概要
アンダーグ帝国の幹部バッタモンダーと虹ヶ丘ましろのカップリング。
当初は敵同士な事もあり個人的な絡みも多くはなかったが、34話にて再登場したバッタモンダーがましろを(結果的に)励ましたことで新しく繋がりができた。
この時バッタモンダーは復讐のためましろの夢を壊そうと美大生の紋田を名乗ってましろに近づいたのだが、彼が心を折るために言った言葉が逆にましろに夢に向かう覚悟を決めさせることとなった。そして彼女から(紋田として)お礼を言われ、励まされたバッタモンダーもまた初めて応援されたことに不思議な感覚を覚えていた。
ましろは紋田の正体に気づいておらず、またバッタモンダーもすでにアンダーグ帝国から離れてソラシド市で自活しているので、見る側としてはこの先の展開に大いに想像力をかき立てられるカップリングである。
素性を隠している事情から、バッタモンダーではなく紋田の姿での絡みがほとんどなため、紋ましとも呼ばれる。
各話の動向(ネタバレ注意!)
第34話 【もんもん!ましろと帰ってきたアイツ】
前項の通り、バッタモンダーはプリキュアに復讐するために美大生の紋田を装いましろに近づいた。その最中、こんなやりとりが。
「紋田さんは……絵をつまらないって言われた時、どうしたんですか?」
「いや、別にボクはなんとも思わなかった」
「えっ?」
「だってボクにはちゃんとあるからね、覚悟が。悪口言われる覚悟がね」
「覚悟……」
この一連の会話、そしてその後の戦闘でましろは『覚悟』を知り、絵本作家になるという夢を決意した。
そして戦闘後のエピローグでは、バイト中の紋田とましろが偶然出会う。そこでの会話では……
「紋田さんもがんばってください。思いどおりにいかないこともあるけど、目標に向かってがんばる紋田さんはすてきです!わたし、応援してますから!」
「オレ、応援されるなんてはじめて……」
と、このようにましろは紋田の言葉で初めて夢を決意し、バッタモンダーはましろによって初めて応援されるという関係図が出来上がった。ただの関わり合いではなく、二人の人生に多大な影響を与えたのがこのカップリングの尊い点として挙げられるだろう。
第41話 【ましろと紋田の秋物語】
絵本作家の夢に向けて、ましろは再び絵本コンテストに応募することを決意。ソラシドパークで新作のアイデアを練っていた。
同じ頃、キッチンカーでアルバイトをしていた紋田。その胸中には、このままではアンダーグ帝国に戻れず、最悪の場合処刑されてしまう可能性もあると考えてしまいネガティブに。
そんな二人が再会。紋田はもう一度ましろの夢をぶっ潰そうと温かい飲み物を持って接触し、ましろが絵本をかく様を見て呟き始める。
「がんばっても上手くいかないことって、あるよね……」
夢に対して否定的な言葉を連ねていく紋田。だがそれは嘘偽りのない、バッタモンダー自身の苦しみの言葉だった。非力で帝国での扱いは酷く、どれだけ努力しても他者に見下されることしかなかった過去を持つ彼は、現状の立ち位置の危うさも相まってその苦悩をましろに吐露してしまったのだ。
「辛い思い、してるんですか……?」
当然、その苦しみは目の前のましろにも伝わっていた。自身を枯れ落ちて踏みにじられる惨めな落ち葉だと卑下する紋田に対して「落ち葉は全然惨めじゃないですよ」と励まし、「落ち葉、わたしは好きですよ」と言うましろ。そんな彼女を前に紋田は唇を噛み締めて走り去ってしまう。
ましろから逃げ去り木々の中で鬱屈する紋田。そこに足音とともに現れたのはスキアヘッドだった。彼には紋田の正体がバレており、バッタモンダーの想像通り始末しにきたのだ。
「なんの力も無い落ちこぼれのくせに諦めが悪い」
「足掻き続けるお前の姿は見苦しく目障りだった」
「力の無い者に存在する価値は無い」
バッタモンダーを卑下し、果てに消滅させようとするスキアヘッド。だが両者の間に割って入ったのはましろだった。
「紋田さんをそんなふうに言わないで!」
スキアヘッドに啖呵を切り、キョーボーグとの戦闘が始まる。なんとか紋田を逃がしたましろは、キョーボーグの撃退にも成功。
ソラシドパークからの帰り道、絵本のテーマが決まったと告げるましろ。
「読んで楽しいだけじゃない、苦しんでいる人を元気づけるような……そんな絵本をかくよ!」
そして帰路に着くましろを背後から見つめる紋田。なんの得にもならないのに自分を庇ったましろを嘲笑うも、
「落ち葉、わたしは好きですよ」
と、彼の心にはましろの言葉が反芻していた。
第43話 【プリズムシャイン!心を照らして!】
夕日の差す自室で絵本をかくましろ。それは風に吹かれたイチョウの落ち葉が、自分には何も出来ない、と嘆くというものだが、ましろは納得のいかない様子。
同じく夕焼けの中アルバイト中の紋田。キッチンカー周りの落ち葉を掃除していたが、残った最後の一枚であるイチョウの落ち葉を見つめて先日のましろの言葉を思い出す。彼の表情は今も尚曇ったままだ。
翌日の朝食の時間もましろは絵本の事を考えていた。だが、コンテストの事はすっかり頭から抜け落ちていた模様……。
曇天のなか、またも紋田とましろが出会う。自分のしたい事が分からずにいた紋田にましろが声をかけたのだ。そこでましろは紋田に自身の絵本を読んで欲しいと頼み込む。紋田さんと話したことをもとにかいていると言われ、断れずスケッチブックを受け取り読み進めていく紋田。だがスケッチブックは途中から白紙だ。
「どうすればこの『おちばくん』のお話をハッピーエンドにできるかなってずっと悩んでて……」
「紋田さんが落ち葉を見ても辛い気持ちにならずに済むような、そんなお話にしたいんです……」
その言葉を聞いた紋田は突如として怒りをあらわにし、ましろのスケッチブックを破り捨て、踏みつける。
「優しい紋田さん」の突然の豹変に、声も出せずに目の前の現実を呆然と見つめることしか出来ないましろをよそに、紋田はまくし立てた。
「落ち葉にだって意味がある?落ち葉が好きだ!?そんな綺麗事で誰が救われるって言うんだよ!」
「そもそも全部お前らのせいじゃねえか!お前らのせいで!オレは負け犬のままアンダーグ帝国に帰ることも出来ない!!」
勢い余って自身の正体まで明かしてしまったことに気がついたバッタモンダーは、ましろのミラージュペンを強奪することでなんとか形勢を有利にする。
降り始めた冷たい雨の中、バッタモンダーはましろの心をメチャクチャにするためにウソをつき続けていたと吐き捨てる。しかし、ましろの返答は予想しえないものだった。
「よかった。紋田さんが苦しんでたのも、ウソだったんだ」
右目から垂れる雫は雨か、それとも。
静かに微笑む彼女を前にあっけにとられるバッタモンダー。だがましろはそこで一つの事実に気付く。先日スキアヘッドに命を狙われていた理由が任務に失敗したからだということ。ましろはバッタモンダーを助けると宣言しミラージュペンを返してもらおうとし、バッタモンダーもそれに応じかけるがすんでのところで引き返してしまう。ましろを信用しようとしないバッタモンダーに対して、助けるよと唱え続けるましろ。
だが、その声は届かない。
「お前には分かんねえよ。なんの価値も無い落ち葉の気持ちはな」
そう言うとバッタモンダーはその場を去った。破り散らされ踏みにじられた『おちばくん』の絵本と共に残されたましろは、迎えに来たソラ・ハレワタールの前で涙を流す。
ミラージュペンを持って走り続けるバッタモンダーの前に現れたのはスキアヘッド。スキアヘッドはミラージュペンを奪うと、『無価値では無いと証明するチャンス』と称してアンダーグエナジーを渡し、「嫌だと言うならここでお前を消す」と、逃げ場のない最悪の二択を迫る。
家路に着いたましろは紋田の正体とバッタモンダーについて皆に話した。
「バッタモンダーの事、今はあまり怒る気になれないんだよ……」
ましろは、バッタモンダーの姿に過去の自分を重ねていた。才能も力も無い自分に価値はあるのかと問い続ける日々。だが皆と出会い自分は自分で良いんだと思えたましろだからこそバッタモンダーを救いたいという意思を曲げない。そして『おちばくん』はバッタモンダーの物語でもあり、ましろの物語でもあったと気付き、ハッピーエンドへの道筋を見つけたましろは、もう一度バッタモンダーと話したいと決意した。
翌日、一枚のイチョウの落ち葉に影を落としていたバッタモンダーのもとにましろ達が現れる。話がしたいと訴えるましろだが、バッタモンダーにそんな時間は残されていなかった。バッタモンダーはスキアヘッドの後押しでアンダーグエナジーを取り込みパワーアップ。自我を失った怪物と化してしまう。それでもましろは、バッタモンダーを使い道の無い無価値な存在と称するスキアヘッドに言い放った。
「価値が無いなんて……あなたが決めることじゃない!」
「自分の価値は、自分で決めるんだよ!」
沈みかけていたバッタモンダーの心が揺らぐ。そして次の瞬間。
バッタモンダーの拳はスキアヘッドの懐めがけて放たれていた。
その場にいた者全てが目を疑った。バッタモンダーが反旗を翻し、あのスキアヘッドに一撃を叩き込み、ましろのミラージュペンを取り戻したのだから。
「いい加減ムカついたから殴っただけだよ、オッサン!」
「ああそうさ、オレはバカだ。でもな……」
「オレは無価値なんかじゃねえ!!」
ましろの言葉は届いていた。自分の在り方を認め、そんな自分の価値を認め、なりたい自分のままに生きる事を選んだバッタモンダー。スキアヘッドからミラージュペンを取り返した彼にましろはお礼を言う。
だが、現実は時に非常である。ましろがお礼を言い切る前に、バッタモンダーを取り囲むようにアンダーグエナジーが噴出。そのままバッタモンダーは呑み込まれ、今度こそ彼は破壊のみを求める獣と成り果てた。
だが、二人が望むはハッピーエンド。
「必ず、助ける!!」
ましろは彼に託されたミラージュペンを握りしめキュアプリズムに変身し、バッタモンダーとの戦闘が始まった。
パワーアップしたバッタモンダーは凄まじいスピードとパワーでプリキュア達を追い詰める。これが彼の努力の成果だとでも言うのか、パワーアップ前とは比べ物にならない実力でプリキュア達を薙ぎ払う。だがそれでもプリズムは立ち上がり、言葉を投げかけた。
「バッタモンダーを助けるって、覚悟は決めたから!」
「わたしは、絶対に諦めない!!」
バッタモンダーの身体に淡い光が宿る。彼の心は完全には消えておらず、プリズムの言葉で『心の輝き』を取り戻したのだ。これが、バッタモンダーを助け出す最初で最後のチャンス。
「わたしが…………照らし出してみせる!」
「煌めけ!『プリズムシャイン』!!!」
プリズムの新たな力はバッタモンダーの心へとその光を伸ばす。彼の心を覆っていた闇は光の中へと消え、マジェスティクルニクルンで彼の肉体を暴走させていたアンダーグエナジーを浄化することにも成功。こうしてましろ達はバッタモンダーを助け出すことが出来たのだった。
戦闘後、反省の色を見せるバッタモンダー。ましろには去り際に、「破って、ごめん」と自らの言葉で謝罪した。
対してましろは去り行くバッタモンダーの背中に、(大丈夫。自分の輝きを信じることが出来たなら、きっと……!)と笑顔を見せた。
そして迎えた絵本コンテスト。大賞に選ばれたのはましろの作品である『おちばくん』。
『ボクの素敵なところは、ボクが決めちゃえばいいんだ!』
おちばくんはそう楽しげに言うと、広大な花畑に架かる虹へと飛んでいったのだった。
余談
第34話中には『塩バターカップラーメン』や『モンシロチョウ』といったモノが登場する。
塩バターはましろ(お)×バッタモンダー、モンシロチョウはモンダ×マシロといった言葉遊びではないかという説があるが、公式の真意は不明。
第39話【大魔女ヨヨとハロウィンパーティー!】にはバッタモンダーが登場し、キュアパンプキンというプリキュアの仲間のフリをして悪事を働く展開がある。その登場時にはプリキュアの変身バンクのような映像が流れるのだが、名乗りの直前にはプリキュア達と同様に彼もウィンクをする。このウィンクはましろと同じ右目であり、そして右目のウィンクはこの二人以外存在しない。
第43話での『心の輝き』はましろのキャラクターソングであるわたしリフレクションの歌詞が元と思われる。