概要
原産は中国東部で、日本への渡来時期は不明だが、江戸時代の「本草図譜」などの書物にはすでに見られることから、渡来時期は江戸期もしくはそれ以前と推測される。
日本では東北地方以南の本州、四国、九州で植栽されている。
名称は材の木目が三味線に加工される花櫚(カリン。マメ科のインドシタンという木の別名)によく似ていることから。
別名で菴羅樹(あんらじゅ)と言うものがあるが、これは本来は仏典に登場し、現在も熱帯果樹として人気のあるマンゴーのことである。
長野県諏訪地方で、「かりん」と称するものはマルメロのことである。これは、マルメロとカリンの見た目がよく似ているために生じた誤謬であるが、カリンの葉には細かな鋸歯(ギザギザ)があるのに対し、マルメロの葉は丸い。また、カリンの果実は洋ナシ型で表面がなめらかであるのに対し、マルメロの果実は球形で表面にビロード状の綿毛が密生している。
春に薄紅色の花を咲かせ、秋に黄色く熟した果実を収穫する。果実は甘酸っぱい香りを放ち、よい香りであるが酸味や渋みが強く、食感もガリガリしているため生食されず、果実酒やのど飴、砂糖漬けにする。
また、幹の表面が特殊な模様を呈することや、薄紅色の美しい花のあとには香りの良い果実をつけることから庭木としても人気がある。
長野県の県北地域には「金は貸すが借りん」の語呂合わせで、商売繁盛の縁起担ぎに庭木としてカシノキを植え、カリンを植えないという風習が現在も残っている。