解説
バッハトマ魔導帝国主宰。ディス・ヒフツェン・ボスヤスフォート（星団暦〜2121,2992〜）。
星団暦よりはるか昔、AD世紀時代に星団を支配していたファロスディー・カナーン超帝国（超帝國ユニオ）皇家の血を引く『純血のダイバー（バイター）』を自称しており、実際に「ルシェミ（グレイン）」や「ハイブレン（オペラ）」といった星団暦の時代では既に失われた筈のダイバーフォース（超能力、新設定ではグリント・ツヴィンゲン）を全て有している人類最強のダイバー（魔導師）。
愛称は「ボスやん」。
星団暦2121年、ダイバーズ・パラ・ギルド当主の座を求めて当時のA.K.D.女帝・天照の命（ミコト）に戦いを挑み優勢に戦うが、その息子レディオス・ソープ（アマテラス）の神力の前に圧倒され敗北。ソープにより次元の狭間に送り込まれる寸前に天照の命に制止され、消滅させられる。
この時に死亡したかのように見えたが、実は強力なダイバーフォースによって精神だけの状態となっており、以後「憑依の法」により様々なダイバー達の精神の片隅に取り付いて生き延び、星団暦2992年に惑星ボォスの小国シーブルの宰相ディ・バローを操ってL.E.D.ドラゴン（すえぞう）の持つ「命の水」で本来の能力を取り戻し復活。
復活後はシーブルを乗っ取ってバッハトマ魔導帝国を興国、立身出世を夢みる数多の若い騎士やダイバーたちを取り込んで黒騎士デコース・ワイズメル率いる騎士団とビューティ・ペール率いる魔導軍とを組織する。
この頃、その動向を探っていたであろうミラージュ騎士団のボエシェ・ノーミンとビョトン・コーララ、そしてたまたま通りすがったヤーボ・ビートを殺害している。
3010年、アマテラスを挑発せんと、デコース、ペールの三人だけでアマテラス不在のA.K.D.王宮フロートテンプルを奇襲。リィ・エックスとベスター“クローズ”オービットを瞬殺し、ランドアンド・スパコーンやメイザー・ブローズに重傷を負わせ、サリオンを庇った最強騎士F・U・ログナーを死に至らしめるなどミラージュ騎士団を相手に大暴れして事実上の壊滅状態に追い込むも、駆けつけたメル・リンスによって重傷を負わされ退却する。
その後、バッハトマが国力を付けたことで3030年ハスハに侵攻し、星団中を戦渦に巻き込む魔導大戦を引き起こす。ハスハへの宣戦布告と同時に自らハスハの王宮に乗り込んで剣聖ダグラス・カイエン、アトール王女ムグミカ・アトールを殺害。さらにカイエンの娘マグダル・ビートをも倒し、ハスハ王コレット・ラオ・クルールを自決に追い込むが、最後の力を振るったムグミカに召喚されたナ・イ・ンの炎により半身を焼かれるほどの重傷を負い、一時撤退する。
人物
自称する『純血のダイバー』についての真偽は不明ではあるが、本来、反応速度・身体能力共にダイバーに遥かに勝っている筈の騎士を容易く屠るなど恐るべき人物。
初登場した星団暦2121年の天照の命との対決では、当時星団最強ダイバーと謳われた彼女のダイバーフォースを軽々といなしてバスター砲すら跳ね返すバリアを張ってみせており、3010年にフロートテンプルに殴りこみをかけた時には星団随一と謳われたAKDの精鋭ダイバーやミラージュ騎士たちを瞬殺し、モーターヘッド並の戦闘能力を持つ怪物を「ルシェミ」の力で生成・召喚して使役するなど、ダイバーとしての実力は（人間としては）作中最強のものを持つ。
復活後は液体金属で出来たマントを纏っており、これは攻防一体の武器にもなる。
2121年に最初にAKDに現れた時には慇懃無礼で若者らしい傲慢さと野心に溢れる人物だったが、命の水で復活しバッハトマ皇帝の座についてからは、たとえ敵であっても他人に対して礼節は欠かさず、無名であっても実力のある人材を多く登用するなど王としての品格と器量を備えた人物へと変化していた。
最初の対決でアマテラスの正体が『全能神』であることをアマテラス本人よりも先に見抜いており、自分はあくまで新興国の君主である一ダイバー、すなわちただの人間に過ぎず、アマテラスがその気になればいつでも自分を消滅させることもできるとも自覚している。その上で、「アマテラスにとって人類は虫けら同然であり、魔導大戦も取るに足らないものだ」と指摘・挑発しており、絶対者たる彼へ対抗しようとする。
魔導大戦の戦禍の中心人物であり、マグダル達にとって倒すべき仇敵という読者視点での敵役の立ち位置にあるが、『ファイブスター物語』という物語全体から俯瞰して見ると、やがて来る人類と神（アマテラス）との戦いに先鞭をつけた最初の「神への挑戦者」でもあるという特異なキャラクターである。
また、多くのAKD一般兵が無為の犠牲となった命の水争奪戦や、ミラージュ騎士団が壊滅したブラック3襲撃事件、魔導大戦、カイエン殺害など、アマテラスから多くの大切な部下や知り合いを奪った元凶ではあるものの、それらは全てアマテラスが最初の対決でボスヤスフォートを神の力で殺そうとしたことが遠因であることも事実であり、アマテラスが迂闊に神力を行使することで生まれる世界の歪みと因果応報を象徴する人物でもある。
魔導大戦を引き起こした目的については、正当な超帝國の血筋でないものが星団においてのさばっているのを不愉快に感じていたからと言われているが、まだその真相については明かされてはいない。
