概要
副題は「Program26 プラズマティック・クライシス」で、OVA6話すべてでテレビアニメ版『セイバーマリオネットJ』(第1期)の第26話という立ち位置である。
アニメ制作会社は、前作『セイバーマリオネットJ』(第1期)担当のスタジオジュニオ(現在のジュニオ・ブレイン・トラスト)からハルフィルムメーカー(現在のゆめ太カンパニー)へと変更されたが、スタッフは前作からほぼ続投されている。
当時導入されつつあったデジタル制作をシリーズで初めて導入した作品。
第1巻は1997/11/22発売、最終巻は1998/6/25発売となった。
あらすじ
ガルトラントとの戦いを終え、平穏な日々を送る間宮小樽とセイバーマリオネットたちのもとに、かつての仇敵ゲルハルト・フォン・ファウストの部下であるセイバードールズが現れる。
社会常識もなく、食事も作れない彼女たちを、平穏な時代でも生きていけるように教育してほしいとのことだが、チェリーとブラッドベリーは大反対。
しかし、乙女回路が壊れたティーゲルをローレライに修復してもらうためでもあると知り、やむなく7人での生活が始まる。
時を同じくして、ジャポネスの街で「怪盗 風小僧」と名乗る泥棒の事件が頻発。
その正体は、ライムたち同様に心を持つマリオネット「まりん」だった。
6個しかないはずの乙女回路を、なぜ彼女は有しているのか。
彼女が現れた目的とは――?
キャラクター
セイバーマリオネットJを参照。
制作会社の変更について
本来、ハルフィルムメーカーはアニメ制作会社ではなく、映像会社やアニメ制作会社の依頼で企画書の体裁を整えたり、作品イメージボードの作成を代行したり、フリーアニメーターとアニメ制作会社と制作元請けを顔繋ぎさせる仲介をしたりなど「作品制作の事前準備の請負い」や「制作進行業務」がメインのプリプロダクション(要はガチの裏方)であり、ジュニオからスタッフを受け入れた時点ではアニメの制作経験が皆無だった。(それこそグロス請け経験はおろか、下請け経験に関しては前述のイメージボードの代理作成がせいぜいで、仕上げどころか塗りも動画も請け負ったことすら無いレベルだった)
『セイバーマリオネットJ』のスタッフ陣が移籍する形で制作体制の形だけは整えられたが、会社そのものにアニメ制作経験が全く無かったゆえに(コレ自体アニメ業界においては異色の経歴である)移籍スタッフだけで作品を作れるかどうかには(特に作者・スポンサー・テレビ局から状況を見た場合においては)不安要素があった。本作は、それを確かめるための「練習」ないしは「観測気球」としての作品であったとも言える。
ある意味で非常に無謀かつ非常識な制作会社の変更であったわけだが、これは『セイバーマリオネットJtoX』を作るにあたって、ジュニオ側のスケジュールと予算がキャパシティーオーバーによるバーストを起こす見込みが出てしまい、スタッフ側が独立あるいは移籍せざるをえなくなったため。
実は、この移籍騒動は、いわゆる『白鯨伝説』の制作破綻騒動といわれるものの一環である。この騒動で元請けのイメージケイが破綻し、共同制作のジュニオも責任をひっかぶる羽目になった事が原因。
のちジュニオは『ガンドレス』を手掛けて起死回生を図るが、製作かつ元請制作のサンクチュアリに制作費のえげつない中抜きをされた上で無謀なスケジュールを押し付けられた結果、ついには作画崩壊を起こし、しまいには日活とサンクチュアリから損害賠償を叩きつけられて制作会社としての信用も失うトドメを刺され破綻した。
この破綻においてジュニオは所属人員を全員独立・移籍させ、会社整理においては責任者一人(設立者である香西隆男)だけが残るように取り計らい、彼が全責任を負う形をとった。この事で本来ジュニオにいて責任を被るはずだったアニメーターたちのほとんどは救われた。
SynergySPは、この時に香西によって救われたメンバーが自分たちの受け皿として設立した会社であるが、ハルフィルムメーカーに移籍した本作スタッフ(および『セイバーマリオネットJ』という作品そのもの)もまた同じ立場だったのである。
その後のジュニオ
ジュニオ破綻後、香西は制作作品の権利の管理を行いつつ、再度アニメ制作スタジオとして再起を図るためジュニオの株式会社化と商号変更を行いジュニオ ブレイン トラストの名義で活動した。
しかし再生したジュニオは2004年の『雲の学校』を最後に制作を停止。のちに法人格(登記)も失い、結果的に香西の別名義としてしか機能しなくなった。
なお、香西はその後、宝塚造形大学にて教授となり、アニメ教育者となったが2010年に一線を退く。
一応、香西個人名義での作品発表は現在でも続けているとされている。