身長差15メートルの恋
概要
弐瓶勉による漫画作品『シドニアの騎士』は3DCGアニメーション化されており、2014年に第一期(全十二話)、2015年には第一期の内容を再編集した『劇場版 シドニアの騎士』、同年に第二期『シドニアの騎士 第九惑星戦役』(全十二話)が発表されている。しかし、それ以降は久しくアニメ化はされず、ファンをやきもきさせることになった。
それから6年、満を持して制作されたのが本作である。劇場版第一作がアニメ第一期の総集編であったのに対し、本作は完全新規制作の内容となっている。
劇場版第二作となる『あいつむぐほし』は原作者である弐瓶勉が総監修を務めており、5月には公開に先駆けて講談社から『描きおろし設定資料集』が発売され、Blu-ray版の発売は2021年12月に予定されている。
本作はアニメ版『シドニアの騎士』の完結編であり、おおむね原作のストーリーに沿いながらも本作オリジナルの展開も組み込まれている。原作に於ける最終決戦である大衆合船との戦いまでを網羅しており、尺の都合上カットされた話や出番を削られた登場人物もいるものの、大筋のストーリーラインは破綻無く綺麗に纏められており、見所をしっかりと押さえた内容となっている。
主人公谷風長道と融合個体白羽衣つむぎとの種族の壁を越えたラブロマンスが話の主軸に据えられており、一風変わった恋愛映画としても楽しめる。
2022年の第53回星雲賞にもノミネートされ、別部門での受賞も期待されている。
ストーリー
人類の新天地を求める播種船(はしゅせん)シドニアの旅は佳境を迎えつつあった。
レム恒星系にて奇居子(ガウナ)の脅威を排除し、惑星セブンへの人類の入植を果たすために開かれた惑星ナインでの戦闘、俗に言う「第九惑星戦役」は辛くも人類側の勝利に終わり、ここを拠点としガウナの総本山である大衆合船を迎え撃つ計画が始まった。
あれから10年。シドニアでは束の間の平和が訪れ、在りし日の日常が蘇りつつあった。衛人操縦士も新世代が台頭し、谷風長道も彼等を率いるベテランエースパイロットに成長していた。白羽衣つむぎもまたシドニアの一員となって久しく、長道との絆も、確固たる愛へと育まれていた。
だが、小林艦長は気付いていた。ガウナと人類との永遠の死闘に終止符を打つための、最後の戦いが迫っていることを。
そして、岐神海苔夫の体を乗っ取り蘇った狂気の科学者・落合の計画もまた、水面下で動き始めていた・・・
登場人物
衛人隊のエースパイロット。10年の歳月を経てさらにパイロットとして成長し、若手を導くベテランとして後進の指導にも当たっている。つむぎとは相変わらず仲むつまじいが、月日を経てその思いは明確な恋情へと成長している。他の登場人物達に比べ、年月の経過が分かりやすく見た目に表れており、原作やTVアニメ版に比べ精悍な顔立ちになり、どっしりと落ち着いた戦士の風格が漂っている。
シドニアを守る融合個体の少女。ガウナの同類として敬遠されていたのは遠い過去となり、現在はシドニアのマスコットのように一般市民からも慕われている。長道への思いが実り、晴れて恋人同士となったが、それ故に自らの在り方に思い悩むようになる。
索敵部隊を率いるレーダー担当として活躍している衛人のエースパイロット。かつては中性であったが女性化が進み、現在は完全な女性となっている。長道への思いは自分なりに結論を付けたらしく、つむぎの恋路を応援している。
衛人隊を指揮する司令補。後に鶴音型戦術防巡艦『水城』の艦長に就任し、最前線で指揮を執ることになった。相変わらず外周区にある長道宅にイザナ・つむぎとともに同居しているが、かつて恋のライバルとして張り合ったイザナに思いを寄せている。
岐神開発の御曹司。プライドが高く、継衛を巡って谷風に対抗心を燃やしていた。
操縦士を退いた後、落合に人格を乗っ取られる
約百年前に第四次奇居子防衛戦を引き起こした元凶。岐神の人格を乗っ取り、表向きは岐神が自身の研究を引き継ぐ形で融合個体や人工カビ、超構造体の開発などを行う。しかし裏では、自らを究極の生命体にするための恐るべき計画を推進しており・・・
衛人のパイロットを務めるクローン姉妹。新たに11人の妹たちが加わり、総勢22人姉妹となった。
シドニアの艦長。レム恒星系に巣くうガウナを排除すべく惑星ナインを前哨基地とし、新たな艦隊と決戦兵器を10年の歳月をかけて作り上げた。ガウナの本拠地である大衆合船の襲来を迎え撃つべく、最後の戦いの指揮を執ることとなった。
訓練生寮の寮母。長道たちが卒業したあとも変わらず寮母を続けているが、最終決戦を前にかつての盟友:小林へ複雑な感情を募らせている。かつてシドニアを壊滅寸前に追いやった狂気の科学者・落合との意外な過去が明らかになり・・・
サマリ班のリーダー。修羅場をくぐり抜けた歴戦のエースパイロットであり、衛人隊の面々からも慕われている。同僚の弦打攻市からは相も変わらず猛アプローチをかけられており、都度鉄拳で追い返している。
サマリ班に所属しているエースパイロット。後進の育成にも力を入れており、気さくで親しみやすい人柄から訓練生にも慕われている。10年たっても相変わらずサマリにアタックし続けており、彼女と「光合成(意味深)」すべく涙ぐましい努力を繰り返している。
あいつムグホシ!!
弐瓶勉による漫画作品『人形の国 APOSIMZ』第41話(単行本第七巻収録)で発されたタイターニアのセリフ。言わずもがな、本作のセルフパロディである。
ムグホシは中央制御層と地表勢力の戦争で使用された、対正規人形戦に特化した自律兵器。
戦闘形態(四脚の巨獣)はヘイグス粒子の消耗が激しく短時間しか維持できないものの、自己修復能力を備えほぼ弱点がなく、エスロー・ケーシャ・ワサブの三者を圧倒した。
本体はタイターニア同様20cmほどのサイズで、ぬいぐるみのような愛らしい姿をしている。