概要
ポリ塩化ビニルで作られた子供向け玩具の総称。
戦前~戦後にかけて製造されていたセルロイドに可燃性・発火性があったことから、代用品としてポリ塩化ビニルで作られるようになり誕生した。
セルロイド人形の主力が幼児・女児向け人形だったのに対し、第一次怪獣・特撮ブームの到来と共にウルトラマンや怪獣をモデルにしたソフビが大量生産され男児向けには特撮ソフビ、女児向けには着せ替え人形という2大売れ筋商品として確立した。材料自体が軽量で柔らかく、さらに成形の都合上角が丸まってしまう点も子供向け玩具としては好都合…という条件が揃っており、爆発的なヒット商品となる。
「あくまで子供向けの低額玩具」として作られており、値段は安くそれなりのクオリティ(カラーリングが異なる、デザインが異なるなど。逆にそれが味わい深い、良いという声もあるが)でずんぐりむっくりした造形の物が多い。メーカーによってオリジナルの解釈が加えられていたり、愛嬌がある形を愛好する人もいる。
また、可動部に関しても多くの製品で遊ぶのに最低限必要な腕や腰の回転だけに絞られているなどコストカットが図られている。少し値段が上のモデルになると脚や首が動くこともあるが、スペシウム光線やライダーキックのようなおなじみのポーズは取れず気合と想像力でカバーして遊ぶのが一般的。
時代が下るにつれて、大人のマニア向けにニッチなキャラクターやオリジナル商品、高額・大型商品などが制作されるようになる。模型イベントなどで少数生産されたものが販売されることもあり、最近の作品に登場するキャラクターをあえて昭和風の雰囲気で表現したりもされている。中には一見ソフビには見えないほどのサイズ感・デティールの細かさで作られているものもあり、作り手の技術力を競うという一面もある。
また、ウルトラシリーズのソフビには通常のサイズよりも巨大なソフビが販売される事もしばしば。主に中ボスやラスボスなどの強キャラに多い特別仕様である。
流通・取り扱い
軽量で壊れにくいことから、流通業者にも重宝されてきた歴史がある。売り場に並ぶ際も、他の商品に比べてパッケージは簡易的で、裸吊るし、ビニール袋、箱orブリスターの3択となっている。
特に裸吊るしはウルトラマン・仮面ライダーシリーズを筆頭に現在も玩具店で頻繁に見かける販売スタイルで、商品自体に直接タグが打ち込まれ番組ロゴ、キャラクター情報などが書かれている。
ビニール袋売りは昭和ソフビに一般的だった形態で、駄菓子屋や玩具屋の販売方法を念頭に置いていたものと思われる。袋に入れたままにしておくことでかえって塗装が傷んでしまうことなどもあってか、近年ではあまり見られなくなってきている。
箱売りは2000年代以降、セット商品などで用いられる。凝った箱デザインのものも多く、コレクション・ディスプレイ性が重視されていたが現在はコスト削減のために裸吊るしに回帰しつつあり、一部の破損しやすい商品・高額商品専用となっている。
これ以外にもガチャポンなどでの販売、イベントでの限定販売(クリアカラーなど、別カラーが登場することが多い)が行われることもある。
なお、中古市場や処分品などは「壊れない物」という前提で箱などに突っ込まれていることがあるが、これはあまり推奨されない取り扱いである。特に夏場の屋外フリマなどで直射日光の当たる所に置かれていると、紫外線と太陽熱+照り返し、山積みにされている際の重量などで軟化・変形して自立すらできなくなってしまう可能性があるためである。出品者の側も日除けなどをする、夏場の出品は避けるなどするのが賢明。
保管・変形防止
多くのメリットがあるソフビだが、前述のように温度変化などで変形してしまう場合がある。ソフビの柔らかさを出すために使われている可塑剤(現在は熱可塑性エラストマーが主流)がPVCに練り込まれているため、熱したり一定の力が掛かり続けると変形を起こしてしまうのである。変形した直後や、最初から歪んでいたものは再度温めて形を修正→水などで冷やすことで形を修正できるが、塗装などが落ちてしまう懸念もある。
これを防ぐために、そもそも可塑剤を抜くという荒業を使う人もいる。シンナーやベンジンの中に漬け込んでおくことで溶け出した可塑剤の代わりに溶剤を吸って膨張する。その後自然乾燥で溶剤を揮発させる事で可塑剤が抜けて硬化し、元の大きさより10%ほど縮んだ状態で硬くなるのである。縮小する過程で歪んだりパーツが合わなくなることもあるため、一長一短の手段であり希少なソフビなどには行われる事はあまりない。
希少価値
ここまでに述べたように、ソフビは「子供が雑に扱っても壊れない廉価な玩具である」「経年や熱などで変形、劣化してしまいやすい」という2つの要因によって、ほぼ消費される形で遊ばれてきた玩具である。そうした背景があるため、昭和ソフビの美品・希少品などは非常に高い値段で取引される場合がある。
また、昭和にソフビを作っていたメーカーの中には廃業して久しい会社も少なくない。代表的な例では、マルサン・ブルマァクなどは既に廃業から50年ほど経っていることもあり、当時物かつ美品ともなると凄まじい値段で取引される(後に復刻はされているが)。
パチモノ
昭和に流通していたソフビの中には、メーカーから正式な許諾を受けていないもの、または他メーカーのソフビから型を取るなどして作られたいわゆるパチモノが多数存在していた。
特に有名な事例では岩手県にあったとある村で、村ぐるみでソフビの偽造が行われていたという事件。関西圏を中心にブルマァク製ソフビの粗悪な偽造品が出回り、警察や同社が調査を行うととある山奥の小屋にまでたどり着いた…というニュースが当時大々的に報じられている。
冬季は農業ができず出稼ぎに行かなければならない農家の人々に対してソフビ内職を斡旋すると称して偽造品を作らせていた…という背景があり、版権に詳しくない人が経営する駄菓子屋などを介して流通してしまっていた。
偽造品の一掃キャンペーンが展開されると共に、偽造品工場で働いていた人々に対しては正規ライセンスを付与し、本物を作ってもらうという戦略が取られたために偽物は姿を消していくことになる。現在となっては、そうして流通したパチモノソフビに価値を感じるという人も少なからず居る。微妙にゆるい造形であったり、手塗り感溢れる塗装など味わい深い佇まいの物が多いため、マニアの間ではパチモノと知った上で高額取引されているものもある。
おまけ・玩具展開
- ウルトラマン、仮面ライダーなどでデータカードダスが展開されるようになると、ソフビにもおまけとしてこのカードが付けられる事があった。
- 当然ながらソフビのキャラに関係のあるカードがついている場合が多く、欲しいカードを確定入手できる手段として子供達や大きなお友達に求められた。なお、ゲーム筐体からは排出されない限定カードなどもある。