概要
全長1.5メートルに達する大型の単弓類で、いわゆる哺乳類型爬虫類(獣弓類)の中でもとりわけ高度な進化を遂げたキノドン類の一種。早い話が、哺乳類の先祖となったグループの一員。
獣弓類には汗腺を持つ仲間がいた事が知られていて、その中でも特に進化したグループであるキノドン類は母乳が出た可能性が高い(我々哺乳類の母乳は「濾過された血液」だが、汗腺を持つ獣弓類は腹部にある汗腺から栄養のある体液を分泌していたと考えられている)。
足はやや横向きでついていたが、骨格の特徴から運動能力が高かったと考えられており、三畳紀前期のもっとも危険な肉食動物であったといわれている(当時まだ恐竜はいなかった)。
化石はアルゼンチンからアフリカにかけて発見されており、「大陸がその当時くっついていた」有力な証拠となる生物のひとつ(他にも、広範囲で発見されるリストロサウルスなどが有名)。また、キノグナトゥス帯と呼ばれる呼称ができる程度の、ある特定の場所から出る生き物でもある。
名前の由来
名前はCYNOGNATUSと書き、ラテン語で「犬のようなあご」という意味。CYNOがわんこでGNATUSがあご。
このあごは丈夫で分厚く、物を噛み切る切歯(前歯)と獲物を突き刺す大きな犬歯、物を砕ききるノコギリのようなギザギザのついた頬歯と明瞭な3種類の歯をもっていた。ちなみに歯の形が用途別に分かれているのは単弓類(哺乳類含む)の特徴のひとつ。
その他
復元図では1980年代から(ドゥーガル・ディクソン等が)全身体毛に覆われ、耳介の付いた形で描かれることが多いが、実際には耳介はなかったと考えられている。
また藤子・F・不二雄の漫画『T・Pぼん』(1979年発表)に登場する「シノグナータス」はツルピカな上、ジュラ紀とっかかりに棲息している。
一応三畳紀末期の大絶滅によってこいつを含む単弓類の大型種は大体絶滅しているが、生物学的にこの「哺乳類だか何だか」は生きててくれないと後の哺乳類がいないことになるので(劇中そういう言及がある)、アロサウルスやイグアノドンのいる時代にちょろちょろし、かつ古生物ハンターの獲物になっている。実際獣弓類は白亜紀前期くらいまで生存していたため、初期の哺乳類とは共存していた(最初の哺乳類は三畳紀後期に現れた)。