概要
2014年度の名古屋鉄道設備投資計画で発表された老朽化した電気機関車の更新・代替用として東芝で2両が製造された電気機関車。老朽化した旧型の電気機関車は6両が在籍していたが、運用効率の向上も含めてEL120形は2両の製造のみで済んだ。
大手私鉄が電気機関車を新造するのは西武鉄道E31形以来28年ぶりのことである。また、東芝にとって約70年ぶり【注1】の名古屋鉄道向けに製造・納入された電気機関車でもある(いわゆる「東芝戦時型」以来。当機の製造も「東芝戦時型」であるデキ600形の置き換えのため。)なお、大手私鉄の車籍を持つ【注2】電気機関車としては唯一の存在である(前述の西武のE31形は既に引退し、一部は大井川鐵道へ)。
先頭部の形式表示プレートにはヘルベチカでEL120と書かれ、側面にはローマン書体の切り抜き文字で車番が書かれている。また車体にはステンレスのラインが施されて車体を引き締めている。ファンの間では新型デキとも呼ばれている。デザインとしては同じ東芝が製造したJR貨物のEH800にも似ている。
ミュージックホーン、スノープロウを搭載し台車はボルスタ付き。東芝公式サイトによれば、当機は電車との機器共通化を図るために電車と同じく機器を床下吊り構造にした。このことにより小型化が図られた。また、運転操作なども電車との共通化【注3】を図ったという。電車との共通化や、機関車としては用途が限定的で複雑な操作を要しないため、主幹制御器が右手操作型ワンハンドルマスコンとなっている。
なお
- 製造元の東芝はこの機関車の製造を皮切りに、「総重量40トンの手頃な小型機関車で中小私鉄の旧型機も更新可能」とアプローチしてはいるものの、いかんせん電気機関車を使用する事業者は地方私鉄で「中古車購入、もしくは現保有車両の長期使用」のケースに限られているので、今のところ名鉄以外から類似した車両の発注は無い(貨物輸送に使用する事業者としては秩父鉄道や三岐鉄道、補機として使用する事業者としては上述の大井川鐵道がある)。
- JR貨物は入換用機関車としてHD300、DD200といった凸型・内燃動型の機関車を導入しているが、都市部に近いエリアではハイブリッド方式のHD300を先行して導入している。同機の導入費用の高さから、入換作業が頻繁で無いエリアにおいては電気機関車方式の新型機を導入する可能性を示唆している。もっともこれはHD300導入後DD200導入までに行われた見解であり、DD200登場後は方針が転換された可能性もあるため、今後どのようになるかは不明である。
脚注
- 【注1】:名鉄向けとしては約70年ぶり。なお東芝では約45年ぶりの民営鉄道事業者への電気機関車製造納入と発表している。
- 【注2】:工場の機械扱いで近畿日本鉄道が所有するほか、ディーゼル機関車を東武鉄道が所有する。
- 【注3】:スイスなどではこうした発想は一般的であるが、日本では動力車操縦免許が法的に同一であるにもかかわらず電車と電気機関車の運転操作を一致させることはこれまで顧みられなかった。また、国鉄→JRの機関車と同様のブレーキ(単弁・貫通制動弁)は名鉄では使わないため、電車同様に操作して動ければ十分という判断もある。
関連項目
西武鉄道E31…大手私鉄が製造した事業用機関車繋がり。EL120の前に大手私鉄が新造した電気機関車はこちらとなる。なおE31の足回りは廃車発生品であるが、電車で一般に使われる860mm車輪の台車を使用し、床面が低く「短足」に見えるため車体下部に目立たない異なる塗装をしている点なども同機と共通する。