍に捕まればその場で処刑されるので、出撃を恐れるようになり、さらに地上のソ連軍や政府軍兵士も航空支援が受けられないという事態に動揺し精神的なダメージを被ったほど強烈なインパクトを与えた。
また各都市や地方への空輸も不活発になり統制が乱れ、国境監視所や軍事拠点からも撤退せざるおえなくなり、ゲリラの支配地域は拡大した。
スティンガーは戦火を逃れた脱出した難民にとっても救世主となり、多くの難民がスティンガーの保護のもとふたたび故郷へ帰還し、ゲリラの基盤をより強固な物とした。
ソ連軍も、ゲリラの武器庫襲撃によるスティンガーの破壊、エンジン排熱口の改良やフレアの搭載いった対策をとったが効果が上がらず、苦肉の策としてスティンガーに探知されないように超低空飛行を行ったが。当然今度はRPG-7や各種対空火器で簡単に撃墜されてしまうようになり、これ以降ソ連軍はゲリラの拠点に対する攻撃を高高度爆撃や地上からの多連装ロケットランチャー、砲撃に限る様になった。
ソ連軍撤退後、共産党政権は、南ベトナム同様に早期に崩壊すると西側政府やメディアはは予想したが、CIA要員の撤収や支援縮小によりスティンガーの運用が困難になり、さらにソ連から大量の機体を供給されたことでアフガン空軍は息を吹き返し、政府軍のハインドは再びゲリラを蹂躙し攻勢を押し止めた。スティンガーの支援受けられない状況にムジャヒディンの士気は萎え、逆に政府軍兵士は航空支援の復活で士気が上がり、各都市への空輸が活発化し政府の統制が強化され、その後ソ連崩壊後の支援打ち切りで、航空機が飛ばせなくなるまで共産政権は存続した。
政権崩壊後、アフガン空軍機は軍閥の手に渡り、タリバン等の敵対勢力の拠点への空爆に使用されたが、もはやスティンガーがそれらの迎撃に使用される事は殆どなかった。
一方で闇市場に流れたスティンガーは民間旅客機に対する一大脅威と見なされ、CIAが回収作戦を行ったが成果は上らず闇市場に拡散したが、スティンガーがどの程度使用されたかは不明である。
時が変わって21世紀。米同時多発テロの首謀者(とされる)ウサマ・ビンラディン率いるアルカイダとそれらを匿うタリバン掃討作戦のためアフガニスタンで活動していたアメリカ軍も当初はスティンガーを警戒し、高度2万フィート以上から爆撃や補給物資の空中投下を行ったので北部同盟に対して、効果的な支援ができず、僅かながらアメリカ軍の戦略や計画に影響を与えた。
しかし上記のように、30年近くバッテリーや冷却ガスの供給やメンテナンスがされていなかったので実質稼働状態にあるものはほとんど残っていなかったと考えられる。(むしろRPG-7や9K32携帯地対空ミサイル等の方が脅威だった。)
フイクションの世界ではゴルゴ13がモータボートに使用したり、とある魔術の禁書目録原作で木原数多が車両に対して使用、メタルギアソリッドシリーズでは車両や人、メタルギアといったあらゆる目標に使用可能など本来の用途である航空機以外の目標に使用される事がある。
面倒が嫌いな人
いいか、俺は面倒が嫌いなんだ
CV.速水奨
ACPPで登場するレイヴン。ウェンズデイ機関に所属するレイヴンであり、終始主人公のライバルとして関わってくる。事あるごとに面倒面倒言うのでセリフ的には印象が濃い。
ちなみに、同じ声の人がとても面倒なプランを頑張って実行する参謀家になっていた。
生物兵器のスティンガー
バイオハザード0に登場するサソリ型のB.O.W.。作ったはいいが知能が低く有用性がないため量産されなかった。
黄鉄道列車内で突然登場する。狭い車内にどうやって入ってきたのかわからないようなサイズであり、デカイハサミをや尻尾を振り回して攻撃してくる。端に追い詰められたらすぐに扉を出て別の車両に移らねば腹を刺されて即死、「やぁあああうぅ…」というレベッカの喘ぎ声を聴く羽目になる。
競走馬・スティンガー
父・サンデーサイレンス。母・レガシーオブストレングス。
1998年11月8日にデビュー戦を勝利し、続いて2戦目となる赤松賞も勝利。その翌週に連闘で阪神3歳牝馬ステークスに出走して勝利。デビューから1ヶ月足らずでGⅠ制覇という快挙を成し遂げた。
トランスフォーマーのスティンガー
※以下、ネタバレ注意
実写映画4作目「ロストエイジ(Age of Extinction)」に登場するディセプティコンの一人。赤いパガーニ・ウアイラに変形。
前作「ダークサイドムーン」でのシカゴの惨劇により設立された反トランスフォーマー組織「KSI」が、シカゴ戦で討ち取られたディセプティコンの残骸や、秘密機関「墓場の風」が極秘に行った「オートボット狩り」で殺害したオートボット幹部の亡骸を解析して得たデータを基に、バンブルビーをモデルに開発した人造トランスフォーマーのプロトタイプ。
当初はKSIが遠隔操作して動かしていたが、同様にして開発されたガルバトロンの叛逆と同時にディセプティコン軍団へと寝返った。
ロボットモードの姿はバンブルビーに似つつも、カラーリングは赤と緑を基調としており、頭部の形状はバンブルビーが戦闘時に使用するバトルマスクのみである。KSIはバンブルビーと同等かそれ以上の性能を持つと主張していたが、性格は彼とは対照的に歪んでいる。
外部リンク
・スティンガーミサイル - Wikipedia