曖昧さ回避
概要
日本三大悪妖怪とは、日本の伝承や説話に登場する妖怪の中でも、特に人々に被害をもたらしたとされる酒呑童子、玉藻前、崇徳院を指す呼称。
悪妖怪の悪は「善悪の悪」を指すものではなく、「強く猛々しいという意味での悪」を指すものであろうか。
現在は酒呑童子、玉藻前、崇徳院を指して日本三大悪妖怪とする呼称は2005年頃に創作された俗説・誤用と考えられている。
時系列
新規作成と議論開始
Wikipedia日本語版では2009年7月25日 (土) 11:31に「日本三大悪妖怪」の項目が新規作成されるも、わずか7日後の2009年8月1日 (土) 13:35時点における版で「Template:未検証」が追加された。
これを受けて当該項目のノートでは平成21年8月1日 (土) 22時44分 (JST)から「信頼できる情報源」が見付からないことを理由として議論が開始される。ノートでは2005年5月8日 (日) 03:01時点における版で「玉藻前」の項目に、2005年6月1日 (水) 13:05時点における版で「酒呑童子」の項目に、それぞれ日本三大悪妖怪であるとの趣旨が加筆されていることが確認された。
しかし2005年以降にWikipedia日本語版の記事を引用して日本三大悪妖怪の呼称を使用した可能性が高いと思われる書籍が出版されているものの、2005年以前に日本三大悪妖怪という呼称について言及した書籍は見当たらないことも確認されている。
このため玉藻前や酒呑童子が日本三大悪妖怪であるという出典元が明記されておらず、その信憑性に疑問があると結論されたものの、2011年6月4日 (土) 18:36 (UTC)を最後にノートでの議論が事実上の停止をした。
ニコニコ大百科の活躍
Wikipedia日本語版「日本三大悪妖怪」の項目では「信頼できる情報源」が未検証のまま存続する形となっていたが、ニコニコ大百科「日本三大悪妖怪」の項目では13/10/28 01:49に編集されたリビジョン 1915956 でWikipedia日本語版「日本三大悪妖怪」のノートを参照しつつ根拠が曖昧なものであることを追記している。
特筆に値する事として15/09/10 18:58に編集されたリビジョン 2259418 では、ニコニコ大百科の編集者によって「日本国外への波及」や「日本三大化生」が独自に調査・執筆された。
項目の削除
確認できる出典が求められるWikipedia日本語版では認められず、2016年10月22日現在、Wikipedia日本語版の「玉藻前」と「酒呑童子」の項目から日本三大悪妖怪であるとの趣旨は削除されている。
「日本三大悪妖怪」のノートでは2017年5月18日 (木) 07:42(注:署名なしのため変更履歴を参照)でWikipediaの姿勢が疑問視されると、新たに「日本三大妖怪」の項目が2017年6月9日 (金) 21:35時点における版で作成されている。
「日本三大悪妖怪」のノートでは2017年6月10日 (土) 07:32 (UTC)から再び信憑性の議論が開始され、二度目の議論の結果として「日本三大悪妖怪」の項目は2017年6月14日 (水) 14:32時点における版で「日本三大妖怪」の項目へとリダイレクト化されることとなった。
2021年3月1日現在、Wikipedia日本語版「循環報告」の項目では、pixiv百科事典の当項目を脚注として、循環報告によって虚偽の内容が流布されることになった具体的な事例として日本三大悪妖怪が挙げられている。しかし、一時的にでもWikipediaに載っていたためなのか、実際にこの日本三大悪妖怪が書籍に載るという事態が起こっている。
日本三大悪妖怪問題が残したもの
日本三大妖怪について
文化人類学者・民俗学者の小松和彦が定義した中世の日本三大妖怪として酒呑童子や玉藻前と共に大嶽丸が挙げられている。
これは小松和彦の定義以前より、古典文学においてお伽草子などの説話を超えて語られた酒呑童子、玉藻前、大嶽丸の遺骸もしくは首が宇治の宝蔵に納められたという共通点が下地とされた説である。
また日本三大悪妖怪で大嶽丸ではなく崇徳天皇が並んだ経緯が不明であり、国家守護の御霊として鎮魂されている崇徳院を、現代に再び悪妖怪扱いしていることに風評被害ではないかとの疑問や批判の声もある。
一応世に与えた影響力、スケールの大きさという意味では崇徳上皇を同列として扱うことは分からなくはないが、根拠としては薄弱であろう。
また崇徳上皇は日本三大怨霊として菅原道真や平将門と並び称されることが多々あり、歴史学者の山田雄司によると江戸時代の読本や歌舞伎の影響が大きいとされている。
ちなみに妖怪研究家・作家の多田克己の定義した鬼、河童、天狗の三種が日本三大妖怪であるという説もまた普及しており、根本的に三種類の妖怪を一緒くたにまとめる枠組み自体が近代になって後付け的に作られたものであるということを認識しておくべきであろう。
ネットリテラシーについて
そもそも妖怪に俗説もクソもあるのか? と思われるかもしれないが、Wikipedia日本語版が出典元不明の記述を広める事に加担するのはWikipedia日本語版の信用性に関わる問題でもある。
Wikipedia日本語版の三大方針である「中立的な観点」「検証可能性」「独自研究は載せない」に照らし合わせて引用元の有無が検証され、日本三大悪妖怪は信頼できる情報源がないとして削除された。
インターネットが生活の一部として浸透し、スマートフォンが普及した現代社会ではフェイクニュースやSNSを利用した虚偽の情報が問題として度々話題となる。
同様にWikipediaも人が編集している以上はそれが誤りであれ意図的であれ記述に間違いこそあるが、信頼できる編集をするために上記の三大方針が作られている。
出典元の確認できない日本三大悪妖怪が広まったということは、誰かにとって不利益な捏造やデマであっても日本三大悪妖怪同様に広まってしまう可能性があるとも言える。
Wikipediaに記述されているからといってそれが正しい記述であるとは限らず、その記述に引用元(出典、ソース)が挙げられているのかも同時に確認するべきである。
関連タグ
ミシャンドラ:同じく日本語版ウィキペディア発の創作。Wikipedia書き込み後、一般流通する書籍に記載された点も共通している。
尾獣・カノン(ポケモン):Wikipedia発祥のデマが目立った例。もっとも、前者に関しては、三尾と八尾の名前、二尾の設定は作者が逆輸入した可能性大。
上級国民:デマを通り越して編集マナーすら守らない悪質投稿者によってWikipediaに建てられた記事。