概要
AMD(Advanced Micro Devices, Inc. / アドバンスト・マイクロ・デバイセズ ) とは、アメリカ合衆国の半導体メーカー。かつては自社で製造部門を擁していたが、2009年にGlobalFoundriesとして分社化した。
かつては世界市場の90%以上を寡占したIntelに唯一対抗できるx86互換CPUメーカーであった。近年はAppleシリコンやSnapdragonといったArm互換SoCの台頭により業界では「Intel vs AMD」という構図は崩れているものの、今なお自作PC界隈では「AMD信者」と呼ばれるファンが多くいる。
業界トップのNVIDIAに次ぐ有力なGPUベンダーでもあり、旧ATIから引き継いだ「Radeon」ブランドで知られる。AMDのCPU事業が不振だった時期には事業の柱になっていたGPU部門だが、NVIDIAが切り開いたAI半導体ブームには乗り遅れ、競合に大きく水を開けられてしまっている。
CPUとGPUを緊密に連携させた統合型プロセッサAPUは、パソコン向けに展開するほか、家庭用ゲーム機ではプレイステーション4/プレイステーション5とXboxOne/XboxSeriesXで採用された。
歴史
2000年前後にAthlon(K7前半期)でPentium Ⅲに対抗して高クロック化に邁進、駆動クロック周波数1GHz突破を一般PC用CPUで真っ先に果たし、「ギガヘルツ神話」を築いたが、高発熱と大消費電力が問題となり、無印Athlonの最終モデルであるThunderbirdは「焼き鳥」と揶揄された。
2003年にx86(の32ビット版の80386)アーキテクチャを64ビットに拡張したAMD64アーキテクチャを実装したOpteronをリリース。高収益のサーバー市場に進出を果たす。続いて同アーキテクチャのAthlon 64もリリースし、PC市場の64ビット化を先導した。現在のx64(AMD64、Intel64)はAMD64の方がオリジナルであり、IntelのIntel 64は互換となっている。2005年に投入されたK8(Opteron、Athlon64)ではIPC(単位クロックあたりの平均命令実行数) 重視のコンセプトに転換して、自ら「ギガヘルツ神話」に幕を下ろした。
2006年からIntelがCoreシリーズを展開して巻き返しを図った結果、再び圧倒的な差をつけられてしまう。その後PhenomやFXなどで対抗を図るも、Coreiには勝てず、しばらくはGPU事業とAPUでなんとか息を繋ぐ有様だった。結果的にATI買収でAMDは救われたと言える。
2008年にGlobalFoundries(GF)を設立、2009年にかけて製造部門を同社に移管する。創業者であるジェリー・サンダースの『ファブ(工場)を持ってこそ漢』という言葉に反する形となったが、先端のCPUやGPU製品はTSMC、チップセット製品などはGlobalFoundriesと使い分けている。
2017年3月には、新アーキテクチャ「Zen」を用いたCPU「Ryzen」シリーズが新ソケットAM4で発売された。最大8コア16スレッドと高いマルチコア性能を発揮して再び第二のCPUメーカーとして復活。TSMCに製造を委託していたAMDは、10nmの製造に苦戦していた当時のIntelに対し有利な立場で渡り合うことができた。
同時期にArmコアを組み込んだサーバ向けプロセッサ「K12」の開発も進めていたが、こちらは「Zen」が万一コケたときのセカンドプランだったようで、結局製品化されなかった。2020年に登場したApple M1が圧倒的な高性能と低消費電力で業界を震撼させ、各社がこぞってArmベースの高性能プロセッサ開発に走るようになると、この判断は愚策だったことが分かるのだが(K12開発者のジム・ケラーも「K12を愚かにもキャンセルした」と発言している)。
現在はSnapdragon対抗としてArmベースのAPU「Sound Wave」プロジェクトを立ち上げており、Arm互換製品をx86互換プロセッサに並ぶ柱に育てることを目指している。
主なブランド
サーバー、ワークステーション
- EPYC
- ThreadripperPro
- RadeonInstinct
- RadeonPRO