概要
東方の大国クシャーンを治める皇帝。劇中では「ガニシュカ大帝」あるいは単に「大帝」と称され、「恐帝」の異名をとる。
眉間に刻まれた深いシワ、豊かな口髭を蓄え、尊大にして傲岸不遜な大王。口髭の下には異様に大きく裂けた口(歯は牙状)が隠れている。
自身を「王の中の王」と称して憚らず、残虐ながらも大王にふさわしい才覚とカリスマ性の持ち主。
ベヘリットを用い魔に転生した使徒の一角であり、描かれる限りで作中において最強クラスの力を持っている。また、自身の軍略にも魔の力を転用する。
支配欲・執着心に富む人物で、「天下に覇を唱えん」という野望を持ち、周辺諸国を侵略してきた。
大山脈を越えることで国王が崩御した直後のミッドランドをも侵攻、制圧し、ついには絶対者たるゴッド・ハンドにすら反旗を翻し、敵対する。
能力
使徒としての本性は雲で構成された肉体を持つ、天を衝くほどの巨人。ガッツ曰く「カミナリオヤジ」。
雷雲と化した体内で発生させた雷を放つのが主な攻撃手段である。稲妻の威力は、そこらの使徒であれば一発で数体まとめて即死させるほど。
防御面でも雲という実体の無い形をとっているため、物理攻撃は無効。攻撃するには霊的な力を上乗せし、そびえ立つ巨躯の眉間にある弱点(雲の身体の制御を行っている霊的なポイント。雑輩使徒の弱点と違い、ガニシュカの本体がそこにある、というわけではない)を攻撃しなくてはならない。そのうえ、攻撃に成功しても肉体に多少のダメージがあるのみで絶命には至らない。あるいは雷雲の肉体を維持できないほどの強風で吹き飛ばしてしまう(本来の肉体に戻るしかなくなる)くらいしか有効打がない。
このように、作中でも最強クラスの「使徒」である。
上述したように、使徒として得た魔の力や知識を軍事力としても活用しているのが特徴。
魔術師ダイバを右腕とし、外法でトラ、ワニ、ゾウといった動物を素体にした怪物・妖獣兵(ピシャーチャ)を使役して夜襲や警備に用いている。
他にも使徒の体を繋ぎあわせ、羊水で満たした呪物「魔子宮」(ダイバ曰く「人造のベヘリット」)を作成。
これを使って鬼兵(ダーカ)と呼ばれる一種の「使徒もどき」を生み出した上で、戦力として自軍に組み入れている。
具体的な方法は、妊娠させた女性を魔子宮内に投げ込み(その確保のため絶え間ない侵略を繰り返し、占領した先で自軍の兵士に、占領地の女性を連行・暴行させていた)使徒の体内から繋がる「幽界」を利用して胎児に魔を宿し、鬼に転生させるというもの。
変化した鬼の児は母親の腹を食い破って誕生するという、まさしく外法というべき所業となっている。
活躍
ミッドランド王国を制圧し、首都ウィンダムでは建造物や彫刻を死体で飾り立てるという悪趣味な改築を施した上で恐怖政治を行う。
幽閉した王女シャルロットを手籠めにしようとしたが、彼女が手慰みで作っていた手芸品にグリフィスが描かれていたのを見て「鷹の想い人」であることに気付き、もうしばらく様子をみるも一興とみて退室。
自身が鷹と敵対する立場にあり、また彼の下につくという使徒の本能も自覚していたガニシュカだが、それ以上に己の力で手に入れた大帝国への執着が勝っていた。
渡しはせぬ
たとえ血塗られ 汚れていようとも この世界は 我が物ぞ
我 不浄なる世界に君臨せし 魔王として
神に 弓引かん
だがこの日、グリフィス配下のロクス率いる騎兵隊がウィンダムに侵入。
ガニシュカ自ら鬼兵を率いて迎撃に赴き、自身の叛意をロクスに表明して焚き付けていたが、その隙にシャルロットをグリフィスに奪還されてしまう。
ロクスがあっさりと撤退し、事の次第を察したガニシュカは怒り狂っていた。
その後、対クシャ―ン戦のために港町ヴリタニスに集っていた法王教圏各国諸侯の前に霞の姿で現れ宣戦布告。
同時に妖術師たちと鬼兵、妖獣兵をもってヴリタニスを襲撃し、自身も雷雲の姿で都市を蹂躙。その最中、訳あって滞在していたガッツらと遭遇する。
その方 余の配下に加わらぬか
使徒やゴッドハンドを憎むガッツに共闘を持ちかけるが、拒否されたため攻撃。
さらにグリフィス配下となったゾッドが襲来したためこれもあしらうが、ガッツ・ゾッドの両名がここで共闘。シールケによって戦火の精霊を宿したドラゴンころしで眉間を突貫され、ガニシュカは額に傷を負って撤退した。
翌朝、進軍させていたクシャーン軍本隊でヴリタニスを囲み、襲撃の混乱冷めやらぬ各国諸侯を一網打尽にすべく進軍。
しかし、グリフィス率いる新生鷹の団により思わぬ反撃を受け、ついには自身の座す戦車(移動宮と称され複数の戦象に引かせる巨大戦闘象車)までグリフィスの侵入を許してしまう。
グリフィスの存在に本能で誘惑され、屈服しかけたガニシュカだが雷雲の姿となりこれを拒否。
逆に自らの手でグリフィスを痛めつけようとしたその瞬間、戦車内に暴風が吹き込んだ。
姿が保てなくなったガニシュカはやむなく人の姿に戻り、焦燥のまま膝をつく。
手を触れる事すらなく、超然とたたずむグリフィスに対し、何もできずひざまずくだけのガニシュカ。
勝敗は明らかであり、彼個人の力も、築き上げた軍事力も、そのことごとくが敗れ去った瞬間であった。
使徒としての性質上、拘束不可能なガニシュカに対してグリフィスは撤退するよう提案。
受け入れる他ないガニシュカは王都ウィンダムに戻り、あるものを目指す。
鬼兵の製造に使う呪物。人造のベヘリット――「魔子宮」である。
くどいぞダイバ!!
もはや この方法しかあり得ぬ!!
このままではクシャーンの全軍を注ぎ込もうとも敵わない。そう悟った魔王はダイバの制止を振り切り、自ら「魔子宮」に入った。
余 自らが
使徒を超越するしかあるまい
さらに強大な存在に、転生するために……。
過去
クシャ―ンのとある王家に生まれたガニシュカだが、宮廷では熾烈な政略争いが繰り広げられており、ガニシュカ自身も幼少時に「弟を王にしたい」と望む母から毒殺されかかる。
その弟を幼くして殺害し、のちに母は自害。その後も一族や親族を次々と手にかけ、生き馬の目を抜く宮闘争を生き延びていく。
父を謀殺して王の座につく頃には他者への猜疑心、恐怖心に染まり切っており、その不安を紛らわすかのように周囲の国々を平らげ、強大な帝国を築き上げていった。
他国から娶った妻との間に子をもうけたものの、幼少の自分を重ね見たのか、彼の猜疑心はその実子にすら向けられていた。
結果、息子とは疎遠になった上で叛意さえ抱かれてしまい、ある宴の席でついに謀反を起こされてしまう。
かつての己の行いをなぞるかのように盃に毒を盛られ、臣下ともども殺されかけるガニシュカ。死にものぐるいで偶然手にしたものこそ、ある苦行者から献上されていたベヘリットであった。
ベヘリットが発動し、四人のゴッドハンドが顕現。息子を贄として捧げ、東の覇王は人外の存在「使徒」と化したのだった。
彼の底なしの野心と支配欲は、周囲への恐れの裏返しだったのかもしれない。