この空の向こう、大気圏も越えて、お月様のその先
火星も木星も、土星の輪っかも飛び越えて
太陽系の、GBNの果てまで
だから行こう、ヒロト
もっともっと遠く、銀河のはるか先、宇宙の向こう側まで
どこまでも、どこまでも――!
CV:水瀬いのり
人物
コアガンダムを組み上げた当時のヒロトの前に現れた、少女の姿をしたダイバー。白を基調したドレスに、二つ結びで整えた金色のロングヘアーが優しげに揺れる、浮世離れした印象の人物。左耳のイヤリングは、ヒロトが彼女のために作ったものである。
バトルがメインコンテンツのGBNを指して、「大切にする気持ち」で人と人を繋ごうとしている世界との持論を持ち、砲火に晒されることも多い無数のディメンションを心の底から愛している。価値観に共鳴したヒロトと二人でGBNの各所を回っていた。
ガンプラの気持ちを感じ取ることが出来るようで、ヒロトが「ガンプラも感情のようなものを持っている」と考えているのは彼女からの受け売り。
第二次有志連合戦が起こる少し前にヒロトの目の前で消滅してしまっており、その出来事がヒロトをGBNから遠ざける一因となっている。
その在り様は2年経った現在でもヒロトの心に強く刻まれており、あてのない彷徨を続ける彼にとってのひとつの道標として息づいている。
もう一つの物語
運営も確認していなかったもう一人のELダイバー、それがイヴである。
イヴとヒロトが初めて出会ったのが、GBNのサービス開始から間もない時期であったことが判明しており、世界で最初に誕生したELダイバーである可能性が高い。サラのことを示唆して「妹」と呼んでいることからも、自身の在り様については自覚していた模様。
人の思いがすべてを形作る世界に生まれ落ち、ヒロトがGBNで思いを形にしていく様子に多くの喜びを見出しており、自身の途方もない願いにも寄り添おうとする彼に信頼と親愛を寄せていく。
ヒロトとGBNの各所を回りながら親交を深める一方で、「マスダイバー事件」を機にGBNに生じ始めたバグがもたらす負荷(あるいは「黒サラ」)を引き受けており、そのせいで変調を来してしまう。ヒロトをフォースに所属させようとしたのも、自身の行く末を予期してのこと。
GBNとGBNを愛する人々、すでに生まれていたサラのようにそこで生まれるいくつもの可能性を守るために、抑え込むことも難しくなった大量のバグと共にデータの海へ還ることを選び、自身の出自を明かした上でヒロトとコアガンダムに「自分を消してほしい」と願い出る。
あまりに衝撃的なことで躊躇うヒロトだったが、イヴはコアガンダムを遠隔操作して自分を撃たせようとする。バグの嵐が吹き荒ぶ中で、一刻の猶予もないことを悟ったヒロトは、動揺と葛藤を押し殺してその願いを聞き届け、イヴを制止しようと伸ばしかけた手を止めることしかできなかった。
そして、コアガンダムの放ったビームがイヴを貫き、感謝と最後の願いを託し、彼女は光の粒となって消えていった。
「 これからも、誰かのために頑張れるヒロトでいてね 」
GBNを守りたかったのは生まれた場所であることや前述の理由だけでなく、ヒロトとの思い出の地でもあることも同時に明かしており、ヒロトに対する想いも大きかったようである。
その最たる例がヒロトに自分を撃つように頼んだときの「せめてヒロトの」という発言で、自己犠牲を選ぶような優しい性格の彼女がヒロトに対してつらい選択を求めたのは彼女の最後の願い、わがままだったと思われる。
データの海に帰った彼女だがメイを構成する因子の一部となり、ヒロトが送りそのまま消滅してしまったペンダントもGBNから溢れる形でメイのリアルでの所持品として再出現していた。
また、消滅してからも彼女が力を貸すような演出が見られたりエルドラで白い花びらが舞ったりする中でヒロトもそれを感じているような描写が存在している。
アルスから生まれた新たなELダイバーがアルスではないと断言されたことからイヴはメイに転生したわけではなく、アルス消滅時に古き民が迎えに来たことも合わせると彼女は消滅時の宣言通り存在は消滅してもデータとしてGBNに存在し続け、ヒロトに力を貸していたのではないかと思われる。一応転送されるとはいえ、エルドラにもその影響が及んでいたことを考えるとガンダムではお馴染みのオカルト的なものだったのかもしれない。
素性についての考察
「ガンプラの気持ちが分かる」と主張する点、物語の最重要人物と思われる点から、早い段階で前作のサラに近い存在ではと考えられており、イヤリングと髪色がモルと似通っていることから直接的に関連づける考察も見られた。
メイが電子生命体「ELダイバー」だと明かされた際、ヒロトはイヴもELダイバーだったのではと推測しており、ELダイバーの消失は死と同義なのかをメイに訊ねている。
後に、聖獣クアドルンが語った惑星エルドラの真実を鑑みると、イヴの出自には更なる秘密が隠されているのではないか、又はサラ以降の他のELダイバーとは異なる存在なのではないかとも推測されている(19話予告や20話でのイヴの台詞もそれを仄めかすような物になっている)。
17話登場したエルドラの「古き民」がGBNにたどり着いたことやその中にイヴとサラに似た女性が出たことから「GBN内で生まれたELダイバー」ではないという推測もあったが20話で彼女自身がGBNで生まれたことを明かしこの説は否定されている。
最終回(26話)で古き民が訪れたことがELダイバーが生まれる最後のきっかけになったという推測が作中で行われた。このことからイヴとサラは何らかの影響で前述の古き民に近い姿で生まれたと思われる(古き民もアルス消滅時に現れたためイヴやサラとは別人である)。
イヴが古き民の事情をほのめかすような発言をしたこと、自身の誕生経緯やサラの存在などを知っていたことなどについては推測することはできるが作中で明言はされなかった。
なお、モルとの関係も特になかったのだがこれに関してはメイのようにイヴのデータが影響したという考察も可能である。
余談
彼女がELダイバーであること、既にいなくなってしまった人物であることは序盤から匂わされていたが、消滅の詳細は第20話まで伏せられていた。
前作における連合戦の発端は「修正パッチを適用してGBN内のバグをサラもろとも一掃しよう」という機運にとある一派が反抗したことにあり、前作終盤には「サラのサルベージに成功した後で、修正パッチで残ったバグを消去する」といった旨のセリフもあったことから、一部視聴者の間では修正パッチ適用の巻き添えで消滅したのでは、との考察もあった。
劇中では第二次有志連合戦に参加した際にヒロトがリクのダブルオースカイを撃墜可能な状況でありながら撃てなかったという回想が度々描写されており、自分がイヴを救えなかった一方で彼らは同じ存在を救おうとしている事実に激情を抱き、結果的には引き鉄を引きながらも狙いを逸らした(「撃った」けれども「撃たなかった」)ことが判明している。
ヒロトがGBNから遠ざかったのはこの直後であり、イヴが消滅したこと以上に、彼女の最期の言葉を忘れ、彼女の妹を救おうとしていたリク達にどす黒い感情をぶつけようとした自分に対する強烈な嫌悪感が直接の動機になった模様。
消えるのならせめて大切な人の手で、というイヴの願いには理解を示す傍ら「(直接手にかけたわけではないにせよ)15歳の少年に経験させていい出来事ではない」という声もあり、何らかの不可抗力で消えざるを得なかったのではという大方の予想を飛び越えた容赦のない脚本に多くの視聴者が恐怖することとなった。
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