「同じアケーリアスの遺伝子を持つ銀河の同胞(はらから)よ」
概要
『宇宙戦艦ヤマト』のリメイクである『宇宙戦艦ヤマト2199』のシリーズに登場する古代文明。なので「古代アケーリアス文明」とも呼ばれる。
太古に宇宙の各所へヒューマノイド種族の種を蒔いたとされ、それが後の地球人やガミラス人へと至った。また、直系の子孫と云われる存在としてジレル人がいる。
地球人の生みの親である一方、遺物が各種騒動の素になっており、良くも悪くも全ての根源ともいえる存在。
元ネタ
元ネタは十中八九『宇宙戦艦ヤマト完結編』に登場する水惑星アクエリアス(ちなみに英表記はどちらも同じ)。「回遊惑星」とも呼ばれるこの星はその通り宇宙をとてつもなく大きな長楕円軌道で回遊しており、通過する星々に引力の干渉で大量の水を送り込む。その水には生命の素が含まれており、そこから進化して人間を含む多くの生物が誕生した、というのがこの星の設定。地表には滅んだ文明の跡が見られたりする。
原作では地球人(と地球人から直接派生したディンギル人)以外にアクエリアス由来と明言されている種族はいなかったが、『2199』ではこの設定を発展させ、地球人もガミラス人も皆アケーリアス文明の蒔いた種から生まれたと設定された。
特徴
劇中だと遺物しか出てこないので、文明の実体は不明。分かっているのは現代の地球やガミラスよりもはるかに発達した科学力を有していたということだけである。
元ネタが元ネタなので水をモチーフにした意匠やエフェクトが多い。例えば色味は全体的に青系統であるし、亜空間ゲートの出入り時は霧のようなものが出る。建築物の内部には実際に水が張られたところもある。ただし、続編の『宇宙戦艦ヤマト2202』だとその辺の部分は無頓着になっている。
もうひとつの特徴として独特な紋様がある。シダ植物のような複雑怪奇な模様をしており、遺物の表面に描かれていることが多い。
これをデザインした小林誠氏曰くこの紋様は「地図」らしい。そういう前提で見ると、随所にある円状の部分は亜空間ゲートにも思える(あくまで推測だが)。
『2202』では何故かガミラスのゼルグート級の表面に塗装されていた。半分宗教に足を突っ込んでいる反乱軍はともかく、合理性が求められる正規軍の艦にこの紋様が使われる理由は全く不明。ガミラス人にとっては古代文明という遠い存在でしかないので士気には大して影響しないだろうし、上記の通り地図ならなおさら艦体表面に描く理由が分からない(しかも艦体形状に合わせるためあちこち途切れて機能を損なっている)。実際のところ小林氏が過去に模型誌に掲載した作品(『飛ぶ理由』第17回の「オルトロス」)を本編世界に出したかっただけだろうと言われているので、深く考えても仕方がないのかもしれない。
作品内での登場
『宇宙戦艦ヤマト2199』
「あの遺跡はゲートを造った種族が残していったもの」
アケーリアスという単語が出てきたのは第14話。直系の子孫とされるジレル人が、バラン星の遺跡を使用してヤマトに精神感応攻撃を仕掛けてくる。
また、遺物である亜空間ゲートをガミラスが利用しており、ヤマトもこれを使うことで日程の遅れを取り戻す。
本作では単にオーバーテクノロジーの産物を遺した古代文明という程度にしか触れられず、基本的にはファンサービスの域を出ない扱い。
『星巡る方舟』
「この星は我らジレルの聖地、我が始祖アケーリアスのシャンブロウ」
本格的に存在に触れられる。物語中で迷い込んだ惑星を舞台とするのだが、この星こそ太古にアケーリアスが宇宙の星々へ人間の種を蒔いた播種船シャンブロウが擬態した姿であることが終盤に明かされる。
さらに、地球人やガミラス人がアケーリアスが蒔いた種から生まれた種族であることが明言された。
『宇宙戦艦ヤマト2202』
「人間が人間である限り、愛という業からは逃れられない。そんなものを誰が創造した……誰が宇宙に蔓延らせたのだ……!」
本作でもやはり直接登場はしないが、要所要所に影響を与えている。
まず敵勢力であるガトランティスの本拠地となる白色彗星がアケーリアスの遺物である。それ以外にも遺物が2つ出てきており、それなりに存在感は大きい。
また、ズォーダーはアケーリアスの真意についても考察しようとしている。後継者を求めアケーリアスは宇宙に人類の種を蒔いたと推測するが、そこからさらに滅びに瀕した自分達と同じ“人”の姿をしている=同じ失敗を繰り返すと結論付ける。そして、「古代アケーリアス文明の実験は失敗した」と断言して人類を滅ぼそうとする。
登場する遺物
- 超空間ネットワーク
宇宙に張り巡らされたネットワーク。詳細はあまり語られていないので不明だが、ジレル人は後述するバラン星の遺跡からこのネットワークを介して遠方に精神干渉を行うことができる(その際は目標付近に媒体として特殊な物質を散布する必要がある)。
- 亜空間ゲート
超空間ネットワークの応用で構築されたワープネットワークの入口。宇宙の各所に点在するゲートを出入口として数万光年を繋ぐワームホールを形成しており、艦船単体では無しえないほどの超長距離ワープを実現している。
基本的に「システム衛星」と呼ばれる制御装置とセットになっている。これはゲートの制御を担うラグビーボールのような形の人工天体で、見た目は巨大になった波動コアのような印象を受ける。内部はガミラスとは異なる様式をしているが、長らくガミラスに管理されていたためかある程度改造はされており、衛星両端にはガミラスが増築した基地がくっついている。
ガミラスでは「ゲシュ=タムの門」と呼ばれ、マゼラン銀河・天の川銀河にあるゲートの大部分は彼らによって管理されており、広大な版図を持つ大帝国を維持する支えとなっている。
管理下に無いものもいくつかあり、イスカンダルの使者はそれを使って地球に来たほか、放棄されたゲートをヤマトが再起動させて使用している。ヤマトの旅は大幅に日程が遅れ、旅の失敗すら囁かれ始めていたが、この亜空間ゲートによって合計9万光年近い距離を一気に稼ぎ、日程の遅れを解消。さらにゲートを破壊することで敵を足止めすることにも成功した。
ちなみにシステム衛星は旧作でのガミラスの宇宙要塞13号に相当し、デザインもシルエットがよく似ている。
- 自由浮遊惑星バラン
天の川銀河と大マゼラン銀河の中間に位置する自由浮遊惑星。
元々はただの褐色矮星だったが、アケーリアスによって中心にエネルギープラントを設置されるという大改造を受け、ワープネットワークのハブステーションとして生まれ変わった。
土星以上の極端な楕円球をしており、映像ではわかりにくいが実は大気が上下に割れている(中央にラインがあるのは大気の色が違うのではなく、大気自体が薄くて星のコアと向こう側の宇宙が透けて見えてるから)。
大気圏上層には2枚の巨大な岩盤によるプラットフォームがあり、下部プラットフォームにはアケーリアスの遺跡、上部プラットフォームにはガミラスのバラン鎮守府が建設されている。
星の周囲に人工のリングがあり、銀河系方面と大マゼラン銀河方面にそれぞれ亜空間ゲートが設置されている。
劇中ではガミラスの銀河方面軍司令部として利用されている。中盤でクーデターを目論むゼーリックによって1万を超える大艦隊が観艦式という名目で集められるが、亜空間ゲートを通って現れたヤマトが暴れまわり、最後は波動砲で惑星中心のプラントを破壊。プラントの爆発によってガミラス艦隊は大損害を被る。
おまけにハブステーションたるバランの崩壊によってワープネットワークは大混乱に陥り、残存艦隊はガミラスまでの帰路で亜空間ゲートを使用できなくなってしまう。戦力の大部分を遠くに置き去りにしたこの一件が、ヤマトがイスカンダルへ辿り着くターニングポイントとなった。
プラントが爆発して消滅した影響か、数か月後には真球に近い形状の星へ変貌していた。
リメイク元にも登場する星だが、改造云々の設定はない。変貌後の姿は旧作と瓜二つとなっている。
- 恒星間播種船シャンブロウ(星巡る方舟)
『星巡る方舟』に登場する。作品サブタイトルである「星巡る方舟」そのもの。
太古の時代にアケーリアスが宇宙の星々に人類の素的なものをバラまいた、その名の通り「播種」のための船。
格子がひょうたんのような形状に組まれた姿をしており、内部に惑星規模の球体が存在する。平時は備わった遮蔽技術によって、外部からは光学迷彩のように宇宙に溶け込んで不可視となり、格子内部は薄鈍色の空間となる。球体は薄鈍色空間に浮かぶ惑星に擬態し、その姿は「静謐の星」として伝説に残っている。
ガトランティスからは前述の遮蔽技術に目を付けられ、捜索されていた。
劇中登場時は擬態したまま休眠状態となっており、ジレル人の巡礼地となっていた。船はアケーリアスの末裔が手を携えることによって再起動するようプログラムされており、地球人・ガミラス人・ジレル人の3種族が手を取り合ったことによって船が再起動する。そしてシャンブロウを狙うガトランティスを退けた後は、ジレル人を乗せて宇宙の彼方に去っていった。
『2202』では滅びの方舟と対をなす「種蒔く方舟」とされている。
- 滅びの方舟
『2202』に登場する。種蒔く方舟たるシャンブロウの対となる存在で、誕生した知的生命が悪しき道へと進んだ際にそれを滅ぼすために作られた。しかし劇中ではガトランティスが手に入れてしまい、本来とは違った使い方をされている。
詳細は滅びの方舟を参照。
- 惑星シュトラバーゼ
『2202』第8話~第9話に登場する。太陽系からおよそ1800光年の位置にある惑星。惑星の2方向からとてつもなく巨大な岩山がそびえたっている。地表は岩石と溶岩に覆われているが、不思議と人が薄着で事足りるくらいの暑さである。
明らかに物理法則を無視した形(この規模の星で大気圏より高い山なんて普通にあり得ない)なのだが、これは質量を隣接次元に依拠している(つまりこちらにあるのは立体映像のようなものである)ためで、実体は普通の惑星と同じように球体らしい。気温に関しても熱を隣接次元に転送しているので低めとなっているとのこと。
アケーリアスの遺跡があるとされ、遺跡内にはテレサと白色彗星を描いた壁画が存在する。順当に考えるとアケーリアスはテレザートよりも前の文明のはずだが、なぜテレサの絵があったのかは不明。
劇中では第十一番惑星の避難民を地球へ向かうガミラス艦に移乗させるために立ち寄ったが、ガミラス反乱軍の襲撃により惑星が崩壊した。この時古代と雪とガミラス艦が崩壊する惑星に墜落していったのだが、ヤマトが波動砲を撃ったことによって崩壊が止まり救われる。……とざっくり書いたが、劇中ではこの星の仕組みや助け出す原理について全く説明しないので、この時なにが起こっていたのか、なんで波動砲を撃てば助かるのかまるで分からなかった視聴者がほとんどと思われる。
小説版では大幅に設定が掘り下げられており、周辺宙域も含めてアケーリアスの実験場であり、バラン星と同じように惑星自体も大改造されていると作中人物によって推察されている。その実験内容とは異次元とエネルギーのやり取り的なものらしく、上記の質量を持たない岩山や熱の転送などはその一端。
地上の遺跡もアケーリアスの物ではなく、後年別の文明が残した物。その文明がテレサの啓示を受け、その内容を後世に伝えるためにシュトラバーゼに遺跡を作った。シュトラバーゼが選ばれた理由は明らかに異様で目立つから。確かにこんな突飛もない星なら目につくし、そこに遺跡があるとなれば調査する人間も大勢来るだろう。
崩壊時の現象についても解説され、惑星崩壊の影響で隣接次元への穴が空き、空っぽの異次元空間が周囲のものを吸い込むという現象が起きていたとという(例えるなら布団圧縮袋に穴を空けたら外部の空気を吸い込んで膨らみ始めたようなものか)。古代たちがレーダーに反応しなかったのも、異次元空間の一歩手前まで達したせいで、上記の岩山のように質量が異次元に行ったから。そして波動砲を撃てば助かるというのは、波動砲の膨大なエネルギー≒質量を投入することで異次元空間を満たしてやり(上記の布団袋で言うなら送風機で空気を送り込んでさっさと膨らませてしまい)、吸引を止め、あわよくば逆流までさせるという理屈である。
あまりにもアニメで説明不足を酷評され過ぎたためか、総集編『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』では本筋にあまり関係ないのに解説が入れられている。
- 円筒型天体
『2202』第11話に登場。ヤマトが迷い込んだとある次元の狭間の空間にある細長い円筒型の天体。その外観からちくわと称される。
異次元空間は超新星の残骸が充満しており、ある種の火薬庫のような状態。波動エンジンのようにエネルギー源を外部空間に頼っているタイプのエンジンは、逆にエネルギー変換が過剰になり、圧力に耐えきれず内部から爆発してしまう。いわば焚火に薪どころか油を際限なくぶち込んで大火事にするようなものである。
脚本でのキャラの推察や小説版での補完によると異空間からエネルギーを吸い出すパイプのようなものらしい(つまりシュトラバーゼとは真逆の存在というわけである)。円筒内は通常宇宙と同じ位相空間になっており、そこでワープ状態になればエネルギーと一緒に通常宇宙へと吸い出される。ヤマトは波動エンジンが使用できない状態だったが、あくまで使えないのはエネルギーを生み出す機能だけで、ワープ機能ほかの機能は問題なく使えたので、エネルギーを外部に放出して周囲の火薬に火を点け、そのエネルギーを取り込んで利用しようとした。実際にはその前にデスラー砲が撃たれて似た状態になったので、そちらのエネルギーを使用してヤマトはワープした。
天体は異空間のコアにもなっていたらしく、デスラー砲で天体が破壊された後は異空間も消滅した。
ちなみにこの前話に登場する宇宙ホタルは元々この空間に住まう生物で、円筒型天体を通して通常宇宙に出てきたのがヤマトに遭遇したということである。そして次元の狭間で宇宙ホタルを発見したヤマト一行は、ホタルが出れたならヤマトだって出れるはずと希望を見出す。
この設定は小説版でしか語られていないが、アニメの方の脚本家がヤマトークで「自然物だけど実はアケーリアスと関係が…」と言っているので、アニメ版でも同じ設定と思われる。
元ネタは『宇宙戦艦ヤマト2』第12話に登場するちくわ型小惑星。こちらもデスラー砲で破壊された。
関連タグ
宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟 宇宙戦艦ヤマト2202 ジレル人 全ての元凶
プロトカルチャー:マクロスシリーズにおける、その世界の地球を含むゼントラーディといった他の種族や文明を造り、大昔に栄えた種族及び文明。ひょっとしたらアケーリアスの特性上、ヤマト完結編のアクエリアスのみならず、彼らもモチーフ元になっているのかもしれない。