概要
現在の三河線、蒲郡線を開業させた三河鉄道が1926年に導入した電気機関車。当初はキ10形という形式名であった。初期に日本車輌で製造された10、11の機器類はアメリカのウェスティングハウス社製のものを使用していたのに対し、後から増備された三菱造船所製の12〜14は機器類も含め全て純国産となっている。その後一畑電鉄が運用していた同型の機関車が余剰となったため、三河鉄道に譲渡され同社のキ15となった。このように出自がそれぞれ異なるため、同じデキ300でも寸法等が微妙に異なっている。例えば日本車輌製の10、11は前面中央に窓が設けられているが、それ以降に製造された機関車には窓がない。また後から編入された15は前照灯の位置が他の機関車より若干低い。
1941年に三河鉄道が名古屋鉄道に合併されるとキ10形6両も名古屋鉄道に継承され、形式をデキ300形に改称された。名鉄に編入された後も貨物用や入換機として使用されていたが、1964年に304が新川工場の火災に巻き込まれ廃車、1966年に301が踏切事故に遭い事故廃車となるなど不幸が続いた。名鉄が貨物輸送を廃止すると余剰となった302が廃車されたが、302は鞍ヶ池公園にㇳ1形、ワフ70形と編成を組んで展示された。しかし2003年の公園改修時に解体撤去されてしまった。
デキ303、305、306の3両は事業用車として残されることになり、他の名鉄デキ同様特別整備が施工され、塗装をメイテツブルーに警戒色を施した塗装に変更、標識灯の換装や機器更新等が行われた。その後は工事列車の牽引や新車の輸送などに使用されていたが、車齢は80年を超え老朽化が進んでいたため新型EL120の登場を待たずして2013年に305、306が廃車された。303は廃車を免れ、車籍を抹消された上で舞木検査場の入換機となった。書類上は舞木検査場の機械扱いなため本線を自走することはできないが、時折検査場内で入れ替え作業を行う姿を見ることができる。2024年現在車齢は96年と、車籍こそないものの名鉄で使用されている車両の中ではぶっちぎりで最年長である。