概要
『機動警察パトレイバー』に登場するレイバーの内の一機種。
軍用として黎明期に開発されたレイバー。
注)「機動警察パトレイバー」はメディアミックス作品の為、作中での描写、設定資料全集、ムック、雑誌によって設定の相違点が非常に多い事にご注意下さい。
データ
機体名 | アトラス |
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制式名称 | 菱井AL-97 |
開発メーカー | 菱井インダストリー |
全高 | 9.40m |
全幅 | 6.35m |
全装備重量 | 8.27トン |
最大起重 | 3.25t |
最小回転半径 | 4.35m |
装甲材質 | 高張力スチール |
装備 | ラインメタルMK22・20mmバルカン砲、ロケットランチャー、スモークディスチャージャー、帯磁粒子弾 |
主な乗員 | 自衛隊員 |
機体について
四菱グループ菱井インダストリー製造。1997年に開発、陸上自衛隊に制式採用された初の純軍用レイバーである。(軍用以外であればタイラント2000の改装型が96年に自衛隊の工科部隊用に採用されている。)
制式名称(型式番号)は<菱井AL-97>機体名は「アトラス」。ギリシャ神話の巨神であり、怪力で天空を支えているとされる。
初期OVA版では「97式装甲戦闘レイバー」だったがTVアニメ化の際に「アトラス」という名が後から設定された。そのため単に「97式」と呼ばれることも多い。
メカデザインは大畑晃一。
軍用レイバー黎明期に開発されたため、基本的な設計構想は戦車や戦闘ヘリのものを流用している。操縦者のパイロットと火器制御のガンナーに役割を完全に分担した複座式。(ある程度までは一人でも操縦可能。)そのため機体サイズが大型化してしまい、2脚レイバーでは最高頭頂となってしまった。
戦車及び戦闘ヘリとの共同作戦を想定して開発され、対地・対空ともにそこそこの攻撃力を持つ。装甲は分厚いが機動力が低く、腕も短いため格闘戦能力はきわめて低い。
機体形状はずばり手足のついた攻撃ヘリ。菱井の作業用レイバーは腕が長いことが多いのだが、アトラスは非常に短い。手は簡素な三本爪状で物を掴むぐらいしかできないと思われる。脚部は太く長いもので、実は巨大な身長の半分以上が脚部で占められている。四菱重工の航空機技術を流用したため、機体中央前面部にクリアキャノピー式の操縦席がある。
武装は右肩にNATOが戦闘ヘリ搭載用に開発した20mmバルカン砲、左肩にロケットランチャー。バルカンは後頭部内に弾薬が収納されている。搭乗者はノクトビジョン付きの専用ヘルメットを着用する。
長距離移動用に専用の輸送用トレーラーが配備されている。初期OVA版ではこのトレーラーの払い下げ品がイングラム用として特車二課に配備された。荷台は切り離しが可能なタイプ。
帯磁粒子弾は初期の資料集のみ装備されている設定がある武装。本編には登場しないため後にオミットされた。パトレイバーがまだ企画段階の際に、出渕裕とゆうきまさみがSF作家火浦功に依頼したパトレイバー第一話サンプルストーリー小説内にて登場する。サンプル版では磁気粒子弾と呼ばれている。
一定範囲内の電子機器類を一時的に妨害する特殊弾。人間に対する催涙弾のようなものでレイバーの機能を狂わせる。警察用レイバーや軍用レイバーが装備し、施設に立てこもったレイバーをいぶりだす際に使用する。ガジェット的にはガンダムにおけるミノフスキー粒子のように、ロボットが白兵戦を行う理由づけとして考えられていたと思われる。
この電子妨害はファントムやイングラム3号機に装備されたECMポッドとして再登場することになる。
初期型がロールアウトされた時点ですら、まだレイバーの軍事活用の方向性ははっきりしてなかった。スペック的には掃討戦に威力を発揮すると期待され、戦車との共同演習では優秀な成績を収めた。
そして自衛隊のシミュレーションで軍用レイバーはアンブッシュ(待ち伏せ)を基本とした作戦が確立され、戦車と共に待ち伏せをし、敵の航空戦力に対空砲火、及びミサイル迎撃を行うのが主任務となった。しかしその巨体で待ち伏せはあまりに無理があった。
反省を踏まえて後継機として全面的に改良されたサムソン、発展型のハンニバルがある。
そのサムソンも導入からわずか1年で旧式化してヘルダイバー、アメリカ軍レイバーに歯が立たなくなっているが、意外にも現場での評判は良い。そしてハンニバルはPKO派遣に抜擢され、2002年以降にも順次配備が進んでいることから、アトラスにも軍用レイバーとしての一定の成果はあった、と言えるかもしれない。
左からアトラス、ハンニバル、サムソン
劇中における描写
初期OVA版では自衛隊の決起軍として登場。ガトリングでパトカーを粉砕した。
TV版では暴走したHAL-X10を迎撃したが文字通り一蹴されてしまった。
バリエーション
97式装甲戦闘レイバー試作機
1997年1月に発表、6月にロールアウト(時期は他設定と矛盾がある)
本採用機とは細部が若干異なり、両肩に大型ライトのようなものがある。きちんと長い指があり関節が多い、しかしそのせいか腕が太くなっている。
右肩上部には三連装のミサイルランチャー、左肩上部には銃身が長い機関砲(35mm?)を装備。
AL-97-1S
バルカン砲に替わって両肩にヘルファイアを小型化改良した対戦車ミサイルを装備する改良型。
被弾率の高いキャノピー部を装甲化し、後のサムソンの原型となった。
AL-97-1G
バルカン砲をエリコン社KDE35mm機関砲に変更した改良型。出渕氏のイラストではサムソンとは別形状ながら、こちらもコックピットが装甲化されている。
???
出渕裕版バリエーションデザインも幾つか存在するらしいが詳細不明。
追記お願いします。
余談
軍用レイバー最初期の機体であるアトラスは「装甲車に毛が生えたもの」と揶揄されるほど、非常に課題の多いレイバーであった。
・使用目的が決まってない状態で開発されたため機体仕様が中途半端
・操縦系統の統合が出来ず複座式
・巨体からくる投影面積の広さによる高い被弾率、被発見率
・機体正面に操縦席があり装甲化されていないクリアキャノピー
・機動力と格闘能力の低さ
・レイバーとしては比較的重装甲でも、軍用兵器としてはかなり薄い装甲
意外にも自衛隊ではレイバーの有用性に早い段階で注目していて柘植行人を中心とする多目的歩行機械運用研究準備会(通称:柘植学校)が創設されていた。様々なシミュレーションモデルによってその有用性を実証して技研本部と民間企業との連携が行われていた。しかし、音頭をとっていた柘植行人のスキャンダルに何らかの影響を受けたのか、アトラスは研究からかけ離れた機体となった。
本来の軍用レイバーの利点として想定された悪路走破性、マニピュレーターに兵器を持ち替えれる汎用性、高い運動性を兵士一人でまかなえる、外装と武装強化が容易で開発コストが低いといった特徴はヘルダイバー、NATO諸国のブロッケンまで持ち越されることになる。