概要
古生代カンブリア紀に生息した古生物の種類(属)の一つ。カナダのバージェス動物群で見つかった「Opabinia regalis」(オパビニア・レガリス)という1種のみ知られている。
学名「Opabinia」は発見地(カナダブリティッシュコロンビア州バージェス頁岩)の付近にあるオパビン峠(Opabin Pass)に由来する。現地の言葉で「Opabin」(オパビン)は「岩」を意味する。
形態
体長4-7cm。頭の上には(全てが複眼と思われる)大小五つの目がキノコのように盛り上がり、下から伸びた一本の掃除機のような吻にハサミがあるという個性的な姿が大いに話題になった。
1970年代に復元図が学会で発表されたとき、会場は爆笑の渦に包まれたという。
アノマロカリスなどのラディオドンタ類に近縁で(後述)、よく見るとラディオドンタ類と似た体制を持つ。数多くの鰭や鰓、扇子のような尾はもちろん、一見異質な吻もラディオドンタ類などに見られるような1対の触手から左右癒合したもので、そのため口はハサミにはなく、頭の下で後に向かって開いている。
因みに、そのハサミは(左右で対になる触手が元のため)左右に開閉という事実は化石でも顕著に表れるが、何故か1970年代の旧復元画からずっと異様な上下開閉構造に描き間違われがち。
体の下にパンブデルリオンのように柔らかい脚を持つ可能性が高いが、この特徴は化石ではあんまりはっきりしない。
生態
海底を泳ぎ、その吻で他の小動物を捕食する肉食動物であったと考えられる。
また、その5つの目のお陰で視野が非常に広く、同じ生息地でより食物連鎖の上位にいる捕食者(例えばアノマロカリス)をすぐに発見するのに役立つと考えられる。
分類
一見現生の動物群に全く似てない奇抜な姿で、かつては分類が困難な不詳化石の1つであった。後に研究が進み、アノマロカリスを含むラディオドンタ類と共に原始的な節足動物として広く認められるようになった。節足動物の特徴的な外骨格や関節を持たないが、盲腸や触手、複眼、鰓の構造は節足動物的で、一見奇抜な大小5つの目も、節足動物の目の基本構造(3つの単眼と2つの複眼)に対応するように思われる。
長らく「オパビニア類」(オパビニア科)というグループの唯一の種類であったが、2022年にアメリカ産の同科の種類ユタウロラが記載されるようになった。
これらはラディオドンタ類やパンブデルリオン、ケリグマケラと共に恐蟹類としてまとめられる。