『マイティジャック』とは
近代科学の粋をこらして建造された万能戦艦・マイティ号に乗り込んで
科学時代の悪『Q』から現代社会を防衛する
11人の勇者たちの物語である
(『マイティジャック』OPナレーションより)
マイティジャック
マイティジャックはウルトラシリーズや快獣ブースカで成功をおさめた円谷プロダクションが和製サンダーバードを目指して制作しフジテレビで放映された、1話1時間枠の大人向きSF特撮ドラマ番組である。
最新科学を駆使して世界各国で暗躍する悪の組織『Q』に対抗するため組織された民間軍事組織『マイティジャック』と、彼等の乗りこむ万能戦艦『マイティジャック号』の活躍を描き、前半はスパイドラマ、後半はQの巨大メカとのアクションという構成だったが、多額な制作費の割に視聴率が伸びず全26話の予定が半分の13話しか制作されなかった。
なおマイティジャックと言った場合、番組名の『マイティジャック』、組織としての『マイティジャック』 そして主役メカの『マイティジャック号』をそれぞれ示す場合がある。
なお、この作品が成田亨の円谷プロ在籍時に参加した最後の作品である。
企画
TBSでウルトラシリーズが成功していた昭和42年、円谷英二の次男円谷皐が在籍していたフジテレビから土曜にの夜8時、1時間枠で製作費は1話1000万円という破格の条件で企画が持ち掛けられた。
この好機を金城哲夫らスタッフは「オヤジ(円谷英二)が乗った企画で」と志した。当時イギリスの「TUNDERBIRDS」が大ヒットし、円谷自身も昭和39年の「海底軍艦」、実現しなかった企画「空飛ぶ戦艦」で万能戦艦の活躍を描こうとしていた経緯で、万能戦艦マイティ号を主役とする企画がまとめられた。
主人公チームは当時の反戦的な潮流を反映し、公的機関ではなく、有志市民によるものとされ、単純な戦闘の物語ではなく「防衛、救助、建設」のためのチームとされた。
敵対組織「Q」は、謎の組織として設定され、ナチス残党か狂気の天才科学者の産物か、はたまた宇宙人かと疑われるという設定がなされた。
円谷プロ初の大人向け番組という事で、脚本家も大人ドラマ枠に相応しい陣容が整えられた。
キャストも二谷英明、久保菜緒子と日活アクションドラマで人気の大物が揃えられた。
音楽はフジの皐つながりで冨田勲。文句なしの堂々とした主題歌とBGMが用意された。
一部「ジャングル大帝」のき○い雲そのまんま(略)
実態
メカニック主体のドラマと人間ドラマの融合を図るため、金城は昭和43年秋の放送開始を求めたが、フジテレビから春の大型番組としてスタートするとの方針に押しやられ、脚本の調整が不十分なまま
製作がスタートした。
主人公チームも「防衛」は毎回実践するが「救助・建設」はほとんどなく、更に敵組織[Q」も曖昧な設定のため、脚本家にとって扱いが難しいものとなった。
そもそもメカニックの活躍と人間ドラマを融合させるにはSF的素養が必要なのだがスカウトした脚本陣には無縁なジャンルでもあった。
そのために、中島紳介曰く「メカとドラマが木に竹を継いだ様」な出来となり、視聴率は初回の13%を最高に、4話で1桁に落ち込む悲惨な結果となった。
と
また、主演の当八郎役者の二谷英明氏も成田亨氏がデザインしたMJ戦闘服とヘルメットに対しては「こんな黄色くて派手な衣装とヘルメットは着たくない、出来ればブレザーにしておくれ」と文句を言ったり、特撮はメカニックに関心がなく、情景描写をもっぱらとした大木淳がメイン監督となったため、「メカが主役」という番組に相応しい物にはならなかった。
メカなら佐川和夫なんだろうけど当時オヤジは大木さんを買ってたのね。
円谷英二すら不出来な評判を金城哲夫のせいにする愚痴を残している。
このため早々に打ち切りが決定、予算組の都合で時から7時30分枠に縮小され「戦え!マイティジャック」として26話が継続された。
戦え!マイティジャック
大人向けにつくられた『マイティジャック』が視聴率が伸び悩んだため、より子供向けに路線変更した作品。
全26話。また、放映時間も1時間から30分へと変更されている。
マイティジャックは国際組織アップルの一部門とされ、敵も『Q』以外の複数の組織が存在し、後半には怪獣も登場している。(なお、作中の描写からアップルの傘下に入ったとされる一方で、整合性の取れない描写も見られる為、いわゆるパラレル続編と見る事もできる。)
なお、怪獣に関しては「ウルトラセブン」同様、予算の節約のため、登場する怪獣も殆どが既存の怪獣の着ぐるみの流用、改造と言ったものであった。
また同時期に放送されていた「ウルトラセブン」のモロボシダン役の森次晃嗣が『弾超七』としてゲスト出演している回【「マイティ号を取り返せ!(前・後篇)」】もある。
これと「怪奇大作戦」の不振により、円谷プロダクションは大規模な人員整理を行う事となった。
この続編も、ウルトラシリーズの真摯なものと比較できない酷いっちゃあ酷いもので、全部見るにはかなりの精神を消耗する覚悟が要ります。
かと思えば、上記の「マイティ号を取り返せ!」や最終回「希望の空へ飛んでいけ!」など、1時間枠のものより高度な傑作を生み出しており、企画がもう半年伸びて脚本の調整が出来ていれば、時代が変わっていたかも知れないという夢を一部のマニアに未だに残している。
本作の失敗を受け、金城哲夫はウルトラシリーズの成功に見合わぬ責任を負って円谷プロを去る。
また、美術で多大な貢献をした成田亨も本業の芸術活動に戻る(「戦争と人間」「新幹線大爆破」などで特撮美術には参加している)
も一つ、「THUNDERBIRDS」の人気でプラモデルを大ヒットさせた今井科学が本作を多数商品化したはいいが、作品の不人気に加え、「THUNDERBIRDS」の後番組「CAPTAIN SCARET & THE MISTERON」につぎ込んだ商品化攻勢も不人気というダブルパンチで倒産した。
タイトルロゴの入りもウルトラQのような絵の具を撹拌した物を使用している。(ウルトラセブンを思わせる回転から赤いMJの文字が完成し、弾けると赤背景に戦え!マイティジャックのロゴが現れると言うもの。)
MJメンバー
- 当八郎
マイティジャック隊の隊長で、表の顔は地図店兼喫茶店「ガリレー」の店長でアマチュア登山家。
その正体は矢吹コンツェルンの諜報員にして、地図の世界的権威。リーダーに相応しい優しさと時に非常な判断を下す厳しさを併せ持った人物で、作戦立案を担当。
- 天田一平
気象学の権威で、表の顔はプロゴルファー。彼もまた諜報員としての顔を持ち、マイティジャック隊の副長を務める。隊長と同等の指揮権を有しており、有事の際には八郎に変わって隊の指揮を取る。
戦え!では隊長として登場している。アップル傘下になったためか、好物はリンゴという設定。
- 桂めぐみ
諜報員兼連絡院で、矢吹コンツェルン総帥の秘書を務める。
普段は銀座の喫茶店「J」として働く。
- 英健
世界的な外科医でメンバーからは「ドクター」や「先生」と呼ばれる。
理知的な発言が目立つチームの頭脳の一人で、天田や八郎が不在の際には指揮を取る。
- 村上譲
最年長メンバーで、化学の権威。
普段は花火屋の店長をしていることからもわかるように爆発物のスペシャリストでメンバーからは「博士」と呼ばれる。怪人作りの名人ではない。
- 源田明
表の顔はテストパイロットやスカイダイバーで、隊の優秀なパイロットを務める。
正義感と責任感が強く、血気盛んな性格でチームを引っ張るが、敵の挑発に乗りやすく、融通の効かない所があるのが玉に瑕。
戦え!では副長として登場し、機械工学の専門家という設定になっている。発明の天才ではない。
- 一条マリ
語学の天才で26ヶ国語をマスターしているガリレーの助手。座学だけでなく、運動神経も高い文武両道の人。
- 寺川進
電子工学のスペシャリストで、普段は大学院で研究を行なっているクールな人物。
隊ではパイロットとコンピューターを担当。
- 玉木英雄
チーム最年少で、アマチュア無線を活用して、情報を収集する事に優れる通信士。
普段は大学生であり、通り名は「早耳の玉」。惜しくも11話で戦死してしまう。
- 服部六助
動力部と機関部を担当する。表の顔は自動車の整備工であり、その腕はメンバーから信頼される程、確かである。
- 富井満
メンバーからは苗字を文字って「トミー」と呼ばれる。花屋を経営しており、服部とは非常に仲が良かったものの、11話で戦死。
- 弓田エマ
潜入捜査を得意とする諜報員。インド舞踊を得意としているが、これは演じている真理アンヌがインド人と日本人のハーフである為。髪型がそっくりだが、科学特捜隊員ではない。
- 川上登
主に地上での任務が多いが、航空戦の腕も確かな人物。
- 矢吹郷之助
矢吹コンツェルン総帥にして、MJの創設者。
- 今井進
戦え!からのメンバー。航空工学の専門家であるパイロット。訓練学校を首席で卒業したエリートではあるが、宇宙船が壊れて不時着したモノロン星人を侵略者と一方的に決め付けるような事はせず、命令に背いてでも守り抜く好漢である。右腕を改造した科学者とは多分関係ない。
- 小川喜助
電気工学のスペシャリスト。実家は漁師である。最終回で殉職。
- 江村奈美
村上に代わる爆発物の専門家で、戦え!のメンバーでは紅一点となっている。
普段はオペレーターなどを務めるが、前線に出ることも少なくはなく、格闘能力は高い。
- 清水光夫/船木一郎
最終回で殉職した小川の後任として入隊して来た。
- ゼネラル藤井
アップル極東支部総責任者。
万能戦艦マイティジャック号
マイティジャック号(通称MJ号)は飛行および潜水可能な巨大戦艦、
全長235メートル 全高40メートル 重量28000トン
武装として コバルト砲 レーザー 各種ミサイル 爆雷および対地攻撃用の爆弾を装備する
デザインは「空飛ぶ戦艦」NG稿と、東映「海底大戦争」のマンモス原潜の艦首部分を融合させたもの。
劇中で「MJ号」「マイティ号」と呼ばれる。「マイティジャック号」と呼ばれることは無い。
また艦載機として下記の機種を搭載している。
艦載機及び敵メカニックのネーミングは、オックスベリー騒動で東宝から派遣された才人
赤井鬼介こと宮崎正信による。
そもそも巨大ヒーローが全く登場しない世界観なので、これらのマシンは怪獣とも互角以上に渡り合えるほどの強さを誇る。
- ピブリダー
細みのフォルムが特徴的な戦闘機で、スピード戦に優れる。
ロケット弾が主な武装ではあるが、当時の円谷作品の戦闘機では珍しく翼に回転鋸が仕込まれている。後にこのアイデアはアイゼンボーグ号へと受け継がれた。
- コンクルーダー
スチールブルーのカラーリングが特徴的な水陸両用機。
航空戦力の中では最強クラスで、2門のバルカン砲とミサイルが武器。
ガンクルセイダーの元ネタ。
- エキゾスカウト
高性能カメラを搭載した水陸両用の偵察機だが、投下式の爆弾で戦闘に参加することもある。
モチーフはトビウオ。
- バギー/バンカーH
高性能ヘリ。前者は運搬や救助目的で、後者は戦闘や偵察などの多目的に対応する為にジェットエンジンやレーザー砲などを搭載している。
- ハイドロジェット
高性能潜航艇。機体前部に敵基地に吸着するための強力磁力吸盤を備えているが、特にこれといって戦闘用の武装はない。
- ジプリー
主に海上任務で運用されるモーターボートで、戦闘の際には機関砲で応戦する。
敵「Q」
銀地に黒いストライプがマークされる、異形なメカニック。
しかし成田亨のデザインセンスのせいか、番組の主役を張れそうなカッコよさを誇る。
成田亨降板後の深田達郎、井口昭彦によるデザインも格好いいからさらに困る。
戦闘機 スワロー フライングスカイラル ブラックアロー(フィアットG91プラモデル改造)
潜水艦 リトルQ 名前なし(K52プラント防衛大型円盤潜水艦) スティブラー
サブ・ポータムス ミスティ グラッドストン
万能戦艦 ホエール ジャンボー 名前なし(ジャンボー2番艦)
空中母艦 レイブン クラッチャー
飛行船 名前なし(月偽装飛行艇) スカイマンモス
各話リスト
マイティジャック
放映No. | 制作No. | サブタイトル | 初回放映日 |
---|---|---|---|
1 | 5 | パリに消えた男 | 1968年4月6日 |
2 | 2 | K52を奪回せよ | 4月13日 |
3 | 3 | 燃えるバラ | 4月20日 |
4 | 7 | 祖国よ永遠なれ!! | 4月27日 |
5 | 9 | メスと口紅 | 5月4日 |
6 | 6 | 熱い氷 | 5月11日 |
7 | 4 | 月を見るな! | 5月18日 |
8 | 8 | 戦慄のオーロラ | 5月25日 |
9 | 1 | 地獄への案内者(ガイド) | 6月1日 |
10 | 10 | 爆破指令 | 6月8日 |
11 | 11 | 燃える黄金 | 6月15日 |
12 | 12 | 大都会の恐怖 | 6月22日 |
13 | 13 | 怪飛行船作戦 | 6月29日 |
戦え!マイティジャック
No. | サブタイトル | 登場怪獣/メカニック | 初回放映日 |
---|---|---|---|
1 | かかった罠はぶっ飛ばせ! | パック戦闘機、イルカ型ミサイル | 1968年7月6日 |
2 | ミニミニ島を爆破せよ! | アセンダー | 7月13日 |
3 | 悪魔の海に飛んでいけ!! | - | 7月20日 |
4 | とられたものはとりかえせ!! | ラピッドアロー、クイックシルバー | 7月27日 |
5 | マリヤの像を追いかけろ!! | X特殊ヘリ | 8月3日 |
6 | マイティー号でぶちかませ! | V101号艇 | 8月10日 |
7 | 来るなら来てみろ!! | ブラック・アロー | 8月17日 |
8 | 地獄へ行って笑え! | スーパーカー | 8月24日 |
9 | 地底の悪魔をたたき出せ | - | 8月31日 |
10 | 消えた王女の謎を解け!! | R武装ヘリ | 9月7日 |
11 | 甘い爆弾にくらいつけ! | B4号艇、ブラッドプレーン | 9月14日 |
12 | マイティ号を取り返せ!!(前編) | - | 9月21日 |
13 | マイティ号を取り返せ!!(後編) | - | 9月28日 |
14 | 炎の海を乗り越えろ! | 大ダコ | 10月5日 |
15 | 死人の館に突入せよ! | ミイラ怪人 | 10月12日 |
16 | 来訪者を守り抜け | モノロン星人、パッキー | 10月19日 |
17 | 逃げたぞそれ行けつかまえろ!! | ナナちゃん | 10月26日 |
18 | 水爆恐竜をやっつけろ!! | ザウルス | 11月2日 |
19 | くいとめろ人間植物園! | プラント | 11月9日 |
20 | 宇宙忍者をあばき出せ | ドロン星人 | 11月16日 |
21 | 亡霊の仮面をはぎ取れ | - | 11月23日 |
22 | 東京タワーに白旗あげろ | ビッグQ | 11月30日 |
23 | 殺し屋レディをマークしろ! | 某国爆撃機 | 12月7日 |
24 | ハプニング島へ進路とれ!! | 大ワニ恐竜 | 12月14日 |
25 | 希望の空へとんで行け!前編 | ジャンボー型戦艦 | 12月21日 |
26 | 希望の空へとんで行け!後編 | Q戦闘機隊(F-4ファントム)、ツインヘリ | 12月28日 |
再評価
昭和50年代に入り、特撮作品への再評価が興ると、本作も幻の作品として注目される。
キングレコードによる主題歌・BGM・ドラマ抜粋のBGM・LPレコードの発売を機に、月刊OUT別冊ランデヴーで中島紳介の評論で、直接視聴できない特撮マニアに紹介された。尤も中島の酷評は当時一流のシビアなもので、「メカと音楽は最高だけど本編はダメ」という印象をマニアに刷り込んだ。
「爆破指令」とか特撮含め大傑作なんだし柳瀬観監督・二連作とかもかなり楽しめるんだけど、どうだろうかなぁ。
また『戦え! 』も『忍者部隊月光』の土屋啓之助監督・福原博監督らの参加で作風が東映特撮ヒーロー路線の雰囲気に近く、「自由奔放で何でもあり」という展開では円谷版の『ザ・ガードマン』・『キイハンター』・『プレイガール』とも言える。無印から参加した満田かずほ監督のアクション演出や『特警ウインスペクター』にも参加した東條昭平監督(『戦え! 』がデビュー作)の手腕を見ても、別の視点による再評価の可能性も否定できないんだけどなぁ。
更に昭和60年代にはバンダイ・エモーションレーベルからビデオソフト化され、しかもジャケットは成田亨新規書き起こしという豪華なものであった。
2000年代にアニメリメイクの企画があったものの円谷プロ内のアニメ部門が解散したため実現しなかった。
シビアな評価を受けている本作であるが、度々本作初出のネタが登場する事も少なくはない。
- マイティジャックのマークをそのまま円谷プロのマークとして採用。
- レッドマンでザウルスが登場
- 「THEウルトラ伝説」では度々取り上げられ、「不滅!ヒーローミュージック・コレクション」ではタイトルアバンにテーマ曲を使用、更に巨大ヒーロー怪獣の主題歌がPUされる中、防衛チーム中心の作品で唯一主題歌が流される。
- ウルトラPではパッキーとモノロン星人(の名前を被ったゴース星人)が登場
- ウルトラマンメビウスに登場するガンクルセイダーはコンクルーダーのプロップの改修機。
- ベリアル銀河帝国てはレジスタンスを率いる旗艦としてマイティ号をリメイクしたマイティスターが登場。
と公式からも愛着を持たれている様子。どこかウルトラマンネクサスに通じる優遇っぷりである。