概要
1968年(昭和43年)7月21日放送。視聴率 19・6%
監督 満田かずほ 脚本 金城哲夫 特殊技術 高野宏一
第42話予告。
「海底開発(※) が進められている海辺に一人の少年が現れ、
「海の底は本当の地球人ノンマルトの物だから侵略してはいけない」と、
必死に訴えるのです。それでは人間は本当の地球人ではないのでしょうか。
来週の『ウルトラセブン』は、
宇宙人募集で銀賞に入賞した入山君の怪獣ガイロスが登場して、
「ノンマルトの使者」をお送りします。」<某本より引用>
※冒頭不明のため、予想して書き加えました。
STORY
海底開発基地センターの基地となる、海上沖に停泊中の海洋調査船シーホース号。
係員はインターホンを通じて、海洋施設の係員と連絡を取り合っていた。
シーホース海洋施設
応答する係員の二人は陽気に会話しながら、ガラス窓の向こうを眺める。
そこには、色鮮やかな多くの魚たちが楽しそうに泳き、美しい色に包まれた神秘的な海底世界が。
そこには、豊かな地下資源と食糧が無限に隠されている。
人類は、今、宇宙開発と共に、海底の開拓を着々と進めている。
やがて、理想的な海底都市や海底牧場が生まれ、地上よりもすばらしい世界が出来上がるだろう。」(ナレーター)
だが、我々人間にとって重大な事件が待ち受けようとは誰も知る由もなかった。
海辺
その頃、モロボシ・ダンと友里アンヌは海水浴で休暇を楽しんでいた。
砂浜で首元まで埋まって寝ているアンヌの元に、左頬にホクロの少年が駆けて来た。
少年はシーホース号を指差し、「今すぐに海底開発をやめないと大変なことになるよ。」と告げて去っていった。
魚取りから戻って来たダンに、アンヌがさっきの少年の言葉を伝えた直後、海上で大爆発が起きた。
二人が振り向くと、爆発炎上し沈没するシーホース号が。
ダンの報告を受け、フルハシ ソガ アマギが原子力潜水艦ハイドランジャーで現場へ急行すると、
シーホース号と海洋施設が無残に破壊されて全滅していた。
キリヤマ隊長に爆破を予告した少年が何か知っていると連絡するアンヌ。
キリヤマは、ダンとアンヌに少年の探索を指示。
漁師の子供と思い、漁村へ訪れて漁師達に少年のことを尋ねるダンとアンヌだったが、その少年は見つからなかった。
次に小学校で聞き込みしょうとしたが、授業中だったため、一旦地球防衛軍極東基地へ帰還する。
地球防衛軍極東基地作戦室
海底開発基地爆破事件の生存者の情報を話し合うウルトラ警備隊の隊員達。
そこへマナベ参報が、長官宛てに子供からの電話を録音した小型録音テープを持って入ってきた。
隊員達が囲む中、録音テープのスイッチを入れると…
『海底はノンマルトのものなんだ。』
『人間が海底の侵略者だ。ノンマルトは断然戦うよ。』
『ねぇ、長官にちゃんと伝えておくれよ。海底はノンマルトのものだから、侵略したりすると大変なことが起きるよ!』
あの少年の声だ。
ノンマルトとは?と疑問に思うキリヤマ。調子に乗ってデタラメを言ってるイタズラ電話と相手にしないフルハシとソガ。
ダンは考え込むかのようにその場を離れる。ノンマルトという言葉に心当たりがあった。
(ノンマルト…ノンマルト…。 やはり、あのノンマルトのことなんだろうか?)
小学校の校長先生から、授業が終わったので調査を協力できると連絡が入る。ダンとアンヌは早速、小学校へ向かう。
ポインターで移動中の車内でも、ダンは固い表情だった。ノンマルトの言葉が心に引っかかっていた。
モロボシ・ダン、ウルトラセブンの故郷M78星雲では、地球人のことをノンマルトと呼んでいる。
ノンマルトとは人間のことである。あの少年の言っていたノンマルトの意味とは?人間以外のノンマルトがいるのだろうか?
小学校
小学校に到着後。ホクロがついた少年の面通しを行うが、どの子も該当者ではなかった。この付近の子供ではないのか?
帰路の途中、アンヌは海岸でオカリナを吹く少年を発見。アンヌに警告したあの少年だ!
少年の下へ駆け寄るアンヌ。アンヌに名前を聞かれると、少年は真市と名乗った。
アンヌはこれまでの疑問を真市に問いかける。
「ねぇ、真市くん。なぜ海底開発センターが壊されてしまったの?」(アンヌ)
「ノンマルトが怒ったのさ。」(真市)
「なぜ?」(アンヌ)
「海底はノンマルトのものだもん。」(真市)
「ノンマルトって何なの?」(アンヌ)
「本当の地球人さ」(真市)
「地球人?」(アンヌ)
「ずっとずっと昔、人間より前に地球に住んでいたんだ。でも、人間から海に追いやられてしまったのさ。
人間は今では自分たちが地球人だと思ってるけど、本当は侵略者なんだ」(真市)
「人間が地球の侵略者ですって?」(アンヌ)
「…(うなずく) 」(真市)
「まさか、まさか…」(アンヌ)
「本当さ。」(真市)
「君、ノンマルトなの?」(アンヌ)
「人間はずるい。いつだって自分勝手なんだ。ノンマルトを海底からも追いやろうとするなんて。」(真市)
「真市君は人間なんでしょ?だったら、人間が人間のことを考えるのは当たり前じゃない。
海底は私たちにとって大切な資源なのよ。」(アンヌ)
「でも、ノンマルトにはもっともっともっと大切なんだ。」(真市)
「私は人間だから人間の味方よ。真市君もそんなこと言うべきじゃないわ。」(アンヌ)
「真市くん!」(ダン)
岩陰から飛び出すダン。
「人間がやるんなら、ノンマルトもやるよ。僕知らないからね!」(真市)
そう言うと、真市は海に飛び込み姿を消した。 呆然と立ち尽くし、顔を見合わせるダンとアンヌ。
そこへダンのビデオシーバーに城南大学海底探検部の船が、蛸の怪獣に襲撃されたとキリヤマから連絡が入る。
この怪獣こそノンマルトと確信したウルトラ警備隊。
ウルトラホーク1号で怪獣にロケット弾を見舞い、海底に潜伏した怪獣にハイドランジャーのレーザーを浴びせる。
空と海の波状攻撃により、蛸怪獣は海底に倒れた。
地球防衛軍極東基地作戦室
ノンマルトを倒し、海底に平和が戻ったと喜びに沸くウルトラ警備隊の隊員達。だが、マナベ参報から再度、真市の電話があったと連絡が入る。
ウルトラ警備隊が倒した怪獣はノンマルトではなく、ノンマルトが操る蛸怪獣ガイロス。
さらに、二ヶ月前に太平洋岸で行方不明になっていたイギリスの原子力潜水艦グローリア号で地上に総攻撃を開始すると警告。
マナベ参報に真市の居場所を聞くと、作戦室を飛び出すダン。
海岸岩場
電話をかけた場所が判明し、逃走する真市の身柄確保に向かう防衛隊員達。
追い詰められた真市を捕らえようとしたその時、岩陰から何者かが光線銃で防衛隊員を次々と射殺。
そこへ駆けつけるダン。砂浜に倒れている防衛隊員達に声をかけるが返事はなく、真市は消えていた。
やはり、真市はノンマルトだったのか?
すると、ダンの目の前に、海底から巨大潜水艦が全貌を現す。ノンマルトが奪ったグローリア号である。
グローリア号は地上へ向けて一斉砲火を放つ。付近の漁港と町が爆破と共に破壊され、火の海と化す。
ウルトラ警備隊緊急出動!
海上
地上破壊を続けるグローリア号の艦内では、人間の形をした知的生命体が操縦していた。
彼らこそ、真市が言っていた地球原人ノンマルトである。
ノンマルトは海底に追い遣った人類に対し、自分達の生存をかけて戦うことを決意したのだ。
グローリア号を迎え撃つウルトラホーク1号。
γ号が砲弾に当たって被弾したため、γ号を切り離し、ソガが乗るα号 フルハシが乗るβ号で再度反撃。
ロケット弾の集中攻撃で、グローリア号の周囲に激しい水飛沫があがる。
もはや海は、人類と先住民の地球の所有権をかけた戦場となった。
海底へ潜伏したグローリア号に交代するかのように、倒されたはずのガイロスが海上に現れる。
海岸岩場
岩場にたどり着いたダン。ウルトラアイを取り出した瞬間、変身を阻止するかのように真市が立ちはがる。
「君!?」(ダン)
「ノンマルトは悪くない。人間がいけないんだ。ノンマルトは人間より強くないんだ。攻撃をやめてよ!」(真市)
ダンは岩陰へ移動するが、そこにも真市が立っていた。
「やめて! やめて!」(真市)
懇願の声を必死に振り切り、ウルトラアイを装着しょうとするダンだが、行く手に真市が現れて変身出来ない。
「ウルトラ警備隊のバカヤロウ!!」(真市)
だが、このままノンマルトとガイロスを放っておく訳にはいかない。
「真市君。僕は戦わなければならないんだ。」(ダン)
真市を説得するダン。
「馬鹿野郎!!!」(真市)
自分の訴えを聞いてもらえず、激怒した真市は怒りまかせに持っていたオカリナを岩に叩きつける。
粉々に砕けたオカリナを見て、動揺するダン。しかし、我々人類の平和と正義のためにウルトラアイを装着。
ウルトラセブンに変身。
ウルトラセブンはすぐさま海上へ飛び込み、ガイロスと戦う。
ガイロスの複数の触手に絡まれ苦戦するセブンだが、これを脱しアイスラッガーを手に取り、ガイロスの触手を次々と切断。
海底
一方。弾薬が尽き、海底のどこかへと逃亡するグローリア号を追跡するハイドランジャー。
ハイドランジャのレーザー砲の直撃を受け、大爆発撃沈するグローリア号。
海底の奥へ前進すると、アンヌがその先に複数の建物らしきものを発見。
それは人間達の侵略によって住処を追放され、自分達の手で築き上げた
静かで平和に暮らすノンマルトの海底都市であった。
その光景に、驚愕の表情を隠せないキリヤマ。
「もし宇宙人の侵略基地だとしたら放っておく訳にいかん。
我々人間より先に地球人がいたなんて・・・。そんなバカな。やっぱり攻撃だ。」
キリヤマは苦悩の末、ノンマルトの海底都市への攻撃を決断。
海上
同じ頃、セブンによって全ての触角を切られた蛸怪獣ガイロスは力尽きて海中に沈み、絶命した。
海底
無抵抗、無防備なノンマルトの海底都市に、ハイドランジャーの大型ミサイルが打ち込まれる。
容赦ないミサイル攻撃により、続々と爆破される都市。爆発に飲み込まれるノンマルト。
ウルトラ警備隊の総攻撃の前に、海底都市は跡形も無く壊滅。地球原人ノンマルトは全滅した。
「ウルトラ警備隊全員に告ぐ!。ノンマルトの海底都市は完全に粉砕した!。
我々の勝利だ!。海底も我々人間のものだ!!。これで再び海底開発の邪魔をする者はいないだろう!!。」
高らかに勝利宣言するキリヤマ。
安堵の表情を浮かべるアマギだが、浮かない表情でヘルメットを取るアンヌ。
戦いが終わり、ウルトラセブンはモロボシ・ダンの姿に戻るも複雑な気持ちであった。
海辺
「事件は一応解決した。再び平和を取り戻した海に、ウルトラ警備隊員達はのんびりした一日を過ごしていた。だが、ダンとアンヌの心のなかには…。」(ナレーター)
事件解決後。
海で遊ぶフルハシ ソガ アマギと対照的に、
真市の言葉を忘れられないダンとアンヌは沈んだままだった
(真市君の言ったとおり、ノンマルトが地球の先住民なら、もし、人間が地球の侵略者だとしたら…。)
これまで、悪魔のような侵略者達から地球と人類を守ってきたウルトラセブン。
だが自分も、人類という悪の侵略者に協力しているのでは?と考えていたその時…。
「ウルトラ警備隊の馬鹿野郎!!!」
広い海に怒りの声が響き渡る。ダンとアンヌが振り向くと、海岸近くの岩場に真市が立っていた。
「ウルトラ警備隊のバカ! 地球はノンマルトの星なんだ! 人間こそ侵略者なんだ!!」
真市の声に導かれるように、走り出すダンとアンヌ。
二人が岩場にたとり着くと、真市の姿はどこにも見当たらなかった。そこで、小さな墓に花を手向ける女性の姿を見かける。
女性は、二年前この海で子供を亡くした母親だった。
その子は海が大好きで、母親も海のような心を持ってほしいと願い、毎年ここに連れてきたという。
小さな墓に刻まれている名前を見て驚愕するダンとアンヌ。
『真市安らかに』
なんと、ウルトラ警備隊にノンマルトの悲しみを訴え、二人の前に何度も現れた真市の名が!
衝撃の事実を目の当たりにしたモロボシ・ダン、友里アンヌは
花が波に揺れ、広大で青く輝く海を眺める。
二年前に亡くなったはずの真市がなぜ、ノンマルトの使者になったのか?
地球の先住民と名乗ったノンマルトとは?
そして、我々人類と地球原人 いったいどちらが、真の地球の侵略者だったのだろうか?
その真実を知る者は誰もいない。
「二年前。この海で死んだ少年の魂が、ノンマルトの使いになってやって来たのでしょうか?
それにしても、ノンマルトが本当に地球の先住民だったかはどうか、
それは、全てが消滅してしまった今、永遠の謎となってしまったのです。」(ナレーター)
余談とおまけ
本編のカットシーン
- ガイロス(脚本ではガロンス) 出現の連絡を受け、
ダンとアンヌが地球防衛軍極東基地に戻るシーンには、
ダンがウルトラホーク1号、アンヌがハイドランジャーに乗り込み
隊員達がイライラして待機するシーンがあった。
- ノンマルトに射殺された防衛隊員達に駆け寄るシーン
本編では駆けつけるのダン一人だが、台本ではアンヌも同行していた。
- ラスト 海を眺めるシーン
台本に「真市君は霊となって、ノンマルトの使者として地上に現われていたのだ。」
(ダン) と台詞が書いてあった。
ダンとアンヌ
劇中、恋人のような関係だったダンとアンヌ。
これは、監督を務めた満田かずほ氏がウルトラシリーズ史上感動の最終回を担当することになり、
いずれか訪れる二人の永遠の別れを演出するためである。
ちなみに、満田氏が同じく監督を務めた「水中からの挑戦」のラストも親密な様子が描かれている
蛸怪獣 ガイロス
放送時に告知した「怪獣デザインコンクール」で銀賞に輝いた名古屋の少年の「ガイロス星人」を元に製作。
ガイロスの全身の吸盤は、応募作では目玉であった。(賞品カセットテープレコーダー)
金賞は同じく前話「水中からの挑戦」でテペト星人に操られるカッパ怪獣テペト。
応募作では「回転サイボーグ ディスクロス・レイザ」という一本足の怪獣であった。(賞品サンヨーのポータブルテレビ10型)
真市
演 町田勝紀 設定年齢11歳(シナリオ決定稿より)。このノンマルトの使者の重要な役割を持った少年。
海底開発を進める人類に対し、ノンマルトから故郷を奪った悪の侵略者と激しく非難する。
だが、少年は二年前海で事故死しており、劇中では正体が語られていないため、様々な想像と解釈があることで有名。
ノンマルトのテーマ
(05:58から)
オカリナの寂しげな演奏が印象的なこの曲は
第43話「第四惑星の悪夢」、
帰ってきたウルトラマン第33話「怪獣使いと少年」のラストシーンなどで使用されている。
海底基地係員
シーホース海底基地係員の一人"カマタ"を演じた二瓶正也氏は、前作ウルトラマン
同僚の係員と共にノンマルトの襲撃を受けたが無事救出され、フルハシ隊員の見舞いを受けている。
(作中フルハシの台詞から)
桑田次郎の漫画版では
真市の立ち位置や海底基地を爆破するなどの結末は殆ど同じだが、ラストの展開がまったく異なるものになっている。
まず劇中でノンマルトが登場しないため容姿が不明となっている。
真市が最後にウルトラセブンに向けて次の罵倒を送る。
「ばかっ 人間のばか! セブンのばかーっ ばかーっ ばかーっ 地球人のばかあーっ」
この叫びを最後に真市はセブンの前から姿を消す。
キリヤマ隊長の「海底は我々のものだ」発言がなくなり、この役回りはなんとアンヌが演じている。
ノンマルトを倒し祝杯を挙げるウルトラ警備隊。ただ一人その場を離れるダンに気づいたアンヌが声をかける。
アンヌ「ダン! どうしたの。元気がないみたいよ」
ダン「うん…真市くんのことをかんがえていたんだ。あの子のいったとおり人間が地球の侵略者だったら…」
アンヌ「なにをいってるの! この地球はわたしたち人間のもの。だれのものでもないわ」
ダン「そうだろうか?」
アンヌ「そうだろうか…だって。まあ、ダンはどうかしてるわね」
この後、海岸を訪れたダンは真市の墓を発見し、真市の母から二年前、波にさらわれて死んだということを聞かされる。最後にダンは真市の正体について海底の平和を願う余り霊となって現れたのだろうと語っている。
平成セブンでは
『1999最終章』の最終回『わたしは地球人』は、本エピソードの続編と言える内容である。
永遠の謎とされていたノンマルトと人類の関係が本当であったことが明かされ、人類はその過ちを宇宙へ向けて公開し反省の意思を示した一方で、セブンは真実を知っても人類を守った罪を問われて宇宙に幽閉されてしまう。
この曖昧にしていたものに踏み込みすぎた内容は、現在に至るまで賛否両論に分かれるものとなっている。
ただ、平成セブンの世界観はセブン以降のウルトラシリーズと繋がらないものであることには留意されたい。