概要
漫画『マギ』に登場する架空の世界の名前。
時間軸としては『マギ』の物語よりも過去の世界であり、また、本編の世界とはまた別の世界でもあるらしい。
以下、本作の本質にかかわるネタバレを含みます。ご注意ください。
歴史
起源と魔法
遥か昔、その世界はアラジンたちのいる世界と同様、長い時をかけて大地・水が生まれ、生き物が生まれ進化していった。ただ一つ、この世界と違う点があり、それは人間以外の知的生命体が生まれたという点だった。そこでは数多の種族が生まれ、それぞれが社会・文明を築き栄えていった。やがてその種族たちは遭遇し、互いの土地や食料を奪い合うため戦いが起こりだした。
弱い種族は強い種族に淘汰される日々の中で、ある最弱の種族がいた。それが我々人間だった。人間は他種族と違い強靭な肉体も鋭い爪・牙もなく、ただただ他種族の食料として狩られるだけの種族だった。しかし、ある日突然空より現れた白い光のかたまりが人間を襲っていた種族を消し去り、人間たちの傷を癒した。人間たちはそのかたまりを創造主「神(イル・イラ-)」と呼びあがめた。
イル・イラ-は人間たちに「他種族たちをまとめ上げ、世界を一つにせよ」と告げ、自身の力の一部である奇跡の力「魔法」を授けた。人間たちはその力をもって「理想郷(アルマトラン)」を築くため、歩み出した。
支配と抵抗
「神」出現から800余年。魔導士たち「魔導士聖教連」は世代を経る中で「理想郷」の志は失われ、「神杖」(第三の目を開き、神から魔力を大量に得るための魔法道具)と「愚々塔(グヌート)」(精神干渉魔法を放ち他種族を奴隷にする巨大な魔法装置)を使い、他種族たちに圧政を敷いていた。
しかし、そのような圧政を望まんとしてソロモンを中心に立ち上がった者たちがいた。それが「抵抗軍(レジスタンス)」である。抵抗軍は愚々塔の神杖を奪い他種族を解放しては、他種族に「魔法」を授け勢力を広げていた。当然、他種族が保護下になる過程で種族間の衝突も増え、戦いは難航を極めたが、ソロモンが彼らの王になることで鎮圧。ついには聖教連の長ダビデを討ち取るに至った。
しかし、他種族の衝突を諫めることで疲弊。そして最終決戦でダビデが仕込んだ罠によって抵抗軍の後方基地が襲撃を受け、セッタ・テスをはじめとした抵抗軍の魔導士の家族たちが皆殺しになり、魔導士たちは憔悴。聖教連との戦いには勝ち喜ぶ他種族たちとは対照的に、人間の魔導士たちの表情は暗く堕ちていた。
運命と滅亡
ソロモンは基地のみんなの死に意味を見出すため、聖教連の大聖堂に魔導士たちと共に向かい、ダビデの神杖を使ってシバ・ウーゴ・アルバと共に次元の歪みに足を踏み入れた。そこで彼らは「神(イル・イラ-)」と接触し、ダビデが見ていた運命の存在を知る。魔導士たちは第三の目をもってソロモンたちが見た運命を知り、涙しさらに深く絶望した。自分たちのしてきたことはすべて自分たちの意志でもって成してきたことではなく、運命によって決定づけられていたからだ。
ソロモンはこの運命という神の奴隷であるという事実に反抗するため「神(イル・イラ-)」からルフの力を奪い、世界のルールを改変しようとした。アルバは彼の行いを止めようとするも間に合わず、
- 神(イル・イラ-)はルフの力を奪われ異空間に封印。
- そのルフはアルマトランのあらゆる種族に均等に分け与えられ、その色はイル・イラ-の黒から、ソロモンの意志が宿った白に輝きだした。
- そして、ソロモンと共に来たシバ・ウーゴ・アルバの三人は、万が一のための力としてソロモンより外部のルフから魔力を受け取る力を授けられた。
歪みから戻ったソロモンの肉体には彼の意志は宿っておらず、その意志を語るだけの人形のように成り果てた。そして魔導士たちはイル・イラ-から受けていた魔力を受けられず、魔法を使うには自身の身に宿るわずかなルフからの魔力しか使えられなくなってしまった。加えて運命に関しても、支配元が神(イル・イラ-)からソロモンに挿げ変わっただけであり、見方によっては進展しておらず、このような惨状からアルバと魔導士たちの大半はソロモンから離反。シバ・ウーゴはソロモンの手足として彼に変わり異種族を守り、世界を導こうと奮闘。
当初はなんとか魔導士たちをまとめアルマトランを築いたものの、水面下ではルフを黒に戻す技術・そこから生命体を生み出す技術が開発された。そしてソロモンの晩年、魔導士たちは自らを「八芒星の共同体(アル・サーメン)」と名乗り、大規模な反乱を起こす。
戦いの中でシバはアルバの手によって殺され、アルマトランの大地もイル・イラ-がワヒードによって地に落ち、地上のほぼすべての命からルフが奪われた。アル・サーメンたちはシバの死によって戻ってきたソロモンと、不老不死の魔神であるジンになった72人の異種族の長たちによって異空間に封印されるという形で反乱は治められた。
アルマトランの大地はイル・イラ-によって荒廃し、ソロモンもアル・サーメンの封印とイル・イラ-から民を守るため命を落とし、生き残った他種族たちは絶望するも、ウーゴはイル・イラ-の手の届かなかった地下で他種族たちを避難させ、さらにアルバのお腹の中で生き残っていたソロモンの息子アラジンをソロモンの生き写しと言うことでまとめ上げた。
転移、そして現在
地下への避難から5年。アルマトランの資源は残りわずかになった。そしてウーゴはソロモンの最期の言葉を果たすため、アルマトランとは違う別の世界を作り出し、そこにアルマトランの民を移住させる計画を実行した。ウーゴは別世界の豊かな惑星に次元のトンネルを通し、それを使ってルフごと移動。ソロモンの魔法で満たされたその世界では一部を除いた他種族・知的生命体の姿は人間の姿に統一され、アルマトランでの記憶も徐々に消えていくようになり、彼らはそこで新たな生活を始めるようになる。
マギの世界の人種が異なる理由がここにあり、マギ世界の人間は元々アルマトランで暮らしていた人間ではない数多の他種族であり、それらが世界の転移で人間の姿に変えられ、異なる髪色・目・肌・言語・文化が形成されていたのだ。
例外として、元々人間だった者たちは魔法に対する抵抗力ゆえにアルマトランの記憶がなかなか消えなかった。現在は記憶はなくなっているものの、アルマトラン時代の言語を使い続けている。彼らは『トランの民』と呼ばれる。
そして上述の原始竜(マザードラゴン)と、聖教連の魔法をもってしても支配できなかった唯一の種族「赤獅子」はその力が強すぎて上記の魔法があてはめきれず、彼らの住む大陸ごと南の果てに転移させられる。
そしてもう一つ、ウーゴは同時にある計画を立案した。ウーゴは地下に避難してからアラジンを象徴として立てるまでの間のこと、そして抵抗軍が他種族の衝突を諫めていたことを根拠に、ソロモンの望みに反するものの王様が必要だと考え、他種族の長に一つ提案した。
その提案こそが、世界を導く王・指導者を選ぶ存在である「マギ」システムである。マギとはご存じの通り、周囲のルフから魔力を受け取ることのできる無二の力を持つ。そしてそのルフにはソロモンの意志が宿っている。その意志を読み取ることができるマギが選んだ者たちが、世界を導くに足る王に相応しい器であると考えたのだ。
そして他種族の長たちには、マギが選んだ「王の器」たちが相応しい者たちかどうか、黒い心を持つ者たちなのかどうかを見定め、相応しいものであればその者に力を与えるシステムを考案した。その仕組みこそが迷宮(ダンジョン)であり、その与えられる力こそが金属器である。他種族の長たちは不安を抱きながらも快く了承し、アルマトランの世界の各々の街に残留。ウーゴはジンになりこれらの複雑なシステムを管理しつつ、死したマギの魂を送り出し続ける聖宮の番人となる。
そして物語は、現在へと続く…
アルマトランの登場人物
異種族を虐げる魔導士聖教連に仇なす抵抗軍(レジスタンス)のリーダーである人間の少年。
複雑な模様が描かれた玉の付いた神杖を持ち、重力(ゾルフ)を操る魔法を得意とする。かつては異種族制圧を自ら買って出るなど、ダビデ老に従う忠実な戦士・息子だったが、『大地の裂け目』の開拓の過程で亜空間に落ち、死にかけていたところを原始竜(マザードラゴン)に助けられる。彼の話を聞くうちに父の異種族排除論を否定するようになり、聖教連から離反した。
上記の理由とすべての種族が平等でなければならないという信条から自身が王になることを避けていたが、異種族間の衝突の激化と、それらを治めてほしいと大勢の人たちが願ったことで、後にアルマトランの王となる。
本名は、ソロモン・ヨアズ・アブラヒム。
ソロモンらが愚々塔より助け出した魔導士の少女。三日月のような形の神杖を持つ。
当初は聖教連の教えに妄信的に従い異種族を蔑み嫌っていたが、徐々に改心し、レジスタンスの一端を担う一員となる。自身を愚々塔から解き放ち、自分の考えを変えてくれたソロモンに好意を抱いており、後にアルバの進言などからソロモンと結婚。アラジンを授かることになる。
防御魔法(ボルグ)を極限まで高めた結果、強力な攻撃魔法になるにまで至り、「八つ首の防壁」使いの魔法使いと聖教連に恐れられるほど強い。
ソロモンの幼い頃からの友人。水色の髪に厚縁眼鏡をかけ、縞々のマフラーを付けている。
太陽の形を模した神杖を持つ。
非常に聡明な頭脳を持ち、あらゆる魔道理論を考案・構築する能力を秘めている。その分、大変なインドアであり、女性との付き合い下手なままメンバーイチの年長者。戦闘でも、主だって先陣に立つことは少ない。
本名は、ウラルトゥーゴ・ノイ・ヌエフ。天才魔道理論構築者と讃えられつつも、彼の理論を理解出来る者は少なく、本に埋もれて孤独な日々を過ごしていた。
ソロモンの召使いだったという女性。茶髪を太く長いおさげに結っている。
翼を模した神杖を持つ。
ソロモンを古くから知り、彼に杖による剣術を仕込んだ本人と言う。メンバーの中でも随一、ソロモンとは気の置けない仲を築いていたらしい。ソロモンが王になりたがらない理由を理解しており、シバにソロモンを支える二本の柱になろうと進言した。
レジスタンスの一員。黄(金)色い長髪を持つ男性。
鎌を模した神杖を持ち、雷を操る魔法を得意とする。
インドアで引っ込み思案なウーゴを仲間らと共にしょっちゅうからかい、また弟分であるセッタの頼れる兄として振る舞う。
レジスタンスの一員。紫色の髪に浅黒い肌を持ち、眼鏡をかけたクールな男性。
三叉に別れたΨのような形の神杖を持ち、氷を操る魔法を得意とする。
イスナーンとは血縁では無いが、実の兄弟のように育った仲といい、彼を「兄さん」と呼び慕う。
一人称は「僕」。「クールじゃないな」が口癖。
レジスタンスの一員。オレンジの髪を輪を描くように結い上げた独特の髪型の、グラマーな女性。
炎(仏像の光背に似る)を模した神杖を持ち、精神感応のような魔法を操る。
美人だが、欠伸を繰り返しマイペースな雰囲気を漂わせる。ワヒードに胸を揉まれても全く動じない。
語尾に「アル」が付く喋り方をする。
レジスタンスの一員。白い長髪に、左目を眼帯で覆った大男。口の左側に大きなリングピアスを付ける。
金剛杵が重なった形の神杖を持ち、炎を操る魔法を得意とする。
食欲旺盛であり、また、ファーランのおっぱいにしょっちゅう抱きついている。
口調は「~だのう」などと古めかしい。凛々しい顔立ちだが、当初は潰れたデフォ顔になることが多かった。
本名は、ダビデ・ヨアズ・アブラヒム。聖教会連合の魔導士長。