♪この世は無責任、コツコツやる奴ぁゴクローサン!!
概要
クレージーキャッツが出演する喜劇映画シリーズ「クレージー映画」最初の作品。
正体不明のC調男があれよあれよとサクセスしていく、痛快なビジネス喜劇となっている。
中期以降のクレージー映画では「一見ただのお調子者だが、実は頭の回転が非常に早い傑物」というタイプの主人公が多いが、本作と次回作『ニッポン無責任野郎』では本当にアナーキーで無責任な主人公がモーレツ社会で器用に泳ぎわたるという、真面目一徹な世相を皮肉ったものになっている。
そして『喜劇 駅前温泉』の併映での封切興行されるや、この2本立ては大ホームランを飛ばした。
クレージーキャッツの「歌って踊れて演技も出来る」というマルチタレントぶりを全開にしており、楽曲も多数登場。
もともとはフランキー堺主演の喜劇映画『無責任社員』という企画で、東宝の人気喜劇映画「社長シリーズ」も手掛けていた田波靖男が売り込んでいたがボツになってしまったところを、プロデューサーの安達英三郎がクレージーキャッツの主演映画を作りたいと話を持ち掛け、田波がこの企画を提出したところ賛同され、メインキャストをクレージーキャッツのメンバーに変更して製作されることとなった。
監督の古澤憲吾は1959年にデビューした当時の東宝では若手にあたる監督で、坂本九主演の「アワモリ君シリーズ」などの喜劇映画を手掛けていた。
そしてこの成功により、東宝クレージー映画は『ニッポン無責任』2部作を原点に『日本一』シリーズと『クレージー作戦』の2大シリーズに枝分かれし『社長』シリーズと『駅前』シリーズと肩を並べる東宝喜劇路線の黄金時代を築くのだった…。
あらすじ
正体不明の無責任な男・平均は、「乗っ取り屋の黒田」の異名を持つ黒田産業の黒田有人が太平洋酒の乗っ取り工作を企てていることをバーで偶然聞きつける。
バーの支払いをその場に居合わせた太平洋酒の社員たちに払わせ、社長の氏家勇作に取り入り太平洋酒の総務部に入社する。
均は氏家から大株主である富山社長の買収を命じられる。富山を丸め込んでどうにか株を黒田に売らないように約束してもらうが、富山は裏切り黒田に株を売ってしまう。
黒田は業界屈指の大手企業山海食品の社長・大島良介をバックにつけていた。
クビになってしまった均はバーで飲んだくれているとなんと黒田と遭遇。黒田に取り入り太平洋酒に舞い戻り、均は部長に昇進する。
太平洋酒ではビールを売ることになり、北海物産の石狩熊五郎社長とのホップ売買契約を任される。
ゴルフやピンク映画で接待をして契約を承諾させた均たちだったが、接待費用が高すぎると黒田に叱責され、またしても均はクビにされてしまった。
一方氏家の息子・孝作は山海食品の社長の娘・洋子と恋仲になっていた。それを知った氏家は乗っ取りの黒幕と親戚付き合いは出来ないと反発。さらに洋子も安達銀行の頭取の息子とのお見合いを控えていた。
駆け落ちを試みる孝作と洋子。均たちもふたりの駆け落ちを助けるためにお見合い会場に忍び込む。
平 均
「へいきんと書いてたいらひとし、名前の通りつまらん男ですよ」
演じたのはクレージーキャッツのボーカルとギター担当、植木等。
氏素性は不明、良い歳をして下宿暮らしをしていた冴えない適当男。
努力は嫌いでお調子者、自分の失敗は笑って誤魔化し責任逃れ。仕事はするが無理も無茶もしない、楽に楽に適当にヘラヘラ笑って生きていくが何故か人に好かれる、誰が呼んだか「山師と詐欺師のハイブリッド」。
バーで(人の勘定で勝手に呑みながら)聞いた太平洋酒乗っ取りの話を上手く使って会社に潜り込み、口八丁手八丁で出世していく。
何度もクビになるが復帰、最終的には社長になるものの追放されてしまう。……が……。
元々寺の生まれで責任感の強い植木氏は、彼の無責任さを演じるのに苦労したとか。
また初期設定では平 均が香典泥棒をするシーンがあったが、さすがに寺の倅としてそれは出来ないとシナリオの変更を申し出たという。作中で葬儀の場面があり、刑事が香典泥棒を探しているという描写があるのはこの名残。
出演者
- 平均:植木等
- 氏家勇作(「太平洋酒」社長):ハナ肇
- 谷田総務部長(「太平洋酒」部長):谷啓
- 麻田京子(バー「マドリッド」のマダム):中島そのみ
- 佐野愛子(「大平洋酒」社長秘書):重山規子
- まん丸(芸者):団令子
- 大島洋子(良介の娘):藤山陽子
- 氏家孝作(勇作の息子):峰健二
- 植村(洋子の見合い相手):稲垣隆
- 黒田有人(「黒田物産」社長→「大平洋酒」新社長):田崎潤
- 石狩熊五郎(「北海物産」社長):由利徹
- 富山社長(「太平洋酒」の大株主):松村達雄
- 大島良介(「山海食品」社長):清水元
- 氏家時子(勇作の妻):久慈あさみ
- 咲子(下宿の主婦):中北千枝子
- 大塚(「大平洋酒」社員):犬塚弘
- 佐倉(〃):石橋エータロー
- 青木(〃):桜井センリ
- 安井(〃):安田伸
- 私服の刑事:田武謙三
- 健吉(下宿の主人):人見明
- 交通取締の警官:宮田羊容
- 春木(バーテン):井上大助
- 植村の父親:土屋詩朗
- 氏家社長の運転手:小川安三
- アパートの隣人:出雲八重子
- ハナ(氏家家の女中):峯丘ひろみ
- 大平洋酒社員:清水由記
- バレーボールを追う社員:丘照美
- ビヤホールのウェイトレス:宮川澄江
- 葬儀の受付係:岡豊
- 香典泥棒:荒木保夫
- 料亭の仲居:記平佳枝
- 大島家の女中:杉浦千恵
- マドリッドのホステス:田辺和佳子
- 江島和子
- マドリッドのホステス:谷和子
- 芸者:寺沢広美、原紀世子
- マドリッドの客:吉田静司
- 大平洋酒社員:門脇三郎
- 小松英三郎
- 児玉清 ※ノンクレジット(エキストラ出演)
- 孝作のバンド仲間:大内ヨシオ、朽名章宣、康本佳男
- 銭湯の客:黒木順