「誰だか知らんが、オレ達の動きを見張ってる奴がいるんだよ」
「きっとそいつが… 外に情報を流し、魔物をここへ集めている」
「なぜだろうかね?」
「お前がいなくなった途端に、要らなくなっちまった…」
概要
CV:堀川りょう
ファウード復活のために集った魔物達の中で最もリオウとの絡みが多く、事実上の腹心のような存在といえるキャラクター。
本の持ち主はラウシン・モー(詳細は「本の持ち主」の項目を参照)。
公式からプロフィールが明かされていないため、人間換算年齢や好物等は不明。
ファウード復活のため、早い段階から協力していたことが示唆されており、作中の描写から(ほぼ間違いなく)リオウと最も付き合いの長い魔物だと思われる。
後述のように、原作版においては最後の戦闘にて秘めたる気持ちが明かされており、「味方側として活躍したり、改心をしたわけでもないが、ヒール役なりの絆を感じられるシーン」が描かれたことからコアな人気を獲得した魔物でもある。
人物像
容姿
常に口元を真っ黒なマスクで覆い、ギョロリと見開いた大きな黒目が特徴的。
また、下記のように頭部が非常に特殊である都合上、人型の魔物にしては珍しく髪の毛が一本も生えていない。
体格は割と細身な方で、登場シーンではズボンのポケットに手を入れていることが多い。
服装に関しては、腹部のみが白色の黒い長袖の服と、ポケットの辺りが少しダボッとしたような黒い長ズボンを着用。膝下までの長さのある頑丈そうな白いブーツ(?)を履いている。
そして最も特徴的なのは、頭部の至るところに備わった無数の目。
原作229話でジボルオウ・シードンを発動した際の描写から、腹部にも6つ、左右の掌にも目があることが判明しており、作中で登場する魔物の中で最も多くの目を身体中に持つという特異な体質をしている。
性格
対峙する相手によっては粗暴な言動や煽りが混じることもあるが、基本的には冷静。
ファウード復活の過程で度々ストレスを募らせているリオウに対し、冷静に状況や意見を伝えて支えるような場面が多く、優秀な参謀だといえるだろう。
また、ネタバレのため詳細は後述するが、「王を決める戦い」に参加した敵側の魔物では珍しく、王の座そのものには興味の薄いキャラクター。
リオウと出会ってからはあくまで「ファウードの復活」そのものを目的としており、何かしらの算段ではなく純粋な気持ちでリオウに手を貸していた唯一の存在。
アリシエとの関係
他、ディオガ級を修得しているリーヤペアと接触した際、アリシエの人間離れした力や己の命をも顧みずに戦う姿勢と気迫を受け「魔物ではなく人間相手に明確な恐怖を覚えさせられた」ことを今でも屈辱と感じており、アリシエに対して並々ならぬ復讐心を抱いている。
ただ、アリシエに対して復讐心を抱いたこと自体は確かなものの、それが紛れもない本音であるとまでは言い切れない面もある。
踏み込んだ性格分析にはネタバレも含まれるので、詳しくは「余談」の項目を参照。
超広域の魔力感知能力
やはりザルチムの代名詞といえば、前述した複数の目を用いた超広域の魔力感知能力であろう。
頭部の目は魔力感知能力を発動する(もしくはその補助をする?)際に見開くものであり、感知範囲はコーラルQやモモンにすら負けず劣らずの作中トップクラス。
ファウードの間近までやってきたガッシュ一行はもちろん、遥か遠くの森林や山にいるゼオンやカルディオの存在すら感知しているため、おそらく範囲は数百~数千km。
また、ガッシュ達が逃走した際には「遥か先まで逃げられている」「ファウードの血管通路まで逃げ込んだ」と正確な地点すら把握しているため、精度に関しても非常に高いことが窺える。
戦闘時の冷静さ
身体能力に関してはそこまで高くも低くもないといった印象だが、リーヤ&ウマゴン戦においてはアリシエに敵意を膨らませ、ファンゴに何度も横槍を入れられても(多少の言い返しや煽りはすれど)自身の戦闘ペースは一度も崩していなかった。
なので、感情に流され過ぎず強かに好機をうかがえる胆力も持ち合わせていると評価でき、彼もファウード編まで生き残るだけの実力を持っていたのは確かだろう。
術
公式から術属性が明かされていないため、公式情報としての表記は不明。
一応、公式ファンブック「金色のガッシュ!!まるかじりブック」及び「金色のガッシュ!!まるかじりブック2」までに明かされた属性の中で考えるならば、間違いなく「操り」属性が一番ピタリと当てはまると思われる(影を自在に操るという意味合いで)。
もし他の魔物と被らないオリジナルの属性である場合、やはり「影」属性になるだろうか。
口や手から術を放つ魔物が大多数の中、ザルチムはロブノスやゴーレンと同じく目から術を発動するタイプ。
しかも厳密には目そのものではなく、「何かを象ったプレートのような物が付いた武器を手に装備し、目から放った光を浴びせて影を実体化させる」という自身の身体と武器を組み合わせて術を発動する珍しい魔物。目と武器を合わせて映写機のように扱い、影絵を実体化させているようなイメージ。
そのためか何らかの武器を象ったような攻撃呪文が多く、近接戦闘と中~遠距離戦闘のどちらもこなせるバランスの良さも強み。
また、「王を決める戦い」に参加した魔物の中でも10人にも満たないオウ系呪文を修得している魔物の1人なので、ザルチムの素質も並の魔物よりは高い方だと思われる(オウ系についての解説は「術(金色のガッシュ!!)」の記事を参照)。
オルシド・シャロン
頭の眼を全て見開いて強烈な光を全方位に発し、それによって生まれた相手の足元の影を実体化させ拘束する。
ザルチムの使う術の中で最初に披露された術であり、特殊な武器を用いない唯一の術でもある。
「影」という逃れようのない要素を用いて相手を瞬時に拘束するという強烈な初見殺しであり、原作202話ではガッシュ達10人を一斉に縛り上げて無力化したほど。
この「影のロープ」はバオウ覚醒前のガッシュでは自力で剥がせないほどの強度を誇り、相手が術を唱えようとした際には影を口に挟み込んで発声を阻害することすら可能と、総じて敵を無力化する際には非常に強力な呪文。
とはいえ対処法が無いわけではなく、この影は実体化している(=質量を持って具現化している)ので、魔物の術で物理的に破壊することは可能。
また、術の発動中はザルチムもその場から動けず、他の術と併用できるわけでもないので、ダメージを与えれば強制的に解除させることもできる。
シドナ・ソルド
武器に映した「長剣の影」を掌にある目からの光で実体化させ、数メートル以上もある巨大な剣を出現させて攻撃する。
シドナ・シルド
掌にある目からの光で丸ノコのような黒い盾を実体化させ、攻撃を防ぐ。
ガンズ・シドセン
両手に付けた武器の先がガトリング砲のようになり、無数の弾状の影を放つ。
腕そのものではなく武器の先にガトリング砲が出現しているため、おそらくこの術も砲のような影を実体化させているのだと思われる。
オルダ・シドナ
左手の先から、矢印状に実体化させた大量の影を一斉に放つ。
シドナ・ディップ
武器に映した「短剣の影」を掌にある目からの光で実体化させる。
シドナ・ソルドとは違い軽々と振り回せる程度のサイズなため、近接戦ではこちらの方が適している模様。
シドナ・ディ・シザルク
両手に3つずつ、計6つの鋏状の影を実体化させる。
基本的に「ディオ」「ディゴウ」等のように「ディ○○」という等級が付く術が大多数の中、「ディ」だけが独立して使われているという珍しいパターンである。
鋭いだけでなく刃のリーチも長いため、作中では宙返りしてウマゴンを捕える「網」として使うという応用も見せた。
ジボルオウ・シードン
両手を合わせながら左右の武器を合体させ、両腕を広げながら一つの大きな輪状の武器として展開。
頭部、腹部、掌全ての目を見開き、武器の中心に映した「死神の影」を実体化させる最大呪文。
オウ系の中で唯一「幻獣」や「生物」ではなく「神(霊的存在)」を象っている呪文でもある。
作中では他の上級呪文とぶつかることはなかったが、ファウードの封印を破壊する際に使用されているので、ディオガ級相当の威力は確定している。
本の持ち主
ラウシン・モー
左目の上にある「死神の鎌」のような模様が特徴的な体格の良い男性(本物の刺繍、タトゥーシール、フェイスペイント等だと思われるが詳細は不明)。
服の左胸辺りにも同じように鎌を象ったマークが付いており、服の上からもわかるほど筋肉質な身体をしている。スキンヘッドであり、何気に髪型がザルチムとお揃い。
公式からプロフィールが明かされていないため、年齢や国籍等は不明。
フルネームはカードゲーム版で確認可能。
原作24巻の中扉を見るに、どこかで強盗をして逃げる際にザルチムと出会った模様。
だが外見こそ強面ではあるものの、作中においては「ファンゴにザルチムとアリシエの戦いを何度も妨害された時には怒りを露わにし、本を燃やされた時にはザルチムに謝る」等の絆を感じさせる描写があり、むしろ悪人であるような印象を抱く言動の方が皆無なほど。
また、過去にアリシエとの初戦で村の子どもを人質にとったのも「万一のため」であり、縄で縛り上げてこそいるものの他に暴行を加えたような跡が一切見受けられない。
これらの描写から、一部のファンの間では、
- 過去に強盗をしたのは何らかの事情で経済的に余裕が無くなり、精神的に追い詰められていた結果であり、根はいい人なのでは?
- ザルチムとの出会いを通じて精神的に成長したのでは?
と人物像を好ましく考察されることもある。
また、原作最終話では牢屋の中でザルチムからの手紙を読んでいるが、これに関しても「逮捕されたのではなく自首したのでは?」と考察されることもあったりする。
活躍(ネタバレ注意!)
まず前提として、アニメ版のファウード編は制作の都合上、後半にアニメオリジナル展開が多く、ロデュウやゼオン等の結末が原作と大きく異なるキャラクターも多い。
そしてザルチムもまた、アニオリ展開のあおりを受けてしまったキャラクターだとファンの間では残念がられることが多い。
そのため、アニメ版→原作版という順番で解説した方が記事の後味も良くなると思われるので、当記事ではそのような順で記載していく。
アニメ版
結論から先に述べると、アニメ版においては「単純に策士キャラとして暗躍しただけの存在」という印象しか残らず、悪い意味で原作版では大きく印象の違うキャラクターとなっている。
コントロールルームへと急ぐガッシュ達を待ち伏せた際には、リィエンに変装してガッシュ達を欺こうとしたが失敗。
ロデュウを魔界へ送還し、正体を現してリーヤ&アリシエと対決。ファウードのサポートシステムを生かして最大術でリーヤを倒そうとしたところ、途中参戦してきたテッドに攻撃されてコントロールルームへ一時撤退(本人曰く、123発のパンチを食らったとの事)。
その後もモニターでアリシエを見る度に再戦を望んでいるような言動をしていたが、リオウがコントロールルーム前の部屋でガッシュ達と戦闘している間に、ゼオンが姿を現す。
その後は戦闘シーンも回想シーンも描かれずに魔界に返されるという呆気ない幕切れとなってしまった。
原作版
原作ではコントロールルームへと向かうガッシュ達を「ファウードの脳へと続く部屋」の1Fでファンゴと共に待ち伏せし、先行した一向のほとんどをエレベーターに閉じ込め、残ったウマゴンペア&リーヤペアと対決する。
「オイ、ファンゴ、『ファウードの力』がすごいのはよくわかった」
「その力であのウマのほうを倒しな」
戦闘開始から暫くは「ゴデュファの契約」により圧倒的な火力を得たファンゴの力押しで優勢に立ち、自身もアリシエ&リーヤとの因縁を思い出しながら取っ組み合う。
だが、「ゴデュファの契約」によってファウードの力に溺れ、性格が歪んでしまったファンゴから執拗にアリシエとの戦いを邪魔され、更にはサンビームの言葉によって連携を深めたウマゴンとリーヤにも徐々に追い詰められていく。
遂には本の持ち主を壁際に追い込まれた状況でファンゴの最大呪文を突破されるというピンチに陥るも、実はザルチムは倒れたフリをしており、ファンゴを盾にしてリーヤの最大術を防ぐことに成功。アリシエの感情的な行動に合わせて最大術を放ち、敗北の屈辱を与えようとする。
だが、術へ飛び込んできたリーヤにより目を塞がれたため術の威力が半減し、結果としてリーヤの本を燃やすことにこそ成功したもののアリシエには殆どダメージにはならなかった。
術を打ち終えた後はすぐさまアリシエの元へ駆け寄り、彼の首を掴みながら罵倒するが、なぜかアリシエから向けられたのは怒りではなく「哀れむような目」であった。
激昂するザルチムだったが、直後に自身の身体が透け始めてしまう。実はサンビームがシュドルクを唱えてラウシンから本を奪っており、ザルチムは「感情の昂りに任せてアリシエにとどめをさすことだけを考えてしまい、相手や本の持ち主の安否を確認し忘れる」という最初で最後の致命的なミスを犯してしまっていた。
そしてサンビームから「アリシエを倒したかったのなら、なぜファウードの力を得なかったのか?」と訊かれた際には、
「ゼオンが乗っ取ったファウードの力なんか、何の興味もねえよ…」
と返し、重傷を負った身でヨロヨロと歩き始める。
ファンゴの共闘では連携など無いに等しかったと振り返りつつ、
「リオウよ…」
「お前と一緒に戦ってたら、こんなことにはならなかったのかね?」
と、今はもういない彼との記憶に思いを巡らせる。
ザルチムはファウードを見た際に何か特別な想いを抱いていたようで、「でかいことをやろうとしているお前に、なぜか手を貸したくなった」「このバカでかいことをやり遂げた時を想像したら、なぜか心が高ぶった」らしく、
「『オレ達はすげえことをやってる』って思ったのさ」
「『魔界の王』になることなんざ、小さく見えるほどによ…」
とまで言い切るほど、「ファウード復活」という計画そのものに大きな魅力を感じていた。
だが、遂にファウードを復活させた矢先、ゼオンによってリオウが魔界に帰され、ファウードも乗っ取られてしまう。
ゼオンに倒され、血だらけになって気絶しているリオウを見た途端「なんか全てがバカバカしくなったじゃねえか」とのこと。
「お前が消えるのを見たら、あれだけこだわってたファウードが、どうでもよくなっちまった…」
「取り返す気にもならねえ。『ファウードなんざ、あのガキにくれてやる』ってよ」
「なぜだろうかね?」
「お前がいなくなった途端に、要らなくなっちまった…」
「オレは、リオウとは友達までじゃなかったと思ってたのによ…」
気付けばザルチムは涙を流し、どこか後悔の滲むような表情をしていた。
最後には「王を決める戦い」に巻き込んだことをラウシンに謝罪し、魔界へ帰って行った。
余談
ファンからの評価
上述のように、原作版では「リオウに対して友情を感じていたことに気付き涙する」「本の持ち主であるラウシンに対しても、魔界に帰る間際にはこれまでの礼を込めた謝罪をする」等、単なるヒール役に留まらない律儀で情に厚い側面を見せてくれたため、一度ファンになった読者からは連載が終了した現在でも根強い人気を得ている。
Pixivでも根強いファンのイラストや、原作本編では描かれなかったシーンを想像した作品も幾つか投稿されている。
読者による性格分析等
「アリシエに抱いていた復讐心」については、作中の描写を総合して考えると、「アリシエに対する復讐心は確かにあったものの、それ以上に呆気なく倒されたリオウへの虚しさを晴らすために復讐心を駆り立てていた」という面が強いのだと思われる。
事実、リオウが帰還した後はファウードに対する拘りが消えているし、ゼオンと利害の一致した「リーヤとアリシエを倒す」という目標がなければ自身のやるべき事が何も見い出せないような心理状態だったと考えられる。
ファウード復活に関しても、「結末」の項目で述べた心情を加味すると、いつしか彼の中での目的は「単にファウード復活を成功させる」ことから「ファウード復活を成功させ、リオウと一緒にファウードを操る」ことに変わっていったのだと思われる。
現にアリシエとの戦闘や因縁が描かれる前の段階でも、
- 登場する際にはほとんどの場面で常にリオウと隣り合っている(ファウード復活前でリオウ以外のキャラと登場したのは、肝臓の部屋でウォンレイと共にガッシュ達を待ち伏せしていた時のみ)。
- 原作218話におけるリオウの回想では、少なくともリオウが「呪い」を使い始める前から活動を共にしていたことが明らかになっている。
- ゼオンとの戦いで危機感を抱いたリオウが緊急招集をかけた際、ザルチムのみがコントロールルームにまで駆け付けてきてくれた。
といったように、リオウとは非常に長い付き合いかつ、ザルチムも自身が思っている以上に積極的な姿勢を見せていたと読み取れる。
総じて大事業を仲間と共に成し遂げることに魅力を感じる人間性、端的に表すならロマンチストや夢追い人のような性格を秘めており、そこが普段のクールな態度とのギャップであり大きな魅力だといえるだろう。
関連タグ
リオウ……本編では互いの想いに気付かぬまま別れてしまったものの、心のどこかでは確かな「友情」を築いていた大切な相棒。
ファンゴ……原作のファウード編で(一応)共闘。
ロデュウ……こちらも原作版において、「最後の最後で読者からの好感度を上げる描写がなされ、根強い人気を得る」という似たようなキャラクター性をした魅力溢れるヒール役。