概要
2020年5月にイギリスのレイノルズ親子がサマーセットの浜辺で発見した魚竜の顎の化石から名付けられた。
2億100万年以上前の三畳紀には、シャチのような頂点捕食者の巨大な魚竜が海を泳いでいたとされるが、なかでも最大候補の一つが体長約25mにおよぶともされるイクチオティタン・セベルネンシスである。新たに発見された本種は論文が学術誌「PLOS ONE」に発表された。
学名は「セバーン川の巨大な魚のトカゲ」を意味するが、これはこの種の推定される大きさと、2つ目の骨が発見されたセバーン川の三角江に因んだことから。
現在の所、イクチオティタンで見つかっている骨は、下顎のうち上顎と関節する部分の「上角骨」が2つだけである。これがもし、米国南西部のショニサウルスやキンボスポンディルスなど、世界のほかの場所で発見された巨大魚竜と同じような体形だとしたら、イクチオティタンは体長約25mと、シロナガスクジラに迫る大きさだったと推定される。
これほど大きな動物の骨が僅かしか残っていないのは奇妙に感じるかもしれないが、巨大魚竜の完全な化石を見つけるのは実は難しい。
「彼らの生態と外洋に暮らしていたことが原因かもしれない」というのが研究者のロマックス氏の見解。巨大な生き物の死骸は、ほかの動物に食べられる時間が長くなる(現在のクジラでもその傾向が確認できる)。少なくともイクチオティタンの顎の一つには、土砂に覆い隠される前に齧られた形跡がある。
幸運に恵まれれば、将来新たな化石が発見され、イクチオティタンの形が完成するだろう。正確な大きさが変わる可能性もあるが、この魚竜が巨大生物だったことに変わりはない。
魚竜が三畳紀に出現してから約800万年で、既に巨大な種が進化したという証拠は増えている。その多くは、まるで巨大なシャチのように、ほかの海洋爬虫類や自分より小さな獲物を狩るテムノドントサウルスのような凶暴な捕食者だったのかも知れない。