概要
黒い1つの首の龍で、「ホロフェルニゲシュ」、「黒龍フェルニゲシュ」とも呼ばれる。
尚、Hollóとはハンガリーの言葉で“ワタリガラス”を指す言葉である。
伝承によると、その昔、ドナウを越えた場所に貧しい老人と三人の娘、そして息子のヤーノシュが暮らしていた。
ある日、老人は「何者であっても三人姉妹を求めたら逆らうな」と遺言を残し亡くなった。数日後、1匹目の龍が現れ長姉を奪い去り、翌日、さらに巨大な龍がやってきて次女を、そして三日目にはそれよりもさらに巨大な龍がやってきて末に姉を奪い去って行った。
悲観に暮れたヤーノシュは、当てのない旅に出る。そしてとある町へと辿り着くと、王とその家族が続けてなくなった為、1人残された女王も含めて皆が長い間喪に服していた。ヤーノシュは城へと行き、そこの給仕として使える事にした。
ヤーノシュが21歳になった頃、彼は女王からの求婚に応じると、この国の王となった。王妃は、宮殿内の禁制の間には自分しか入れない為、自分が教会に行く間も決して入るなとヤーノシュに忠告した。しかしある日、ヤーノシュは好奇心からその禁を破り、王妃だけを教会に行かせ、1人で禁制の間に入ろうとしたが扉は開かない。
暫くすると室内から聞こえてきた声に教えられて鍵を見付けたヤーノシュは、室内に安置された石板で蓋をされた石桶を見付けた。
そしてその中から水を求める声が聞こえてきたので、ヤーノシュはあいにくと水がなかったので、その代わりに葡萄酒を与えてやると、石板を留めていた箍が外れていき、封印されていた邪悪な龍フェルニゲシュが復活。
封印が解かれた邪龍はヤーノシュを翼で叩きのめして城から飛び出すと、教会から帰宅途中の王妃を攫って飛び去って行った。
ヤーノシュはフェルニゲシュがこの地域を支配する龍王であることを知ると、国の統治を信頼できる部下に任せ、王妃を救出するために旅立った。やがて辿り着いた不思議な世界にはかつて龍に連れ去られた長姉がいた。その夫である6つの頭を持つ龍は、ヤーノシュから事情を聞くと、義理の弟である彼に協力することを約束し、自身の兄である龍に引き合わせた。そこには次姉がおり、彼女の夫である12の頭を持つ龍もヤーノシュに協力する事を約束し、弟の龍とヤーノシュを一緒に背中に載せると兄の龍の所へといった。黒龍フェルニゲシュの領地と隣り合っているその龍の領地でヤーノシュは末姉と再会し、彼女の夫である24の首を持つ龍は「フェルニゲシュは自分達の領地ではあるが、皆不快に思っていたので、総掛かりで戦いを挑んだが、討伐すること叶わず、辛うじて石桶に閉じ込めるしかなかった」と語った。さらに6つ頭の龍はヤーノシュに馬車を貸し、王妃は毎朝8時の黒龍の城にある井戸端に来るので、その時を見計らって救出するべきだと助言する。
朝8時に王妃が井戸端にやってくると、待ち構えていたヤーノシュは彼女を馬に載せて脱出するが、厩にいる5本脚の馬が暴れだす声を聞きき、そのことに気づいたフェルニゲシュはその魔法の馬でヤーノシュに追いつき、王妃を奪い取ってしいまった。翌日、今度は12の頭を持つ龍から借り受けた馬で井戸に向かい、再び王妃を奪い返したが、またしてもフェルニゲシュに奪い返されてしまい、24の頭を持つ龍が持つ馬でも同様の結果に終わってしまった。
そこで24の頭の龍は、5本脚の馬と対となる馬の居場所を王妃にフェルニゲシュから聞き出せるようにと、ヤーノシュに助言した。フェルニゲシュは王妃が尋ねるたびに拒否するも、とうとう根負けして6本脚の俊足の馬の居場所を教え、王妃がそれをヤーノシュに伝えた。3匹の龍の計画通りに、ヤーノシュは再び王妃の奪還に挑むが、フェルニゲシュに追いつかれ体を切り刻まれて殺されてしまう。王妃は泣くのを堪えながらフェルニゲシュに懇願して、ヤーノシュの死体が入った袋を馬にぶら下げることを了承させた。馬は3匹の龍が持つ鋼工場へと向かい、龍たちは死体が入った袋を馬から降ろすと魔法の力でヤーノシュを復活させた。
ヤーノシュはフェルニゲシュが言った「火の海の中にある7の7倍の島」へと向かい、その島に住んでいる魔女が所有する「6本脚の馬」を、魔女が次々に出してくる困難を突破して手に入れた。魔女は馬を手放すものかと龍の領地まで追ってきたが、彼女たちの侵入は、龍たちによって食い止められた。
ヤーノシュは再び王妃を奪還すると。6本脚の馬で逃走した。フェルニゲシュはまたも追ってきたが、5本脚の馬では追いつけず、フェルニゲシュの拍車で痛めつけられた5本脚の馬は、兄弟であった6本脚の馬からの言葉に従って、急降下して主であるフェルニゲシュを振り落とし、しこたま地面にたたきつけられたフェルニゲシュは絶命した。
ヤーノシュと王妃は2頭の馬で龍たちのもとへと戻り、礼を述べると祖国へと戻っていたという。