ニホンザル
にほんざる
概要
猿の中で二番目に発達した種族である旧世界ザル(アジア・アフリカに生息する猿)の一種。オナガザル科マカク属に所属する。
その名の通り日本に生息し、北限である青森県下北半島のニホンザルは世界一北に生息する猿として天然記念物に指定されている。
英名はSnow Monkey。幻想的だ。
外見
ニホンザルはオナガザル科のサルだが、(アカゲザルやタイワンザルとは異なり)尻尾は非常に短い。お尻と顔は朱を塗ったように赤く、身体は茶色い毛におおわれている。体長は60㎝程度で、基本的には四つん這いで歩き回る。
ひょうきんな外見から忘れられがちだが非常に牙は鋭く大きいため顎の力は強く、犬の前足を食い千切ったという事例すらある。
更に握力も30㎏ほどもあり、体重が10㎏程しかないことを考えれば驚異的な数値となっている。
子ザルは他のマカク属の子ザル同様に頭は真ん中分けの髪のような毛の生え方をしているがあまり目立たない。
特徴
ニホンザルはボスのオス猿を中心とした群れを作る。おしりの上に馬乗りになることで強さを示す「マウンティング」という行動をとることでも有名。
知能は高く、人間に対し食害や直接攻撃などの害をもたらすことも多い。雑食性で、果物ばっか食べてる印象が強いが実際は芋や野菜、葉っぱ、そして昆虫などの小動物も捕食する。険しい山岳地帯が多い長野県ではライチョウの雛や、川魚をも捕食するニホンザルが観察されている。バナナはそんなに好きではない。かつては害獣駆除も兼ねてニホンザルを狩って、その肉を食べる習慣があったが(縄文時代の貝塚から骨が出土することから、既にその時代から食べていたようである。美食家でもある芸術家北大路魯山人も食べた経験を書き記している)戦後はほとんど絶えている。
メスは生まれ育った群れで一生を過ごす為、ある所まで成長すると生まれた群れを離れ、武者修行に旅立ち他の群れに移るオスとは異なる。その為、ニホンザルの群れは女系だったりする。オスが生まれた群れを離れるのは近親交配を避けるのを本能で行っているからである。
本来のニホンザルの社会は力関係の序列がはっきりしているのだが、淡路島に生息するものは他の地方の群体と違うところがあり、ボスザルはいるもののここのニホンザルは群れの仲間を思いやる個体が何代にも渡って繁栄していった結果、仲間内での力関係の闘争といったものが少なくなっていったとされる。淡路島のものはヤクシマザルに近縁である事が判明している。また、近年では高崎山のオスザル達が本来、子ザルに対しては育児には一切関わらずむしろ序列の威厳を示すはずなのだが群れ同士の抗争が少なくなった故か子ザル達に対して温和気味な接し方をしているという。
野生では温泉に入って暖をとる事も有名。なお一応猛獣のひとつである為、野生のニホンザルには目を合わせると「自分を注視している≒挑発している」と見做し、襲いかかる事がある為、目を合わせないようにする事。
子ザルは生まれて歩けるようになる頃ぐらいではオスメス共にあまり変わらない行動をとるが、ある程度育つとオスは群れの同じ年頃の子達とレスリングのようなじゃれ合いをしだしたり、大人の真似をしてマウンティングごっこをする。メスは子育ての真似事をし、兄弟姉妹がいると母ザルと一緒に面倒を見出す。
また、同じくらいの子ザル達が自然発生的に集まるとまるで幼稚園か保育園のようなものが一箇所に形成される。高崎山自然動物園では「お猿の保育園」という場所が餌場の一角にあり餌場にやってきた群れの子ザルが群れが餌場にいる間はそこにある遊具で遊び回っている。
日本文化とニホンザル
日本人にとって、猿と言えば最初に思いつくのはニホンザルであろう。桃太郎、猿蟹合戦などにもニホンザルは登場し、大衆にとっても一般的な動物として認知されていた。ニホンザルは知能も高いため、猿回しなどの芸も発達した。
ニホンザルは山に生息することから山神としてのシンボルとなることも多く、また、なぜか馬の守り神とされることも多かった(猿回しなどの芸事に使うサルを馬屋で飼うことが多かったためともされる)。
また、ボスザルとして伝説を残した者もおり、大分県の高崎山の「ベンツ」は二つの異なる群れでボスの座にのし上がった事とその貫禄によって、死後高崎山では名誉ボスザルの称号が与えられた。
主な亜種
- ニホンザル(メイン画像)
- ヤクシマザル