CV:井澤詩織
説明
野乃はなが以前通っていたシャインヒル学園の元同級生。ポニーテールが特徴。
チアリーディング部所属。はなとは仲が良かったようで、はなの事を「ののたん」と愛称で呼んでいる(はな側からは「エリちゃん」呼び)。フルネームは現時点では明らかになっていない。
第23話の回想シーンにその姿が見られたが、物語に登場するのは第31話でのことである。
そしてその31話でエリから明かされたことは、「(放映当時における)極めて現代的なテーマ」の問題であり、視聴者の中で大きな話題と議論を呼び起こした。
エリの後悔
エリは中学1年の頃、自身がパフォーマンスのセンターに選ばれた事をきっかけに、他の部員から嫉妬され、イジメの標的にされていた。
友人の苦境を見過ごせなかったはなは、イジメていた同級生達を格好悪いと強く叱咤しエリを庇ったが、今度ははながイジメのターゲットとして嫌がらせを受けるようになり、はなは完全に孤立してしまった。
エリもはなを助けようとするが、「また元に戻りたいの?」と部員達に釘を刺されてしまったため、再び自分がその標的になってしまうのを恐れ、はなと距離をとるようになりイジメを見て見ぬ振りをし続けた。そして程なくしてはなは転校したため、エリは最後まではなに救いの手を差し伸べることができず、ずっと後悔の念に苛まれ続けていた。
第31話にて、偶然キュアスタではなの写真を見たエリは、自分の中にある罪悪感が再び蘇って耐えきれなくなり、はなに許しを請うために訪れるが、エリの姿を見た途端にはなは困惑の表情を見せる。
エリは自分はやっぱり拒絶されているんだと思いこみ、何も言葉にできずにその場を逃げ出してしまった。
一方、それ以来はなの様子がおかしくなったことを気にしていた薬師寺さあやと輝木ほまれは、はな抜きでエリと接触し彼女から事情を聞く。そして上記の事実を知ることになる。
はなの苦悩
さあやとほまれからの口伝てでエリの思いを知ったはなは、そのことに様々な思いを馳せた後、自分がエリに対してどういう思いを持っていたかを2人に語った。
あの頃、親友同然だったエリが自分を見捨てたことにやはり強いショックを受けていた。それでもエリを嫌うことができなかったはなは「自分がやったことは余計なお節介だったので、エリに嫌われてしまった」と思い込んでしまい、自分の中にある善意や価値観に自信をもてなくなる。心が弱ってしまったところに毎日のイジメの辛さが覆い被さり、はなは精神的に追い込まれていった。
最終的にはなは母の「あなたは間違っていない」という言葉によって、最悪の状態になる寸前で立ち直ることはできたが、心の痛みを完全に克服できたわけではなかった。
この31話になるまではなは「自分は大好きだったエリに嫌われてしまった」という暗い思いをずっと抱え続けている。このことから、はなは「転校後の新しい友人」であるプリキュア仲間たちに対してさえいつかまた自分のお節介のせいで見捨てられるのではないかという不安をずっと抱えていたようだ。
そして自分がいじめられていた過去自体についても「やっぱり、格好悪いし」ということで強いコンプレックスとして今でも残り続けており、さあややほまれには勘付かれないように意図的に秘密にしてきたのだという。
第31話冒頭ではなの目の前にエリが現れた時、はなは動揺と困惑を隠せなかったがこれには理由がある。はなは「エリに嫌われている」と思い込んでいたため、今更エリが自分に謝罪をしにくるなんて想像さえできなかったのだ。
嫌いな自分に何のために会いにきたのかということを考えあぐね、また自分を傷つけようとしてるのかも知れないと防衛本能的に身構えてしまい、それがエリを萎縮させてしまったのだ。まさに負の感情の連鎖である。
さあややほまれはエリからの伝言として、チアリーディングの大会に出場するということを伝える。もしもはながエリを許す気があるなら見にきて欲しいということだ。
さあやとほまれは二人ともはなが苦しいなら、無理してエリに会う必要はないと冷徹なアドバイスを送るが、今の仲間達と出会ったことで過去の苦悩と決別する勇気を持てたと思ったはなは、勇気を出してエリと対面。謝ろうとするエリの言葉を制止して「許すとか許さないとかそういうのじゃない」「エリちゃんのことがやっぱ好きだから、もう一度友達になりにきた」と宣言する。はなはエリのことを嫌いになれなかったからこそ苦しんだのだが、そんな自分を認めてあげたいと思ったのだ。なぜなら、今の仲間達がそんな自分の甘さと弱さを「イケてる」と評価してくれてるのだから。
そんなはなの勇気と優しさにエリは何を言っていいかわからなくなり、ただただ嗚咽する。そして謝罪はいらないというはなの意図をわかっていながらも、涙で頬を濡らしながら「ごめん…ののたん…ごめん」としか言えなかった。これにははなの方が困ってしまい「ほらほら、美人が台無しよ」と慰める始末だった、
最後には2人は笑顔で和解し、それぞれの未来のために異なる道を歩みだすことになった。
備考
いじめと、被害者が我が身を守るために加害者に転じてしまうというデリケートな問題を扱った第31話は、視聴者の間でも様々な議論を呼んだエピソードである。
プリキュアシリーズでいじめ問題をメインテーマと扱った過去の例としては、2013年春映画のプリキュアオールスターズNewStage2が筆頭にあがる。この映画で語られていたことは、いじめは悪意から起こるのではなくコミュニケーション不足から起こる誤解によって起こるものだということであった。なので、いじめの被害者であるエンエンと加害者であるグレルが互いに向き会う機会を作れば分かり合うことができるという美しい理想が描かれていた。そしていじめの加害者であるグレルは自分が誤解していたことを知ると素直に謝罪する。エンエンはグレルが自分のことを認めてくれたことでようやく救われ、2人は友人になるのである。
だが、今回の31話で描かれたことはそれとは全く方向性が異なる。はなの心が立ち直ったのはエリとは無関係な人たち(家族や新しい友達)のおかげである。はなはエリが干渉することのできない新しい環境で勝手に立ち直っていたのであり、エリが「はなを嫌っていた」というのが真実だったとしても今のはなの状況が変わることはない(そもそも、はなは今回の話にまで「エリは自分を嫌っている」と信じていたのだから!)。
これは、上述のエンエンとグレルのケースで描かれている「いじめの加害者の改心によって被害者が救われた」という構図とは大きく異なっている。端的にいえばこの31話で描かれたことは「イジメの被害者が救われるためには、加害者と無理してわかりあう必要などない」ということである。作中でさあやとほまれはこのことを直接的に述べている。これは、イジメが苦しいなら立ち向かおうとせずに逃げたっていいんだということも含んでいるだろう。
実際、はなは転校したことで救われたのだから。しかし同時に、はなが最初にエリを庇うためにイジメに立ち向かったことは「決して間違ってない」と強く肯定するメッセージも含まれており、それらをひっくるめてどう感じるかは視聴者に任されている。
31話では当時のはなへのイジメを主導もしくは加担していたと思われるチア部部員もモブキャラとして登場しているが、彼女たちははなに対して謝りもしなければ罪悪感を感じる描写すらない。だがこれは上述した「いじめの被害者が救われるために、加害者と向き合う必要はない」という点を強調する意図的な演出である。
実際、はな本人は部員たちを恨む言葉一つ発せずほぼスルーしており、部員の一人が「ていうか…何その前髪?」と言った時でさえ、堂々たる笑顔で「めっちゃイケてるでしょ!」と返し、部員達を唖然とさせている。
あくまで今回のテーマはサブタイトル通り「時よ、すすめ!」である。はなは自分が救われるためにエリと向き合ったのではない。はなはすでに仲間達のおかげで前へ進めることができた。でも、親友だったエリへの思いだけは過去に置いていたままだった。はなは止まってしまったエリとの時間を進めたかったのである。だからエリに「もう一度友達になりに来た」と言い放ったのだ。
そして、エリが自分と同じように未来へ進んでくれることを願って「はなへの罪悪感」を取り除きに来たのである。そんなお節介をする理由は結局は「はなはエリをどうしても嫌いになれなかったから」に尽きる。甘いと言われてもそれが全てである。
そして、エリほど親密ではなかった部員たちのことは、(冷たい言い方になるが)今のはなにとっては「割とどうでもいいこと」なのである。
なお、はなに肩入れするあまり、チア部部員はもちろん、エリすらも「はなを孤立させたくせに、のうのうとチアを続けている」などとヘイトの対象にする『過剰にピュアな』視聴者も一部にはいるようだが、それこそはなに笑われるというもの。
少し言い回しは異なるが、過去にとある先輩が説いていた通り、「憎しみの連鎖は誰かが歯を食いしばって断ち切らなければいけない」のである(もっとも、はな自身は「歯を食いしばって」というよりは全てを笑って水に流しており、形としては「許すという事は、強さの証だ」に近いものであったが)。
それにちっぽけな我々とは違い、プリキュアはもっと巨大な、もっと人々を泣かせた悪とも戦い、大抵は笑顔で和解して許しているのだから。
中の人について
担当声優の井澤詩織女史は『Go!プリンセスプリキュア』の敵キャラクター・ストップ以来のプリキュアシリーズ出演。
前回は敵キャラ役であったが今回はゲストキャラ役での再登板となった。