CV:大川透
人物
カガリ・ユラ・アスハを引き取った彼女の養父。
キラとカガリの実父であるユーレン・ヒビキとは学生時代の友人だったものの、ウズミ自身は「命は自然に生まれ落ちるもの」、「人が操作していいものではない」というヒビキ博士の妻であるヴィア・ヒビキと同じ考え方を持っており、そのためヴィアと同様にかつての友人とは最終的には対立していたと思われる。そしてそのヴィアとも生前交流をしていた事もあり、カガリを引き取るのはその縁もあった。なお、ヴィアが妹夫妻(ハルマ・ヤマトとカリダ・ヤマト)に託した双子のうち、キラの引き取りに関しては「この子は普通の子として育てたい」とするヤマト夫妻の意思を汲み取ったため。
カガリが砂漠で世話になったゲリラ「明けの砂漠」のリーダーであるザイーブ・アシュマンは大学でのウズミの恩師でもあり、カガリへの勉強という目的で彼らに預けていた。
パナマ攻略戦後、再び首長の座に立ち平和維持を宣伝する。しかし、パナマ攻略戦によりパナマ基地のマスドライバーを失ったことから、地球連合首脳会議にてブルーコスモスの盟主であり国防産業理事でもあるムルタ・アズラエルがオーブのマスドライバー施設とモルゲンレーテの工場を手に入れるための侵攻を示唆し、ユーラシア連邦と東アジア共和国は反対したものの大西洋連邦は賛同したため、オーブ侵攻は時間の問題となっていた。
それから2週間後に大西洋連邦がオーブ解放作戦を実行したことで、新型のGAT-Xシリ-ズに搭乗するブースデットマンや連合初の量産型MSストライクダガーによる、圧倒的軍事力に物を言わせた物量攻撃によってオーブは追い込まれていくことになり、オーブ解放作戦開始2日目の昼、カガリに二人の赤子(キラとカガリ)と二人を抱いている母親らしき女性が写った写真を見せ、「姉弟がいること」と「カガリの父であったことは幸せだった」と告げ、クサナギに乗せる。
その後、カガリの乗るクサナギが無事出発したことを知った直後、マスドライバー施設とモルゲンレーテの工場を連合に利用させないために爆破し、それらの責任の所在を有耶無耶とするため自身も側近と共に炎に包まれて死亡した。
来歴
オーブ諸国の氏族における土着宗教の有力家系であるアスハ家に在籍する。
とはいえ、オーブ氏族の掟で五大氏族に繰り上がった家は実子を次期当主にできないため、ウズミ本人が先代と血のつながりがあったかは不明瞭である(少なくともウズミ本人はカガリを養子縁組している)。
彼の所属するアスハ家は、オーブにおける日本人移民流入の際には文化的な折衝を果たし、その後は宇宙港の誘致など、経済分野で活躍したという。
ウズミ本人もヘリオポリスといったコロニー事業、アメノミハシラといった軌道エレベーター事業は精力的に行っており、それ故に発展を遂げたオーブではカリスマ的な人気を誇る指導者であった。
また、技術立国としてのオーブの生き残りを強く志した人物であったため、ブルーコスモスや連合国による迫害から逃れたコーディネイター移民を積極的に受け入れた。
そうした中にはザフトから離脱した技師もいた事や、コーディネイター故にプラントと繋がりを持つ国民の為に、水面下での外交ラインを構築したりもしている。
シーゲル・クラインの故郷であるスカンジナビア王国の王室とは個人的に親しく、連合国がプラントからのニュートロンジャマーによる経済制裁によって窮乏した際は、コーディネイター技術者が開発した工業製品を輸出する等、オーブが中立国としての地位を保つために尽力し、またそれらによって経済制裁の犠牲者を可能な限り減少させる事にも貢献している。
一方で、存命時には下級氏族だった頃のセイラン家との子息の婚姻を了承するなど、国内での政治的な根回しも怠らなかった。
サハク家のGAT-X/ASTRAY独断開発の折も、将来オーブも軍事的侵攻を受ける可能性を視野に入れた結果、国際問題化する事で彼らを処分する駆け引きを捨て、国防用MSの開発を黙認。その引責辞任を自身が負い、同時に首長の座はホムラに譲りつつ、実際の指揮は自身が行う黒幕的な立場を演じた。
だが、パナマ基地のマスドライバーを破壊されたことにより宇宙へ物資を送れなくなった連合と、その劣勢な戦局の反動によりブルーコスモスの影響が強くなったことで中立国への軍事侵攻も厭わなくなった大西洋連邦による「オーブ解放作戦」の発令によって、主権放棄と徹底抗戦の二択を迫られた結果、抗戦の構えをとり国家は戦火に呑まれてしまう。とはいえ、オノゴロ島を第一防衛ラインとして設定して戦力を固めたことにより本土やその他の島への戦火の拡大は防ぐように立ち回った。
この際、オーブ占領による宇宙港入手を危ぶんだザフトからの援軍も打診されたが、大西洋連邦の所在地であるアメリカ大陸とザフト駐屯基地の所在地であるオーストラリアに挟まれた立地であるオーブが、連合とザフトの激戦の中心地になることを恐れからこれも断り、連合からの脱走艦でありオーブで保護していたアークエンジェルや私情で加勢したバスターとジャスティスが義勇軍となる形で連合軍と戦うことになるも、たった1日でオノゴロ島は壊滅状態に追い込まれる。
最終的には政権をホムラに任せ、残された軍備を宇宙に逃がしつつ、自身はマスドライバー施設とモルゲンレーテの工場を爆破しつつ、五大氏族の族長らとともに自爆した。
オーブ解放作戦2日目という極めて早いタイミングでの自爆であったが、これにより大西洋連邦側に侵攻する理由を失い、被害をオノゴロ島とマスドライバー施設、モルゲンレーテの工場のみに抑えることに成功した。さらに、自爆を選択を選択して全責任を抱え落ちすることで、現政権に戦争責任が及ぶのを防いだ。要するに、ホムラたちに「あの徹底抗戦はウズミが自分たちを締め出して勝手にやったことで、自分たち現政権には何も悪くない」「責任を取らすにしても既に死んでいる」と言わせるための自爆である。
政治家として
存命時に有力な政治派閥であったサハク家はウズミの行動を理想主義と批判し、積極的な地球連合との接近を行っている。
とりわけ子息であるロンド姉弟はオーブ解放作戦の折にはウズミの政治的失態であると批判しているが、サハク家は開戦初期より連合とザフト双方への能動的な介入(連合にはGAT-Xシリーズの開発の協力、ザフトにはGAT-Xシリーズの情報提供等を行っている)を行っており、それによってオーブの技術力差の優秀さに着目したアズラエルが、オーブへの軍事侵攻を決行させることに繋がったため、オーブを守りきれなかった責任はウズミにあるが、オーブが侵攻された原因を作ったのは他でもないロンド姉弟にある。
オーブ解放作戦後、ロンド姉弟オーブ主導権を巡ってカガリ暗殺を計画しているが、ウズミに全ての責任をなすりつける形で「勝ち逃げ」同然の行動に出るだけでなく、娘のカガリまで手に掛けようとする卑劣さから、実行役を任されたエリカ・シモンズに決別されている。
さらに暗殺計画の失敗後、弟・ギナが叢雲劾によって死亡した結果、オーブの氏族から離脱したロンド・ミナ・サハクは、宇宙ステーション「アメノミハシラ」を拠点に活動を行う事になり、CE73年の時期には「オーブの影の軍神」とも呼ばれることになる。
その後、人間のリバタリアニズムを掲げた「天空の宣言」をカガリが黙認した事で、ミナは彼女に謝意を感じている。
オーブ出身のシン・アスカは、解放作戦の折に自身の家族が落命したことから、「ウズミは政治的理念を優先したから多くの国民を犠牲にした、戦争を続けるために降伏をしなかった」と断じて批判している。もっとも、大西洋連邦は48時間の攻撃猶予を与えており、その間オーブは民間人の避難誘導を行っていた(なお、放送から19年後に起こったウクライナ侵攻により避難は48時間でも全く足りないことが判明した)。
そもそも、開放作戦の当時、世界情勢はまさに「最悪」と言える程の状況下にあった。オーブ解放作戦の起こった前のパナマ攻防戦では、アラスカ攻略作戦である「オペレーション・スピットブレイク」に実質敗戦した報復から、ザフト兵達が国際条約を無視して投降した連合兵を虐殺する事態が巻き起こり、当然これによって連合側のコーディネイターへの憎悪もかつて無いまでに高まっていた、さらに連合とプラント双方の指導者に至っては、相手の「殲滅」以外を考えない極端なまでに先鋭化された過激思想の持ち主であったという始末であった。
そんな状況下でオーブが連合側に降伏すれば、オーブ在住のコーディネイター達の命がかえって危険に晒されるのは明白で、オーブを連合支持国と見なしたザフトによる総攻撃も避けられなかった。かと言って、ザフト側の援軍を受けてしまえばオーブ在住のナチュラル達の命は保障されない上に、在住のコーディネイター達は全員プラントへと強制連行され、プラント支持国と見なした連合による、熾烈な殲滅戦が展開されるのは避けられなかった(事実、オーブ解放作戦と同時期に行われた第三次ビクトリア攻防戦では、戦闘終了後も連合兵によるザフト兵達の射殺が黙殺されてしまっている)。
これらからも、当時のオーブの指導者であるウズミが降伏をせず連合と戦う道を選んだのは、「世界がナチュラルとコーディネイターに二分され憎しみ合って争い続けるのを防ぐ」という政治的理念も確かにあったが、オーブ国民の命をナチュラル・コーディネイターを問わず確実に守るためにそれ以外の道が無かったという要因も大きい。客観的にはシンの主張も理解できるが、一人の民間人(被害者)の立場でしか物事を見ようとしない彼の八つ当たりな主張とも言える。シンにしてもオーブの理念自体には共感しており、批判したのはあくまで自分の家族を守れなかった非力なオーブであり、本心からオーブを嫌いになることはなかった。
その後
オーブ解放作戦の処理に際しては、弟であるホムラが連合の占領下で尽力を尽くした。連合軍の拡大からオーブに近いザフト・カーペンタリア(オーストラリア大陸)が激戦区になったにもかかわらず、停戦までオーブが再度戦火に呑まれることはなかった。
また、ウズミが生前懇意にしていたスカンジナビア王国はウズミと交わした事前の取り決めもありオーブへ迅速な支援を行った他、外交官リンデマンの手で戦後条約の締結に尽力し、連合・プラント双方の折衝を務めたことでオーブの主権回復に成功させている。その一方、ホムラを含めた占領下の政治家は引責辞任し、戦後のオーブ首脳陣は占領下の流れからセイランやキオウ、マシマといった連合やロゴスと繋がりの強い人間が新たな氏族として国家運営に携わった。
そうした中で娘であるカガリはアスハ家が国民に支持されていた時代の英雄性のみを利用した傀儡政治に利用され、実権はほぼ無きに等しかった。そうした状況にある彼女ではセイランの掲げる国際安全保障の加盟も押し留めることは敵わず、「中立国」というオーブの理念はC.E.73年の地球連合加盟で崩れ去った。
関連タグ
関連キャラクター
・・・オーブ五大氏族サハク家当主。ウズミの理念とは対立していた。ウズミ死亡後はカガリの暗殺を図った。