概要
1993年に第一作『ファイターズヒストリー』が登場。
翌1994年にはネオジオで第二作『ファイターズヒストリーダイナマイト』が登場。
1995年にはスーパーファミコンで続編『ファイターズヒストリー 溝口危機一髪!!』が登場している。
本シリーズは、普通じゃないものを作ることにかけては天下一品のデータイーストの代表作の一つであり、「デコゲー」 と称される同社独特の世界観が構築されている。
・プレイヤーキャラが全員異常に濃いグラフィック&強烈なボイスを持つ(美形担当ですら相当濃い)
・ラスボス、ボーナスステージボスが自社の別作品の主役キャラ、果てはただの牛である
・海外出身のキャラクターにはその国出身の人が声あてをしている為、ガチのネイティブな発音で空耳の宝庫
等々である。
またシステムも、「弱点システム」という独特のシステムが盛り込まれている。
プレイヤーキャラには必ず一箇所弱点が設定されており、この弱点を集中攻撃されてパーツが取れるとラウンド中一度だけ気絶してしまう。弱点はキャラによって頭だったり腕だったりと様々である。
第二作『ダイナマイト』がネオジオ全盛期の時代に発売されたこともあり、知名度は比較的高い。
登場キャラ
- レイ・マクドガル…主人公。主人公らしく爽やか好青年で性能も主人公らしく高性能であったが、それが仇となってか溝口に完全にお株が奪われてしまい主人公(笑)になってしまう。
- 溝口誠…28歳の高校生で喧嘩百段。そのあまりにも濃いキャラクターと主人公っぽい技から、レイではなく彼が主人公だと勘違いするプレイヤーが続出。しまいには主人公の座を乗っ取り、デコ倒産後も様々なゲームにゲスト出演する人気キャラとなった。
- サムチャイ・トムヤムクン…ムエタイ使いのお兄ちゃん。カルト的な人気を誇り、サムチャイオンリーの大会まで開かれたほど。「お前らのお兄ちゃんは不死身だ!」
- ジャン・ピエール…フランスの体操選手。前溜めコマンドの必殺技を持つことが話題になった。「バッコ~ン」「あひゃー」などの空耳が有名。
- 李典徳(リー・ディエンドー)…クンフー使いのストイックな青年。中国拳法といえば逆さになって回転するお姉ちゃんだったり映画俳優だったりする格ゲー黎明期において、八極拳という渋いチョイスをしたデコには感服せざるを得ない。元ネタは「拳児」に登場する李書文。
- マーストリウス…投げキャラ。奥さんがゴツくて怖い。ダブルジャーマンの吸い込みは脅威。元ネタはプロレスラーのブルーザー・ブロディ。
- マットロック・ジェイド…モヒカン。パンクロックバンドのメインボーカル&ベーシストだがどこがパンクなのかは不明。
- 嘉納亮子…柔道女子高生。一見『ワールドヒーローズ』の出雲良子同様彼女をモデルにしたと思われがちだが、嘉納亮子の場合はどちらかといえば浦沢直樹の『YAWARA!』の猪熊柔に近い。
- 劉飛鈴(リュウ・フェイリン)…中国の伝統舞踊「京劇」のトップ女優にして蟷螂拳の達人で、自称「世界の大女優」。ウケ狙いをせずにとことん中国人の顔にしたあたりにデコの偉大さを感じさせるキャラである。
- クラウン…初代と『ダイナマイト』の中ボス。公式設定でショタコンでオカマの道化師。「Pick a card!」の台詞が「へったくそー!」と空耳になるのは有名。その空耳も公式でネタになった。
- カルノフ…初代と『ダイナマイト』のラスボス。デコの代表作『カルノフ』の主人公その人である。ロシアの大富豪であり、謎の主催者「K」として大武闘会「グレートグラップル」を主催。
- 柳英美(リュウ・ヨンミー)…『ダイナマイト』で初登場したテコンドー使いの少女。溝口と一緒に『水滸演武風雲再起』にゲスト出演している。
- ザジィ=ムハバ…ケニアの動物保護官。とにかくグラフィックが濃い。隠し必殺技の「デシカカト」のコマンドが「↑↓+キック」というのが特徴。また移動技のダッキングは飛び道具を回避できる特性を持っている為、レイを差し置いて大会で大暴れした。
- 牛(オックス)…『ダイナマイト』で一本も取られずにクリアすると対戦できる隠しキャラ。元ネタは『対戦空手道』の「さあ牛だ!」。…でも「オックス」って去勢された牡牛を指してるんじゃ…
- チェルノブ…『溝口危機一髪!!』のラスボス。かの問題作『チェルノブ』の主人公その人である。 原作のエンディングの後命拾いしたようである。ぐにゃぐにゃしたモノが嫌い。
余談
登場キャラの一人・溝口誠はその強烈なキャラクター性から、本来の主人公であるレイ・マクドガルを完全に喰ってしまっただけでなく、デコの他のゲームどころか同社の倒産後も様々なゲームにゲスト出演している。
溝口誠の主な出演作品
- 『水滸演武』(PS版)、『水滸演舞風雲再起』
- 『KOF MAXIMUM IMPACT REGULATION "A"』
- 『喧嘩番長3』
詳しくは溝口誠の記事を参照。
訴訟問題
第一作『ファイターズヒストリー』は、カプコンと一戦交えたことでも有名なゲームである。
カプコンが『ストリートファイターII』で開発した6ボタン構成を、本作が採用したことで裁判沙汰になった、という認識である。
しかし同時期には、タイトーの『カイザーナックル』やセガの『バーニングライバル』といった6ボタン構成の格ゲーがデコ以外のメーカーからも発売されている(SNKの『サムライスピリッツ』も6ボタン構成の通常技のシステムだが、ネオジオは4ボタンしかないため強攻撃を同時押しで出すことによる「擬似6ボタン構成」となっている)。
この後にもデコは『水滸演武』で引き続き、6ボタン構成の対戦格闘ゲームを発売したり、他社からも6ボタン構成の対戦格闘ゲームが出ていた事を見ると、これらが訴訟対象となっていない以上、単純に6ボタンが原因だったわけではないことがわかると思われる。
というのもこの問題、元カプコンスタッフがデコに移籍して『ファイターズヒストリー』を製作したという両者の確執が発端で、実際の争点は複数あり、中にはこのスタッフが「ライフバーやタイムカウント周りのソースコードをストIIからまんま流用している」と主張したなんてのもある。
ここからさらにカプコン側が「対戦格闘ゲームというジャンルそのものを模倣している」という、格ゲー市場独占を狙ったとも取れる発言に及んだため、デコは
「対戦格闘ゲームの始祖は我が社の『対戦空手道 美少女青春編』であり、むしろ『ストリートファイター』シリーズが模倣である」
と反訴、同社に対する誹謗をただちに取り止め、謝罪広告を掲載するよう求めていく。
なお、最終的に両者は和解している。
『ゲーメスト』1994年12月30日号の記事によれば、カプコン側は現状の著作権法上で権利侵害を訴えることは困難であることを認識して訴訟を取り下げ、それに伴ってデコ側も反訴を取り下げること、両者は、ゲーム開発には莫大な時間と費用がかかり違法な模倣の横行は開発費の回収を妨げ、ゲーム業界の発展そのものが阻害されることを認識し、今後は共にゲーム業界の融和と発展のために努力することを確認して和解した、とのことである。