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セクシャルハラスメント

せくしゃるはらすめんと

「セクシャルハラスメント」(セクハラ)は、学校や職場における性的な圧力、または性的な嫌がらせのこと。

概要

実行側が能動的にその行動を起こした結果、相手が性的に加害をされた、と認識した時点でセクシュアルハラスメントは成立する。

ただし、言葉については性的な内容が含まれない場合、セクシュアルハラスメントに当てはまらない、と専門家から判断される例は存在する(【部下との会話】「髪、切った?」はセクハラなのか?)。

相手からの同意・合意・許可・許容、そして、業務上合理的かつ正当な理由がない限り、性的な行為全てが、性的なプライバシーに踏み込んだ言葉全てが、体の(胸や尻、股等ではなくても)どの部位に触れる行動もセクハラとして認識され、そして告発を受け得る。

学校や企業などでセクハラが起こった場合、犯行内容に加え常習性なども加味し、ケースによっては外部の弁護士なども加わる形で加害者側の責任の取り方が定められていく事になる。

この項目では現実世界における犯罪行為・加害行為としてのセクシャルハラスメントについて解説する。

フィクションにおける描写や創作に独特な用例については略称の「セクハラ」の項目で取り扱う。

この項目では、具体的な内容や事例について取り上げて解説しています。人によってはフラッシュバックのおそれもありますので、閲覧にはご注意ください。

解説

男性が年下の女性に行うものというイメージが強いが、本来性別年齢による区別は無く、女性男性に行うケースや同性同士のケースも含まれる。

類似語パワーハラスメントパワハラ)、アルコールハラスメントアルハラ)、モラルハラスメントモラハラ)等がある。

セクハラが被害者に及ぼす害として気力低下、不眠症ノイローゼ対人恐怖症PTSD等が知られている。これらは学業や仕事に支障をきたす。被害者が辞めさせられたり告発を握りつぶされる等の不当な扱いをされる事も多い。

日本においては1989年に流行語となり、1990年代、2000年代、2010年代、を経て報じられる事例が積み重なっていき、社会問題として認知されるようになるにつれ、警察だけでなく官公庁も様々な指導やテキスト資料を整備し、各企業に参照させたりインターネットで公開するようになっていった。

簡潔な判断基準

男性から女性へのセクハラについては以下のような判断基準があり、社内研修などで教育・啓蒙に用いられている。

「自分のが同じ事をされても平気でいられるか」「上司の娘に同じことをできるか」

できない場合、それはセクハラである。大切な存在にはできないこと、権力的バックボーンがいる存在、怖い存在にバレる可能性があると出来ないこと、それがセクハラである、という一つの判断基準である。

現実には実の娘に性犯罪をするケースも存在し、上司がもし許容していたら、上司の娘の容姿などを面白おかしく呼ぶという事も想定できるため、絶対的な基準ではなくあくまで「冷や水をぶっかけて目を覚ます」という意味合いが強い。

英語圏ではザ・ロック・テスト(The Rock Test)が提唱されている。これは相手の女性をドウェイン・ジョンソン(一昔前のアーノルド・シュワルツェネッガーシルベスター・スタローンに近い立ち位置の人物である)に置き換えて想像するというもの(英文リンク、和訳「セクハラ問題のガイドライン 【彼女と彼に対する扱いは同じですか?】」)。こちらは威厳と力を備えた筋骨隆々の巨漢に舐めた態度をとれるのか?というアプローチと言うこともできる。舐めた(人として尊重していない)相手にするのがセクハラ、という基準ということもできる。ドウェイン・ジョンソンが国際女性デーにコメントを表明する人物、という予備知識((ロック様ことドウェイン・ジョンソン、国際女性デーに娘に自信持たせる教育法を公開!))があるとまた見え方が異なってくるかも知れない。

京都大学の学生寮である「熊野寮」で入寮者に配布されるパンフレットにある「ハラスメント加害者にならないために」は七箇条の単文で網羅的かつ、かなり簡潔にまとめてある(悪意ないハラスメントに潜む偏見と差別、京大熊野寮「加害者にならないために」7カ条を読む)。

セクシャルハラスメントの定義

セクシャルハラスメントの定義としては、主に職場や学校などにおける立場・同調圧力・階級の上下関係を利用し、下位にある者に対する性的な言動や行為を行う(強要する)ことが挙げられる。

法的な基準は「性的な行為・言動により相手に不快感を与えたかどうか」なため、加害者側に悪意が全く無い場合でも一般的に性的な行為・言動と受け取られる行為を行っていれば適用される。

事件発生までは、加害者と被害者の関係が良好であったケースもあり、厚生労働省鳥取労働局サイトで取り上げられている(参考資料「雇用均等室の取り扱ったセクハラ事例集 H18 年度~H23 年度」)。

体に触るセクハラ

体にさわるセクハラについては、胸・尻・下半身等に触る行為が言及される例が多いが、官公庁の文書でも「必要なく身体に触ること」と部位を指定したり限定しない書き方もなされている(厚生労働省公式サイトに2009年からあるPDF「事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!」)。

前述の熊野寮の「ハラスメント加害者にならないために」の一条目も「人の体にはさわらない.」であり、ボディタッチその物がハラスメントとして退けられている。

東洋経済ONLINEに掲載された記事では「ビジネスマナーで触れてもいいのは、手の指先からひじまでといわれています。胸やお尻といった性的な場所に限らず、それ以外の場所を触るのはセクハラです。」と記されている(「セクハラに遭いやすい人」が持つ意外な特徴)。

手へのセクハラ事例も存在している。これはビジネスマナーや業務上正当な理由がある時のみ、という事である。

中央大学法科大学院の兼任教員でもある弁護士の圷(あくつ)由美子氏によると、ジャンパーを着ている女性従業員の二の腕に触ったりした管理職に対し、企業側が不適格者として降格・減給処分を下した事例もあるとの事(ボディータッチが多いバイト先の店長 これってセクハラ?)。

ジャンパーという厚着越しであってもボディタッチがセクハラとして認められる一例である。

肩や手、髪へのセクハラ

肩揉みがセクハラと認識されることも多い。日本労働組合総連合会サイトでは「放置すれば就業環境が害されるような事例」として「女性のに触ったりする上司がいる」が挙げられた。現在はサイト改変によりこの文面は(「放置すれば」の句が相対的表現に見えるためか)なくなっている。厚生労働省が配布するpdfでは他のセクハラ案件と同様、職場で用いるアンケートの「2 次のようなことはセクシュアルハラスメントに当たると思いますか」の選択項目に「肩、手、髪に触る」を入れている(事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策31ページ)。平成19年に熊本県教育委員会がまとめた「スクール・セクシュアル・ハラスメント防止のためのガイドライン」には肩や髪に触れられる事が女生徒に強烈な苦痛を与えた事例が反映されている(参考3ページ)。

足へのセクハラ

2020年6月25日には神戸新聞や産経新聞で、兵庫県たつの市議会の出来事として、マッサージと称して女性議員の足裏を揉んだ60代の男性議員が被害者から告発された事件が取り上げられた(辞職勧告動議を否決 女性議員「苦痛」、男性議員「つぼを教えた」)。

文春オンラインの記事「「ガッツがあるね。いいギャップだったよ」サシ飲み強要、足の甲を揉まれ…30代女性が遭遇した、ヤバすぎる“セクハラ上司”」では取材を受けた女性が男性上司から受けた一連のセクハラ行為の一つとして、ファッションに口を出しながらブーツの足の甲を揉む行動が紹介されている。

セクシャルハラスメントの発生件数

内閣府男女共同参画局の発表によると、平成13年から平成17年までは毎年七千強、平成18年から平成23年までは毎年一万一千から一万五千件の相談が都道府県労働局雇用均等室に寄せられている(『

平成24年版男女共同参画白書』第1部第6章第15図「都道府県労働局雇用均等室に寄せられた職場におけるセクシュアル・ハラスメントの相談件数」)。

ここであがっている数字は職場におけるセクハラ事例数であり、学校におけるそれは含まれていない。

全国で毎年、数千~一万超のセクハラが毎年起こっている事を踏まえると、この項目を見ている人の家族親戚友人知人にも被害経験のある人がいることは十分考えられる。

性犯罪全般に言えることだが、実際のセクハラ事件を「自意識過剰」などと軽視する行為が、知らず知らずのうちに被害者の心の傷跡を掻き毟っている可能性がある。

これもまたハラスメントである。

表に出ないケース

レイプ被害同様、セクハラ被害を表明することで好奇の目に晒される可能性、拒んだり告発することで加害者からの敵意を買い危害を加えられるのではないか、という恐れ。

また、会社や学校などの場に居られなくなるのではないか、という危惧、誰に・どこに相談すればいいかわからない等の理由に告発がされないケースもある。

女性よりは少数だが、確かに存在する男性被害者、LGBTである被害者にもこの点で困難がつきまとう。

また被害者を誹謗中傷する。理由をつけて「被害者の過失」なるものを主張するセカンドレイプが後を絶たない。それどころか、加害者を擁護する形で間接的にセクハラに荷担する第三者も存在している。こちらを参照

報道などで表に出たケースでもこれが行われ、被害者の告発への意思を抑止してしまっている。

セクハラ認識の男女差

女性の場合、よほど親しい人でないと異性に触れられると不快・苦痛に感じるが、男性の場合はよほど不快な相手でない限り初対面でも異性に触れられることに抵抗が無い傾向にある参考サイト)。

この性差による感じ方のギャップは、異性間セクハラ全般の発生に大きく関係している。

人事院調査によると「セクハラした」と言われた男性の57.6%はそれを妥当としていない。

先述の鳥取労働局サイトの「セクハラ事例集」に取り上げられたケースにもこの現象が関係していると考えられる。

相手(女性)からすれば「恋人でもないとできない触れ合い」を「恋人でなくてもできる(あわよくば恋愛関係にステップアップするための)スキンシップ」と勘違いしてしまっているわけである。

恋(好意)によって認識が歪み、単に「優しくしてもらった」「恩がある」のを勝手に恋人かそれに近い関係と思い込んでしまったケースもあるだろう。

そして、現在においても完全な男女平等は達成されておらず、社会や会社、大学等において女性の立場は未だ低い。断ったり拒否する事で加害者側からの嫌がらせが行われたり、「覚え」がわるくなる(将来に響く)事を恐れ、被害を受けた女性がノーと言い辛い現状が存在する。

報復を恐れるだけでなく、うまく事を収めたい、相手の面子を潰したくない、そのうち止めてくれるかも……といった様々な考えが女性を沈黙させる(三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」:第1回 まちがいだらけのセクハラ常識 なぜ男性は女性のノーに気付かないか)。

男女間の不均衡は上司と部下だけでなく、男性側が平社員の場合でも起こる。男性であるだけでも有利な状況においては平社員の女性とも力関係は同じになりにくい。女性側が派遣社員や契約社員の場合は言うまでもない。その点を自省しなければ、パワーを持つ男性相手への我慢、不本意な迎合を「相手も受け入れている」「女性も嫌がっていない」と勘違いしてしまう。そして相手が抵抗できないでいるのを了承と勘違いする負のスパイラルも生まれる。このように「フレンテみえ」のテキストでは「鈍感さ」がセクハラの元凶となる、と指摘されている。

同性間のセクハラの事例においては、「同じ男だし……」「女性が女性に聞くんだから……」が個人間のギャップ(感じ方の違い)をさらに無視・軽視される傾向がある。

性的少数者へのセクハラ

ゲイレズビアンバイセクシャルトランスジェンダーアセクシャルといった性的少数者へのセクハラも存在する。

下記の「主な事例」に加え、「ホモ」や「レズ」「オカマ」といった当事者以外が使うと蔑称となる語、ゲイビデオを元にした所謂「ホモネタ」を本人の前で発言する、トランスジェンダーに対し相手の性自認と異なる性別として扱うミスジェンダリング等が含まれる。

しかも、性的少数者はカミングアウト(自身が性的少数者であると相手に伝える事)がしにくい現状があり、周囲の人間も気付かず行い、そのような環境ではカミングアウトもし辛い。

そのため、拒否することもできない、という状況も生まれている。支援団体による学生への調査(LGBTの学校生活に関する実態調査(2013) 結果報告書)によると、やめてほしい、と言えたのは全体の14パーセントだった(6ページ参照)。

ピクシブ株式会社でもトランスジェンダーに対するセクシュアルハラスメント事件が起こった(Pixiv従業員セクハラ裁判事件)。

性的少数者への無理解、侮り、値踏み、そうしたものがありありと現われた典型例とも言える事件内容である。

主な事例

※注意。この項目は無秩序に実例を挙げていった結果乱雑化し原義を歪めた経緯があります。編集を行う際は安易に実例を列挙して乱文にせず、特徴の解説を重視して下さい。

セクハラは主に次の二つのタイプに分類される。

対価型

立場などの上下関係を利用して猥褻行為、性行為、関係性などを強要すること。役職の上位のものが立場を利用して下位の者に対して行われる事例が多いが、下位にある者が自身の立場の低さを逆手に取って上位の者に強要する事例もあり、上下関係は役職などだけで決まっているとは限らない(「パワハラで訴える」などと脅したりする例が確認されている)。

環境型

被害者の職場などの環境において活動意欲を悪化させるセクハラ。性差や性行為などに関連する性的言動、プライバシーや信条に過度に踏み込んだ言動などが当たる。

よく被害者の周囲が原因のセクハラと誤解されるが意味合いが異なる。

用語の本来の意味には性別は無関係だが、日本では当初「男性から女性」に対する行為を指すことが多かった。しかし、2007年4月1日施行の改正男女雇用機会均等法により、「男性・女性から男性」へのセクハラが禁止対象になったほか、雇用管理上必要な「措置」をとるよう事業主に義務付けられた。

セクシャルハラスメントの防止策

  1. 相手を人間として尊重する。
  2. セクシャルハラスメントは相手の心身と尊厳を傷つける人権侵害行為であると踏まえる。
  3. 悪意なく、あるいは悪意を自覚しないままハラスメントが行われ得る事を踏まえる。
  4. 恋愛、結婚や出産などは各人のプライベートであり、立ち入る権利は誰にも無い。服装についても正当な服務規程などの理由以外で口出しされる謂われはない事を確認。
  5. 「女だから」「男だから」等を頭に付けて決めつけない。特に前者は体格差が関係しない知性等にも向けられやすいものであり、各人の能力をそれでもって否定する事に直結している。また、生き方、人生や役割を決めつけ、押しつける事に繋がる。
  6. 異性との感じ方における性差、性的少数者がおかれた自身とは異なる状況を踏まえる。
  7. 何らかの形で直接接触する必要が生じた場合、そこに仕事上の正当性・合理性があるか考える。
  8. 「拒否されていない」は合意確認にはならない事を踏まえる。された側はとっさには反応できない事も多く、特に行う側が上司やマジョリティなど立場が上位である場合、それだけで萎縮し沈黙を強いられてしまう。
  9. 性的少数者が性的少数者である、という情報はこちらから確認できない(してはならない)。そのため、常に彼らを傷つける言動を行わないように意識する。
  10. 告発があった場合、告発者を誹謗しない。(また同様に、容疑者となった人物に対しても無闇に誹謗しない)
  11. 以上のことを忘れたり失念しないよう、セクシャルハラスメントについて定期的に復習し、再確認する。

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