解説
創設年 | 1995年 |
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加盟年 | 1997年 |
ホームスタジアム | ノエビアスタジアム神戸 |
クラブカラー | クリムゾンレッド |
マスコット | モーヴィ |
前身は川崎製鉄水島サッカー部(1966年創立)であり、1995年に神戸市(および市民団体)による川崎製鉄本社(神戸市にある)への要請によって同社の運営から引き離され、ダイエーをメインの親会社として成立したクラブチーム。
が、初練習日の朝に阪神大震災に遭遇。ダイエーが大打撃を受けて事業編成の見直しを余儀なくされ文化・スポーツ事業を一気に縮小。ヴィッセルもまたその対象となりダイエー傘下から切り離されてしまう。その後は県および市の援助を頼りに、地元企業をスポンサーとして細々とやっていたが、震災復興の中においては、それら団体にチームを支える余力は無く、結果として県や市に対して莫大な累積赤字を垂れ流す、地域のお荷物と化していた。
結果として2004年に経営母体が破たんし、楽天オーナー三木谷浩史の個人資産会社「クリムゾングループ」に身売り。
その関係もあってこの時点からプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルス同様、楽天グループと見做される事も多かったが、楽天はユニフォームスポンサーではあったものの、ヴィッセルとは直接の資本関係が無く、いわば異母兄弟会社的な存在がしばらく続いた。
しかし2014年にクリムゾンから楽天へ株式譲渡が行われ、正式に楽天グループ入りを果たす。
J1での最高順位は2021年の3位。天皇杯は2019年(2020年1月1日)に初優勝。
2005年と2012年の2度J2降格を経験しているが、いずれも1年でJ1復帰を果たしている。
2017年にはルーカス・ポドルスキ、2018年にはアンドレス・イニエスタ、2019年にはダビド・ビジャと楽天の膨大な資金力を活かして欧州リーグで活躍した選手を次々獲得している。
2020年1月1日、新国立競技場杮落としとなった天皇杯決勝で勝利して天皇杯初優勝。
衝撃の2022年
上記のとおり、2021年にはクラブ最高の3位となり、ACL出場権を獲得したが、2022年は守備の要だったトーマス・フェルマーレンの退団、主力ストライカーの大迫勇也や武藤嘉紀の負傷離脱などが重なり、開幕から7戦勝ち無しとなる。これを受けてクラブは前年3位に導いた監督の三浦淳寛を契約解除。暫定監督のとして2試合指揮したリュイスも2連敗、新たに監督に就任したロティーナでも中々勝てず、初勝利を納めたのは相性の良いサガン鳥栖戦。開幕から13試合目のことだった。
スコアも4-0とこれまでの絶不調が嘘かのような大勝。これを機に調子を上げていくと思われたのだが...
その後も調子を上げることはできず、ロティーナは就任して僅か9試合で解任された。あまりにも早すぎる解任であること、すぐにチームに戦術が浸透するわけではないこと、そもそもロティーナが守備に定評のある指揮官でチーム作りに時間がかかる監督でありながら招聘したのにすぐ解任したことなどにより、解任劇には批判が相次いだ。なお、9試合で2勝しかできなかった。後任は幾度となくチームを立て直した吉田孝行。
すると、これまでの絶不調が嘘のようにチームは波に乗る。大迫勇也の途中出場からの3試合連続得点、3連勝や5連勝などで勝ち点を一気に稼いでいき、連敗を2回したものの、あっという間に11勝達成。前半戦終了時点では断トツの最下位だったチームは比較的早い段階で残留を確定させた。最終結果は11勝7分16敗。16敗はこの年降格した最下位のジュビロ磐田と同数であり、J1全チーム最多タイ。
移籍関連について、開幕前は浦和レッズを契約満了で退団したお祭り男こと槙野智章や2019年に横浜F・マリノスで主力選手として優勝を経験した扇原貴宏などを獲得。夏にはサガン鳥栖の右サイド職人飯野七聖やKリーグで大暴れしたステファン・ムゴシャなどを獲得した。しかし、槙野は槙野劇場を起こせず、扇原もあまり活躍できず、ムゴシャも数試合出場したのみで無得点と散々な結果に終わる。飯野やマテウス・トゥーレルは主力級でそこそこ試合に絡んだが、終盤はケガに泣くことになった。
2023年から
前年の反省を活かし、今回は吉田孝行監督が開幕から指揮。すると、前年の勢いそのままに大迫と武藤のコンビが猛威を奮い、得点・アシストと勝利を次々重ねていき、上位争いどころか優勝争いに加勢。前半戦終了時点で敗れたのは横浜F・マリノス・浦和レッズ・セレッソ大阪の上位勢のみであり、首位の期間はマリノスよりも長かった。大迫・武藤らに頼りっぱなしで選手交代も少ないため、選手層の薄さが不安視されているが、後半戦もどこまで勢いを保てるかが注目である。
神戸の地に降り立った大物選手
・三浦知良
言わずと知れたキングカズ。2001年~2005年夏に在籍。加入1年目は活躍したが、その後はケガやポジション争いの激化により出場機会は徐々に減少。2005年は監督の構想外となってしまい、2005年夏にJ2の横浜FCへ移籍。あちらでは重要な広告塔の役割も担い、計10年以上も在籍することになる。50代後半となった現在も現役続行中。その度にいつまでやるのかと言われ続ける。
2007年~2008年、約半年のヴォルフスブルク移籍を挟んで2009年夏~2012年に在籍。J1最多得点を誇るJリーグ屈指のストライカーである。2007年、2008年には2桁得点を達成し、復帰後も2009年は途中出場が増え、2011年はケガも多かったりしながらそれなりに結果を残す。ただし、2010年と2012年は不調に終わり、2012年には神戸もJ2降格。かねてより熱いオファーがあった川崎フロンターレへ移籍し、川崎では史上初の2年連続単独得点王に加えて3年連続得点王という偉業を成し遂げる。その後はFC東京、ジュビロ磐田、東京ヴェルディ、と転々とする。最後はセレッソ大阪に復帰し、復帰した2021年を以って現役引退。現在は中澤佑二のような元アスリートのタレントとして活動中。
・ルーカス・ポドルスキ
2017年~2019年に在籍。欧州各国の名門クラブの主力として活躍し、ドイツ代表では129試合48得点を挙げ、FIFAワールドカップでは、2006年大会で最優秀若手選手に選ばれ、2014年大会で優勝するなど数々のタイトルを獲得したワールドクラスの選手である。2018年からはキャプテンも務めた。2019年からは外国人選手の増加に伴ってメンバー外になることも増える。そして、天皇杯優勝というクラブ初タイトルという置き土産を残し、契約満了という形で神戸を退団。現在も現役続行中である。
2018年夏~2023年夏に在籍。FCバルセロナの中心選手としてワールドカップ制覇も経験した世界的トッププレイヤーである。創造性豊かなパス能力を持ち、洞察力、卓越したボールコントロール技術、プレーの流れを読む能力が非常に優れており、度々彼が超人的なプレーを見せると「異次元」「ワールドクラス」との声がSNSで噴出する。2019年、2021年にはベストイレブンにも選出され、天皇杯制覇にも貢献。しかし、2023年はチームの方針が変わって出場機会が激減。神戸で引退したい旨を当初は言っていたが、まだ現役でやる希望やもっと試合に絡みたい旨を明かし、2023年夏で神戸を退団。移籍先に注目が集まる。
・ダビド・ビジャ
2019年のみ在籍。2008UEFA欧州選手権、2010FIFAワールドカップ南アフリカでそれぞれ得点王に輝き、代表通算59得点はスペイン代表史上最多得点を誇るストライカーである。彼が神戸に来た時は36歳だったが、6戦6発などもあって、2桁得点を最速で達成。結果28試合13得点の結果を残す(惜しくも得点王には2点届かなかった)。また、年間最優秀ゴール賞も受賞し、天皇杯制覇をピッチ上で迎えて現役引退。華麗なる現役ラストシーズンとなった。
・山口蛍
2019年より在籍。豊富な運動量と高いボール奪取能力を持つ、中盤のダイナモである。時折放たれる強烈なミドルシュートも特徴。しかし、海外からセレッソへ復帰時に生涯セレッソ宣言をしていたにもかかわらず神戸へ移籍したため、セレッソと神戸の試合では彼がボールを持つたびにブーイングが巻き起こったという。神戸でも日本人トップレベル級MFの実力を発揮しており、2021年の負傷離脱を除くと、現在進行形でほぼ全試合に出場している。特に相手の3人目から9人連続PK失敗となったFUJI XEROX SUPER CUPでは彼が決めて神戸2つ目のタイトル獲得に貢献。ビジャからも「Jリーグで一番凄いと思った」と認められている。
・トーマス・フェルマーレン
2019年夏~2021年在籍。アーセナルで活躍したが、神戸移籍までの数年間は苦しんでいたCBである。神戸では天皇杯制覇、神戸初挑戦となったACLベスト4、2021年の神戸最高の3位など、神戸の躍進に大いに貢献。彼がセレッソ大阪戦で決めた神戸時代唯一にして現役ラストとなったシュートはATで同点に追いつき、連敗を阻止する貴重な同点弾であり、相当な爆速シュートだった。神戸は契約更新を望んだが、ワールドカップ出場を目指すためにヨーロッパでのプレイを望んだため、2021年限りで契約満了で退団。その後は現役引退し、代表コーチに就任した。彼が抜けた後、2022年の神戸は上述の通り、苦しむことになる。
・酒井高徳
2019年夏より在籍。豊富な運動量と屈強なフィジカル、さらには高精度な鋭いクロスを武器とする左右どちらでもハイクオリティでこなせる鉄人SBである。ブンデスリーガで約8年間、日本代表でも長く活躍した。神戸に来た時の印象を強力な外国人選手に萎縮する日本人選手の姿があり、「ぬるい」と一蹴。神戸にワールドクラスの水準を植え付ける。2021年には全試合出場達成し、クラブ最高の3位に大きく貢献。2022年も引き続き全試合出場し、フィールドプレーヤー最長出場時間も記録する。
・大迫勇也
2021年夏より在籍。「大迫半端ないって」でお馴染み、全ての能力が高水準の万能ストライカーである。ブンデスリーガでも多くの試合に出場していたが、トップ下やSHでの起用など本来望まれる位置ではない位置での起用が多く、本来の強さを発揮できない時期が長く続いていた。神戸に来てからは純粋にストライカーとして起用されるようになり、2021年は11試合で4得点4アシスト、2022年は負傷離脱してチームも苦しんだが、復帰してからは3戦3発などで復調して「半端ない」プレーを見せた。2023年はその「半端なさ」をJ1で席巻中。14試合目で2013年以来の2桁得点を達成しており、左WGの汰木康也、後述の右WG武藤嘉紀と共に猛威を奮っている。神戸加入当初の年俸は日本人選手最高の4億円とされる。
・武藤嘉紀
2021年夏より在籍。大迫と共に神戸へ来た。圧倒的な身体能力を持つ屈強なFWである。ブンデスリーガでは日本人史上2人目のハットトリックを達成する、公式戦で2桁得点を達成する、プレミアリーグやラ・リーガでも点を取り、日本人で初めてヨーロッパ3リーグ全てで点を取るなどを記録を残す。神戸でも夏に加入したにもかかわらず、2021年は14試合5得点7アシストという驚異の結果を残すが、2022年は自身のケガによる離脱やチームの低迷などで苦しんだ。吉田孝行監督の下では、4-3-3の右WGとして高い身体能力と優れたテクニック、大迫に負けず劣らずのマルチさと大迫との抜群のコンビネーションを活かして再び猛威を奮っている。
・槙野智章
2022年のみ在籍。言わずと知れたお祭り男。1対1の局面に強く、田中マルクス闘莉王ほどではないが、得点力と闘争心が非常に高いDFである。前年の天皇杯決勝では劇的決勝弾を決め、浦和レッズのACL出場権獲得、2023年に達成されたACL制覇への道を切り開いた。しかし、当時のリカルド・ロドリゲス監督が若手中心のチーム作りを進めた流れで浦和を退団。早速神戸移籍説が出るが、やはり神戸へ移籍。上述のフェルマーレンの抜けた穴埋めと考えられていたが、チームの不調や失点の多さからもうかがえるように、穴の大きさは彼が埋められるほど小さくはなかった模様。浦和にいたときほど試合には絡むことができず、2022年を以って現役引退。移籍後初の古巣戦のATで決めたイニエスタのアシストからの恩返しヘディングシュートが神戸時代唯一にして現役ラストゴールとなった。その後はホームゲームのゲスト出演やクラブのYouTube企画など、各種イベントへの出演を通じてヴィッセルの魅力を発信するエバンジェリストに就任した。
・ステファン・ムゴシャ
2022年夏より在籍。Kリーグで18試合14得点という圧巻の結果を残したモンテネグロ代表のFWである。残留争いに苦しむチームの起爆剤となるような活躍を期待されて飯野と共に加入したが、結果として5試合出場85分のみのプレー、無得点の結果に終わる。2023年も大迫の壁が高く、試合にはほぼ絡めなかった。結局、2023年夏に出戻りすることが決定した。
チームや選手の特徴
上述のように、圧倒的な資金力を活かして話題性抜群の補強をするのが特徴。年俸もイニエスタが32億、山口・高徳が1億数千万、フェルマーレンが5億、大迫が4億、武藤が2億、ムゴシャが2億5千万と圧倒的な高さである。実力も折り紙つきであるものの、逆に彼らが圧倒的過ぎてサブメンとの実力差が激しいことによる彼らが離脱・退団時の対応(実際、2022年は上記のような緊急事態になってしまった)や全体的に年齢層もやや高めなので運動量の低下などが懸念される。
このこともあってか、若手には運動量が多い選手や快速の選手が多い傾向にある。
通算成績こそ負け越しているものの、2012年の敗戦を最後に、2023年現在、対鹿島アントラーズ戦のカシマスタジアムでは2014シーズンから10年連続無敗を記録している。これはカシマスタジアムでの無敗記録としては最長である。ちなみに2位はJクラブで唯一アントラーズに通算成績で勝ち越している川崎フロンターレで、こちらは2015シーズンから9年連続無敗である。
マスコット
神戸名物と言えば…で、牛の「モーヴィ」。
ヴィッセルサポーターは敗戦後に活を入れる為に、また他チームサポーターは試合前の験担ぎの為に
「モ ー ヴ ィ し ば く」
と称して牛肉料理を食べる習慣があるとか…。
スタジアム
御崎公園球技場(ノエビアスタジアム神戸)。開閉式スタジアムとなっており、座席部分には空調も設置されている。
ヴィッセルのゴール裏の一部の席には床面に発電装置が設置されている。神戸サポーターが飛び跳ねることで発電されるというシステムである。ただゴール裏の座席数はメイン・バックに比べてかなり少ない。
神戸市地下鉄海岸線の和田岬駅と御崎公園駅の中間に位置する。和田岬駅はJR和田岬線も来ているが、運行時間が非常に短く、スタジアムアクセスとして使える場合はむしろ奇跡的。もちろん利用できる時間と試合が合う場合はわざわざ乗るアウェイサポーターも多い。また土休日の試合は終了後のみJR兵庫駅への臨時バスも出る。
その他
前身について
前身クラブの「川崎製鉄水島サッカー部」の名が示す通り、ヴィッセルとなる以前は岡山県倉敷市水島を本拠としていた本来は本社付きではなく支社付きのクラブチームであった。そのためアンサイクロペディアあたりではヴィッセルの成立について「ファジアーノ岡山の項目を読め」と書かれネタ化してしまうほど。(あながち間違いでもない)
当然、水島時代のホームグラウンドもノエスタ(御崎公園)ではなく、実はキャパシティの関係から岡山県総合グラウンド陸上競技場(現・シティライトスタジアム/Cスタ。現在におけるファジアーノ岡山のホームグラウンド)をホームグラウンドにしていた。
またファジアーノ岡山の直接の前身となったリバー・フリー・キッカーズ(RFK)は、川崎製鉄水島サッカー部の実質的なセカンドチームであり、実はファジアーノが成立するまではヴィッセルのセカンドチームとしても機能していた歴史を持っている。
そのためヴィッセルとファジアーノは共に川崎製鉄水島サッカー部を同祖に持つ兄弟チームであると評される事があり、両者の対決カードは川鉄ダービーと呼称される事もある。
ちなみに、この川鉄ダービー。2012年のヴィッセルJ2陥落によって、2013年のJ2第11節戦のヴィッセル側ホームゲームで史上初の実現となった。その際にはヴィッセル側サポーターからファジアーノ側サポーターに対して「ようこそ。川鉄に縁を持つ友よ! 万感の思い胸に今日を戦おう!」というメッセージが示された。
因みに『川崎製鉄』は前身は川崎重工業(旧・川崎造船所)の鉄鋼部門で1950年に独立。
2003年に『日本鋼管』(NKK)との間で事業統合しJFEスチールに商号を変更している。
尚既神断
「尚、既に神戸には断りを入れた」の略。
チームの成立が成立であり、かつ身売りまで経験してしまったためか「チームの状況? なにそれ」と言わんばかりに有名選手にオファーを出しまくっていた頃、選手が移籍するたびに真っ先に神戸に断りの連絡を入れていたことから生まれたスラング。
今でも移籍シーズンとなるとロアッソ熊本の「池谷即電」と並んで使われている。
女子サポーター
ヴィッセルの女子サポーターは「KOBE Vi女」である。
関連タグ
ファジアーノ岡山:かつての下位チーム。川鉄ダービーを構成する。
徳島ヴォルティス:瀬戸内海を挟み神戸淡路鳴門自動車道(大鳴門橋・明石海峡大橋)で繋がる隣県徳島県のチーム。海峡ダービーを構成する。