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ホーカー・ハンター

ほーかーはんたー

1951年に初飛行したミーティアの後継機で、イギリスらしい堅実かつ頑丈な設計と優美な外観が特徴。第1世代としては最後期の機で、配備される頃にはすでに超音速ジェット戦闘機が登場し始めていたので戦闘機としての生涯は短かった。しかし、低空での扱いやすさと搭載力には優れており、その後は戦闘爆撃機として長い間活躍している。軍用機としてはレバノン空軍が2014年まで運用していた他、現在でもATACが戦術訓練の相手役に運用しており、非常に息の長い戦闘機といえるだろう。
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「狩人」のはじまり編集

イギリスの航空機メーカー・ホーカーは、第二次世界大戦終結後も盛んな売り込みを行っており、1947年には海軍向けに「シーホーク」を初飛行させ、この機はパイロット達から好評を受けていた。この主任設計者シドニー・カムはこの設計に35度の後退翼を取り入れ、今度は空軍向けにP.1052を設計したが、結局採用までにはいたらなかった。


しかしその際シドニー・カムは成功への手ごたえを感じたようで、今度は昼間用要撃戦闘機の開発計画「仕様書F.43/46」の要件を満たすべく開発は再出発した。今回もエンジンは1基で、新型の軸流式ターボジェットエンジン「エイボン」を胴体中央に配置する。空気の取り入れ口はシーホークのように主翼付け根に配置する(双ブーム式という)か、それとも機首に配置するかで論争があり、結局はすでに経験のあったように主翼付け根に配置されることになった。


P.1067の誕生編集

こうして完成した機にはコード「P.1067」が与えられ、1950年3月には補給省より「ハンター」との愛称を授かることになった。新鋭機の配備を急ぐ事情もあり、初飛行前にもかかわらずハンターはさっそく198機が発注され、続く1951年7月20日には試作1号機が初飛行を遂げる。


が、その頃には朝鮮戦争の戦場にMiG-15が登場しており、その高性能に西側諸国には衝撃が広がっていた。いわゆる『ミグ・ショック』というやつである。もちろん当時の主力機グロスター・ミーティアでは全く対抗できず、ここに新型の高性能戦闘機の必要性が高まった。直接その影響を受けて開発されるのは後の機となるのだが、とにもかくにも新型機は急がれて、1954年には実戦配備が始まることになった。


これはF-100などと比べると遅々としたものだが、当時のイギリスはインド独立などで植民地(収入)を失っており、これでも急いだ方なのだった。


使い勝手のいい「平凡」編集

といっても、1950年代前半に登場した「新型機」が亜音速戦闘機なのでは、アメリカ・ソビエトが次々に送り出す超音速戦闘機に対抗できるすべは無く、ハンターは配備直後にさっそく時代遅れになり始めた。そこでハンターは早々に戦闘爆撃機に格下げされることとなり、戦闘機よりも地上の目標を相手にせざるを得なくなってしまう。


が、ここに来てイギリス流儀の堅実さというか、設計の「平凡さ」がハンターの身を助けることになった。機体構造は頑丈に作られており、当時としてはエンジンの出力にも優れていた。その出力はF.6型で約45kN(キロニュートン)もあり、これはF-86のJ47エンジン(26kN)の倍近い出力を誇る。おかげで当時のジェット戦闘機としては搭載力にも優れており、最大で約3.4tもの兵器を搭載できる。


これがどれだけ凄いのかというと、当時のイギリス空軍戦闘機であるグロスター「ミーティア」やデ・ハビランド「バンパイア」は精々1t程度であり、3.4tという数字はF-100(第2世代ジェット戦闘機)やA-1にも匹敵すると表現すれば理解してもらえるだろうか。


さらに機首下にアデン30mmリボルバーカノンが4連装されており、その凄まじい攻撃力は「むしろ戦闘爆撃機のほうが本業なんじゃないか」と言われても仕方ないほどの活動記録を残している。


また、スペック表には直接現れない部分ではあるが、ハンターは帰投して再出撃するまでの時間(これを「ターン・アラウンド時間」ともいう)も短かかった。その秘密は燃料に一点給油方式を採用していたことと、4連装30mm機銃を台座ごと交換できるように設計していたことにある。これは補給・再出撃までの時間短縮に貢献し、戦闘爆撃機としての使い勝手を良くすることになった。


の、弱点。編集

ただし、ここまでこぎ着けるまでに何も無かった訳ではない。

いつの時代もそうだが、新型機にはトラブルがつきものである。案の定、ハンターにも初期トラブルは多く発生しており、ホーカー社内でも毎月のように沸いて出るトラブルにうんざりして、いっそ放り出したい程だったと伝えられている。


中でも有名なのは、高高度で機銃を発射すると発射ガスを吸い込んでエンジンストールを起こす事例だろう。この問題は機銃の配置場所の関係上、さすがにどうしようもなく、射撃の際には高度制限が加えられることになった。


また、初期型(F.1、F.2)は航続時間がわずか1時間しかないのも弱点だった。

そこでF.4は主翼内部に燃料タンクを追加し、F.6ではさらにハードポイントを追加、主翼に増加燃料タンクや兵装を吊り下げられるようになった。こうしてハンターは地道ながらも着実に発展してゆき、最終的には頑丈で搭載力に優れ、操縦性が良くて信頼性にも富んだ戦闘爆撃機として完成することになる。


優美なる狩人と戦場の風編集

イギリス空軍ではスエズ戦争(1954年)への出撃を皮切りに実戦投入されており、1960年にはアデンに送りこまれ、部族による反乱・北イエメンからの越境攻撃に対応して出撃を繰り返している。またシンガポールの部隊はマレーシア・インドネシア間の紛争で数度の出撃を行った。


また、インド空軍は印パ戦争においてハンターを実戦投入し、対地攻撃のかたわらF-86F-104といったパキスタン空軍機との空中戦も経験した。これらによる戦果は大きかったが、最前線で常に戦い続けるハンターは大きな損害も記録している。


イラクでは第三次中東戦争に参加させており、なんとイスラエルのミラージュⅢを撃墜した記録も残しているという。ハンターは多くの国に採用された事もあり、この他にも世界中の地域紛争に姿を現し、地味で人目に触れにくいものも含めて活動記録を残した。


ハンターと同世代の仲間編集

では、ホーカー・ハンターとは同世代の戦闘機と比較して、いったい何が優れていたのだろう。第1世代ジェット戦闘機の中でも代表格であるF-86MiG-15と比較してみることにしよう。

以下に性能諸元(Wikipedia)から代表的な数値を引用する。


最大速度編集

ホーカー・ハンター:1150km/h

F-86:1105km/h

MiG-15:1076km/h


航続距離編集

ホーカー・ハンター:715km

F-86:2454km

MiG-15:1200km


機体重量(空虚重量)編集

ホーカー・ハンター:6405kg

F-86:5046kg

MiG-15:3582kg


機外搭載力編集

ホーカー・ハンター:3.4t

F-86:0.9t(=454kg爆弾2コ)

MiG-15:0.5t(=250kg爆弾2コ)


エンジン出力(kN換算)編集

ホーカー・ハンター:45.13kN

F-86:26.3kN

MiG-15:26.47kN


各機とも比較して編集

さて、以上5つの数値を比較して、各機大体の特徴はつかめたように思う。


まずスピードは全機とも大差はないが、ハーカー・ハンター、F-86はともに急降下で音速を超えられる。また航続距離ではF-86がずば抜けており、ホーカー・ハンターは迎撃戦闘機であるMiG-15よりも更に航続距離が短い。その代わり搭載力ではホーカー・ハンターがF-86の3倍以上と優秀になっている。


総合すると、戦闘爆撃機としてのホーカー・ハンターはかなり強力である、という結論が得られることだろう。航続距離は短いので、燃料タンクに2つのハードポイントを使わなくてはならないが、そこはターン・アラウンド時間の短さを生かし、より多くの回数だけ出撃すればいい。


実際、そんな防衛事情に合致したスイスでは長い期間運用されており、機首に距離測定レーダーを追加し、1980年台にはAGM-65「マーベリック」空対地ミサイルを運用できるよう改造を施している。

(もはや一種の魔改造である)


また、ホーカー・ハンターは機体構造が頑丈なのもあいまって、低高度での戦闘は得意であり、自由に振り回せる操縦性がある上に加速も良いので、戦場で敵機と遭遇した際などは意外な手ごわさを発揮することとなった。これはインドが印パ戦争で実証したとおりである。


年老いてなお・・・編集

そういうわけで、ハンターは世界中で長く運用されることとなった。これにはホーカー社が新型機との入れ替えで不要になったハンターを買い取り、戦闘爆撃機に改造して再び販売したことも一助となっている。運用国は20以上にもなり、地味でありながら有力な機であり続けた。


操縦性の良さからアクロバット飛行隊でも使われており、1958年のイギリスではこの機を使って22機による編隊宙返りを披露して世間を驚かせた。その他にも世界中で派手な塗装のハンターは生まれており、中でもパトルイユ・スイスは約20年もの長きに渡って運用していた。


第1世代ジェット戦闘機でありながら、ガツガツとただ性能だけを追い求めた「固さ」がないハンターは、むしろ優美な姿となった。機首もエンジンの最大効率を重視せず、将来的に電子機器を搭載できるよう空けておくという先見性はハンターの寿命を大幅に伸ばすことにも繋がった。「諸元の性能よりも実用重視」という実用主義のたまものだろう。


おかげで現在でも飛行を続けてはいるが、近年では人身に関わる事故も発生しており、最後の1機が翼を永遠に休める日もそう遠くないのかもしれない。

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