曖昧さ回避
基本的には "Trebor" のカナ表記。
"Trevor" が「トレボー」と表記されることもあるが、こちらは「トレヴァー」「トレバー」のほうが一般的。
なお、トレーボル(TREBOL)は人名ではなく、「♣」を意味する暗号名である。
狂王トレボー
シナリオ#1『狂王の試練場(Proving Grounds of the Mad Overlord)』の「狂王」とはこの人物のこと。
迷宮に挑む冒険者を募る布令を出した本人ではあるが、冒険者たちの前に直接姿を見せることはない。
地下四階の「モンスター配備センター」を踏破した後に、冒険者に対し「ワードナを討伐し魔除けを奪還する」という指令が下されブルーリボンが与えられるが、ここで表示される長文が「魔法による録音もしくは通信を用いた、トレボー本人からのメッセージ」とされることがある(移植によって翻訳のニュアンスが微妙に異なっている)。
ゲームをクリアした後は、エリートであるトレボー親衛隊への入隊が認められるが、ここでもトレボーと直接のやり取りがあるわけではない。
「偏執的なまでの征服欲によって近隣の国家を圧倒」「国内においても意に沿わぬものは容赦なく弾圧」「恐怖と憎悪を以って狂王と呼ばれた」…というのはほぼ後付け設定で、トレボーの人柄や言行についての掘り下げは主にノベライズやコミカライズを中心に為されている。
トレボーとワードナがどのような関係であったのかも明確な設定はなく、面識はない説、主従関係からの反逆説、同盟関係からの仲間割れ説、競合関係説、政敵説、仇敵説、八百長説、果ては同一人物説にいたるまで、小説等が発表されるたび新説が登場する。
特にこの点に踏み込んだ作品としては
- ベニー松山『隣り合わせの灰と青春』(1988年・JICC出版局)
- 手塚一郎『ワードナの逆襲』(1990年・JICC出版局)
- 『小説ウィザードリィ』全八巻(1992年~1993年・双葉社ファンタジーノベルシリーズ)
- 多摩豊『ウィザードリィ正伝 トレボーと黄金の剣』(1994年・ログアウト冒険文庫)
などがあるが、2023年現在では中古市場でしか出回っておらず、『隣り合わせの灰と青春』以外は電子書籍化もされていない。
そもそもアメリカにおける『Wizardry』はパロディーネタをふんだんに盛り込んだバカゲーとしての側面があり、「狂王」と「悪の魔術師」の私闘に巻き込まれた冒険者達が命を落としていくという状況そのものが一種のブラックジョークであって、その背景や経緯について掘り下げる必要が無かったともいえる。
その「狂王(Trebor)」と「悪の魔術師(Werdna)」の名前からして、制作者であるロバート(Robert)・J・ウッドヘッドとアンドリュー(Andrew)・C・グリーンバーグのアナグラムである。
『ウィザードリィRPG』のキャンペーンシナリオ『トレボー戦役』の箱絵には、甲冑を着込み剣とフレイルを手にしたトレボーの姿が描かれており、GBC版『ウィザードリィⅠ』のエンディングスタッフロールにはこれを基に改変(フレイルの代わりに魔除けを手に)したトレボーが表示される。
『Wizardry』シナリオ#4『ワードナの逆襲』では、魔除けを取り戻したトレボーが「迷宮の最奥にワードナの骸を閉じ込め、冒険者達に見張りをさせる」命令を下し、迷宮を牢獄に改装するために魔除けの力を発動させた瞬間にワードナの罠が発動、これによってトレボーが急死したことになっている。
シナリオ#4のストーリーはその百年後にスタートするのだが、迷宮内で主人公を付け回す「トレボーの怨霊」が出現。戦力を整えて迎撃することはできず、追いつかれると即ゲームオーバーになる。