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ウィッチャー

うぃっちゃー

ポーランドの作家、アンドレイ・サプコフスキによるファンタジー小説。 原題は「Wiedźmin」。英題は「The Witcher」。 かつて「魔法剣士ゲラルト」の題名で発行されていた。
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概要編集

怪物退治を生業とするウィッチャーである「リヴィアのゲラルト」の壮大なサーガ。

テメリア、レダニア、ケイドウェン、エイダーンを中心とした北方諸王国と南方の大国、ニルフガード帝国間の戦争、人間とエルフ、ドワーフなどの非人間族との間の対立を背景に、ゲラルトとその仲間たちの冒険が描かれる。


小説そのものもさることながら、地元ポーランドの企業「CD PROJEKT RED」に開発されたゲーム版がいずれも傑作として名高く、特に『ウィッチャー3』は日本を含め世界中で大ヒットした。


あらすじ編集

大陸南方の大国ニルフガード帝国が北方への侵略を開始し、キャランセ女王が治めるシントラ国を滅ぼした。ウィッチャーであるリヴィアのゲラルトはシントラ国から脱出した自身の<驚きの子>王女シリラを見つけ出し、彼女をウイッチャー達の砦・ケィア・モルヘンへと連れて帰った。

「シントラの虐殺」と呼ばれた凄惨な戦争から2年。ウイッチャー達はシリをウイッチャーの見習いとして育てようとしていたが、シリは<古の血>と呼ばれる古代エルフの末裔であり、彼女には<源流>と呼ばれる制御不能な力を持っていることを知ることになる。また、男所帯であるため大人になりつつあるシリの扱いに困った彼らは知り合いの女魔術師トリス・メリゴールドに助言を求めた。

トリスはシリを遠く離れたメリテレ寺院に通わせ、力の制御を学ばせることを提案する。旅路は長く、困難であったが、たどり着いた寺院でシリはイェネファーと出会い、当初は反目しつつも絆を深めていった。


その頃、シリの生存を確信したニルフガードの皇帝エムヒルはある目的のためにシリを我が物とすべく追手を差し向ける。一方、ニルフガードに対抗する北方諸国の王たちもまた、シントラ国再興、そしてエムヒルの野望阻止のためにシリを捜索していた。そしてフィリパ・エイルハート率いる女魔術師会もまた、源流であるシリを手に入れるべく暗躍をしていた。

シリの危機を感じ取ったゲラルトはシリを救出すべく旅に出るが、やがて大きな戦争へと巻き込まれてゆく。


主な登場人物編集

リヴィアのゲラルト編集

白狼、ブラビケンの殺し屋とも呼ばれる熟練のウィッチャー。

「シントラの大虐殺」と呼ばれるシントラ国で起きた戦争から保護した一人の少女・シリをケィア・モルヘンに連れ帰り、ウィッチャー見習い、そして娘として大事に育てている。


シリラ・フィオナ・エレン・リアノン編集

通称シリと呼ばれる灰金色の髪の少女。

シントラ国女王キャランセの孫娘で“シントラの仔獅子”とも呼ばれる。

家族は両親が居たが、両親のパヴェッタとダニーは海難事故で亡くなっている。

かつてゲラルトはパヴェッタとダニーを助けたことがあり、「偶然の法則」によりその時妊娠していたパヴェッタの子を貰い受けると約束していた。

途絶えたとされる古代エルフの血筋の末裔で<源流>と呼ばれる強大な魔力の持ち主、そして史上初の女ウィッチャーの見習いでもある。

その複雑な立場と能力を利用するため、各陣営が彼女を手中に収めようと血眼になって探している。

ゲラルトやイェネファーとはぐれ、一人砂漠を彷徨っていたときに「ファルカ」の偽名を名乗り、<ネズミ>と呼ばれる盗賊団の一員として知られるようになる。


ヴェンガーバーグのイェネファー編集

強大な魔術師で、シリの母親代わりの女性。ゲラルトの元恋人でもある。

かつて強力な精霊ジンに囚われていたところをゲラルトに助けられた。


トリス・メリゴールド編集

赤髪の女魔術師であり英雄。

ソドンの丘で起きたニルフガードとの激戦で死亡した14人の魔術師の一人と言われていたが、辛うじて生き延びていたため「丘の14人目」と呼ばれる。

テメリア国フォルテスト王の宮廷魔術師でもある。

ゲラルトに思いを寄せているが表面上は隠している。


ダンディリオン編集

ゲラルトの親友の吟遊詩人の男性。女好き。

ダンディリオンは芸名で、実は子爵持ちの本物の貴族。

本名はジュリアン・アルフレッド・パンクラッツ・ド・レタンホーヴ子爵。

巻き込まれ体質なのか何かと事件に巻き込まれ、事ある毎にゲラルトに救出されている。吟遊詩人としては有名で大衆や貴族にもその名が知られている。

ゲラルトの武勇を歌にするため本人に付いて回る(但し、ゲラルトと自身の立場を逆にして話している事も多い)。


エムヒル・ヴァル・エムレイス編集

ニルフガード帝国を統治する皇帝。

行方不明になったシリをシントラ国の統治者として据えたあと、シリと結婚することでシントラ国を併合しようと目論んでいると噂されるが…。


カヒル・マー・ディフリン・エプ・シラク編集

ニルフガード帝国兵士の男性。

シントラの虐殺の際にシリと出会っており、黒い羽根付き兜の騎士としてシリのトラウマになっている。

ニルフガードを脱走し、なぜかしつこくゲラルトに同行を申し出る。


ミルヴァ編集

ブロキロンの木の精の協力者で弓の名手。

ゲラルトの旅に同行する。


エミール・レジス・ロヘレック・タージフ=ゴドフロイ編集

理髪外科医にして上級吸血鬼。

過去のとある事件から、人間の血を吸うことはやめている。


アングレーム編集

元女盗賊。

処刑されかかっていたところをゲラルトに救われ、旅についてきている。



用語編集

ウィッチャー編集

剣術と「印」と呼ばれる簡易的な魔法を体得し、銀と鋼の2本の剣を携え、大陸中を放浪し怪物退治を請け負っている。

2/3が死ぬと言われる「草の試練」と呼ばれる変異誘発剤の接種による危険な肉体改造を施され、超人的な反射神経と身体能力、副作用の強い霊薬への親和性、病気や毒への耐性と回復力、抗老化性を獲得した、人間の変異体(ミュータント)。

草の試練の副作用として「子供が作れなくなる」「感情が出なくなる」などがある。


「狼流派」「猫流派」「蛇流派」「グリフィン流派」など複数の流派があり、それぞれのシンボルを象った魔法に反応するメダルを身に着けている。ゲーム版では流派による武器や防具も存在する。


身体を変異させたことで非人間族と同じく一般人からは侮蔑の対象であり、感情が顔に出ない事や淡々と話す事などから「ウィッチャーには感情がない」と蔑まれる。

また、依頼の報酬として子供を連れ去ることや雰囲気や顔立ちが怖く見える事、必要があれば人すら殺す事などから恐れられることも多い。

しかしながら怪物に困った人々が最後にすがる英雄でもある。


ウィッチャーは子供が作れない為、ウィッチャー候補は依頼の報酬として連れて行かれた子供だったり、口減らしに売られた子供が多い。

そしてウィッチャーになる訓練の途中で死に、それを生き延びても草の試練でさらに死に、正式にウィッチャーとなった後は怪物との戦いで死んでゆく。

そのため、かつては世界中のあちこちにウッチャーがいて怪物退治や厄介ごとの解決を引き受けていたが、年々その数を減らしてきてる。


魔術師編集

魔法を扱う者たちの中でも、その完全な専門家として特化した正真正銘の「魔法使い」。

ウィッチャーの「印」よりも遥かに複雑で強力な魔法を数多使いこなすことが可能で、練達した魔術師ならば、生命の理さえも無視した芸当すら出来るようになる。

魔術師としての力を高めていけばいくほどに変異が進むため、一定のレベルに達するとウィッチャー同様に生殖能力を失い、数百年経っても若々しい姿を保つ底なしの不老と化す。

このため、最早怪物と同列に扱われるほど毛嫌いされたり、恐れられることも珍しくない。

魔法のお陰で出来ないことの方が少ないぐらいの万能性と、その桁外れの長寿による豊富な知識と経験から、力ある魔術師は権力者の相談役になったりしている。


天体の合編集

1500年ほど昔に起こった大変動。

世界と異世界の境界がなくなり、吸血鬼やグールなどの怪物が現れ、この世界に魔法がもたられるようになった。

エルフによると、天体の合で人間もこの世界に現れるようになったと伝えられている。


怪物編集

「天体の合」でこの世界に入り込み、既存の先住生物を従来の生態系から瞬く間に駆逐して取って代わった異界の魔性たちで、人間にとっても最も身近な脅威。

通常の生物の理から逸脱した存在で、多くは知性を持たない獰猛な野獣のようなものだが、中には人間並みの知性を持っていたり、人の言葉さえ操ることもある。

また、種類も千差万別で、人間に化けて人間社会に溶け込むような特殊能力を持っていたり、肉体さえ持たない精霊や幽霊の類いのような怪物まで様々。

よく見られるタイプの怪物であれば普通の人間でも討伐は難しくないが、その多くはウィッチャーなどの異界の専門家でなければ対処が難しい厄介者ばかりが揃っている。


ただ、怪物たちとて元居た世界で普通に生きていた住人に過ぎず、「天体の合」は彼らにとっても青天の霹靂であったため、彼らなりに激変した環境に必死に適応して生き延びようとしてきたという側面もある上、怪物の間でも生存競争が激しい。

また、「天体の合」以来の勢力争いの末に生存圏を脅かされ続けているのはむしろ怪物の方であり、ドラゴンや巨人のように人間の勢力範囲では既に絶滅してしまった種も居り、特に知性を持つ怪物は多くが人目を避けるか、人間に化けて共存する道を歩んでいる。



偶然の法則編集

報酬を具体的に指定せず「依頼者が知らないうちに手に入れた物」「家に入って最初に見た物」といった具合に指定し、それをもらう習慣。

この方法で出会った者同士の間には特に強い運命の結びつきが生まれ、法を破った場合は破滅が訪れると信じられており、人々の間で尊重されている。また、この方法で手に入れた子供は<驚きの子>と呼ばれる。

子供を増やせないウィッチャーはこの方法で子供を連れて帰ることが多い。

原作では「Prawo Niespodzianki」、英訳は「Law of Surprise」。日本語訳ではやや訳振れが見られ、ゲーム版では「偶然の原則」、実写ドラマ版では「驚きの法」と訳される。



北方諸国編集

ケイドウェン、レダニア、テメリア、エイダーンの4大国とその他多数の中・小規模国家からなる、ヤルーガ川以北の大陸北方の国家群。

シントラなど「北方諸国」と呼ばれることがある国家はヤルーガ川以南にも存在するが、基本的にそちらは含まれない。

北方諸国同士でも領土を巡る戦争が続いているが、版図を広げ続けるニルフガード帝国に攻め入れられ、第1次北方戦争終盤では連合軍を結成。ソドンの丘における決戦に勝利して一度は侵攻を撃退するも、続く第2次北方戦争ではライリア、エイダーン、テメリアが陥落し、劣勢に立たされている。



ニルフガード帝国編集

エムヒル皇帝が統治する大陸南方の超大国。

かつては弱国であったが、ある時を境に瞬く間に周辺国を併呑し、南方に覇を唱える軍事大国へと伸し上がった。

次に北方へと版図広げるべく大陸中央に侵攻を開始し、20年ほどでメティナ、ナザイル、メヒトなど数多の国々を次々と支配下に収め、エムヒルが統治するようになってからは更に強大化していった。第1次北方戦争にて最後まで持ち堪えていたシントラを攻め滅ぼし、ヤルーガ川以南のほぼ全てを手中に収めたが、ソドンの丘における北方諸国連合軍との決戦に敗れ、休戦を余儀なくされる。しかし、程なく態勢を立て直すと「偉大なる太陽」の旗を掲げ、ヤルーガ川を越えて第2次北方戦争を仕掛け、各地を侵略し版図を広げている。

エルフと混交した過去があるのでエルフ語を公用語としている。

兵士たちは黒い甲冑を着ており、それが特徴で「黒の軍団」と呼ばれている。


非人間族編集

エルフドワーフハーフリングといった人間以外の種族。

大陸の先住民で、かつては各々の文明・国家を築くほど栄えていたが、天体の合で異世界から入植してきた人間との勢力争いに敗れてそのほとんどは滅ぼされ、生き残りも辺境へと追いやられた。人間から迫害を受けているが、鍛冶職人としてドワーフは一部で受け入れられていたりする。エルフは犯罪者が多くなっている為、まともなエルフが割を食っている模様。


スコイア=テル編集

領地奪還を目指して活動する非人間族による反乱軍。

エルフ語で「リスの尾」を意味する通り、リスの尾をトレードマークとしている。

エイダーンが北方地域で唯一残存していた非人間族国家のドルブラサンナを侵略・併合したことを皮切りに、北方諸国で人間に対してゲリラ的に襲撃を繰り返している。しかし、暮らしが過酷な上に物資確保のためには手段を選ばないため、民間人に対する略奪行為が常態化しており、更には時に人間に協力的な同胞さえ狙うこともあるなど過激なテロリズムに走りがちなため、返って迫害の激化に拍車を掛ける原因を作っており、失望して脱退・脱走するメンバーも少なくなく、そのやり口を気に入らない他の非人間族からも問題視されたりしている。

裏ではニルフガードが操っていると噂されるが、真偽は不明。


女魔術師会編集

世界中の有力な女魔術師たちで構成された秘密結社。

強力な男社会である魔術師界隈を改革して女魔術師たちの地位を向上させようとしており、女魔術師独自のネットワークを形成し、政治的正当性及び利益を追求する活動を行っている。

しかし、女魔術師たちの実質的な取り纏め役だったティサイア・ド・ブリエスの死やニルフガードの侵攻を機に、元々種族も地盤とする地も異なる者たちが独自の思惑で動き始めたことで結束に綻びが生じ、時に協力したり、時に敵対したりを繰り返しながら、世界情勢さえ左右するほどの存在の一つとなっていった。


シリーズ編集

小説編集

※年数は原書の出版年

長編編集

  • Krew elfów (英題"Blood of Elves")(邦題「エルフの血脈」) (1994)
  • Czas pogardy("Times of Contempt")(邦題「屈辱の刻」) (1995)
  • Chrzest ognia ("Baptism of Fire") (邦題「炎の洗礼」) (1996)
  • Wieża Jaskółki ("The Swallow's Tower")(邦題「ツバメの塔」) (1997)
  • Pani Jeziora ("Lady of the Lake")(邦題「湖の貴婦人」)(1999)

短編集編集

  • Miecz Przeznaczenia ("Sword of Destiny") (1992)
    • 2022年3月に邦訳版が発売。邦題は「運命の剣」

  • Ostatnie życzenie ("The Last Wish") (1993)(執筆はこちらの方が先)
    • 2021年12月24日に邦訳版が発売。邦題は「最後の願い」

  • Coś się kończy, coś się zaczyna ("Something Ends, Something Begins") (2000)
  • Maladie i inne opowiadania("Maladie and Other Stories")(2012年)

※サプコフスキのアンソロジー。


外伝編集

Sezon burz ("Season of Storms")(2013)


ゲーム編集

ポーランドのゲーム会社CD Projekt REDが制作するゲームシリーズ。長編小説5作の後日譚が描かれており、ウィッチャーシリーズの時系列の中では最も新しい位置にある。

前述の通りよくあるキャラゲーではなく単体のRPGとして非常に評価が高い作品で、特に『ウィッチャー3』はオープンワールドRPGの金字塔的作品として多くのGOTYを受賞している。


実写ドラマ編集

Netflixによって製作・配信されている。ゲラルドを演じているのは、DCEUのスーパーマン役でおなじみヘンリー・カヴィル。

原作小説のうち短編集のエピソードを映像化したもので、長編小説5作より前の物語を描いている。

2020年にシーズン1が配信。好評を受け、シーズン2が2021年12月に配信。さらにシーズン3まで制作が決定している。


関連タグ編集

アクションゲーム オープンワールド

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