概要
小説投稿サイト「小説家になろう」にて作者の別作品『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』の宣伝及び気分転換のために投稿されていたweb小説。元々は1章で終了予定の短期連載予定であったが、思いの外評判が良かった為、2章以降も連載することになり現在は7章まで公開されている。
2020年6月12日にオーバーラップ文庫から書籍化が発表された。イラストは高峰ナダレ。
異世界転生ものであり、宇宙ものであり、ファンタジーものであり、主人公最強ものであり、勘違いギャグコメディでもあるというなかなかにカオスな作品だが、作者の他作品に比べると軽い気持ちで楽しめる読みやすい作品でもある。
ストーリー
※以下、連載サイトより引用。
リアム・セラ・バンフィールドは転生者だ。
剣と魔法のファンタジー世界に転生したのだが、その世界は宇宙進出を果たしていた。
星間国家が存在し、人型兵器や宇宙戦艦が戦うスペースオペラのような世界。
貴族たちが支配する帝国の伯爵家に転生したリアムには野望があった。
それは――悪徳領主になることだ。
前世、不幸にも全てを失い絶望の中で死んだリアム。
――善良に生きるなんて馬鹿らしい。
――好き勝手に生きてやる。
そんな気持ちを胸に、第二の人生を歩もうとするのだが、価値観の違いから名君として崇められてしまう。
リアムは無事、悪徳領主になれるのだろうか?
世界観
魔法が存在し、科学が発達し、宇宙旅行もお手軽にでき、ワープ航法を駆使した惑星間の移動もできる。居住惑星の自転周期や公転周期の違い、相対性理論による時間のズレが全くなく、惑星間の通信もタイムラグを生じない。
この世界の人間は加齢が非常に緩やかで、成人する50歳で見た目13歳前後、まともな大人に見られるのは100歳を過ぎてから。
そのため、作中では時間の経過が非常に早く、何十年単位であっという間に経過していく。
登場人物
主要
- リアム・セラ・バンフィールド
主人公。前世では真面目に生きてきた善良な普通のサラリーマンだったが、身に覚えのない浮気や横領で破滅し、莫大な借金まで背負わされて絶望の中で衰弱死するという壮絶な最期を遂げる。
今際の際に案内人により、妻の裏切りや自分が破滅した真相を知らされ、「次の人生で幸せになって貰いたい」として星間国家の貴族家の子供に転生させられる。
今世では善行など無意味と悟り、悪徳領主として振舞おうとする。しかし、「後から搾り取るため」と称して領地を大いに発展させたり、「俺の権力を使っていいのは俺だけ」と称して汚職役人を粛清したり、「領民を虐げていいのは俺だけ」と称して邪悪な宇宙海賊を殲滅したりと暴政どころかこの上ない善政を敷いているようにしか見えないため、名君と称えられる。
安士に「一閃流」なる剣術の手ほどきを受けたため、武人としても最強クラス。
前世で暴力に怯えていた反動から敵対者(特に海賊)には容赦しない苛烈な性格になっており、自ら刀を手に持って、或いは専用機動騎士【アヴィド】を駆って最前線で戦うことが多い。
- 案内人
燕尾服にシルクハットという出で立ちの細身の男。顔が口元しか見えない。
死に際のリアム(前世)の枕元に現れ、彼を星間国家の世界に転生させたが、実はリアムを陥れた張本人であり、アフターサービスの名目で再びリアムを陥れようと暗躍する。
人の負の感情を糧とする超常の存在で運命に干渉できたり、異世界を行き来できたりと強大な力を持つ。反面、正の感情が苦手で特に「感謝」は猛毒。
リアムを陥れようと度々策を弄するが、なぜか毎回失敗してリアムの成功につながり、感謝されて悶え苦しむまでがワンセット。
- 天城
メインヒロイン。リアムが母ダーシーから買い与えられたメイドロボット。
和風美人の顔立ちに黒髪ロングのポニーテール、裾の長いシックなメイド服という出で立ち。スタイルは巨乳で性欲処理機能付き。
リアムにとっては好みが詰まった理想的な女で、かつ裏切ることがないという安心感から最も信頼を置く保護者にして心の支えになっている。
統治補佐機能が搭載されており、事務処理や計画作成を高度にこなすこともできる。そのため、リアムから政策の詳細を丸投げされたり、衝動買いした艦艇の運用を押し付けられることも多く、しょっちゅう苦言を呈している。
心ない者たちから度々「人形」と蔑まれており、自分を側に置くことでリアムの評判が下がることを懸念している。
- ブライアン・ボーモント
リアムの曾祖父アリスターの代からバンフィールド家に仕えている老執事。アリスターに何らかの恩義があるらしく、彼の死後、暗愚な領主による暴政が続いて領内が衰退してもなお、バンフィールド家に忠実に仕え続けた。
セリーナに伝手があったり、錬金箱や惑星開発装置についての知識を持っていたりと度々役に立っているため、リアムからの信頼は厚い。が、当人はリアムの破天荒ぶりに振り回されて苦労が絶えない。
後書きでしょっちゅう辛いですとぼやいており、本作の見所の一つになっている。
バンフィールド家関係者
- クリスティアナ・レタ・ローズブレイア
リアムに仕える女騎士。通称ティア。
元々は小国の王族出身の姫騎士だったが、ゴアズに故郷を滅ぼされて囚われの身になり、非人道的な人体実験と改造によっておぞましい肉塊の姿に成り果てていた。
リアムがゴアズの海賊団を討伐した際に救出され、希少なエリクサーを使って全身を一から作り直すという治療によって元の姿に戻った。
リアムに少々行き過ぎた忠誠心を抱いており、度々妄想を展開しては悦に浸っている。
マリーと絶望的に仲が悪く、事あるごとに「化石女」と罵るほど。
- マリー・セラ・マリアン
リアムに仕える女騎士。
2000年前の帝国で活動していた優秀な騎士だったが、悪趣味な皇帝によって石化させられ、いつしか海賊の手に渡っていた。
リアムがエクスナー領の海賊団を討伐した際に救出され、石化を解かれたことでティア同様リアムに行き過ぎた忠誠心を抱く。
ロゼッタにはシンパシーを抱いて親身に接する一方でティアに対しては敵意剥き出しであり、事あるごとに「ミンチ女」と罵っている。
- ロゼッタ・セレ・クラウディア
クラウディア公爵家の一人娘。金髪縦ロール。
実家のクラウディア公爵家が2000年前の皇帝の命令で虐げられ続けていたため、極貧の家庭で育つ。
幼年学校でリアムと出会うが、落ちこぼれのままどんなに努力しても周りに追いつけない自分に対して全てを持っているかのように見える彼の優秀さに嫉妬し、刺々しい態度を取る。
このことがリアムの興味を惹き、踏みにじって屈服させる目的で婚約を持ちかけられる。
紆余曲折の末にリアムの正室になるが、当初の反抗的な態度が一転してデレまくるようになり、リアムを困惑させている。
- トーマス・ヘンフリー
バンフィールド家の御用商人にしてヘンフリー商会の会長。
リアムからは悪徳商人と思われており、「越後屋」と呼ばれて贔屓にされているが、当人は至って真面目な商人であり、その呼び名に困惑している。
貿易や戦利品の買取から情報収集まで行い、リアムをよく支えている。
毎度リアムから「山吹色のお菓子」を要求されている。
- セリーナ
侍女長。バンフィールド領に帝国の作法を根付かせるため、ブライアンによって招聘された。
男勝りな口調で話し、スパルタな訓練で使用人やロゼッタを教育する。
実は宰相からの命令でリアムに対するスパイ活動を行なっているが、リアムの本性は見抜けずに彼を名君と報告し続けている。
- クラウス・セラ・モント
バンフィールド家に仕える騎士。変わり者や血の気の多い者が多いバンフィールド家の騎士の中にあってほぼ唯一の常識人。
リアムや部下に振り回されて気苦労が絶えない。
- チェンシー・セラ・トウレイ
バンフィールド家に仕える騎士。中華風の美女。
戦力としては優秀だが、極めて好戦的な性格で主人であるリアムの首を公然と狙っている。
- エレン・タイラー
リアムの弟子。見えないはずの一閃流の斬撃を見切ったことでリアムの興味を惹き、弟子入りする。
- クリフ・セラ・バンフィールド
リアムの父親。リアムが5歳の時に荒れ果てた領地を押し付け、首都星で贅沢に暮らしている。なお、自身も父親に同じようなことをされた模様。
- ダーシー・セラ・バンフィールド
リアムの母親。クリフにもリアムにも愛情はないが、「せめてもの情け」として天城を買い与えている。
帝国
- 安士
リアムが最強の力を得るために招いた剣の師匠で「一閃流」の使い手を自称する。リアムからは達人の雰囲気を持っていると評されるが、実際は案内人の悪意で派遣させられた香具師。
最初に奥義と称して芸を見せ、後は適当に教えて金を巻き上げようとしていたが、予想に反してリアムがメキメキ強くなったことで引き際を見つけられなくなり、結局手が付けられなくなるまで面倒を見てしまった。
気を見計らってリアムに免許皆伝を与えて出て行くが、何も知らないリアムによって名を広められ、無数の人間に追われる立場になってしまう。
- ニアス・カーリン
第七兵器工場に勤める軍人。一見インテリ系の美女だが重度のマシンオタクでリアムに兵器を買ってもらうために下手な色仕掛けを駆使する残念な美人。尤も、ニアスより酷い女は大勢出てくるため相対的にかなりまともな方ではある。
バンフィールド家以外の者でリアムと気さくに会話できる数少ない人物。
- ユリーシア・モリシル
第三兵器工場に勤める軍人。女優のような顔立ちにスタイル抜群の美人で色仕掛けも手慣れたもの。
しかし、リアムに自身の色仕掛けを複数回に渡って無碍にされたことを恨み、「自分に夢中にさせてから捨ててやる」と決意するなどやはり残念な女性である。
- クルト・セラ・エクスナー
エクスナー男爵家の嫡男。
「剣豪」と呼ばれる優秀な騎士を父に持ち、自身も有名剣術の免許皆伝の持ち主。
レーゼル子爵家での修行中にリアムとルームメイトになる。当初は周囲を見下した態度を取っていたが、剣の試合をきっかけにリアムの強さを目の当たりにし、彼の友人となる。
リアムからは悪徳領主の素質を見込まれ、悪徳領主仲間と認定されているが、本人は至って真面目で善良な人物である。
- ウォーレス・ノーア・アルバレイト
帝国の第120皇子。
後継者争いに巻き込まれることを恐れて独立を目指し、幼年学校でパトロンを探していた。
興味を持ったリアムに拾われ、彼の取り巻きになるが、散財してはリアムに小遣いをねだっている。
宮廷にいた頃のトラウマからセリーナが苦手。そのセリーナからは「毒にも薬にもならない」と評されている。
- 宰相
何代にも渡って皇帝に仕え、帝国の全てを知っていると言われる老人。
腐敗が蔓延する帝国を憂いており、リアムに期待をかけているが、セリーナを始めとしたスパイを領内に潜り込ませる抜け目なさも見せる。
- クレオ・ノーア・アルバレイト
皇位継承権第3位の皇子。
敵対勢力
- ゴアズ
第1章のボス。凶悪な宇宙海賊。生きた生物以外なら何でも任意の物質に変換できる「錬金箱」という宝を持っており、その資金力を武器に強大な海賊団を作って暴れ回っていた。
美男美女が醜く変わり果てていく姿を見て楽しむという悪辣な趣味の持ち主。
案内人の策略でバンフィールド領に侵攻したが、予想外の強さを得ていたリアムによって海賊団は返り討ちにされ、自身もリアムに斬殺される。
- ランドルフ・セラ・レーゼル
第2章のボス。リアムが修行先として滞在したレーゼル子爵家の当主。
相手の実家を見て待遇を変えており、首都星での評判は悪いが修行先としては人気だった。
安定した統治のためにはならず者とうまく付き合う必要があると考えており、領内には海賊やチンピラが蔓延っている。
案内人の工作によってリアムの情報が改竄されたことでリアムを冷遇するが、それが元で破滅する。
- デリック・セラ・バークリー
第3章のボス。幼年学校の先輩。素行が悪いが実家の影響力から誰も逆らえずにいた。
ロゼッタにちょっかいをかけて揉み合いになったのがリアムの気に障り、鉄拳制裁を受ける。
このことを逆恨みしてあの手この手でリアムを殺そうとするが全て失敗し、最終的にリアムによって引導を渡された。
- カシミロ・セラ・バークリー
第4章のボス。バークリー・ファミリーと呼ばれる共同体を束ねる大物。
様々な悪行に手を染め、海賊貴族と呼ばれているが、「惑星開発装置」と呼ばれる宝を複数所有しており、エリクサーを帝国に献上して制裁を免れていた。
リアムを脅威と見て潰そうとするが経済戦争では勝てず、遂には武力での対決を挑むが敗北し、全てを失う。
用語
- 一閃流
リアムが安士との修行の末に編み出した剣術。元は安士が奥義と称して見せた大道芸だったが、リアムはどういうわけか剣術として完成させてしまった。
その奥義は「剣を抜く=相手は死ぬ」というぶっ飛び具合にも程があるもの。
- 人形
アンドロイドに対する蔑称。過去に人工知能が暴走したことから帝国では
リアムの前で天城に対してこの言葉を口にすれば例外なく斬られて死ぬ。
- 騎士
特別な教育と訓練を受けた兵士。一般兵士とは銃を持った相手に剣で勝つほどの実力差があり、存在自体が部隊の士気に影響する。
騎士の資格を得るには数十年間に及ぶ修行が必要。
- 機動騎士
人型兵器。近距離での宇宙戦から地上戦まで場所を選ばずに戦える汎用性の高い兵器。
- アヴィド
現行型よりも一回り大きい旧型の機動騎士。力を付けていくリアムから逃げるための時間と資金を稼ごうとした安士の策略で倉庫から引っ張り出され、リアム専用機として再整備される。
高い防御力や空間魔法を使った大きなペイロードを誇るが、操縦アシスト機能がないため、扱いが極めて難しい。
ストーリーが進むごとにどんどん魔改造されていく。
- 帝国
本作の舞台となる星間国家。正式名称はアルグランド帝国アルバレイト王朝。貴族制が長く続きすぎているため、腐敗が深刻。
過去に人工知能が暴走した経緯があり、アンドロイドや人工知能を使う仕事に対して冷ややか。