概要
一口に「Pentium」といっても時期によって設計が全く異なるので、何を指しているか注意が必要である。自作PCユーザーなどは、インテルが用いた社内コードネームで世代を呼び分けている。
単に「Pentium」と言う時は1993年から出荷が開始された「初代Pentium」を指す。
のちにサーバ・ワークステーション向けのPentium Pro、その改良版で初代Pentium後継のPentium II・Pentium IIIにもこのブランド名が使われ、全く新たなNetBurstマイクロアーキテクチャに基づくPentium 4・Pentium D・Pentium Extreme Editionに至るまで、Intelの看板製品であった。
Core2の登場後はCoreとCeleronの中間に位置するブランドとして位置づけられた。
ラインナップ
P5マイクロアーキテクチャ
Pentium(1993年)
社内コードネーム P5/P54C/P55C。初代。i486の後継で「i586」の製品名が予想されたが、単なる数字とアルファベットの組み合わせでは商標として認められなかったので、独自のブランド名がつけられた。後期版はMMX拡張命令セットが付加され、MMX Pentiumとして販売された。
P6マイクロアーキテクチャ
Pentium Pro
社内コードネーム P6
サーバ・ワークステーション向け。初代Pentiumとは全く異なるP6マイクロアーキテクチャ設計だった。一般には浸透せず。
Pentium Ⅱ
社内コードネーム Klamath/Deschutes(デスクトップ) Tonga/Dixon(モバイル)
Pentium Proをベースに初代Pentiumの後継として発売された。低価格CPUブランドのCeleronも登場。
Pentium Ⅲ
社内コードネーム Katmai/Coppermine/Tualatin
PentiumIIにSSEを追加したもの。AMDとの動作クロック競争の末、ついに1GHzを達成した。
Pentium M
社内コードネーム Banias /Dothan
後述のPentium4の消費電力・発熱の問題から、Pentium Ⅲをベースにノートパソコン用製品として設計された。2006年にデュアルコア化され、同時に名前が「IntelCore」となった。
NetBurstマイクロアーキテクチャ
Pentium 4
社内コードネーム Willamette/Northwood/Prescott/Prescott-2M/CedarMill
高クロックに特化した設計のCPUで、動作クロックは最高で3.8GHzに達する。また、ハイパースレッディングテクノロジー(通称『HTT』。一つのプロセッサコアを擬似的に二つに見せかける技術)が実装された。
しかしCPUの発熱・消費電力の問題が深刻化し、開発中だった5GHz駆動・最大4スレッドの『Tejas』が開発中止となってしまう(これがきっかけで後述のPentiumDが開発された)。
Pentium 4 Extreme Edition
サーバー・ワークステーション向けのCPUであるXeonのコアを流用して開発された高性能CPU。TDPでさえ100Wを軽く超え、「冬場に暖房がいらなくなる」とまで言われるほどの凄まじい発熱を誇った。
Pentium D
1つのダイ上に2つのコアを搭載したデュアルコアCPU…なのだが実際はPentium4のコアが流用されており、Pentium4×2を1つに収めただけの製品となっている。
HTTは無効化されており、2コア2スレッドでの動作となる。
次世代CPU完成までの繋ぎであったため、NetBurstの発熱・消費電力の問題は未解決のまま。新規に開発されたCore2が発売された後は戦略的な低価格で販売されたが、2007年に出荷を終了した。
Pentium Extreme Edition
Pentium 4 Extreme Editionのデュアルコアバージョン。デュアルコア+HTTによって2コア4スレッドでの動作となり、TDPだけでも130Wに達した。
Coreマイクロアーキテクチャ
Pentium Dual-Core
当初はPentiumDの生産終了をもってPentiumブランドは廃止となる予定だったが、海外ではPentiumの人気が非常に高かったため、存続が決定し、当シリーズが開発された。
基本的な構造はCore2Duoと変わらないが、L2キャッシュの容量が抑えられている。
Pentium(2010年以降)
Nehalem世代以降のIntel Coreの下位ブランド製品。Corei3とCeleronの中間に位置付けられている。
IntelCoreベースの『Gold』と、Atomベースの『Silver』の2種類がある。
『Gold』はデスクトップ・モバイル向けのCPU。当初は2コア2スレッドだった。シングル性能が強く、同世代での比較ならCore i3・Core i5に匹敵する性能を誇る。コア数が少ないためマルチ性能は控えめ。
デスクトップ向けでは第7世代KabyLakeからHTTが復活し、以降は最後まで2コア4スレッドとなっている。末期は性能不足ぎみであったが、消費電力の低さからエントリーサーバーなどの用途でも活躍した。
モバイル向けでは第5世代BroadwellからHTTが復活した。さらに、第12世代AlderLakeからは高性能コア(Pコア)+高効率コア(Eコア)のハイブリッド構成を採用。Pコア×1(HTT有効)とEコア×4の計5コア6スレッドとなった。
どちらもCeleronとの違いはHTTが有効かどうかのみ。
『Silver』はSoC向けのCPUで、クロック数こそ低いものの4コア4スレッドであり、マルチコア性能はGoldを上回ることがある。
しかし、クロック数が低いのが災いしてか、シングル性能はかなり低い。Atom系全てに言えることだが、シングル性能が低いため体感速度が非常に遅く、タスクマネージャーでCPU使用率が100%で張り付いたりする。
現在
登場時はIntelの看板製品として活躍し、新ブランド確立後も下位モデルとしてその名を使い続けたPentiumだが、2022年にIntelから「2023年以降の下位モデルのブランド名をIntel_Processorに変更する」と発表されたことで、同じく下位モデルとして活躍していたCeleronと共にクローズされることが決定。
2023年にモバイル向け、翌2024年にデスクトップ向けのIntel Processorが発売され、Pentiumという名は完全に役目を終えた。
だが、名前こそ変わったがどちらも基本構造はPentiumと同じであるため、今日も下位モデルとして活躍している。