江戸時代中頃に江戸で出版されていた絵入り娯楽本の草双紙『光明千矢前』に登場する茨木童子の子息という鬼。
概要
源頼光と藤原保昌に討伐された大江山酒呑童子の残党の鬼たちを率いる茨木童子の子息といういばな童子は、鈴鹿山で坂上田村麿に討ち滅ぼされた藤原千方の死骸を掘り出し、魂を入れ、蘇生させて千方を大将にして頼光への復讐を企て、仲間の三色童子と黒塚童子もこれに賛同した。
再び大江山に鬼が集まり出し、そこに千方も加わっていることを知った頼光は、頼光四天王を連れて田村堂(清水寺開山堂)に参詣すると、田村丸に戦勝祈願をして大江山に攻めかかった。
渡辺綱に首を抜かれたいばな童子は「南無阿弥陀仏」と唱え、他の鬼たちも頼光一行に討ち滅ぼされた。そこに千方が現れて頼光や四天王相手に大暴れするが、旗の上に現れた田村丸の千の矢先が降りかかって千方が討伐された。
解説
草双紙『光明千矢前』は、酒呑童子説話と坂上田村麻呂伝説を元にして創作された大江山酒呑童子退治の後日談であり、最初に「後日を作り足し、頼光、田村を前後させ、子供虚言ばなしと題号し」とあるように、近世だからこそ成立した江戸時代の二次創作のようなものである。
そのため随所に元ネタとなった酒呑童子説話や『田村』『田村麿鈴鹿合戦』など坂上田村麻呂伝説のパロディが見られる。