概要
脚本:武上純希、監督:神澤信一、特撮監督:満留浩昌
『ウルトラセブン』の問題作の一つ『ノンマルトの使者』の続編にして、「もしもノンマルトの言い分が正しかったら」を現したIfの物語。
スタッフ曰くテーマは「出口の閉ざされた物語」
あらすじ
中国奥地の遺跡から、謎の紋章と怪獣が描かれた石板と石棺が発見された。
地層から、石板と石棺は1万5千年前の「殷」の時代のもので、本来ならば存在しないはずのオーパーツであると断定された。ウルトラ警備隊にそのオーパーツを移送する任務が与えられる。
そんな中、カザモリ・マサキに調査隊にまぎれた謎の女が接触する。オーパーツや地球防衛軍が秘匿している「オメガファイル」と呼ばれる最重要機密の存在を語り、カザモリことウルトラセブンに地球人が隠していることを知ってほしいと語る。
地球防衛軍電波研究所に侵入し、カザモリをオメガファイルの元へと導く女だが、途中で女はいなくなってしまう。
保安部に捕まえられたカザモリはオーパーツの秘密を明かすように迫るが、カジ参謀は「私がもし異星人だったらどうする?お前は今、防衛軍のトップシークレットを漏らしたんだ!」と告げる。
カザモリが辞職に追い込まれていること知ったウルトラ警備隊は、カジの罠ではないかと疑う。地球防衛軍を去ろうとするカザモリをサトミ隊員が車で送る。
カザモリは「監視か?」と尋ねるが、サトミ隊員は「役に立ちたかった」と答える。
サトミを誘い、山奥の寺に来たカザモリは、サトミが寝ている間にモロボシ・ダンとなる。彼はフルハシの墓参りに来ていた。
「フルハシさん……。地球人が信じているように、この世に霊魂が存在するなら、あなたともう一度話がしたい。私があなたと出会った時代、地球人は今のような強い力は持っていなかった。もっと美しい心を持っていた。地球人が変わってしまったのか、それとも……」。
するとそこにあの女が現れる。女は地球人は何も変わっていないという。そして女はこの地球はもともと自分たちの惑星で、今の人類は自分たちの痕跡を跡形もなく破壊した残虐な侵略者と断じる。
尋問の際の脳波検査でカザモリが異星人であることを知ったウルトラ警備隊はカザモリを包囲。サトミはカザモリが異星人だったことに怒りを募らせるが、葛藤の末、銃を下ろす決断を下した。
尋問が終わったカザモリは、「秘密にする事で地球を救った時代は終わった。真実を明らかにする事が地球を救う」としてオメガファイルの開示を要求する。そして「真実を告げる勇気を持っているはずだ。そんな地球人の為に僕は戦い続けてきたんだ」と言う言葉でカジ参謀はカザモリがただの異星人ではなくウルトラセブンであることに気付く。
「カザモリは自分達を騙し続けていた」と言ったサトミ隊員をルミ隊員は叩いて「カザモリ君はカザモリ君です!」と涙ながらに訴える。
フレンドシップ計画は表向きは地球防衛だが真の目的は宇宙侵略である。
女から地球人の秘密を聞かされたカザモリは地球人がそこまで強硬な態度を取らなければいけない理由に気付く。
「侵略者は去るか、力を持って星に居座るか。侵略者を守る事は許されていないのです。宇宙の掟では……」
カザモリからフレンドシップ計画の真意を知らされたシラガネ隊長は、旧ウルトラ警備隊が遭遇した、地球の先住民族を名乗るノンマルトの事件について調べ始める。
しかし、ノンマルトの事件はオメガファイルへと封印され、事件の重要人物であるキリヤマ隊長もすでに故人になっていた。
オメガファイルについて探るシラガネの前に、保安部の伊集院が現れる。オメガファイルを守ろうとする伊集院に対してシラガネは守るべきは地球人の誇りで人間としての生き方だと返す。しかし、伊集院の決意は変わらず、自らの命と共にオメガファイルを闇に葬り去ろうとした。自身の体に火を放ち、爆死する伊集院。
悩んだ末、ウルトラ警備隊は上層部である地球防衛軍と敵対してでもカザモリを奪還することを決断。防衛軍はカザモリを粒子分解システムによって処刑しようとしていた。
もうウルトラセブンに頼らないと女は自ら隠蔽情報の開示を請求し、受け容れられない場合は実力行使に出てでも全宇宙に公表するとして守護怪獣ザバンギを召喚した。
ルミがオメガファイルのロックを解除する中、シラガネはカザモリにいう。「ウルトラセブン。我々はオメガファイルを開示し宇宙に真実を告げる努力をしている。必ず自らの意思と力で真実を突き止める。しかし、もう少し時間が欲しいんだ」
その会話から他のウルトラ警備隊もカザモリの正体に気付く。
「カザモリはきっと戻ってくる」と言って去っていくカザモリ、否ウルトラセブン。
ザバンギ足止めの為、カザモリはミクラスとウインダムを向かわせる。しかし圧倒的な戦闘力を前にミクラスは倒れ、ウインダムも踏みつけられ口から泡を吹きながらもザバンギの炎から電波研究所を守り機能を停止する。
カザモリはセブンに変身。電波研究所にあるオーパーツを目指すが、そこにカジ参謀が立ちはだかる。
「ウルトラセブン!お前なら分かるはずだ。何故私が力による地球防衛に拘ったのか。もし我々が本当に侵略者なのだとしたら、この星を去るか、力を持って居座るしかないんだ!我々はこの地球を故郷にする事すら許されないと言うのか?数万年前の祖先達の罪を我々が償わなければならないのかぁっ?!」
カジをはじめとした防衛軍はセブンに向かって一斉射撃する。
オメガファイルのロック解除は続いていたが、すべてのファイルが暗号化され解読できない。そこで敵を撹乱させる偽情報と言う形でインプットさせれば暗号化されたままでも電波研究所から宇宙に向けて発信できるという作戦を立てる。
参謀会議に現れたシラガネは、保安部がキリヤマらを処分していたことを知る。保安部がオメガファイルに関与していた人物を処分していたことを知らされたタケナカ長官は、オメガファイルの開示、およびウルトラセブンへの攻撃中止を命令するも、カジは命令を無視する。
「人類は地球に生まれた唯一の知的生命体!地球は人類のものだ!!」
狂ったように叫び、銃が壊されてもなお抵抗を続けるカジ。しかし生身でウルトラセブンにかなうはずもなく、勝てないことを知ったカジは心情をこぼす。
「ウルトラセブン。真実を宇宙に知らしめて必ず人類が助かると言う保障でもあるのかぁー!!くそ!!たとえどんな手を使ってでも……、人類を守りたかった……。わ、私は……、私には……、人間を守りたかった……。大好きだから……。大好きなんだから……。人間達が……」。
泣き崩れるカジとその心をくみ取りながらもゆっくりと背を向けるセブン。ついにオーパーツである石棺の前に立ったセブンを前に、再び女が現れる。
そして宇宙人であるセブンに最も信頼される目撃者として選ばれた人物として、なんとフルハシが石棺から姿を見せた。ヴァルキューレ星人との戦いで命を落としたフルハシは、タキオン粒子によって肉体を情報化させられ、数万年前の地球に送り込まれて現生人類の祖先がノンマルトを侵略した事実、現生人類の祖先が乗る空飛ぶ円盤がノンマルトの文明を攻撃する場所を目撃させられ、肉体を再構成されて石棺に封印されていたのだった。石棺は一種のタイムカプセルだったのだ。
ダンは「もし地球人が侵略者だったら自分は先住民の方に立たなくてはならない」と語る。厳粛なる宇宙の摂理では何人も自分の星以外で生きる権利も侵略する権利も無い。
「地球人がもし侵略者だったら地球人の味方は出来ない」と言うダンに向かってフルハシは「罪深い人が心を改め立ち直るように、種としての人類がかつて残酷な侵略者だったとしても進化の過程で生まれ変わる事だってあるだろう」と頼む。
「知らなければよかった。知らなければ何の迷いもなく地球の守護者として戦えたのに……」
苦悩するダンに女は正義は我らにあると語る。ダンは地球人は過去に犯した罪を懺悔する時間を迎えているとし、地球人がオメガファイルを公開しようとしていると告げるが、女は殺された同胞たちはもう戻ってこないと、ザバンギを使いオメガファイルを開示した証拠をもみ消そうとしていた。
ダンは復讐の為の復讐は宇宙の掟も許していないと警告するが、逆に女はセブンが地球人の味方をしたら追放されると脅しをかけてくる。
「なぜ人間を許せない!?これ以上力を行使するなら、私は地球人のために戦う!」
意を決したダンはセブンに変身するが、ザバンギに攻撃をできず、ただ攻撃を受け続けるばかり。そして苦悩の末、アイスラッガーでザバンギの首を切って殺すのだった。
夕焼けの中、血しぶきを浴びるウルトラセブン。
ザバンギが倒された女は「セブンよ、覚悟するがいい。お前の居場所はこの宇宙にはもう無い」と言い残して姿を消した。
ヴァルキューレ星人との戦いで、カザモリと出会ったあの場所にやって来たダンは「君の姿とお別れする時が来たようだ」とミラクルマン・カザモリが入ったカプセルを投げる。ウルトラ警備隊に本物のカザモリが帰って来た。
ムーンベースで会話を交わすダンとフルハシ。
フレンドシップ計画は廃止となり、地球防衛軍は宇宙に向けて非戦の誓いを発信した。
地球は新しい世代による新しい時代が始まる事となったが、ダンは自分は宇宙の秩序を守る者としてやってはならない事をやってしまった、M78星雲の仲間達は自分を許さないだろうと語る。
フルハシはダンを友達だとして、地球人にウルトラセブンを守らせてほしいと願うが、ダンは自分の戦いに地球人を巻き込むわけにはいかないとそれを断る。
フルハシの前でウルトラセブンへと変身するダン。星の中、光の粒子がセブンへと降り注ぐ。
「私は私の心に何ら恥じるところは無い。愛する者を守ろうとするのは宇宙に普遍的な摂理だ。私は愛する地球人の為に戦ったんだ。後悔はしていない」
そしてセブンは光の中へと消えたのだった。
余談
初期案では、キリヤマ隊長を登場させ、ノンマルト攻撃を支持した理由を問う「ノンマルト裁判」が開かれるという展開があったのだが、キリヤマ役の中山昭二が撮影直前に亡くなったため実現しなかった。
そのため本編冒頭にはDedicated in loving memory to Captain Kiriyamaと追悼文がつづられている。
そして小説版では実際にキリヤマが登場している。