概要
RPG作品『Wizardry』と世界観を共有する迷宮冒険譚(そのため、書籍・コミックの表紙の端にWizardryのロゴがある)。原作は蝸牛くも(ゴブリンスレイヤーの作者)、イラストはso-bin(オーバーロードのイラストを担当)。
DREノベルス(株式会社ドリコム)から原作小説が4巻刊行されており、楓月誠によるコミカライズも行われている。アニメ化も決定している。
同じWizardry原作のゴブリンスレイヤー外伝「鍔鳴の太刀」を彷彿させるが、こちらはWizardryの派生作品ということもあり、Wizardry由来の単語や登場人物が登場する。
そしてゴブリンスレイヤーの世界との決定的な違いと言うと登場人物に明確な名前があることと蘇生魔法が死者を蘇らせるもの(ゴブリンスレイヤーでは瀕死の人間を治す魔法であり、死者蘇生ではない)であること、ゴブリンは全然登場しないことが挙げられる。
ただし、ホビットやハーフリングにあたる種族はゴブリンスレイヤーと同様にレーアと呼ばれていたり、モンスターの鳴き声は英単語だったりと、いくつかは共通点はあるにはある。
また、原作でも割とそうだが、人がかなり悲惨な死に方をする。首をはねられたり、怪物に惨殺されたり、ドラゴンのブレスで消し炭にされたりは序の口。
新人冒険者の身包みを剥いで路地裏に蹴飛ばしたり、奴隷を使い捨てしたりする倫理観が欠如した冒険者クランも登場する(そしてそういった者も等しく悲惨な末路を辿る)。
本作のストーリーはWizardryシナリオ#5を基準としている様子であるが、灰になった状態から蘇生できるカドルトの魔法が周知されず灰になった時点で蘇生を諦めたり(カドルト自体は存在している)、主人公のイアルマスの職業が滅びた扱いになっていたりと、原作との差異がある。
また、トレボーがリルガミン王家の人間などの日本独自の設定や、竹内誠の小説の設定をオマージュしている描写も見られる。
カシナートの剣も、「刀匠カシナートが製作した強い剣」と「ミキサーの形状の珍妙な武器」の2種類が存在するという、和洋折衷の設定になっている。
主な登場人物
- イアルマス
本作の主人公。ローブを纏った男。性格はよくも悪くも中庸(蘇生失敗して灰になった仲間に泣きつく冒険者に、「(カドルトがあるからもあるが)灰になっただけじゃないか」と言うなど)。
カント寺院からの依頼で、迷宮内に放置されている死体を回収している。そのため、周囲からは死体漁りや蛆虫などと陰口を叩かれている。
迷宮のまだ未踏破のはずのエリアで死体として発見され、死体になる前の記憶を失っている。名前も本名ではない。
迷宮の主が持つアミュレットを手に入れるのが目的であり、そのためなら自分の死をも恐れない。
黒杖を持って魔法を使うため、他者から魔法使いだと思われているが、ローブの下には具足を纏っており、杖は仕込み刀。
名前をローマ字にして逆から読めば、彼の本当の職業がわかる。逆読みは、原作でもトレボーやワードナなどに使われている。
セズマールから「ミフューン」というあだ名で呼ばれている。
下記の竜と門の守護者の会話から、(原作的に言えば)過去のシナリオから転移・転生されたと思われる。
- ガーベイジ
壊滅したパーティで1人生き残った、薄汚れて首に首輪を付けられた奴隷の少女。元パーティから使い捨ての駒として酷い仕打ちを受けていたようであり、イアルマスに拾われてからは彼と行動を共にする。
犬のような鳴き声を発しているが、人語は理解している。身の丈ほどあるバスタードソードを武器に戦う。思考も犬そのもので、格上と見做した相手には不服ながらも従うが、格下と見做した相手には辛辣(ただし、ベルカナンにはガーベイジなりに気遣っている)。コミックではより「保護された野良犬」的な雰囲気が強くなっている。
イアルマスとアイニッキの戦い方を真似したりと、戦闘能力は高い。血糊を拭う仕草までラーニングする………両刃で。
また、迷宮においては仲間の確認も取らずに勝手に玄室の扉を蹴破って入るという狂犬ぶりで、ララジャやベルカナンを振り回す。
肉が大好物で、人死を目撃した後でも躊躇いなく齧り付く。
魔物に襲われた奴隷商の馬車の中でただ1人生き残っていた事から、「怪物の食残し(ガーベイジ)」のあだ名で呼ばれている。
実はある王家の血を引いているが、それを疎ましく思っている《牙の教会》に「忌み子(バスタード)」と呼ばれ、暗殺を目論まれている。
- ララジャ
ガーベイジを使い捨てにしていた冒険者パーティの一員だった、駆け出しの盗賊の少年。といってもその実態は彼もまた使い捨ての駒の1つとして、いいように扱われていた(酷い時には、宝箱の中身がしょぼいという理由だけで暴行されていた)。
最初はイアルマスと敵対していたが、その後の奇妙な縁からイアルマスやガーベイジと行動を共にする。宝箱のトラップ解除を担当する。
盗賊(中庸・悪にしかなれない)だが、悪人とはいえ人を殺すことを躊躇ったり、下記のベルカナンの死体を放置できずに回収・蘇生してやるなど人が良い部分が多い(蘇生費用をツケとしてベルカナンにしっかり返済させてはいる)。
迷宮内の宝箱トラップで亡くなった、仲が良かったレーアの少女・オルレアの遺体を探している。
ガーベイジからは基本的に下に見られているようで、度々尻や脛を蹴られている。
- ベルカナン
砂漠の国の出身である、駆け出しの女魔術師。通称「ベルカ」。
下手な男性よりもでっかく、そしてでかい。そういう事で注目されたくないため縮こまっているが、そのせいで余計に胸部を強調する体勢になっている。
臆病な性格で、僕っ娘。迷宮においては初歩中の初歩であるハリトしか使えないため、最初はなかなかパーティを組めずにいた。
浅い階層に出現しないはずのファイアードラゴンのブレスで焼死体になっていたところをイアルマス一行に発見され、ララジャのお節介からカント寺院で蘇生されて、イアルマス一行の仲間入りする。
魔法使いだが、体格を利用して剣を持って前線に立つ(原作のWizardryでも(性能はともかくとして)できなくはない)。
ララジャに対して想いを寄せているらしき描写がある。
- オルレア
かつてララジャと同じクランに所属していたレーアの少女。平坦。
彼女もクランによって捨て駒同然の扱いを受けており、宝箱のトラップによって死亡してしまう。
彼女の遺体を見つけることがララジャの当面の目標。
後に書籍3巻にて、既に死体は回収されて蘇生された後であり、司教の才能があったことが判明する。再びゲルツのクランで酷い目に遭わされていたが、紆余曲折あってイアルマス一行の仲間入りする。
ガーベイジとベルカナンと行動を共にするララジャにヤキモチを焼くなど、彼のことを意識しているらしき描写がある。
- シスター・アイニッキ
カント寺院に所属するエルフの女僧侶。豊満。通称「アイネ」。
何かとイアルマスやガーベイジに世話を焼いている。
《スケイル》の喧騒の中でも平然としているくらい肝が座っており、大剣で悪漢の首をはねる事ができるくらい強い。
- セズマール
迷宮都市で最強の冒険者パーティ「オールスターズ」のリーダーである全身鎧の大男。人間の戦士。
死体となったイアルマスを発見したのは彼であり、その縁もあってかイアルマスととても仲が良い。名の知れた冒険者パーティを率いているだけあって、豪快でありながら好漢な人物。
イアルマスからの頼みで彼とパーティを組むこともある。
元ネタはWizardryシナリオ#4に登場するソフトークオールスターズであり、原作では別行動をとっていたホークウィンドも度々一緒に行動している。メンバーの名前も元ネタと同じ。
ただし、彼らはソフトークオールスターズ本人ではなく、彼らの伝説にちなんで名付けられた別人である(ちなみに、元ネタのセズマールは侍)。
- タック
オールスターズの一員で、ドワーフの司教。和尚とも呼ばれている。
武器・防具の鑑定は彼が行なっており、イアルマス一行からも頼まれている。
キャットロブのことはぼったくりであることもあり、悪印象を抱いている。
- サラ
オールスターズの一員で、エルフの女僧侶。アイニッキとは同胞であることもあるが、同性の友達として仲が良い。
ガーベイジの事を気に入って溺愛しているが、当のガーベイジからは苦手意識を持たれている。
イアルマスの事は素性がよく分からないこともあり、厳しい言い方をする。
- モラディン
オールスターズの一員で、レーアの盗賊。
一人称は「オイラ」と軽い性格だが、臨時で組んだ新人の教養を任されており、ララジャに助言したりしている。
種族上、背丈は子供並みだが、体つきや顔つきは中年男性のそれであり、喫煙もする。
- プロスペロー
オールスターズの一員で、人間の魔術師。
口やかましいサラにツッコミをしたりと達観しているが、バックアタックを受けるなどで度々死体になっている場面があるなど不憫な目に遭う事がある(その後、無事に蘇生できたが)。
- ホークウィンド
全身を黒装束で纏った、(肌を一切露出していないため)種族不明の忍者。オールスターズの中では一番最後に入った仲間。
原点と異なりオールスターズと行動を共にしているが、たまに別行動している時がある。下記の門の守護者と情報共有しているらしき描写もあり、謎が多い。
ララジャ曰く、人を人と思っていなさそうな目つきがイアルマスに似ているとのこと。
ちなみに、覆面の上から飲み食いできる。
- キャットロブ
キャットロブ商店の店主であるエルフの男。盲目(伝説の武器に目をやられた、と噂されている)。
武器の買い取りや販売、修繕などを行う。
キャットロブ(CATLOB)を逆から読むと……。
- 《牙の教会》
本作における敵側の存在。
複数人が存在し、《スケイル》や迷宮で暗躍している。
その正体はある王家に仕えし者であり、王家の恥部である狂乱した王の血筋を根滅させ、自分たちが仕える(彼らにとっての)正統な血筋の繁栄を目論んでいる。
狂王の血(正確にはこっち)に目覚めたガーベイジを「忌み子(バスタード)」と呼んで疎ましく思っており、あの手この手で始末しようと企んでいる。
幹部的ポジションの人物は首にアミュレットの欠片をかけており、イアルマスに目をつけられている。
- エガム・イヴィス
《牙の教会》の一員。ローブを纏った坊主頭の魔術師。首にアミュレットの欠片をかけている。
ガーベイジを始末するためにララジャを唆したり、暗殺に失敗したララジャを始末するために部下を送りつけたりする。
自尊心が強くて傲慢な性格で、アミュレットを任されている自分は王家の使い走りで終わるはずがないと思っている。
- ゲルツ
ララジャとオルレアがかつて所属していたクランのリーダー。
奴隷を酷使し捨て駒に使う、「利己的」どころではない正真正銘の「悪」の冒険者。
かつて手酷く追放したララジャが頭角を現しつつあることが気に食わず、彼やイアルマス一行を貶めるために《牙の教会》の誘いに乗る。
- 竜と門の守護者
閑話に登場する巨大な竜と、その竜に門の守護者と呼ばれている魔道士姿の老人。イアルマスの過去を知る者達。
ある王家の血を引くガーベイジが息災で、イアルマスと行動を共にしている事を喜び、イアルマスか別の冒険者が迷宮の奥にたどり着く事を望んでいる。